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お題は以下のサイト様よりお借りいたしました。
Discolo 様

こちらの戦場で10題から【血の海と涙の雨】というお題を使用させて頂きました。
+++
ジャンルはGGです。
■血の海と涙の雨
……また、この夢だ。
握りしめた封雷剣の硬さ、帯電して青白く光る刀身。
法衣を揺らす風の温さと、むせ返るような血のにおい。
また、生き残った。
また、いつもと同じ夢。
ぐるりと周囲を見渡すカイへ影を落としている死体の山。
その死体は竜に似ていた。
蛇にも似ていた。
虫にも似ていた。
しかしそのどれでもない生物の……いや、生物ですら無いかもしれぬ亡骸が小山のように視界を遮り積み重なっていた。
足元の赤い水溜りの中に細い棒が浮かんでいた。
否、棒ではない。
そして赤いそれは水溜りでもなかった。
鼻腔をつく鉄錆のにおいと、生ぬるい風の温度。
血溜まりの中に沈んでいる戦友たちの屍をきちんと埋葬してやりたいが、たった一人では葬りきれぬ夥しい数であった。
辺りを見渡したところで、自分以外に生きているものの気配は皆無だ。
仕方なく血溜まりから屍を抱き上げる。
純白の法衣は見る影もなく、今は真紅に染め上げられていた。
ぽたりぽたりと紅い雫が地面へ花を散らしてゆく。
まるで葬送の花だな。
不意に地面に散った花がじわりと滲む。
間もなく、ぽつぽつと透明な雫が地面の血溜りに波紋を広げ、それが雨だということに気づくまで幾許かの時間を要した。
激しい雨に遠景は霞み、血溜まりは薄まりながらも水かさを増してカイの法衣の端を朱に染めてゆく。
どぼん、と何かが血の海へ沈んだ。
腕の中の死体へ視線を落とすと、抱きかかえていた死体からずるりと腕が落ちたようで、見ればすっかり皮膚の剥がれ落ちたむき出しの髑髏が力なくカイを見上げていた。
その瞳が恨みがましいものであれば、唯一生き残ったカイを責めるものであれば、どれほど気が楽でいられるだろうか。
一人、また一人と空虚な眼孔が語りかける。
皆口を揃えたように、ただ一言をカイへ送り続ける。
「生き延びろ」
最後の一人に懇願され、雨粒が一滴、頬を伝った。
Discolo 様

こちらの戦場で10題から【血の海と涙の雨】というお題を使用させて頂きました。
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ジャンルはGGです。
■血の海と涙の雨
……また、この夢だ。
握りしめた封雷剣の硬さ、帯電して青白く光る刀身。
法衣を揺らす風の温さと、むせ返るような血のにおい。
また、生き残った。
また、いつもと同じ夢。
ぐるりと周囲を見渡すカイへ影を落としている死体の山。
その死体は竜に似ていた。
蛇にも似ていた。
虫にも似ていた。
しかしそのどれでもない生物の……いや、生物ですら無いかもしれぬ亡骸が小山のように視界を遮り積み重なっていた。
足元の赤い水溜りの中に細い棒が浮かんでいた。
否、棒ではない。
そして赤いそれは水溜りでもなかった。
鼻腔をつく鉄錆のにおいと、生ぬるい風の温度。
血溜まりの中に沈んでいる戦友たちの屍をきちんと埋葬してやりたいが、たった一人では葬りきれぬ夥しい数であった。
辺りを見渡したところで、自分以外に生きているものの気配は皆無だ。
仕方なく血溜まりから屍を抱き上げる。
純白の法衣は見る影もなく、今は真紅に染め上げられていた。
ぽたりぽたりと紅い雫が地面へ花を散らしてゆく。
まるで葬送の花だな。
不意に地面に散った花がじわりと滲む。
間もなく、ぽつぽつと透明な雫が地面の血溜りに波紋を広げ、それが雨だということに気づくまで幾許かの時間を要した。
激しい雨に遠景は霞み、血溜まりは薄まりながらも水かさを増してカイの法衣の端を朱に染めてゆく。
どぼん、と何かが血の海へ沈んだ。
腕の中の死体へ視線を落とすと、抱きかかえていた死体からずるりと腕が落ちたようで、見ればすっかり皮膚の剥がれ落ちたむき出しの髑髏が力なくカイを見上げていた。
その瞳が恨みがましいものであれば、唯一生き残ったカイを責めるものであれば、どれほど気が楽でいられるだろうか。
一人、また一人と空虚な眼孔が語りかける。
皆口を揃えたように、ただ一言をカイへ送り続ける。
「生き延びろ」
最後の一人に懇願され、雨粒が一滴、頬を伝った。
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