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腐よろず雑記。 感想やラクガキ・小ネタを投下してます。 ZEXALが無事最終回を迎えましたが相変わらずカイト受けを欲しています!!切実!!
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思い立ったらお題からリハビリして行こうかと。
こちらのお題も Discolo 様 から。
『君を肴に晩酌』というお題をお借りしました。
88*31

+++

GGのソルカイです。ソル視点。


■君を肴に晩酌
 
 
 
厳重だがそれだけに術者の癖がわかりやすく出ている回路を読み解いて行く過程はさながら手探りの愛の告白のようだった。
柄にも無くそんな言葉が浮かび、ソルは自嘲気味に口端を歪める。
そんならしくもないことを考えてしまった自分が可笑しいのか、それとも自分がそんな幸せに浸れるようになってしまったことが可笑しいのか。
どちらかに結論付けるより先に、ぱちんと扉の解除が完了したのでソルはそこでその話題を切り上げた。
その間僅か数十秒。こんなお粗末な施錠機構では容易く物盗りに入られるのではといらぬ心配をしてみるが、実際のところ家主の肩書きを聞けば物盗りも裸足で逃げ出してしまう物件である。
ここは閑静な高級住宅街に佇む、国際警察機構現長官の邸宅であるのだ。
もちろん留守を預かるのが生半可な防衛システムであるはずもない。
ソルの百余年にも渡り蓄積された知識と経験と元科学者の探究心だからこそ成し遂げられたものである。
難題と知ってあえて挑むのが科学者の摂理であるかのように、意識せずソルの科学者としての本能がこの難攻不落の防衛機構に挑み続けるのだろう。
家主としてはとんだ迷惑である。ソルは元科学者にあるまじき屈強な肉体をするりと器用に滑りこませ、誰もいない家屋への侵入を果たした。
小煩い長官殿のいない間にまずは一服……と胸元を探った指先が硬いものに触れるが、確かめるまでもなく手慣れた様子で頼もしすぎる胸筋に押し潰された哀れな煙草だけを取り出した。
指先に触れたのは金属だ。手のひらに収まるサイズだが、細かく精巧な溝により芸術的な模様が浮き上がっている。
世界に幾つと無いその僅かな段差を認識させることで、この家の玄関はゆったりと開かれる。
それは、家主から手渡された所謂合鍵と呼ばれる物体だった。
だが手渡されて今まで、ソルがこれを使用したことは一度もない。
そのことに家主……カイ=キスクは毎度お気に入りのティーカップを灰皿代わりにされることへの苛立ちもあり、常々機嫌を損ねるているのである。
食いかかってくるカイをベッドへ沈めてしまうのも見応えがあって面白くはあるが、たまにはあの坊やから小言以外の言葉も聞いてみようかと思い立ち、ソルは灰皿を探すためリビングへと降りていった。
暗い室内に案の定家主の姿はない。静まり返った暗闇で、夜目の聞くソルは真っ直ぐ戸棚へ足を向けた。
ずらりと几帳面に並べられたティーカップに混じって、たった一つだけ異彩を放っている灰皿を目に止める。わかり易く取り出しやすい場所へ几帳面に柄を手前に向けて陳列しているのを見ると、そんなにティーカップを汚されるのは嫌なのかと苦笑を漏らす。
遠慮無く戸棚から灰皿を取り、本格的に寛ごうかとソルは部屋の明かりへ手を伸ばした。
「うぉ!?」
存外にも大きな声が出てしまったことに一番驚いたのは他でもないソル自身だ。
照明に照らされた室内は一瞬で色を持ち、見慣れたテーブルやチェストが静かに佇んでいる。
その中にソファを見つけ、正確に言えばソファに背を丸めて寝入っているカイの姿を認め、ソルは珍しく声を上げてしまったのだ。
当然ソルがカイの休みを確認した上で訪問するようなマメな男ではないことは一目瞭然であろう。
たまたま休みだったのか、それにしても眠るには幾分まだ早い時間帯ではある。
眠っている人間の気配に気づかなかったことにソルは僅かに動揺した。もっとも聖戦を生き抜いたカイのことである、自宅といえど気配を殺して眠っている可能性も否定出来なかったが、それならばソルの侵入にいち早く気づき目の前で仁王立ちしていてもおかしくないくらいである。
「おい坊や」
呼びかけるも微動だにしない。包まった毛布は緩やかに上下し、すやすやと穏やかな寝息が聞こえる。
どこからどう見ても寝ているだけだ、そうわかった瞬間ソルは大きな息を吐き出した。
紛れも無い溜息だ。
ほんの一瞬でも冷や汗をかいたことが途端に阿呆らしくなる。要するにこれはまたいつもの坊やの悪い癖の結果なのだろう。
仕事のやりすぎで大方何日も帰っていなかったのだろう。公僕の責務はご立派だが、その残業代が紛れも無い市民の血税から出ているのだとこの坊やに教えてやれば少しはあの苦労性の執事も報われるであろうか。
そう思いはしてもソルにそこまでしてやる謂れもなく、ソルはガシガシと頭を掻いて、どうすべきか頭を捻らせた。
本人にその気はなかったにしろ、驚かされてばかりでは何だか癪で。
ソルはワインセラーからカイが大切にしている──恐らくはベルナルドからの贈答品であろう──秘蔵のコニャックを掴み、カイの寝顔を肴に晩酌することにした。
もちろん、カイのお気に入りのティーカップを灰皿代わりにすることも忘れずに。
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