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ハロウィンに向けていろいろ考えていたのですが。
最初に考えたのがボツとなったのでここで尻切れトンボのボツネタ供養しようかと。・゚・(Д`(⊂(゚Д゚ つ⌒
ボツ文章なので校正しておりません。
ボツ理由としては、主にクソメガネの口調に頭を悩ませすぎて&展開に詰まったためのボツです。
簡単に説明すると、ハロウィンネタで、ハートランドによるイベントという設定。
そのイベントのシステム的なものを考えたのは私のこのポンコツ頭なので、競争性があるかも…まして面白いかも判断つかなくなってそんなものを長々読ませるのもどうかと思ったのもボツ理由。
あとクソメガネの台詞考えるのがぶっちゃけめんどry
+++
※※あくまでゴミ箱行きのボツ文章の救済なので(勿体無い病)、暇で暇でしょうがないつまんなくて落ちなしでもいいよ!って時にでも。
更に、気が向いたから読んでやるかしかたねえなあという心の広い方推奨ですすみません_| ̄|○
+++
季節は秋。
うだるような暑さに辟易していたはずの人々が真夏の温かさを少し懐かしく思い起こす季節。
急激な気温の変化が山々を夕焼けのように赤く染め行く季節。
10月も残すところ今日限り。
数日も経てば本格的な寒さの後に冬の季節が訪れるだろう。
そんな冷たい秋風もどこ吹く風とばかりに昼夜構わず開け放った窓からの冷気にもめげず──というより気づいた素振りもなく。
吊るされたハンモックに身を揺られるその人物は間抜けな寝顔を晒していた。
「植物でさえ寒さを感じ紅葉すると言うのに、遊馬はいつまで半袖で過ごすつもりなのだろう」
眠る時のTシャツにスウェット素材のズボンという出で立ちは真夏から全く変わる様子がない。
記憶をたどって春まで遡っても特に大きな変化があったという事実もなく、アストラルは不思議そうに腕を組んだまま、腹を出し睡眠を貪る遊馬を見下ろした。
「遊馬」
「ん~…」
「遊馬。起きなくて良いのか?今日は……」
「うぅん……もうちょっとだけ…」
起きているのか寝ているのかも定かではない遊馬と形ばかりの会話をしているアストラルの耳に階下からの物音が届く。
いつもの経験から音の出所に思い当たったアストラルは、未だ起きる様子のない遊馬を振り返った。
「遊…」
「遊馬ぁ~!」
階下へと続く小さな縦穴から顔を覗かせた明里の威圧的に伸ばされた語感に、ビクリと遊馬の肩が撥ねた。
過去何年にも渡り繰り広げられてきたやり取りに無意識に体が反応するのだろう。
遊馬が条件反射のようにぱっちりと目を開けるのと、明里の声はほぼ同タイミングだった。
「こら遊馬!休みだからっていつまで寝てんの!?」
「おおおお起きます!起きてますッ!……ってうわあ!」
明里の声に弾かれるように飛び起きた遊馬は、しかしぐらぐらと揺れるハンモック上で体勢を崩し、為す術もなく床へ転げ落ちた。
「いってえええええ~」
これも見慣れた光景なのだろう。
強か尻を打ったらしい遊馬に別段心配する素振りもなく、明里はただ呆れ顔で大きな溜息を吐き頭を抱えた。
「全く…朝っぱらから元気だけは良いんだから。……って、あ!アンタまた窓開けっぱなしで寝てたでしょ!もういい加減にしないとホントに風邪引いても知らないからね」
「いてて…わかったって」
これ以上の小言は御免だとばかりに遊馬は渋々立ち上がると、まだ眠い目をこすりながら屋根裏から階下の自室へ降り、クローゼットから無造作に着替えを引っ張り出す。
ダラダラと気だるげに丸まったその背中に、ドアを出ようとしていた明里がふと声を掛けた。
「そう言えば、ハートランドが何かイベントするのって今日じゃなかった?アンタ行かなくていいの?」
「イベントぉ?」
まだ寝ぼけ気味な遊馬は訝しげに首を捻ったが、開け放った窓から小気味良く聞こえてきた空砲音を聞くや否や、次の瞬間には弾かれたように飛び上がった。
「やっべー!すっかり忘れてた!」
あからさまに機敏になった遊馬の姿に明里とアストラルは呆れ果てるしかない。
毎度のことに辟易しながらも、ちゃんと朝ご飯食べてから行きなさいよ!と律儀に掛けた明里の忠告は遊馬の耳に届いたのか否か。
二人の会話を黙って聞いていたアストラルは、慌てた様子で部屋を引っ掻き回している遊馬に近づいた。
「朝から慌ただしいな、君は」
「アストラル!起きてたなら姉ちゃんが来る前に起こしてくれりゃ良かったのによぉ」
アストラルの存在にようやく気づく余裕が出来たのか、驚くほどの短時間で着替えを済ませた遊馬が膨れっ面を向ける。
しかしその不満はアストラルには実に不本意なものだ。
何故ならば、アストラルは明里が来る前に遊馬に声を掛けたのである。
「起こそうとしたが、どうやら眠っている君は私の声よりも明里の声に反応するようだ」
「そりゃまあ…こう毎日姉ちゃんに怒鳴られてるとなんて言うか、体に染み付いちまってるっつーか…」
「なるほど……」
「ってそんなことより!早くハートランドに行かねーと……」
居ても立ってもいられないのか、今にも飛び出してしまいそうな程浮き足立つ遊馬にアストラルもそうだなと同意する。
「私の読みでは、そろそろ小鳥達は到着している頃だろう」
「だよなー……あぁもうダッシュで行かねーと、遅刻なんかしたら小鳥に何て言われるか……え?」
何となく頷いたものの、予想外だったアストラルの返事に遊馬はぎょっと目を見開いた。
そんな遊馬を一瞥しながら、アストラルは淡々と告げる。
「君の予定を一緒にいる私が知らないはずがないだろう」
「お前知ってたんなら何でもっと早く起こしてくれねーんだよー」
「だから起こしたと言っているだろう。君がもう少し寝かせてくれと言ったのだ。そうしていたら明里が来た」
「いやお前そう言う時の返事ってのはなあ…」
「それより遊馬。急がなくて良いのか?」
「お前ってほんっとマイペースだよな!」
子供のみならず大人にも不動の人気を誇る巨大テーマパーク、ハートランド。
一年を通して様々な催し物の開催されるハートランドは連日大賑わいの様子を見せている。
特に休日のハートランドと言えばそれだけで混み合っているものだが、大々的に告知のあった今日という日の人口密度は遊馬やアストラルの想像を遥かに超えていた。
「相変わらず凄い人だな」
「姉ちゃんに聞いた話だと、子供だけじゃなく大人もOKの一大イベントらしいぜ!何が始まるのかすっげー楽しみだな!」
WDCが終わって暫く。久しぶりに開催される大きなイベントに興奮を見せているのは遊馬だけではない。
それを証明するように途切れることの無い人波が遊馬を右へ左へと押し流していく。
「っと…こんなとこで突っ立ってる場合じゃなかった!えーと…小鳥達との待ち合わせ場所は確か……」
「遊馬ー!」
濁流に揉まれている遊馬とアストラルの耳に、何処からとも無く聞き慣れた声が届いた。
しかし周囲の雑踏や周りを行き交う人影に遮られてか、遊馬はキョロキョロと辺りを見渡す。
「こっちこっちー!」
「遊馬」
頭一つ二つ飛び抜けた空中に佇むアストラルの視線が一点へと見定められる。
釣られる様にその視線の先を追った遊馬の目にも、広場の階段から大きく手を振る小鳥の姿を認識できた。
鉄男や委員長と言った遊馬の友人達も既に揃っているようだ。
「よぉみんな!」
「よぉ!じゃないでしょ!全くお気楽なんだから」
「やだ小鳥ったら朝からそんなに目くじら立ててちゃ怒り皺が出来ちゃうわよ」
「なぁんですって~!?」
「遊馬と言えば、毎回待ち合わせに遅刻しそうになるのがお約束みたいなもんだウラ」
「でもまあ間に合って良かったじゃねーか」
「あ、そろそろ始まるみたいですよ。とどのつまり、グッドタイミングという奴ですね!」
委員長の声に皆の視線が頭上に現れたスクリーンへ集まる。
ドラムロールから鳴り響いた盛大な演奏を背負い、投影されたARヴィジョンに1人の男が浮かび上がった。
「ご来場の皆様!そして勇敢なるデュエリストの諸君!「ハートランドのハロウィンパレードへようこそ!」
高らかな宣言と共に、ここにいる誰もが知るハートランドのシンボル『Mr.ハートランド』が煙と共に颯爽と姿を現した。
「本日皆様にお越し頂いたのは、日頃お世話になっている皆様方へ私からのささやかなプレゼントをお贈りするためです。皆様それぞれお手持ちのDパッドを御覧下さい」
「Dパッド?」
携帯端末として広く普及しているDパッドは今やデュエリストでなくても生活に欠かせないものとなっている。
Mr.ハートランドの言葉に遊馬が手元のDパッドを開くと、画面には見慣れないアイコンがちかちかと点滅していた。
「なんだこれ……チョコレート?」
チョコレートのアイコンが1つと、その横に『1』という数字。
画面の右下に現れた枠には大きく『5』と表示されていた。
「私のDパッドにもあるわ」
遊馬や小鳥だけでなく鉄男や委員長、キャッシーや徳之助と言ったデュエリストはもちろん。
周りの反応から判断するに、大人から子供まで全員のDパッドにどうやら同じチョコレートのアイコンが現れているらしい。
「トリックオアトリート!そう、本日10月31日はハロウィン!そこで、本日ハートランドでは一夜限りのハロウィンテーマパークとして趣向を凝らしたイベントを開催致します!皆様Dゲイザーをセットし周りを御覧下さい」
スっと右手を掲げたハートランドがパチンと指を鳴らした次の瞬間、それまで軽快に響いていた演奏が転調する。
それと同時に明るく鮮やかだったハートランド全体の色彩が黒や橙と言ったダークで退廃的な雰囲気の物へと変化してゆく。
「すっげーー!」
色彩だけでなく、御馴染みのハートランドのアトラクションの数々もハロウィン仕様へと様変わりしていた。
普段のハートランドから一転。別のテーマパークにでも来たかのような変わり様に、会場は驚きと興奮の熱気で満ちている。
その興奮のボルテージを更に高めるべく、Mr.ハートランドは言葉を続けた。
「ただ今御覧頂いているハートランドの景色は今年のハロウィン限り!勿論外観だけでなくアトラクションの数々も今日のための特別仕様となっております!」
モニタに様々な新設アトラクションの紹介VTRが流れ、それら1つずつをMr.ハートランドが丁寧に解説している。
その数は1つや2つではなく、これまでハートランドに常設されていた人気アトラクションに加えると合計は数十にも登るとのことだ。
「ってことは、つまり今日を逃したら一生乗れないアトラクションがあるってこと?」
「ハロウィン限定と銘打つからにはそう言うことらしいな」
「ちょ、ちょっと待てよ…えーと、今月のお小遣い……って無い!?」
ポケットから財布を取り出しなけなしの小銭を数えながら遊馬が顔面を蒼白とさせる。
「今月のお小遣いって、今日は10月最後の日だろ、お小遣い貰えるの明日じゃん!ってことは……もしかして」
「世知辛いな」
他人ごとのようなアストラルの言葉に遊馬はがっくりと項垂れた。
「今月のお小遣いがピンチだと項垂れているそこの君。諦めることはないぞ!」
「へ?」
気落ちする遊馬を勇気づけるかのように頭上から声が響いた。
「そこで先程皆様に配布したチョコレートが必要になってくるのです。今までのはアトラクションのご紹介にすぎません。ここからはハートランドが開催するハロウィンイベントについて説明致しましょう!」
会場がどよめく中、頭上のスクリーンに映し出された映像と同じ物が来場者のDパッドにも表示される。
「ハロウィンイベント?とりっくおあとりーと?」
「トリックオアトリートとは、先程Mr.ハートランドも言っていた用語だな。どういう意味だ?」
遊馬のDパッドを覗きこみながらアストラルが尋ねる。
ハロウィンは異世界から来たアストラルには馴染みのないものだろう。
しかし仮に異世界の住人でなかったにしろ、典型的なデュエル脳であるアストラルがハロウィンに詳しいはずもない。
それは説明しようとする遊馬にも同じことが言えた。
「え?えーと……とり…トリ……鳥の何かかな?」
「鳥?」
「もう遊馬!間違ったことを教えないの!」
アストラルに対する適当な返答を間近で聞いていたのだろう。
首を傾げるアストラルと遊馬のため小鳥は簡単にハロウィンの概要を説明した。
「トリックオアトリートってのは、『お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ』って意味のハロウィンの決まり文句みたいなものなの」
「元々は外国の収穫祭だったものですが、仮装した子供が近所の家を周りお菓子をねだり歩くパレードやパーティなどのイベントとして広まったんです」
小鳥や委員長の補足にアストラルは見識を深めたように頷き、遊馬が感心するように声を漏らしたところで、Dパッドに映る説明書きのようなページにずらりとお菓子のアイコンが並んだ。
チョコレートのアイコンの他に包み紙を左右で捻ったようなキャンディや、市松模様のクッキー、よく見るキャラメルなど11種類のお菓子が表示されている。
それらの横には様々な数字が記載されており、キャンディの1という数字から始まり、一番下の三角形のショートケーキの横には15の数字が記されていた。
「最初にお配りしたのと同じチョコレートのアイコンをご覧ください。チョコレートの横には5という数字。これはチョコレートが5点であることを表しています」
一番点数が低いのが飴の1点。
そこからアイコン10番目のペロペロキャンディー10点まで1点ずつ点が増えて行き、最後のケーキのみ持ち点が15となっているらしい。
「さきほどご紹介したアトラクションは、こちらに表示されているお菓子の点数を集めることで楽しむことができます」
「なるほど!とどのつまりお菓子を集めることでお小遣いを使わなくてもハートランドを楽しむことが出来るというわけですね!」
「おぉ!そういうことか!ハートランド超太っ腹じゃん!」
「でもこのお菓子ってどこで手に入るのかしら?」
「とても5点で全部のアトラクションを回れるとは思えないウラ」
キャッシーや徳之介の疑問に答えの出せぬまま、とにかくハートランドの説明を聞くことにし天を仰いだ。
お菓子の説明をしていたハートランドがDパッドの『次へ』と書かれたアイコンをタッチすることを促す。
ページが移り変わるとそこにはイベントのルールのような文章が箇条書きで記されていた。
「説明を見ても分かるように、お菓子を得る方法は様々だ。デュエルによって相手から奪っても良し。プレゼントするのも良し。また新設されたアトラクションの中には高得点のお菓子を手に入れるチャンスもあるから探してみてくれたまえ。そしてイベント終了後には最もお菓子を集めた者に特別なプレゼントを用意しているぞ!」
遊馬が説明とDパッド内のルールとを照らし合わせながら頭を悩ませている最中、遊馬とともにDパッドを覗いていた飲み込みの早いアストラルが呟いた。
「どうやら基本的にはデュエルで集めることになるらしいな」
「お前もうわかったの?」
驚いて目を丸くする遊馬に見上げられアストラルは小さく息を漏らす。
アストラルが思うに、遊馬は四六時中デュエルのことしか考えていないデュエル脳…いや、デュエルバカだ。
そんな彼には現時点でどんなにルールを詰め込んでも無駄だと経験から知っているアストラルは遊馬の不思議そうな顔に一言「ああ」と返すだけに留めた。
彼は実践型である。
実際にルール説明が必要になった場合にその都度説明する方が手間が無い。
それが彼の判断だった。
「最後になるが、集めたポイントはイベント終了後にアトラクションを楽しむために使用することが出来るぞ。そして集めたお菓子もそのまま持ち帰ることが可能だ。持ち帰りに関しては郵送も可能なので詳しくは各々イベントルールでチェックすることをお勧めします!それでは優勝目指してハートバーニング!」
お決まりの台詞と花火の音と共に、司会進行役を務めたMr.ハートランドは颯爽と人々の目の前から姿を消した。
+++
クソメガネ(ver道化)が難しすぎて。
こんなところまで読んでいただきまして本当にありがとうございます><
お粗末さまでした_○/|_ 土下座
最初に考えたのがボツとなったのでここで尻切れトンボのボツネタ供養しようかと。・゚・(Д`(⊂(゚Д゚ つ⌒
ボツ文章なので校正しておりません。
ボツ理由としては、主にクソメガネの口調に頭を悩ませすぎて&展開に詰まったためのボツです。
簡単に説明すると、ハロウィンネタで、ハートランドによるイベントという設定。
そのイベントのシステム的なものを考えたのは私のこのポンコツ頭なので、競争性があるかも…まして面白いかも判断つかなくなってそんなものを長々読ませるのもどうかと思ったのもボツ理由。
あとクソメガネの台詞考えるのがぶっちゃけめんどry
+++
※※あくまでゴミ箱行きのボツ文章の救済なので(勿体無い病)、暇で暇でしょうがないつまんなくて落ちなしでもいいよ!って時にでも。
更に、気が向いたから読んでやるかしかたねえなあという心の広い方推奨ですすみません_| ̄|○
+++
季節は秋。
うだるような暑さに辟易していたはずの人々が真夏の温かさを少し懐かしく思い起こす季節。
急激な気温の変化が山々を夕焼けのように赤く染め行く季節。
10月も残すところ今日限り。
数日も経てば本格的な寒さの後に冬の季節が訪れるだろう。
そんな冷たい秋風もどこ吹く風とばかりに昼夜構わず開け放った窓からの冷気にもめげず──というより気づいた素振りもなく。
吊るされたハンモックに身を揺られるその人物は間抜けな寝顔を晒していた。
「植物でさえ寒さを感じ紅葉すると言うのに、遊馬はいつまで半袖で過ごすつもりなのだろう」
眠る時のTシャツにスウェット素材のズボンという出で立ちは真夏から全く変わる様子がない。
記憶をたどって春まで遡っても特に大きな変化があったという事実もなく、アストラルは不思議そうに腕を組んだまま、腹を出し睡眠を貪る遊馬を見下ろした。
「遊馬」
「ん~…」
「遊馬。起きなくて良いのか?今日は……」
「うぅん……もうちょっとだけ…」
起きているのか寝ているのかも定かではない遊馬と形ばかりの会話をしているアストラルの耳に階下からの物音が届く。
いつもの経験から音の出所に思い当たったアストラルは、未だ起きる様子のない遊馬を振り返った。
「遊…」
「遊馬ぁ~!」
階下へと続く小さな縦穴から顔を覗かせた明里の威圧的に伸ばされた語感に、ビクリと遊馬の肩が撥ねた。
過去何年にも渡り繰り広げられてきたやり取りに無意識に体が反応するのだろう。
遊馬が条件反射のようにぱっちりと目を開けるのと、明里の声はほぼ同タイミングだった。
「こら遊馬!休みだからっていつまで寝てんの!?」
「おおおお起きます!起きてますッ!……ってうわあ!」
明里の声に弾かれるように飛び起きた遊馬は、しかしぐらぐらと揺れるハンモック上で体勢を崩し、為す術もなく床へ転げ落ちた。
「いってえええええ~」
これも見慣れた光景なのだろう。
強か尻を打ったらしい遊馬に別段心配する素振りもなく、明里はただ呆れ顔で大きな溜息を吐き頭を抱えた。
「全く…朝っぱらから元気だけは良いんだから。……って、あ!アンタまた窓開けっぱなしで寝てたでしょ!もういい加減にしないとホントに風邪引いても知らないからね」
「いてて…わかったって」
これ以上の小言は御免だとばかりに遊馬は渋々立ち上がると、まだ眠い目をこすりながら屋根裏から階下の自室へ降り、クローゼットから無造作に着替えを引っ張り出す。
ダラダラと気だるげに丸まったその背中に、ドアを出ようとしていた明里がふと声を掛けた。
「そう言えば、ハートランドが何かイベントするのって今日じゃなかった?アンタ行かなくていいの?」
「イベントぉ?」
まだ寝ぼけ気味な遊馬は訝しげに首を捻ったが、開け放った窓から小気味良く聞こえてきた空砲音を聞くや否や、次の瞬間には弾かれたように飛び上がった。
「やっべー!すっかり忘れてた!」
あからさまに機敏になった遊馬の姿に明里とアストラルは呆れ果てるしかない。
毎度のことに辟易しながらも、ちゃんと朝ご飯食べてから行きなさいよ!と律儀に掛けた明里の忠告は遊馬の耳に届いたのか否か。
二人の会話を黙って聞いていたアストラルは、慌てた様子で部屋を引っ掻き回している遊馬に近づいた。
「朝から慌ただしいな、君は」
「アストラル!起きてたなら姉ちゃんが来る前に起こしてくれりゃ良かったのによぉ」
アストラルの存在にようやく気づく余裕が出来たのか、驚くほどの短時間で着替えを済ませた遊馬が膨れっ面を向ける。
しかしその不満はアストラルには実に不本意なものだ。
何故ならば、アストラルは明里が来る前に遊馬に声を掛けたのである。
「起こそうとしたが、どうやら眠っている君は私の声よりも明里の声に反応するようだ」
「そりゃまあ…こう毎日姉ちゃんに怒鳴られてるとなんて言うか、体に染み付いちまってるっつーか…」
「なるほど……」
「ってそんなことより!早くハートランドに行かねーと……」
居ても立ってもいられないのか、今にも飛び出してしまいそうな程浮き足立つ遊馬にアストラルもそうだなと同意する。
「私の読みでは、そろそろ小鳥達は到着している頃だろう」
「だよなー……あぁもうダッシュで行かねーと、遅刻なんかしたら小鳥に何て言われるか……え?」
何となく頷いたものの、予想外だったアストラルの返事に遊馬はぎょっと目を見開いた。
そんな遊馬を一瞥しながら、アストラルは淡々と告げる。
「君の予定を一緒にいる私が知らないはずがないだろう」
「お前知ってたんなら何でもっと早く起こしてくれねーんだよー」
「だから起こしたと言っているだろう。君がもう少し寝かせてくれと言ったのだ。そうしていたら明里が来た」
「いやお前そう言う時の返事ってのはなあ…」
「それより遊馬。急がなくて良いのか?」
「お前ってほんっとマイペースだよな!」
子供のみならず大人にも不動の人気を誇る巨大テーマパーク、ハートランド。
一年を通して様々な催し物の開催されるハートランドは連日大賑わいの様子を見せている。
特に休日のハートランドと言えばそれだけで混み合っているものだが、大々的に告知のあった今日という日の人口密度は遊馬やアストラルの想像を遥かに超えていた。
「相変わらず凄い人だな」
「姉ちゃんに聞いた話だと、子供だけじゃなく大人もOKの一大イベントらしいぜ!何が始まるのかすっげー楽しみだな!」
WDCが終わって暫く。久しぶりに開催される大きなイベントに興奮を見せているのは遊馬だけではない。
それを証明するように途切れることの無い人波が遊馬を右へ左へと押し流していく。
「っと…こんなとこで突っ立ってる場合じゃなかった!えーと…小鳥達との待ち合わせ場所は確か……」
「遊馬ー!」
濁流に揉まれている遊馬とアストラルの耳に、何処からとも無く聞き慣れた声が届いた。
しかし周囲の雑踏や周りを行き交う人影に遮られてか、遊馬はキョロキョロと辺りを見渡す。
「こっちこっちー!」
「遊馬」
頭一つ二つ飛び抜けた空中に佇むアストラルの視線が一点へと見定められる。
釣られる様にその視線の先を追った遊馬の目にも、広場の階段から大きく手を振る小鳥の姿を認識できた。
鉄男や委員長と言った遊馬の友人達も既に揃っているようだ。
「よぉみんな!」
「よぉ!じゃないでしょ!全くお気楽なんだから」
「やだ小鳥ったら朝からそんなに目くじら立ててちゃ怒り皺が出来ちゃうわよ」
「なぁんですって~!?」
「遊馬と言えば、毎回待ち合わせに遅刻しそうになるのがお約束みたいなもんだウラ」
「でもまあ間に合って良かったじゃねーか」
「あ、そろそろ始まるみたいですよ。とどのつまり、グッドタイミングという奴ですね!」
委員長の声に皆の視線が頭上に現れたスクリーンへ集まる。
ドラムロールから鳴り響いた盛大な演奏を背負い、投影されたARヴィジョンに1人の男が浮かび上がった。
「ご来場の皆様!そして勇敢なるデュエリストの諸君!「ハートランドのハロウィンパレードへようこそ!」
高らかな宣言と共に、ここにいる誰もが知るハートランドのシンボル『Mr.ハートランド』が煙と共に颯爽と姿を現した。
「本日皆様にお越し頂いたのは、日頃お世話になっている皆様方へ私からのささやかなプレゼントをお贈りするためです。皆様それぞれお手持ちのDパッドを御覧下さい」
「Dパッド?」
携帯端末として広く普及しているDパッドは今やデュエリストでなくても生活に欠かせないものとなっている。
Mr.ハートランドの言葉に遊馬が手元のDパッドを開くと、画面には見慣れないアイコンがちかちかと点滅していた。
「なんだこれ……チョコレート?」
チョコレートのアイコンが1つと、その横に『1』という数字。
画面の右下に現れた枠には大きく『5』と表示されていた。
「私のDパッドにもあるわ」
遊馬や小鳥だけでなく鉄男や委員長、キャッシーや徳之助と言ったデュエリストはもちろん。
周りの反応から判断するに、大人から子供まで全員のDパッドにどうやら同じチョコレートのアイコンが現れているらしい。
「トリックオアトリート!そう、本日10月31日はハロウィン!そこで、本日ハートランドでは一夜限りのハロウィンテーマパークとして趣向を凝らしたイベントを開催致します!皆様Dゲイザーをセットし周りを御覧下さい」
スっと右手を掲げたハートランドがパチンと指を鳴らした次の瞬間、それまで軽快に響いていた演奏が転調する。
それと同時に明るく鮮やかだったハートランド全体の色彩が黒や橙と言ったダークで退廃的な雰囲気の物へと変化してゆく。
「すっげーー!」
色彩だけでなく、御馴染みのハートランドのアトラクションの数々もハロウィン仕様へと様変わりしていた。
普段のハートランドから一転。別のテーマパークにでも来たかのような変わり様に、会場は驚きと興奮の熱気で満ちている。
その興奮のボルテージを更に高めるべく、Mr.ハートランドは言葉を続けた。
「ただ今御覧頂いているハートランドの景色は今年のハロウィン限り!勿論外観だけでなくアトラクションの数々も今日のための特別仕様となっております!」
モニタに様々な新設アトラクションの紹介VTRが流れ、それら1つずつをMr.ハートランドが丁寧に解説している。
その数は1つや2つではなく、これまでハートランドに常設されていた人気アトラクションに加えると合計は数十にも登るとのことだ。
「ってことは、つまり今日を逃したら一生乗れないアトラクションがあるってこと?」
「ハロウィン限定と銘打つからにはそう言うことらしいな」
「ちょ、ちょっと待てよ…えーと、今月のお小遣い……って無い!?」
ポケットから財布を取り出しなけなしの小銭を数えながら遊馬が顔面を蒼白とさせる。
「今月のお小遣いって、今日は10月最後の日だろ、お小遣い貰えるの明日じゃん!ってことは……もしかして」
「世知辛いな」
他人ごとのようなアストラルの言葉に遊馬はがっくりと項垂れた。
「今月のお小遣いがピンチだと項垂れているそこの君。諦めることはないぞ!」
「へ?」
気落ちする遊馬を勇気づけるかのように頭上から声が響いた。
「そこで先程皆様に配布したチョコレートが必要になってくるのです。今までのはアトラクションのご紹介にすぎません。ここからはハートランドが開催するハロウィンイベントについて説明致しましょう!」
会場がどよめく中、頭上のスクリーンに映し出された映像と同じ物が来場者のDパッドにも表示される。
「ハロウィンイベント?とりっくおあとりーと?」
「トリックオアトリートとは、先程Mr.ハートランドも言っていた用語だな。どういう意味だ?」
遊馬のDパッドを覗きこみながらアストラルが尋ねる。
ハロウィンは異世界から来たアストラルには馴染みのないものだろう。
しかし仮に異世界の住人でなかったにしろ、典型的なデュエル脳であるアストラルがハロウィンに詳しいはずもない。
それは説明しようとする遊馬にも同じことが言えた。
「え?えーと……とり…トリ……鳥の何かかな?」
「鳥?」
「もう遊馬!間違ったことを教えないの!」
アストラルに対する適当な返答を間近で聞いていたのだろう。
首を傾げるアストラルと遊馬のため小鳥は簡単にハロウィンの概要を説明した。
「トリックオアトリートってのは、『お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ』って意味のハロウィンの決まり文句みたいなものなの」
「元々は外国の収穫祭だったものですが、仮装した子供が近所の家を周りお菓子をねだり歩くパレードやパーティなどのイベントとして広まったんです」
小鳥や委員長の補足にアストラルは見識を深めたように頷き、遊馬が感心するように声を漏らしたところで、Dパッドに映る説明書きのようなページにずらりとお菓子のアイコンが並んだ。
チョコレートのアイコンの他に包み紙を左右で捻ったようなキャンディや、市松模様のクッキー、よく見るキャラメルなど11種類のお菓子が表示されている。
それらの横には様々な数字が記載されており、キャンディの1という数字から始まり、一番下の三角形のショートケーキの横には15の数字が記されていた。
「最初にお配りしたのと同じチョコレートのアイコンをご覧ください。チョコレートの横には5という数字。これはチョコレートが5点であることを表しています」
一番点数が低いのが飴の1点。
そこからアイコン10番目のペロペロキャンディー10点まで1点ずつ点が増えて行き、最後のケーキのみ持ち点が15となっているらしい。
「さきほどご紹介したアトラクションは、こちらに表示されているお菓子の点数を集めることで楽しむことができます」
「なるほど!とどのつまりお菓子を集めることでお小遣いを使わなくてもハートランドを楽しむことが出来るというわけですね!」
「おぉ!そういうことか!ハートランド超太っ腹じゃん!」
「でもこのお菓子ってどこで手に入るのかしら?」
「とても5点で全部のアトラクションを回れるとは思えないウラ」
キャッシーや徳之介の疑問に答えの出せぬまま、とにかくハートランドの説明を聞くことにし天を仰いだ。
お菓子の説明をしていたハートランドがDパッドの『次へ』と書かれたアイコンをタッチすることを促す。
ページが移り変わるとそこにはイベントのルールのような文章が箇条書きで記されていた。
「説明を見ても分かるように、お菓子を得る方法は様々だ。デュエルによって相手から奪っても良し。プレゼントするのも良し。また新設されたアトラクションの中には高得点のお菓子を手に入れるチャンスもあるから探してみてくれたまえ。そしてイベント終了後には最もお菓子を集めた者に特別なプレゼントを用意しているぞ!」
遊馬が説明とDパッド内のルールとを照らし合わせながら頭を悩ませている最中、遊馬とともにDパッドを覗いていた飲み込みの早いアストラルが呟いた。
「どうやら基本的にはデュエルで集めることになるらしいな」
「お前もうわかったの?」
驚いて目を丸くする遊馬に見上げられアストラルは小さく息を漏らす。
アストラルが思うに、遊馬は四六時中デュエルのことしか考えていないデュエル脳…いや、デュエルバカだ。
そんな彼には現時点でどんなにルールを詰め込んでも無駄だと経験から知っているアストラルは遊馬の不思議そうな顔に一言「ああ」と返すだけに留めた。
彼は実践型である。
実際にルール説明が必要になった場合にその都度説明する方が手間が無い。
それが彼の判断だった。
「最後になるが、集めたポイントはイベント終了後にアトラクションを楽しむために使用することが出来るぞ。そして集めたお菓子もそのまま持ち帰ることが可能だ。持ち帰りに関しては郵送も可能なので詳しくは各々イベントルールでチェックすることをお勧めします!それでは優勝目指してハートバーニング!」
お決まりの台詞と花火の音と共に、司会進行役を務めたMr.ハートランドは颯爽と人々の目の前から姿を消した。
+++
クソメガネ(ver道化)が難しすぎて。
こんなところまで読んでいただきまして本当にありがとうございます><
お粗末さまでした_○/|_ 土下座
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