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いつぞや言ってたハロウィンのボツ文章。
また違うネタ…というか切り口がちょっと違う感じです。
あ、カイトは出ません。主に遊馬とアストラルが喋ってる。
+++
あ、小ネタ関係ない日記なのですが。
もしかしてゼアルの某金メダリストの出てくる回ってスペシャルで9月に放送済みなんです???
BS……視聴組なんですが、記憶にないんですけど(;^ω^)
え、もしかしてまじです?
ポカ─( ゚д゚ )─ン
泣いていいかな
(´;ω;`)ウッ…
+++
「いや~すっげー集まったな~」
ニヤニヤと緩みきった顔でDパッドを眺める遊馬は既に本来の目標など忘れているかのような気楽さである。
「遊馬。なぜ君はそんなに嬉しそうなのだ」
「何でって、これ終わったら全部貰えるんだろ?えーと飴にキャラメル、チョコレートに――」
つらつらとお菓子の種類を並べ立てる遊馬は今にも涎を垂らす勢いだ。
Dパッドに頬擦りしながらうっとりとそこに表示されたお菓子のアイコンに熱い眼差しを送っている様子は傍目に見れば恋人に愛を紡ぐ男の様にも似ていたが、生憎遊馬が胸を焦がすのは口一杯に広がる砂糖菓子の焼け付くような甘味に他ならない。
「こんだけあれば当分お菓子にゃ困らねーよなー」
「しかし遊馬。これではまだ足りないぞ」
「え?俺はこんだけあれば暫く大丈夫だけどなあ」
アストラルの懸念が的はずれだとでも言いたげに遊馬は首をかしげている。
目の前のお菓子に夢中ですっかり本来の目的を見失っているらしい遊馬にアストラルはもう一度、現在遊馬のおかれている状況を説明することにした。
「これはハートランド主催のイベントだ」
今日は10月30日。
ハロウィンに向け特別解放されているハートランドでは今ハロウィンをテーマとしたイベントが開かれており、遊馬やアストラルはそのためにお菓子を集めているのである。
「お菓子を集めるのは重要だが、我々にはその先に目指す目標がある」
イベントの目的は2つ。
大量のお菓子ptを集めれば、集めたすべてをイベント終了後に持ち帰ることができる。
そしてもう1つの目的は参加者同士でお菓子ptの数を競いあい、より多くのお菓子を集めた上位の者にはハートランドの優待フリーパス券が与えられるというものだ。
それもただのフリーパスではない。
ハロウィン期間中だけの限定アトラクションを無料で、しかも待ち時間なしの特別待遇で堪能出来るのだ。
「君には優勝……少なくとも上位に入って貰わなければ困る。君と私は運命共同体なのだからな」
「だからこうしてオボット相手にデュエルして、お菓子も結構貯まってるじゃねーか。これでも足りないって、おまえどんだけ食うつもりだよ?」
手に入れたお菓子はイベント終了後に持ち帰ることが出来るはずだが、どんなにお菓子があったところで今の状態のアストラルは食べられないのでは?と遊馬は呑気にアストラルを見上げる。
「私が必要なのではない。Mrハートランドが説明していただろう」
Mr.ハートランドによる開催前の説明によると、新たに登場したアトラクションには、それぞれのアトラクション内にマスターが存在するということだ。
参加者はそのマスターを倒すことで、大量のお菓子PTを手に入れることが出来るという仕組みである。
「勝負の鍵はより多くのアトラクションを制覇し、どれだけ高得点のお菓子を集められるかに掛かっている」
「おぉ!そう言えばそんなことも言ってたような……ってことは、こんなとこでオボット相手にするよりも、マスターって奴を倒した方が良いってことか!」
「そういうことになる。しかし、それには1つ問題がある」
「問題?」
遊馬と違い一通りのルール項目に目を通しているアストラルは、とりあえず遊馬がオボットを相手にお菓子を集めるのを黙って眺めていたのだが、これまで遊馬の行動に口を挟まなかったのは結果的にその行為が正しい行動だと分かっていたからである。
しかしここからは違う。
確かにオボットとのデュエルで着々とお菓子PTは溜まっていったが、より上位を目指すにはこのままのペースでは間に合わないのだ。
「その限定アトラクションに入るにはどうやら入場料という物が必要らしい」
「入場料?それって、お金がなきゃ入れないってこと?」
「そうとも限らない。イベント中のハートランドは特殊フィールドだ。恐らくこの場合の入場料は集めたお菓子のことを指す」
ここでようやくアストラルの言っていた「足りない」という言葉の意味に気づいたのだろう。
遊馬はDパッドの画面に表示されたお菓子の数値とアストラルとを交互に眺めやった。
「その入場料って……もしかしてこんだけじゃまだ足りない?」
「入場料がどの程度のお菓子を必要とするのか、それは私にもわからない。恐らくはアトラクションの入口で何らかの条件提示があるのだろう」
「そっか、それもそうだな。じゃあとりあえずアトラクションに向かうとするか!」
正直な所オボットを相手にデュエルを続けるのにも飽きていたのだろう。遊馬は張り切った様子でDパッドを操作した。
全ての参加者のDパッドには現在所持しているお菓子の情報の他に、イベント説明時にMr.ハートランドよりルールブックが送られていた。
ルールに目は通さない遊馬でも園内マップの在り処はちゃっかり覚えている遊馬に妙な感心を抱きつつ、アストラルも遊馬と共に表示された地図を覗き込んだ。
広いハートランド内のとある地点で、一つだけある青い点がチカチカと明滅を繰り返している。
「ここが現在地のようだな」
「んじゃこっから一番近いアトラクションは……」
近場のアトラクションから攻めることにしたらしい遊馬はマップと現在地の風景とを照らし合わせながら、きょろきょろと落ち着きなく辺りを見渡す。
「……どうやら一番近いのはあの岩山のアトラクションのようだ」
「よっし!そうと決まれば善は急げだ!行くぜ──……って、あれ?」
今すぐにでもアトラクションへかっとビそうな勢いの遊馬の視線の先に、見覚えのある人物が立っていた。
「あそこにいるのって、もしかしてゴーシュ?」
遊馬の視線を追った先でアストラルも難なくその人物を見つけることが出来た。
いつかの派手な毛皮つきコートではなく落ち着いた色合いのスーツという見慣れた出で立ちで、よくゴーシュと行動を共にしているドロワの姿も今日は見当たらない。
「紛れも無いゴーシュのようだな」
「だよな。あいつあんなとこで何してんだ?」
WDCの時は運営委員として、そして参加者としても動いていたゴーシュだが、今遊馬の見た限りでは特に何をしている様子でもない。
一応他の参加者や遊馬たちと同じくDパッドとDゲイザーを装着しているものの、さっきからウロウロと目的もなく彷徨いているとしか思えず、とりあえず取り込み中ではなさそうだ。
一緒に来ていた小鳥や鉄男達と離れて暫くアストラルと二人っきりだった遊馬は、久しぶりの見知った顔に意気揚々と声を掛けた。
「おーい!ゴーシュ!」
大げさに手を振って駆け寄った遊馬に気づいたらしく、遊馬を視界に捉えたゴーシュは豪快に口を開いた。
「よぉ遊馬。菓子は順調に集まってるか?」
「あぁ。でももっと集めるためにそこのアトラクションに向かおうと思ってたんだ。そしたらお前が見えてさ!」
遊馬の示す先には岩肌の剥きだした高い岩山が聳えている。
「へぇ…あそこにねぇ」
ゴーシュの意味深な視線にアストラルは多少の違和感を覚えたが、そんな些細な変化に遊馬が気づいた様子もない。
「ところでさ、お前は今何してんの?今回も運営委員として動いてんのか?」
興味津々と言った様子で詰め寄る遊馬に、しかしゴーシュは彼らしくない歯切れの悪さで返した。
「まぁ…そんなとこだな」
「そんなとこって何だよ?……まあいいや」
珍しく口ごもる様子は気になったが、ゴーシュが何をしていようと遊馬には関係ない。
デュエリストが一度出会ったらそれが運営委員であろうとなかろうと、デュエルを挑むのは必然。
遊馬はゴーシュに向かって左腕をつきだした。
「トリックオアトリート!俺とデュエルだ!ゴーシュ!」
先程までオボット相手にお菓子を荒稼ぎしていた遊馬だが、もちろん通常の大会のようにお菓子を所持した参加者を相手にデュエルを挑むことも可能である。
血気盛んなゴーシュのことだ。挑まれたデュエルは必ず受けるであろう。
遊馬はゴーシュにデュエルを挑むため、己のデュエルディスクに手を掛けた。
「あ、あれ…?」
いつもなら宣言とともに展開し瞬く間にデュエルディスクへと形状を変える筈のDパッドが、全く起動する気配がない。
「おっかしーな、何で反応しないんだ?」
まさかこんな大事な時に故障か?と頭を捻りながら、遊馬はうんともすんとも言わないDパッドを軽く小突いた。
しかしその瞬間、それまで沈黙を保っていたDパッドから突如電子音が鳴り響きはじめ、同時に画面には時間と思しき数字が表示される。
「うわ!な、なんだこれ!?」
「これは…何かの制限時間のようだな」
「せ、制限時間って…まさか爆弾…!?」
「何!?遊馬、早くそれを外すんだ!」
「さっきからやってんだけど…全っ然外れねーんだよ…!」
遊馬は渾身の力を込め力いっぱい引っ張っているのだが、どうしたことかビクともしない。
こうしている間にも刻一刻とカウントダウンしているらしきそれに遊馬はパニック寸前だ。
「急げ遊馬!このままでは君の左腕は……」
「そそそそそんなこと言ったってよ!なんでこんなに固────」
「ドカーーーン!!!」
「うわあああぁぁぁっ!!」
耳を劈くような轟音に、遊馬は驚きのあまり飛び上がって地面へ尻餅をついた。
だが遊馬を襲ったのは地面へ強か打ち付けた尻の痛みくらいのもので、周囲に目を向ければ爆風どころかそよ風すら無く、もちろん左腕も無事である。
腰を抜かしたまま呆然とする遊馬の頭上にゲラゲラと笑い転げる声が響いた。
「おま、お前…ホンット良いノリしすぎだぜ!!」
ひいひいと息も絶え絶えに笑いこけるゴーシュの目には、笑いすぎのためか薄っすらと涙さえ滲んでいる。
「な、なんだよ!紛らわしいことすんなって!脅かしやがって……」。
「オレは爆弾だなんて一言も言ってないぜ?お前が勝手に爆弾だって勘違いしたんだろ?」
ゴーシュは笑いの余韻を引きずりながらも何とか息を整えると、ふてくされ唇を尖らせている遊馬をにやついた笑みで見下ろす。
「──っと、お前らの漫才のせいで忘れるとこだったぜ」
「あ、そうだった!俺とのデュエル──」
「そのことなんだが……よりにもよって俺に当たるとは、ツイてねぇなあ遊馬」
そうでもないか?と遊馬やアストラルを置き去りにしてゴーシュはくつくつと肩を揺らし笑う。
「俺は今回、悪魔役なんだわ」
「はあ?……なんかよくわかんねえけど、挑まれたデュエルは受けるんだろ?」
「あー。そりゃお前ら参加者のルールだろ?さっきも言ったが俺は悪魔。今のお前じゃ俺にデュエルを挑むのはルール上不可能ってこった」
「今の……?」
「……まぁそれについては教えらんねーけど、悪魔については説明してやるよ。良いか──」
悪魔を自称しながらも意外に面倒見の良い兄貴肌なゴーシュは、状況を理解できていない様子の遊馬に彼らしく豪快な解釈での説明を始めた。
「悪魔ってのはこういう尻尾のついてる奴のことだ。これからもっと増えるはずだが、ホントに気をつけなきゃなんねーのは俺のようなデカイ図体の奴でこんな酔狂なモンつけてる奴だな」
「ゴーシュの他にもこんな変な格好してる奴がいるってことか?」
「どういう意味だよ」
そう言いながらゴーシュは掴んでいた尻尾から手を離した。
手を離してもダラリと垂れ下がる様子のないその尻尾はまるでゴーシュの体の一部であるかのように揺れ動いている。
どうやら本物さながらに精巧に作られたARヴィジョンであるようだ。
「つーわけで、無謀にも俺にデュエルを挑んできたお前には、代わりに俺からの条件を飲んでもらう」
「え」
「言っとくがこれは強制だからな?」
有無を言わせぬゴーシュは更に“強制”という何とも支配的な単語を持ち出して、慌てふためく遊馬を愉快そうに見下ろした。
「えーと……ゴーシュさん?俺のことは見なかったことに……」
「残念ながらそうはいかねえなあ。悪魔との契約は絶対だ。……それに、説明してやってるだけありがてえと思いな」
「ですよねー」
「つーわけで条件だが、日没までに悪魔の血を持って来い」
「はぁ?……て言うか悪魔の血って、なんだよそれ?」
「残念ながらノーヒントだ。日没までに持ってこねーとペナルティだからな」
「ペナルティって…はっ!まさかお前の魂を頂くとか…そういう系?」
「そうかもなあ?ま、つーわけで頑張んな。それと、俺はずっとここにいるわけじゃねえから気をつけるこったな」
けらけらと笑いながらゴーシュは人混みの中へと消えて行った。
アストラルと共に佇む遊馬のDパッドは、ゴーシュと別れた後も変わらずカウントダウンを刻み続けている。
「……ふむ。どうやらそのカウントダウンは日没までの残り時間のようだな」
「あ、アストラル!お前ルール知ってたんだろ?ゴーシュが怪しいなら怪しいって教えてくれりゃ良かったのに薄情者~」
「私も知らなかったのだ。どうやらルールブックには全てが記載されているわけではないらしい」
「え、そうなの?」
+++
という感じで見るからにめんどくさそうで誰得な感じになりそうだったのでボツというわけです。
というか単純にカイトが出てくるまでの間を持たせられる自信が無かったとも。・゚・(Д`(⊂(゚Д゚ つ⌒
こんなところまで読んでいただきましてありがとうございます><
また違うネタ…というか切り口がちょっと違う感じです。
あ、カイトは出ません。主に遊馬とアストラルが喋ってる。
+++
あ、小ネタ関係ない日記なのですが。
もしかしてゼアルの某金メダリストの出てくる回ってスペシャルで9月に放送済みなんです???
BS……視聴組なんですが、記憶にないんですけど(;^ω^)
え、もしかしてまじです?
ポカ─( ゚д゚ )─ン
泣いていいかな
(´;ω;`)ウッ…
+++
「いや~すっげー集まったな~」
ニヤニヤと緩みきった顔でDパッドを眺める遊馬は既に本来の目標など忘れているかのような気楽さである。
「遊馬。なぜ君はそんなに嬉しそうなのだ」
「何でって、これ終わったら全部貰えるんだろ?えーと飴にキャラメル、チョコレートに――」
つらつらとお菓子の種類を並べ立てる遊馬は今にも涎を垂らす勢いだ。
Dパッドに頬擦りしながらうっとりとそこに表示されたお菓子のアイコンに熱い眼差しを送っている様子は傍目に見れば恋人に愛を紡ぐ男の様にも似ていたが、生憎遊馬が胸を焦がすのは口一杯に広がる砂糖菓子の焼け付くような甘味に他ならない。
「こんだけあれば当分お菓子にゃ困らねーよなー」
「しかし遊馬。これではまだ足りないぞ」
「え?俺はこんだけあれば暫く大丈夫だけどなあ」
アストラルの懸念が的はずれだとでも言いたげに遊馬は首をかしげている。
目の前のお菓子に夢中ですっかり本来の目的を見失っているらしい遊馬にアストラルはもう一度、現在遊馬のおかれている状況を説明することにした。
「これはハートランド主催のイベントだ」
今日は10月30日。
ハロウィンに向け特別解放されているハートランドでは今ハロウィンをテーマとしたイベントが開かれており、遊馬やアストラルはそのためにお菓子を集めているのである。
「お菓子を集めるのは重要だが、我々にはその先に目指す目標がある」
イベントの目的は2つ。
大量のお菓子ptを集めれば、集めたすべてをイベント終了後に持ち帰ることができる。
そしてもう1つの目的は参加者同士でお菓子ptの数を競いあい、より多くのお菓子を集めた上位の者にはハートランドの優待フリーパス券が与えられるというものだ。
それもただのフリーパスではない。
ハロウィン期間中だけの限定アトラクションを無料で、しかも待ち時間なしの特別待遇で堪能出来るのだ。
「君には優勝……少なくとも上位に入って貰わなければ困る。君と私は運命共同体なのだからな」
「だからこうしてオボット相手にデュエルして、お菓子も結構貯まってるじゃねーか。これでも足りないって、おまえどんだけ食うつもりだよ?」
手に入れたお菓子はイベント終了後に持ち帰ることが出来るはずだが、どんなにお菓子があったところで今の状態のアストラルは食べられないのでは?と遊馬は呑気にアストラルを見上げる。
「私が必要なのではない。Mrハートランドが説明していただろう」
Mr.ハートランドによる開催前の説明によると、新たに登場したアトラクションには、それぞれのアトラクション内にマスターが存在するということだ。
参加者はそのマスターを倒すことで、大量のお菓子PTを手に入れることが出来るという仕組みである。
「勝負の鍵はより多くのアトラクションを制覇し、どれだけ高得点のお菓子を集められるかに掛かっている」
「おぉ!そう言えばそんなことも言ってたような……ってことは、こんなとこでオボット相手にするよりも、マスターって奴を倒した方が良いってことか!」
「そういうことになる。しかし、それには1つ問題がある」
「問題?」
遊馬と違い一通りのルール項目に目を通しているアストラルは、とりあえず遊馬がオボットを相手にお菓子を集めるのを黙って眺めていたのだが、これまで遊馬の行動に口を挟まなかったのは結果的にその行為が正しい行動だと分かっていたからである。
しかしここからは違う。
確かにオボットとのデュエルで着々とお菓子PTは溜まっていったが、より上位を目指すにはこのままのペースでは間に合わないのだ。
「その限定アトラクションに入るにはどうやら入場料という物が必要らしい」
「入場料?それって、お金がなきゃ入れないってこと?」
「そうとも限らない。イベント中のハートランドは特殊フィールドだ。恐らくこの場合の入場料は集めたお菓子のことを指す」
ここでようやくアストラルの言っていた「足りない」という言葉の意味に気づいたのだろう。
遊馬はDパッドの画面に表示されたお菓子の数値とアストラルとを交互に眺めやった。
「その入場料って……もしかしてこんだけじゃまだ足りない?」
「入場料がどの程度のお菓子を必要とするのか、それは私にもわからない。恐らくはアトラクションの入口で何らかの条件提示があるのだろう」
「そっか、それもそうだな。じゃあとりあえずアトラクションに向かうとするか!」
正直な所オボットを相手にデュエルを続けるのにも飽きていたのだろう。遊馬は張り切った様子でDパッドを操作した。
全ての参加者のDパッドには現在所持しているお菓子の情報の他に、イベント説明時にMr.ハートランドよりルールブックが送られていた。
ルールに目は通さない遊馬でも園内マップの在り処はちゃっかり覚えている遊馬に妙な感心を抱きつつ、アストラルも遊馬と共に表示された地図を覗き込んだ。
広いハートランド内のとある地点で、一つだけある青い点がチカチカと明滅を繰り返している。
「ここが現在地のようだな」
「んじゃこっから一番近いアトラクションは……」
近場のアトラクションから攻めることにしたらしい遊馬はマップと現在地の風景とを照らし合わせながら、きょろきょろと落ち着きなく辺りを見渡す。
「……どうやら一番近いのはあの岩山のアトラクションのようだ」
「よっし!そうと決まれば善は急げだ!行くぜ──……って、あれ?」
今すぐにでもアトラクションへかっとビそうな勢いの遊馬の視線の先に、見覚えのある人物が立っていた。
「あそこにいるのって、もしかしてゴーシュ?」
遊馬の視線を追った先でアストラルも難なくその人物を見つけることが出来た。
いつかの派手な毛皮つきコートではなく落ち着いた色合いのスーツという見慣れた出で立ちで、よくゴーシュと行動を共にしているドロワの姿も今日は見当たらない。
「紛れも無いゴーシュのようだな」
「だよな。あいつあんなとこで何してんだ?」
WDCの時は運営委員として、そして参加者としても動いていたゴーシュだが、今遊馬の見た限りでは特に何をしている様子でもない。
一応他の参加者や遊馬たちと同じくDパッドとDゲイザーを装着しているものの、さっきからウロウロと目的もなく彷徨いているとしか思えず、とりあえず取り込み中ではなさそうだ。
一緒に来ていた小鳥や鉄男達と離れて暫くアストラルと二人っきりだった遊馬は、久しぶりの見知った顔に意気揚々と声を掛けた。
「おーい!ゴーシュ!」
大げさに手を振って駆け寄った遊馬に気づいたらしく、遊馬を視界に捉えたゴーシュは豪快に口を開いた。
「よぉ遊馬。菓子は順調に集まってるか?」
「あぁ。でももっと集めるためにそこのアトラクションに向かおうと思ってたんだ。そしたらお前が見えてさ!」
遊馬の示す先には岩肌の剥きだした高い岩山が聳えている。
「へぇ…あそこにねぇ」
ゴーシュの意味深な視線にアストラルは多少の違和感を覚えたが、そんな些細な変化に遊馬が気づいた様子もない。
「ところでさ、お前は今何してんの?今回も運営委員として動いてんのか?」
興味津々と言った様子で詰め寄る遊馬に、しかしゴーシュは彼らしくない歯切れの悪さで返した。
「まぁ…そんなとこだな」
「そんなとこって何だよ?……まあいいや」
珍しく口ごもる様子は気になったが、ゴーシュが何をしていようと遊馬には関係ない。
デュエリストが一度出会ったらそれが運営委員であろうとなかろうと、デュエルを挑むのは必然。
遊馬はゴーシュに向かって左腕をつきだした。
「トリックオアトリート!俺とデュエルだ!ゴーシュ!」
先程までオボット相手にお菓子を荒稼ぎしていた遊馬だが、もちろん通常の大会のようにお菓子を所持した参加者を相手にデュエルを挑むことも可能である。
血気盛んなゴーシュのことだ。挑まれたデュエルは必ず受けるであろう。
遊馬はゴーシュにデュエルを挑むため、己のデュエルディスクに手を掛けた。
「あ、あれ…?」
いつもなら宣言とともに展開し瞬く間にデュエルディスクへと形状を変える筈のDパッドが、全く起動する気配がない。
「おっかしーな、何で反応しないんだ?」
まさかこんな大事な時に故障か?と頭を捻りながら、遊馬はうんともすんとも言わないDパッドを軽く小突いた。
しかしその瞬間、それまで沈黙を保っていたDパッドから突如電子音が鳴り響きはじめ、同時に画面には時間と思しき数字が表示される。
「うわ!な、なんだこれ!?」
「これは…何かの制限時間のようだな」
「せ、制限時間って…まさか爆弾…!?」
「何!?遊馬、早くそれを外すんだ!」
「さっきからやってんだけど…全っ然外れねーんだよ…!」
遊馬は渾身の力を込め力いっぱい引っ張っているのだが、どうしたことかビクともしない。
こうしている間にも刻一刻とカウントダウンしているらしきそれに遊馬はパニック寸前だ。
「急げ遊馬!このままでは君の左腕は……」
「そそそそそんなこと言ったってよ!なんでこんなに固────」
「ドカーーーン!!!」
「うわあああぁぁぁっ!!」
耳を劈くような轟音に、遊馬は驚きのあまり飛び上がって地面へ尻餅をついた。
だが遊馬を襲ったのは地面へ強か打ち付けた尻の痛みくらいのもので、周囲に目を向ければ爆風どころかそよ風すら無く、もちろん左腕も無事である。
腰を抜かしたまま呆然とする遊馬の頭上にゲラゲラと笑い転げる声が響いた。
「おま、お前…ホンット良いノリしすぎだぜ!!」
ひいひいと息も絶え絶えに笑いこけるゴーシュの目には、笑いすぎのためか薄っすらと涙さえ滲んでいる。
「な、なんだよ!紛らわしいことすんなって!脅かしやがって……」。
「オレは爆弾だなんて一言も言ってないぜ?お前が勝手に爆弾だって勘違いしたんだろ?」
ゴーシュは笑いの余韻を引きずりながらも何とか息を整えると、ふてくされ唇を尖らせている遊馬をにやついた笑みで見下ろす。
「──っと、お前らの漫才のせいで忘れるとこだったぜ」
「あ、そうだった!俺とのデュエル──」
「そのことなんだが……よりにもよって俺に当たるとは、ツイてねぇなあ遊馬」
そうでもないか?と遊馬やアストラルを置き去りにしてゴーシュはくつくつと肩を揺らし笑う。
「俺は今回、悪魔役なんだわ」
「はあ?……なんかよくわかんねえけど、挑まれたデュエルは受けるんだろ?」
「あー。そりゃお前ら参加者のルールだろ?さっきも言ったが俺は悪魔。今のお前じゃ俺にデュエルを挑むのはルール上不可能ってこった」
「今の……?」
「……まぁそれについては教えらんねーけど、悪魔については説明してやるよ。良いか──」
悪魔を自称しながらも意外に面倒見の良い兄貴肌なゴーシュは、状況を理解できていない様子の遊馬に彼らしく豪快な解釈での説明を始めた。
「悪魔ってのはこういう尻尾のついてる奴のことだ。これからもっと増えるはずだが、ホントに気をつけなきゃなんねーのは俺のようなデカイ図体の奴でこんな酔狂なモンつけてる奴だな」
「ゴーシュの他にもこんな変な格好してる奴がいるってことか?」
「どういう意味だよ」
そう言いながらゴーシュは掴んでいた尻尾から手を離した。
手を離してもダラリと垂れ下がる様子のないその尻尾はまるでゴーシュの体の一部であるかのように揺れ動いている。
どうやら本物さながらに精巧に作られたARヴィジョンであるようだ。
「つーわけで、無謀にも俺にデュエルを挑んできたお前には、代わりに俺からの条件を飲んでもらう」
「え」
「言っとくがこれは強制だからな?」
有無を言わせぬゴーシュは更に“強制”という何とも支配的な単語を持ち出して、慌てふためく遊馬を愉快そうに見下ろした。
「えーと……ゴーシュさん?俺のことは見なかったことに……」
「残念ながらそうはいかねえなあ。悪魔との契約は絶対だ。……それに、説明してやってるだけありがてえと思いな」
「ですよねー」
「つーわけで条件だが、日没までに悪魔の血を持って来い」
「はぁ?……て言うか悪魔の血って、なんだよそれ?」
「残念ながらノーヒントだ。日没までに持ってこねーとペナルティだからな」
「ペナルティって…はっ!まさかお前の魂を頂くとか…そういう系?」
「そうかもなあ?ま、つーわけで頑張んな。それと、俺はずっとここにいるわけじゃねえから気をつけるこったな」
けらけらと笑いながらゴーシュは人混みの中へと消えて行った。
アストラルと共に佇む遊馬のDパッドは、ゴーシュと別れた後も変わらずカウントダウンを刻み続けている。
「……ふむ。どうやらそのカウントダウンは日没までの残り時間のようだな」
「あ、アストラル!お前ルール知ってたんだろ?ゴーシュが怪しいなら怪しいって教えてくれりゃ良かったのに薄情者~」
「私も知らなかったのだ。どうやらルールブックには全てが記載されているわけではないらしい」
「え、そうなの?」
+++
という感じで見るからにめんどくさそうで誰得な感じになりそうだったのでボツというわけです。
というか単純にカイトが出てくるまでの間を持たせられる自信が無かったとも。・゚・(Д`(⊂(゚Д゚ つ⌒
こんなところまで読んでいただきましてありがとうございます><
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