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腐よろず雑記。 感想やラクガキ・小ネタを投下してます。 ZEXALが無事最終回を迎えましたが相変わらずカイト受けを欲しています!!切実!!
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以前ついったの診断で出たネタから消化。
タイトルにもありますがジャックは不在です。
もてもて小悪魔系ジャック可愛い。

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■いつだって分かりやすい嘘を吐く



パーツの買い出しからポッポタイムへ戻る途中の遊星は、進行方向に黒山の人集りを見つけ、走らせていたDホイールを停めた。
道路を封鎖せんとばかりの群衆と、それらを一定の範囲内へ立ち入らせない為のテープを張っているのは見慣れたセキュリティの制服だ。
事故でもあったのだろうか、いずれにせよ狭い一般道に溢れた野次馬をすり抜け進むことは難しそうだと回り道を考えた遊星の視線の先に見慣れた色の制服が目に入る。
「風馬…?」
反射的に呟いた名前にまさか気づいたはずも無いが、テープの内側にいたその人物とばっちり目が合ってしまった。
「あれ遊星じゃないか。久し振りだな」
いつもと変わらぬ人当たりの良さで近づいてきた風馬に簡単な会釈を返しながらも、遊星は少しだけ身構えた。
悪い人物ではないし色々と世話にもなっているのだが、いかんせん遊星は風馬という男に苦手意識を持っている。
それというのも『共通の友人』が大いに関係しているせいなのだが、とりあえずこの場にその人物はいない。遊星は関係者であろう風馬にテープの内側のことを訪ねた。
「事故か?」
「あぁ。速度オーバーのDホイールがクラッシュしたようでね。幸い軽い掠り傷だけで済んだみたいで命に別状はないようで良かったよ」
「そうか」
Dホイールの絡む事故は何も初心者に限ったことではない。どんなに運転技術を磨こうとも自分のDホイールが常に万全の状態でなければ小さな不調が取り返しの付かない事故に繋がることもあるし、ライディングデュエルを行うレーンの状態やその時の天候、そして自分が万全の準備を整えていたとしても、相手のミスに巻き込まれる可能性も無いとは言い切れないのだ。
ライディングデュエルにおける危険性は、初心者よりもむしろ大きな大会に名を連ねるライディングデュエリストこそ思い知っている。
「さっき簡単な事情聴取で話を聞いたんだけど……」
Dホイールのクラッシュ事故は遊星も風馬も経験上身に沁みて体験しているが、風馬は何とも言えぬ微妙な面持ちで掻い摘んで事故の経緯を話し始めた。
聞けば恋愛の縺れからデュエルで決着をつけようと言うことになったらしく、ターンを重ねる毎にヒートアップして片方がクラッシュしたらしい。
大きな事故にならなかったのが不幸中の幸いだが、何でもデュエルでケリをつけようとするのはデュエリストの悪い癖だなと苦笑する風馬に、遊星もふっと笑みを浮かべる。
流石にライディングデュエルで何かを賭けたことはないが、昔はジャックやクロウ、鬼柳達と互いに他愛のないものを賭けてデュエルをしていた日々を思い起こす。
色恋沙汰でさえもデュエルで勝ち取るのは少々強引な気もしたが、あながち突飛な発想でもないなと遊星は風馬と顔を見合わせた。
「そう言えば」
──来た。
そう感じた遊星の読みは程なくして間違いではなかったと知る。
「今日はジャックは一緒じゃないんだな」
意味深な視線を寄越した風馬の様子に、今この場にジャックがいなくて本当に良かったと心底ほっとする。
「あぁ。今日は俺の用事だけだからな」
「そうか。それは少し残念だな」
朗らかに笑みを浮かべながら何とも無い様子で本音を言う、そんな大胆さが自分には少し欠けていると自覚している遊星は、風馬の言動を脅威と羨望とが入り混じった表情で見つめた。
遊星は口が達者なわけではない。どちらかと言えば口下手で、話術に関してはジャックの足元にも及ばず、だからと言って風馬のように気の効いた台詞が出てくるわけでもない。
だからであろうか、風馬と会話する時のジャックは遊星が今まで見てきたどのジャックとも微妙に異なっており、そんな自分も見たことが無いジャックの一面を風馬が独り占めしているのかと思うと、ちりちりと胸の奥がむず痒くなるのだ。
それはどこからどう見ても……自分自身でも嫉妬以外の何物でもないと認識しているのだが、そんな些細なことにすら嫉妬心が芽生えてしまう己の器の狭さに余計に自己嫌悪は増して行く。
いっそのことジャックとの関係が進展しでもすれば、この風馬との微妙な空気も変わってくれる気がしないでもないが、その一歩を踏み出すには相当の勇気を要するのだ。
さほど長い沈黙ではなかったが、不意に風馬が口を開いた。
「なぁ遊星」
どことなく神妙な顔つきで抱えたヘルメットを見下ろす風馬。
その鳶色の瞳が、今度は遊星へと向けられた。
「俺達もデュエルで決着をつけようか?」
何の……とはお互い口にするまでも無く分かりきっている。
戸惑う遊星とは裏腹に、風馬は視線を逸らすことなく真直ぐに遊星を見つめていた。
「………っ…」
「なんて、冗談だよ」
いつもと変わらぬ風馬の声に遮られるようにして遊星は言葉を飲み込んだ。
風馬は見慣れた柔らかな笑みを浮かべたまま軽く遊星の肩を叩くと、ぐるりと周辺の状況に目を配った。
「さて交通整理は終わったかな?」
つられる様に見渡せば先ほどまでいた群衆は徐々に減り、道路や歩道はいつもの平穏を取り戻しかけているようだ。
「野次馬もいなくなったみたいだし、そろそろ規制を解くから通れるよ」
「…あぁ」
「それじゃ、みんなによろしく」
まるでいつもと変わらぬ世間話でもしていたかの様子の風馬にどこか呆気に取られながらも、遊星は立ち去ろうとする風馬の背中に歯切れの悪い相槌を投げながら、また一つ恋敵に対する苦手意識が増えたのを感じながら帰路についた。





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爽やかが行方不明(´;ω;`)
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