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これ以上進まないかなーと思う小ネタを投下。
○○ったーネタなんですが、【4カイ語り】でコンプレックス云々と出たんですが何だか微妙な感じに。
プロットというかいろいろ書きなぐりなので脳内補完しながら見ていただければ幸いです。
クリカイっぽいけど多分4カイ。
ちょいちょい4だったりトーマスだったりですが直してないそんな感じ。
+++
+++
クリスに用があってアークライト家を訪れたカイト。
諸事情でクリスが席をはずす。待ってくれ、父の書斎に資料があった筈だ。取ってくるから少し待っていてくれるかい?
そこへ4が現れカイトを発見する。
兄貴この問題答え教えてくれ……ってあれ、カイト?兄貴は?
クリスは今席を外している。
ふーん。珍しいなカイトが遊びに来るなんて
遊びに来たんじゃない、わからない箇所をクリスに教えてもらっているんだ。お前と一緒にするな。
俺だって遊びに来たわけじゃねーよ勉強教わりに来たんだよ。
ひらひらと問題集を見せる。
答えを教えてもらうのは根本的解決にならない。
兄貴みてぇなこと言いやがって……。……で、テメェはメールや電話で済む話を直接教わりに来たってか?
……っそ、それは……クリスが誘ってくれたから……
誘われたからほいほい遊びに来たってのかよ?
だから遊びではないと……はぁ、お前は子供だな本当に
かっちーん。
4はカイトが自分と誰を比べてそんな言葉を言ったのか気づく。
俺が子供ならテメェも子供だろ。
うるさい。そうやってすぐ噛み付いてくるところが子供だと言っているんだ。
何を言っても神経を逆なでするとわかってる4はため息を吐く。
じゃあ俺と違って立派なオトナのカイト様はいつになったら弟離れするつもりだ?
……兄が弟を気にかけるのは当然のことだろう。それにハルトはまだ小さな子どもだ。俺が面倒を見て何が悪い。
悪かねえよ。ハルトは子供で、お前は大人だもんな。
何が言いたい。
ハルトもいずれ大人になるっつってんだよ。そろそろその時のこと考えてた方が良いんじゃねえのか?お兄さま?
…………。いくつになっても、ハルトが俺の弟であることに変わりはない。
お前はそうだろうけどさ、ハルトがどう思うかはわかんねえだろ。ハルトが大人になってもお前がそのまま猫っかわいがりするんじゃ、きっとハルトは嫌がるぜ。
ハルトは貴様のようなひねくれ者にはならない。
随分な言い様ですねぇ。これでも昔の私は可愛いところがあったんですよ?
知らん。
人間、どう成長するかなんて誰にもわかんねえもんだよ、当の本人にだってな。今は天使みたいな弟がある日突然悪魔のようになっちまう。
思春期や反抗期は人間の成長過程において必ず通る道だ。ハルトが不良になるなんてことは絶対にない。
不良って……まぁいいや。その目に入れても痛くないハルトがお前に死ねとかウザイとか言うようになるんだぞ?
ハルトはそんな汚い言葉は口にしない。
お前なぁ……百歩譲って、そんな暴言は吐かねえかもしんねえけど、俺の予想じゃ十中八九嫌われるね!
な……!貴様に何がわかる
わかるっつーの!俺がそうだったんだからな。お前は兄貴だからわかんねえだろうけど、年頃の弟にとって自分に構いたがる兄貴ってのは目の上のたんこぶで視界に入るだけでイラつくんだよ。そういう時は後先考えずに普段思ってもいないこととか口走っちまうもんなんだよ。兄さんなんか大嫌いだ!とかな!
…………ッ!
カイトがひるむ。ようやくわかったか、とカイトを見ると、カイトの肩がわなわなと震えていた。
ぎょっとして顔を覗きこむとおもいっきり顔をそむけられる。
お、おい……まさか──
泣いてるのか、とからかう場面ではない、と判断するだけの冷静さが残っていて少し安心する。
安心してもいられない。カイトはきっとさっき4が冗談で言った言葉を頭で想像してしまったのだ。
愛しい弟が、自分に「大嫌いだ!」と告げる様を、ありありと。
……なぁ、泣くなよ。
泣いてなどいない。
……冗談だって、ほら、ハルトは俺なんかと違って素直なまま育つって!
何で俺は女でもない男をこんなに必死になって慰めているんだとツッコミをいれつつも、そうした原因が自分にあることは火を見るよりも明らかで。
その相手が普段めそめそ泣くような性格である筈のない人物だから尚更、俺はどうしていいかわからず焦りまくっていた。
カイトがつぶやくように言う。
今朝ハルトが出かけると言ったから、どこへ行くのか聞いたんだ。そうしたら、内緒だと言われた。
そ、そりゃハルトにだってお前に一つ2つ言えない秘密くらいあるだろ!?
何かあった時に危ないからと少しだけしつこく聞いたんだ。……教えてくれなかったが、今思えば俺の何気ないあぁいう態度がハルトを非行に走らせることになってしまうのだろうか。
いや考えすぎだよ!心配するのは当然だし、そんなことハルトだってわかってるさ!そんなことでお前のこと嫌いになんてならねえよ!な?
…………俺には確かに兄はいない。だから、弟にとっての兄という存在が想像つかない。
お、おう……
兄のいるお前がそう言うんだ。ハルトが……ハルトもお前と同じ思考に至る可能性がないとは言えない。
な、なんでそこまで弱気になるんだよ!さっきまでの威勢はどこいっちまったんだよ!?お前はハルトのこと何よりも大切なんだろ?そんな優しい兄貴のこと嫌いになんてならねえって!
……だが、お前は優しい兄が自分のことを気にかけるとイライラしたんだろう?
ん……あぁ?
クリスがお前たち兄弟にとって悪い兄だったとは思えない。
いやいや、兄貴はあぁ見えてお前が想像する以上にえげつねえことするんだよ!
…………。
カイトは訝しげな眼差しを向けている。
カイトの中では恐らく小憎たらしいことにクリスは非の打ち所もない良き兄であり見本であると信じて疑っていないのだろう。
そんなクリスを見本にし、ハルトに対して優しく良き兄であろうとするカイトにとって、クリスの弟である俺が実は兄の存在を疎ましく思っていたのだと経験談を聞かされては気が気でないのか。
しかしクリスはカイトの思うような慈愛に満ちた良識者ではない。
カイトの知る外面の良いクリスと、自分に対する本来のクリスとの姿の違いを知ればカイトも思い直すかもしれない。
無駄に外面だけは良い兄の自分への数々の所業を思い浮かべながら4はまくしたてた。
お前が知らないだけで、兄貴の性格の悪さは俺なんか足元にも及ばねえよ!涼しい顔して腹の中では一体どんな悪趣味なことを考えてるか──
なるほど……。
バターの香りと共に、ぶわりとした冷気が流れこんでくる。
思わず凍りついて顔も動かせない4の横から、カイトが入り口に目を向けた。
話し声がすると思ったら……トーマス。もう課題は終わったのか?
ぞくりと冷えきった声の恐ろしさに4は素直に答えるしかない。
……それが……行き詰まって……
また答えを聞きに来たのか。全く困った奴だな。どれ見せてみろ。ふむ、これは以前教えた公式の応用だな。きちんと頭に入れていれば解けたはずだが?
おっしゃる通りです……
「おや、どうしたんだいカイト?」
「……いえ……何でも……」
「また兄様がデリカシーのないことを言ったんでしょう?」
「なっ!なんでそうなるんだよ!」
クリスの後ろから顔を覗かせたミハエルが諌めるように声を掛けられ、トーマスも慌てて弁解する。
しかし慌てる様子にますます墓穴を掘った4を前にクリスは軽くため息を吐いた。
「またか、トーマス……」
「違え―って!」
「そうだカイト。君にお客さんだよ」
「おい聞けよ!」
今の今まで4について話していた筈の、しかも4にあらぬ疑いを掛けた本人であるミハエルが何食わぬ顔で別の話題を振り始める。
もう突っ込むのも億劫で4はふてくされるばかりだ。
「客……?」
思い浮かぶ人物がいないのか、カイトは不思議そうにミハエルの後ろにいるらしき客の姿を覗きこむ。
「ハルト!」
「えへへ……兄さん、驚いた?」
「お前……出かけるって……」
「実はカイトに内緒でハルトもここへ来ていたんだ。ハルトが是非君にお茶を淹れたいと言い出してね」
「はい。兄さん。ミハエルが教えてくれたんだ」
「ハルト……」
カイトの前のテーブルに茶器を置いて、ハルトはカイトの為にティーカップを用意した。
ミハエルが熱湯でティーポットやカップにお湯を注ぐ。
ハルトは暖められたポットにティースプーンで茶葉を入れ、そこへお湯を注いだ。
ポットの湯は高温だ。カイトは気が気でなく思わず手伝おうとそわそわしてしまうが、ハルトに「兄さんは座ってて!」と怒られて大人しくソファで身を正す。
ミハエルがハルトの補佐をしながら、紅茶を蒸らす間に茶菓子を用意する。
キメの整ったほんのりと焼き色のついた様々なクッキーはミハエルと一緒に作ったのだそうだ。
そうこう言っているうちに蒸らし終えた紅茶を茶こしで濾しながら一つひとつ丁寧にカップへ注いでいくと、琥珀色の色鮮やかな液体と共に紅茶の深い香りが部屋に広がった。
さぁ、みんな席についてください。とミハエル。
ではいただきましょうか。
飲む前にハルトがカイトへ声をかける。
兄さん、これを淹れて飲んでみて?
ハルトは陶器の小さなピッチャーを差し出して言った。
言われるが儘にピッチャーを傾けると、ミルクとは違うとろりとしたソースが紅茶の湖面に飲み込まれていった。
ハルトがティースプーンでかき混ぜると、透明だった紅茶の水色がクリームと混ざり淡い白味を帯びたクリーム色に染まった。
ふわり、とキャラメルの香りがする。
キャラメルを入れたいって言ったらミハエルが作り方を教えてくれたんだ。
飲んでみて?
あぁ、美味しいよハルト。
良かった!
ところでどうしたんだ急に。
最近兄さんが遅くまで調べ物して疲れてるんだってクリスに相談したら、クリスが考えてくれたんだ。
え……クリス、知っていたんですか。
ハルト、それは言わない約束だっただろう?
あ……ごめんなさい
ふふ。でもカイト。君に美味しいものを食べさせたいと言ったのはハルトなんだよ。私は少し手を貸しただけさ。私だけでは心許ないのでミハエルにも協力を頼んだんだ。
僕も丁度クッキーを焼こうと思っていたところだったんで、ハルトが手伝ってくれて助かりました。
……ちょっと待てよ、お前らがカイトのためにこそこそしてたのはまぁわかった。なんで俺には言わねえんだよ。
ぶつくさ文句を言うと、ミハエルは困ったようにクリスと顔を見合わせた。
だって4兄様に教えたら……
きっと口を滑らせてしまうだろうから、私が止めたんだ。
なんだと!?テメェらちったあ俺のこと信用しろよ!?兄貴のこと信じられねえってか?
それは僕も悪いなあとは思いましたけど、でも4兄様は言うつもりが無かったとしても、絶対顔に出ちゃうじゃないですか。
……うっ……いや、んなことねぇよ。
目は口ほどに物を言うと言うし、カイトは賢いから4の顔を見たら察されると思ったんだ。
ちょっと待て俺が馬鹿だって言ってるように聞こえたぞ。
そう言ったつもりだが?第一、なるべく部屋から出ないようある程度解けるであろう問題を用意したのにそれすらわからず早々に私に聞きに来てしまうとは……我が弟ながら情けない。
まぁ良いじゃないですか、結果的にカイトをびっくりさせることが出来たんですから、ね!
カイト涙ぐむ。
兄さん?どうしたの?嬉しくないの?
いや、そんなことない。嬉しいんだ。ありがとうハルト。それなのに俺は、お前がどこへ行くのか問い詰めて……。
兄さんは僕のこと心配してくれたんでしょ?勝手に出てきてごめんなさい。
ハルト……っ。
二人を見ていると、僕も小さかった頃のことを思い出しちゃいます。
懐かしいな、昔のミハエルのやんちゃぶりには驚かされたよ。
あーそうそう、ミハエルと山に探検しに行って迷子になったよな。迷子にならないようにってコイツが通ってきた道にお菓子を置いてさ、いざ帰ろうと思った時に全部なくなってたもんだからどっちから来たかわかんなくなってよ。
……それは4兄様が言ったんですよ?
え?
小さい頃本で読んだことがあるって。だから僕が持っていた飴を落としながら歩いたんです。
……そう、だったっけ?
トーマスは昔から寝るのが早かったからな。私の読んだ本も読み始めて直ぐに眠っていたしな。
4兄様は昔から変わりませんからね。
カイトはくすくす笑っている。
や、やめろよ……!!もう昔の話だろ!?
あぁ。絵本は卒業したが、今は教科書でぐっすりだからな。
クリスてめぇ……っ!!
そんな三人の様子をカイトは微笑ましげに見ていた。
カイトにもハルトがいるが、歳が離れすぎていてあまり兄弟二人で何かをした記憶がない。
俺はハルトの良い兄をやれているだろうか。そんなカイトにハルトは言った。
兄さん、今度本読んでくれる?4の読んでたお菓子の本、僕も読んでみたい。
グリム童話だね。良かったらその時使っていた本がまだ部屋にあるんだ。……そうだ、今日は泊まって行くといい。
カ「え……
ハ「本当?兄さん、いいよね?
遠慮することはない。
……では…お言葉に甘えて……。
なんだよカイト、赤くなってんぜ?
うるさい……っ!
こらこらトーマス。あまりカイトをからかうんじゃない。……そうだ、今日は久しぶりに私がお前に本を読んでやろう。
は……?ちょ、きめえ、なんだよ突然。
大丈夫、頭の良くなる面白い本だよ。
そう言ってクリスは机に置かれていた問題集を持った。
眠くなったら私が優しく起こしてあげよう。大丈夫、朝までには最後まで読み終わるさ。
声にならない悲鳴をあげる俺の横で、カイトが声を殺して笑っていたのが非常に憎たらしい。
+++
飲食ネタ多くて申し訳ないです。
前ジャンルの時から紅茶書きまくりですもうこれきっと治らない\(^o^)/
○○ったーネタなんですが、【4カイ語り】でコンプレックス云々と出たんですが何だか微妙な感じに。
プロットというかいろいろ書きなぐりなので脳内補完しながら見ていただければ幸いです。
クリカイっぽいけど多分4カイ。
ちょいちょい4だったりトーマスだったりですが直してないそんな感じ。
+++
+++
クリスに用があってアークライト家を訪れたカイト。
諸事情でクリスが席をはずす。待ってくれ、父の書斎に資料があった筈だ。取ってくるから少し待っていてくれるかい?
そこへ4が現れカイトを発見する。
兄貴この問題答え教えてくれ……ってあれ、カイト?兄貴は?
クリスは今席を外している。
ふーん。珍しいなカイトが遊びに来るなんて
遊びに来たんじゃない、わからない箇所をクリスに教えてもらっているんだ。お前と一緒にするな。
俺だって遊びに来たわけじゃねーよ勉強教わりに来たんだよ。
ひらひらと問題集を見せる。
答えを教えてもらうのは根本的解決にならない。
兄貴みてぇなこと言いやがって……。……で、テメェはメールや電話で済む話を直接教わりに来たってか?
……っそ、それは……クリスが誘ってくれたから……
誘われたからほいほい遊びに来たってのかよ?
だから遊びではないと……はぁ、お前は子供だな本当に
かっちーん。
4はカイトが自分と誰を比べてそんな言葉を言ったのか気づく。
俺が子供ならテメェも子供だろ。
うるさい。そうやってすぐ噛み付いてくるところが子供だと言っているんだ。
何を言っても神経を逆なでするとわかってる4はため息を吐く。
じゃあ俺と違って立派なオトナのカイト様はいつになったら弟離れするつもりだ?
……兄が弟を気にかけるのは当然のことだろう。それにハルトはまだ小さな子どもだ。俺が面倒を見て何が悪い。
悪かねえよ。ハルトは子供で、お前は大人だもんな。
何が言いたい。
ハルトもいずれ大人になるっつってんだよ。そろそろその時のこと考えてた方が良いんじゃねえのか?お兄さま?
…………。いくつになっても、ハルトが俺の弟であることに変わりはない。
お前はそうだろうけどさ、ハルトがどう思うかはわかんねえだろ。ハルトが大人になってもお前がそのまま猫っかわいがりするんじゃ、きっとハルトは嫌がるぜ。
ハルトは貴様のようなひねくれ者にはならない。
随分な言い様ですねぇ。これでも昔の私は可愛いところがあったんですよ?
知らん。
人間、どう成長するかなんて誰にもわかんねえもんだよ、当の本人にだってな。今は天使みたいな弟がある日突然悪魔のようになっちまう。
思春期や反抗期は人間の成長過程において必ず通る道だ。ハルトが不良になるなんてことは絶対にない。
不良って……まぁいいや。その目に入れても痛くないハルトがお前に死ねとかウザイとか言うようになるんだぞ?
ハルトはそんな汚い言葉は口にしない。
お前なぁ……百歩譲って、そんな暴言は吐かねえかもしんねえけど、俺の予想じゃ十中八九嫌われるね!
な……!貴様に何がわかる
わかるっつーの!俺がそうだったんだからな。お前は兄貴だからわかんねえだろうけど、年頃の弟にとって自分に構いたがる兄貴ってのは目の上のたんこぶで視界に入るだけでイラつくんだよ。そういう時は後先考えずに普段思ってもいないこととか口走っちまうもんなんだよ。兄さんなんか大嫌いだ!とかな!
…………ッ!
カイトがひるむ。ようやくわかったか、とカイトを見ると、カイトの肩がわなわなと震えていた。
ぎょっとして顔を覗きこむとおもいっきり顔をそむけられる。
お、おい……まさか──
泣いてるのか、とからかう場面ではない、と判断するだけの冷静さが残っていて少し安心する。
安心してもいられない。カイトはきっとさっき4が冗談で言った言葉を頭で想像してしまったのだ。
愛しい弟が、自分に「大嫌いだ!」と告げる様を、ありありと。
……なぁ、泣くなよ。
泣いてなどいない。
……冗談だって、ほら、ハルトは俺なんかと違って素直なまま育つって!
何で俺は女でもない男をこんなに必死になって慰めているんだとツッコミをいれつつも、そうした原因が自分にあることは火を見るよりも明らかで。
その相手が普段めそめそ泣くような性格である筈のない人物だから尚更、俺はどうしていいかわからず焦りまくっていた。
カイトがつぶやくように言う。
今朝ハルトが出かけると言ったから、どこへ行くのか聞いたんだ。そうしたら、内緒だと言われた。
そ、そりゃハルトにだってお前に一つ2つ言えない秘密くらいあるだろ!?
何かあった時に危ないからと少しだけしつこく聞いたんだ。……教えてくれなかったが、今思えば俺の何気ないあぁいう態度がハルトを非行に走らせることになってしまうのだろうか。
いや考えすぎだよ!心配するのは当然だし、そんなことハルトだってわかってるさ!そんなことでお前のこと嫌いになんてならねえよ!な?
…………俺には確かに兄はいない。だから、弟にとっての兄という存在が想像つかない。
お、おう……
兄のいるお前がそう言うんだ。ハルトが……ハルトもお前と同じ思考に至る可能性がないとは言えない。
な、なんでそこまで弱気になるんだよ!さっきまでの威勢はどこいっちまったんだよ!?お前はハルトのこと何よりも大切なんだろ?そんな優しい兄貴のこと嫌いになんてならねえって!
……だが、お前は優しい兄が自分のことを気にかけるとイライラしたんだろう?
ん……あぁ?
クリスがお前たち兄弟にとって悪い兄だったとは思えない。
いやいや、兄貴はあぁ見えてお前が想像する以上にえげつねえことするんだよ!
…………。
カイトは訝しげな眼差しを向けている。
カイトの中では恐らく小憎たらしいことにクリスは非の打ち所もない良き兄であり見本であると信じて疑っていないのだろう。
そんなクリスを見本にし、ハルトに対して優しく良き兄であろうとするカイトにとって、クリスの弟である俺が実は兄の存在を疎ましく思っていたのだと経験談を聞かされては気が気でないのか。
しかしクリスはカイトの思うような慈愛に満ちた良識者ではない。
カイトの知る外面の良いクリスと、自分に対する本来のクリスとの姿の違いを知ればカイトも思い直すかもしれない。
無駄に外面だけは良い兄の自分への数々の所業を思い浮かべながら4はまくしたてた。
お前が知らないだけで、兄貴の性格の悪さは俺なんか足元にも及ばねえよ!涼しい顔して腹の中では一体どんな悪趣味なことを考えてるか──
なるほど……。
バターの香りと共に、ぶわりとした冷気が流れこんでくる。
思わず凍りついて顔も動かせない4の横から、カイトが入り口に目を向けた。
話し声がすると思ったら……トーマス。もう課題は終わったのか?
ぞくりと冷えきった声の恐ろしさに4は素直に答えるしかない。
……それが……行き詰まって……
また答えを聞きに来たのか。全く困った奴だな。どれ見せてみろ。ふむ、これは以前教えた公式の応用だな。きちんと頭に入れていれば解けたはずだが?
おっしゃる通りです……
「おや、どうしたんだいカイト?」
「……いえ……何でも……」
「また兄様がデリカシーのないことを言ったんでしょう?」
「なっ!なんでそうなるんだよ!」
クリスの後ろから顔を覗かせたミハエルが諌めるように声を掛けられ、トーマスも慌てて弁解する。
しかし慌てる様子にますます墓穴を掘った4を前にクリスは軽くため息を吐いた。
「またか、トーマス……」
「違え―って!」
「そうだカイト。君にお客さんだよ」
「おい聞けよ!」
今の今まで4について話していた筈の、しかも4にあらぬ疑いを掛けた本人であるミハエルが何食わぬ顔で別の話題を振り始める。
もう突っ込むのも億劫で4はふてくされるばかりだ。
「客……?」
思い浮かぶ人物がいないのか、カイトは不思議そうにミハエルの後ろにいるらしき客の姿を覗きこむ。
「ハルト!」
「えへへ……兄さん、驚いた?」
「お前……出かけるって……」
「実はカイトに内緒でハルトもここへ来ていたんだ。ハルトが是非君にお茶を淹れたいと言い出してね」
「はい。兄さん。ミハエルが教えてくれたんだ」
「ハルト……」
カイトの前のテーブルに茶器を置いて、ハルトはカイトの為にティーカップを用意した。
ミハエルが熱湯でティーポットやカップにお湯を注ぐ。
ハルトは暖められたポットにティースプーンで茶葉を入れ、そこへお湯を注いだ。
ポットの湯は高温だ。カイトは気が気でなく思わず手伝おうとそわそわしてしまうが、ハルトに「兄さんは座ってて!」と怒られて大人しくソファで身を正す。
ミハエルがハルトの補佐をしながら、紅茶を蒸らす間に茶菓子を用意する。
キメの整ったほんのりと焼き色のついた様々なクッキーはミハエルと一緒に作ったのだそうだ。
そうこう言っているうちに蒸らし終えた紅茶を茶こしで濾しながら一つひとつ丁寧にカップへ注いでいくと、琥珀色の色鮮やかな液体と共に紅茶の深い香りが部屋に広がった。
さぁ、みんな席についてください。とミハエル。
ではいただきましょうか。
飲む前にハルトがカイトへ声をかける。
兄さん、これを淹れて飲んでみて?
ハルトは陶器の小さなピッチャーを差し出して言った。
言われるが儘にピッチャーを傾けると、ミルクとは違うとろりとしたソースが紅茶の湖面に飲み込まれていった。
ハルトがティースプーンでかき混ぜると、透明だった紅茶の水色がクリームと混ざり淡い白味を帯びたクリーム色に染まった。
ふわり、とキャラメルの香りがする。
キャラメルを入れたいって言ったらミハエルが作り方を教えてくれたんだ。
飲んでみて?
あぁ、美味しいよハルト。
良かった!
ところでどうしたんだ急に。
最近兄さんが遅くまで調べ物して疲れてるんだってクリスに相談したら、クリスが考えてくれたんだ。
え……クリス、知っていたんですか。
ハルト、それは言わない約束だっただろう?
あ……ごめんなさい
ふふ。でもカイト。君に美味しいものを食べさせたいと言ったのはハルトなんだよ。私は少し手を貸しただけさ。私だけでは心許ないのでミハエルにも協力を頼んだんだ。
僕も丁度クッキーを焼こうと思っていたところだったんで、ハルトが手伝ってくれて助かりました。
……ちょっと待てよ、お前らがカイトのためにこそこそしてたのはまぁわかった。なんで俺には言わねえんだよ。
ぶつくさ文句を言うと、ミハエルは困ったようにクリスと顔を見合わせた。
だって4兄様に教えたら……
きっと口を滑らせてしまうだろうから、私が止めたんだ。
なんだと!?テメェらちったあ俺のこと信用しろよ!?兄貴のこと信じられねえってか?
それは僕も悪いなあとは思いましたけど、でも4兄様は言うつもりが無かったとしても、絶対顔に出ちゃうじゃないですか。
……うっ……いや、んなことねぇよ。
目は口ほどに物を言うと言うし、カイトは賢いから4の顔を見たら察されると思ったんだ。
ちょっと待て俺が馬鹿だって言ってるように聞こえたぞ。
そう言ったつもりだが?第一、なるべく部屋から出ないようある程度解けるであろう問題を用意したのにそれすらわからず早々に私に聞きに来てしまうとは……我が弟ながら情けない。
まぁ良いじゃないですか、結果的にカイトをびっくりさせることが出来たんですから、ね!
カイト涙ぐむ。
兄さん?どうしたの?嬉しくないの?
いや、そんなことない。嬉しいんだ。ありがとうハルト。それなのに俺は、お前がどこへ行くのか問い詰めて……。
兄さんは僕のこと心配してくれたんでしょ?勝手に出てきてごめんなさい。
ハルト……っ。
二人を見ていると、僕も小さかった頃のことを思い出しちゃいます。
懐かしいな、昔のミハエルのやんちゃぶりには驚かされたよ。
あーそうそう、ミハエルと山に探検しに行って迷子になったよな。迷子にならないようにってコイツが通ってきた道にお菓子を置いてさ、いざ帰ろうと思った時に全部なくなってたもんだからどっちから来たかわかんなくなってよ。
……それは4兄様が言ったんですよ?
え?
小さい頃本で読んだことがあるって。だから僕が持っていた飴を落としながら歩いたんです。
……そう、だったっけ?
トーマスは昔から寝るのが早かったからな。私の読んだ本も読み始めて直ぐに眠っていたしな。
4兄様は昔から変わりませんからね。
カイトはくすくす笑っている。
や、やめろよ……!!もう昔の話だろ!?
あぁ。絵本は卒業したが、今は教科書でぐっすりだからな。
クリスてめぇ……っ!!
そんな三人の様子をカイトは微笑ましげに見ていた。
カイトにもハルトがいるが、歳が離れすぎていてあまり兄弟二人で何かをした記憶がない。
俺はハルトの良い兄をやれているだろうか。そんなカイトにハルトは言った。
兄さん、今度本読んでくれる?4の読んでたお菓子の本、僕も読んでみたい。
グリム童話だね。良かったらその時使っていた本がまだ部屋にあるんだ。……そうだ、今日は泊まって行くといい。
カ「え……
ハ「本当?兄さん、いいよね?
遠慮することはない。
……では…お言葉に甘えて……。
なんだよカイト、赤くなってんぜ?
うるさい……っ!
こらこらトーマス。あまりカイトをからかうんじゃない。……そうだ、今日は久しぶりに私がお前に本を読んでやろう。
は……?ちょ、きめえ、なんだよ突然。
大丈夫、頭の良くなる面白い本だよ。
そう言ってクリスは机に置かれていた問題集を持った。
眠くなったら私が優しく起こしてあげよう。大丈夫、朝までには最後まで読み終わるさ。
声にならない悲鳴をあげる俺の横で、カイトが声を殺して笑っていたのが非常に憎たらしい。
+++
飲食ネタ多くて申し訳ないです。
前ジャンルの時から紅茶書きまくりですもうこれきっと治らない\(^o^)/
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