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腐よろず雑記。 感想やラクガキ・小ネタを投下してます。 ZEXALが無事最終回を迎えましたが相変わらずカイト受けを欲しています!!切実!!
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小説みたいなというのは小説っていうにはあまりにも酷い描写(※文章の技術が)なのではぐらかしてますが。
素敵なお題配布サイト様を見つけて、お題を眺めていたらば。
これはカル様で書かねばならんん!!!!と来てしまったので数時間で書き上げた。
素敵なお題サイト様はリンクページにも追加させて頂きましたが、一応ブログの記事にもぺたりしておきますです。



Discolo 様
88*31

こちらの選択式お題1-100内の【マイナス273℃】というお題を使用させて頂きました。

■マイナス273℃


幼いカルが幽閉された水牢は、一年中凍えるような水を湛えた大きな洞窟を利用して作られていた。
その洞窟の上にはその村が信仰する古代宗教の白亜の建築物が建てられており、水牢は建物の深奥にある重い扉を開いたその先の広間の床に大きく口を開く形で広がっていた。
一年を通して大きな気候の変化を持たないその村では、夏と言えども水は凍えるほど冷たく、冬ともなれば零度に限りなく近い水の冷気が身体の芯から凍りつかせた。
ひやりとした岩壁が四方に高く積み上げられ、岩肌に掘られた小さな窪みにはこの建物の象徴であり、神と同意義ともされる二本の棒を交差させた形状のシンボルが祀られていた。
その窪みを通り過ぎ更に上へと目を向けると、地上に設えられた七色の窓から差し込む幾ばくかの光が深い洞窟内を薄ぼんやりと照らしていた。
十字の象徴を前に、人は跪いて許しを乞う。
大人も子供も、隣人や族長も幼い少女から目の不自由な老婆まで、この狭いコミュニティに生きる者にとって祈ることとは生きることに等しいものであった。
信仰にかんしては母も、そしてカル自身も例外ではなく、村のしきたりに背くものは異端者として迫害され、この冷たい水牢へ死ぬまで閉じ込められたのだ。
カルもまたこの村にとっては異端であった。
美しい容姿を持った母は、決して交わってはならぬ者との間にカルを儲けたのだ。
それでも母は身篭った子を堕胎することなく産み育て、またそうすることができたのは彼女がこの村を治める族長の娘であったからに他ならなかった。
しかし、そのことはいつしか噂となり、辺境の小さな村では一夜にして広まった。
昨日まで共に遊んでいた子供達が急にカルを避け始め、口々にこう漏らす。
「カルとは遊んじゃいけないんだって」
「こわい」
「魔法の子」
「近づいちゃ駄目って」
大人たちの畏怖は途端にその子供たちへと伝染した。
遠巻きにカルを眺める者、声を潜める者、皆が皆カルという存在に恐怖心を植えつけられた。
その日からカルの世界は母親と二人だけのものとなった。
カルは母を愛し、母もまたカルを愛した。
顔も名前も、生死すら知らぬ父親の存在が無い今、カルには母がいれば、そして母にはカルがいればお互いそれ以外に何も大切なものなど無かったのだ。
母がいればそれだけで幸せを感じていた。友がいなくとも、皆が恐れようとも母さえ隣にいてくれれば他はどうなろうと構わなかった。
数年が過ぎ、カルと同じ齢の少年らが思春期を迎えた頃。カルを取り巻く環境が変化した。
子は親の背中を見て育つという。
子供達は彼らの姿を見て過ごす内、本能的にそれらの模倣をしただけで、それ以外の理由は無かったのかもしれない。
村の子供らは村の掟に背いた母親を持つカルを、何より異形の者との間に産み落とされたカルの存在に、子供らしい無邪気で際限のない暴力と罵声を浴びせた。
化物と、穢れた血と蔑まれ石を投げつけられる理由も、少年らの容赦無い暴力の目的もカルにはわからないことばかりだったが、先陣を切っていた少年は聖典に出てくる悪魔と戦う天使に己を重ねながら、大人たちから聴いた言葉を口汚くカルに浴びせ糾弾し始めた。
それは今まで族長の孫であるカルの異質への畏怖が、差別へと変わった瞬間だった。
間接的に伝えられた出自、父親の正体、そして、母への嘲罵。
少年が全てを言い終える前に、その声は不自然に引き攣った。
カルは頬へ生温さを感じ、それと同時に目の前にいた少年らの肢体が切れ切れになって宙を舞う光景が飛び込んできた。
端で辛うじて肉塊を逃れた少年らの顔が驚愕と戦慄に歪み、唯一、ちぎれ飛ぶ肉塊の向こうで愕然とする母を見つけたカルだけが事態を把握出来ずにただ気を失う母の姿を眺めていた。


呪われた子、カル=ス。
一族に大いなる災いを齎し、人ならざる力を宿した異形の子。
族長の孫と言えど、穢れた血に一族を継ぐ資格などない。
幽閉するのだ、五年でも、十年でも……いや、死ぬまで、永遠に。
何が起こったのか唯一人理解出来ぬまま、カルは母親と引き離され、暗い水牢へと身を浸した。
洞窟の中は静かで、カルの発する音の他にはどこからか滴り落ちる微かな水音を反響させているのみだった。
暗く、冷たく、呪われたカルのいる水牢へ来る者は誰もいない。
カルを魔物と呼ぶ声も、カルを恐れる視線も、カルに与えられる暴力も何もない空間は、かえってカルの気持ちを落ち着かせた。
日の光もほとんど届かず一日中薄暗い牢内は、陽が落ちると僅かな月明かりに湖面が煌く程の明かりしか存在しなかったが、カルは何も見えない暗闇の時間が好きだった。
それは、村人の寝静まった夜更けになると、決まって母の声が聞こえてくるからだ。
湿った岩壁にそっと指を這わす。見上げた先には窓も何も存在しなかったが、たしかに啜り泣く母の声が聴こえている。
「……ごめんなさい……」
カル、と呼びかける母の声に、カルは岩肌に頬を寄せた。
「母様、明日は……来て下さいますか……?」
青い瞳に涙が浮かぶ。しかしそれは悲しみから来る涙ではない。
「許して、私のカル=ス……私を……許して……」
母がいるから、生きていられる。冷たい水牢も永遠の暗闇も、母の愛さえあればカルは耐え忍ぶことが出来るのだ。
「大人しくしていますから、僕の事……忘れないで……」
それだけがカルの願いであり、毎夜訪れる母の存在だけがカルの支えの全てだった。


何度目の夜を迎えただろう。
眠っているカルは、微かな水の気配にふと目を覚ました。
今宵は満月が登っているのか、差し込む月明かりが水牢の水面を眩く照らしていたが、深い水底はまるで闇に飲み込まれたかのように暗く淀んでいる。
その水面がぶわりと持ち上がる。何かが水中から浮き上がってきたのだ。
ぬるりと水の膜を纏ったそれは細長く、糸のようなものが幾筋も垂れ、てらてらと月明かりを弾いていた。
黒い影は水音を滴らせながらも、ばしゃり、ばしゃりとカルの方へと近づいて来る。
水を掻き分けるそれが陰から月明かりの下へ姿を現すと、それはどうやら人間の形状をしていた。
人間がこの水牢へ入ってくるわけがない。
忌み嫌われ、あとは死ぬのを待つだけでしかない小さな子供を気にする者などいるはずが無いのだ。
「誰……」
カルは目を凝らして音の聞こえる方向を凝視めた。
ふらふらと足元の覚束無いその人物は、ゆらゆらと揺れながら歩を進めている。
右手に何かを持っている。その何かが月明かりに目を刺すような光を弾いた。
それが剣だと理解できた次の瞬間、その人物が右手に剣を構え、足元の膨大な水が衝撃波に揺れ、鋭利な形のままに凍りついた。
凍った湖面を蹴って剣を構えた人物はカルへと迫り行く。
右手に剣を振りかざし、長い髪を振り乱す女の顔が、血の涙を流した愛する母の顔が、カルの網膜に焼き付いた。
「母さ……」
刹那、母の手に握られた宝剣・アイスファルシオンの鋭い切っ先がカルの頭蓋を分断した。
皮を貫き頭蓋を砕き、脳の大部分を裂かれた頭部から勢い良く血液が迸った。魔剣の冷気に触れた血や肉がパキパキと凍結して空中に縫いつけられていく。
それと同時に今までカルの中で抑えられていた膨大な魔力が制御を失い堰を切ったように溢れ出した。
氾濫した大河が全てを飲み込むように、カルの中に渦巻いていた魔力がカルの身体を支配していく。
傷つけられた肉体はその直後から魔力によって活発化した細胞による修復を始め、止めどなく膨れ上がった魔力はカルを殺そうとした母をカルの意志を介さずして敵と認識した。
瞬きをする間も無く、母の身体はまるで見えない巨大な手に掴まれたかのように大きく捻じられ、内臓は弾け、四肢は四方にちぎれ飛んだ。
母が身体の内側から弾け飛ぶ様を、カルは修復される頭蓋が剣を押し上げる鈍い音を音と振動で感じながら目にしていた。
鮮血や涙が頬を伝って流れ、限界まで開かれた口は断末魔とも慟哭ともわからぬ絶叫に震えたまま、ただ愛していた存在が無残な肉の欠片と化して行く瞬間が網膜に焼き付けられて行く。
カルの魔力によって増幅された魔剣の力で、水牢の水はカルの足元から凍りつき、巨大な岩壁を粉々に砕きながら地上に噴き上がった。
大地を震わせる地響きと衝撃波がカルを中心に地上の建物を地盤ごとこの世から消し去っていく。
水牢も、母も、一族も、カルの育った村も全てが一瞬にして霧散した。
幼いカルが求めた幸せは、唯一人母の与えてくれる愛情だった。
母の愛を感じてさえいれば、この世のどんな冷たさに触れても温かい気持ちのままでいられた。
その母が、カルを殺そうとした。
この世界でもうお互い以外に大切な物は持っていないと笑いかけてくれた母が、自分を愛していなかった。
誰一人としてカルを必要としてくれなかった。
そして、カルは自分の最も愛する母親を自らの力でこの世から消し去ってしまった。
その逃れようもない事実に、カルの心は絶対零度の冷たさを纏い凍てついた。
一族の疎ましさ。
他人に虐げられる悲しみや憤り。
母親への愛。
カルの中に僅かに存在していた人間らしい感情は、その冷たさの中で熱を失い振動を止め、カルという人間性は音もなく崩壊し崩れ去っていった。
ただ無音の荒野に、頭蓋から押し出された魔剣アイスファルシオンの落下した音が、冷たく乾いた音を響かせ、空に消えた。






+++

マイナス273℃というのは絶対零度のことで、詳しくはwikiなどに載っていますが、バスタ的に説明するとですね。
カルは水・氷系の魔法を得意としておりまして、その最大究極の低温呪文テスタメントが絶対零度の凍気であらゆる物質を塵とする技なのです。
が、今回は技というよりも絶対零度を超える低温は存在しない、究極に凍えてほぼ全ての物質が振動を停止する、という現象をカルの心の感情に置き換えた過去話でした。
本当は絶対零度まで凍えきったカル様の心をDSかガラあたりに温められる的な方向で考えていたのですが、思ったよりカルの過去話の描写が長引いて、今回はそこで終わらせることに(;・∀・)
タイトルからしても解かすまで描かなくても大丈夫な内容かなと思いました。
実はサイトにうpするのは初めてですバスタードの文章。PC内にはいくつかあるんですが。
とりあえず最近カル様カル様連呼していたので、一度この萌えを吐き出さなきゃ他の版権に手をつけるのは無理だなと思ってた矢先のどんぴしゃりなお題様でした。

長々読んでいただきありがとうございます><
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