あけましておめでとうございます(震)
前回の記事が去年の6月!
もうね、ゼアルも終わってこんなにサイトが止まってるとカイト受けから他のジャンルに行ったと思いますよね。
行ってません。(´・ω・`)
昔やってた1ピー年近く前のジャンルをほじくり返してうpするくらいにはジャンル変わらない奴なので、浮気はするけど当分飽きないと思いますです。
未だにカイトをどんなエロい目にあわせようかと日々妄想するくらいにはあいかわらずです大変ご無沙汰しております(土下座)
いやぁ2015年の6月から書いてないというとかなりいろいろ有りましたね!
ぐだぐだ書く前にまずはお礼申し上げねばならんことがあります。
拍手ぱちぱち本当にありがとうございます!
控えめに言っても死んでるサイトなのにたまに押していただけることは本当にありがたいですし、もっと頑張らねばと自らケツを叩きますので多少有効です。
もしかするとカイト受じゃなくて遊ジャの方かもしれないんですが、最近またお狐さま(それも遊ジャじゃない)とか見なおしたりして自分はなんてご都合主義展開しか考えられないんだと遠い目をして打ちひしがれるくらいにはネタ書き溜めてるワードファイルを眺めてます。
とまぁ結果のでない無駄な書いてるアピールは誰得なんでここまでにして。
拍手本当にありがとうございました。
世間は刀剣とか松とか賑やかしいですが、今年もこのサイトは相変わらずジャンル変更なしでぼっちり更新したい(願望)
+++
さてさて今回はいろいろ感想もあるんですが、メインはクリカイの小説です。
リハビリなんで日本語がまた不自由なところからやりなおしになってるっぽいのですけれども、二千字くらいのクリカイ……クリカイ……カナ?という小ネタをば。
一応お題でして、まだ書いてないけど前後編というか後日談的なものを近日中に書きたいと目論んでおります。
いつものように小説本文は下の方に畳んでおきます。
+++
■とうらぶ
はい、6月の時点では揃ってなかった蛍丸と鶴丸があの後出ました。
今うちの本丸にいらっしゃらないのは大坂城でゲットして早速折った博多くんと、ダスキン、眼鏡、髭切さんの4人ですかね。
最近実装された不動くんはもう脳死プレイして札200くらい消化してようやく先日ドロしました。
きつい……。
外出先でもプレイ可能なポケットがそろそろ実装されるらしいので、これで休憩時間に遠征とかまわせるぜと今から廃人プレイの予感しかしない。助かる。
■フィギュア事情
ギルティギアのソルフィギュア×2
カイフィギュア×4
ラムレザル×1
プラスもともといたデズ子とコスモスとネイたまで今後も数体お迎え予定があるため棚を購入して今こんなことになってます。

エフェクトとか買ったものの思いの外狭くて今は取り外してますが、あと4体くらい飾る予定なのでもうこれ以上増やせない(増やす気だったのか)
土台が思いの外場所とって邪魔なのでミュージアムジェルなるものを購入して足元固定したりしてたんですが、ソルはおkでもキスクのバランスが偏ってるのかジェルじゃ転倒防げなかったのでミュージアムパテなるものを追加購入しました。
画像取った時点ではどちらもなかったんですけど、今現在パテ問題なくキスクの細腰を支えてくださってますありがたや!
絵を少々。
あんまり増えてないし上手くもなってないんですが(ホントペンタブ握ってない)
■昨日?今日?書いたVカイ
謎シチュ(いつものこと)
カイトの肌を青系に寄せる練習でしたがモニタがおかしいので酷いことになってるかもしれないですorz
V兄様がAGOった気がする(見ないふり)
■サムネ用
■サムネ用
最近専らサムネはカイトきゅんです。
練習も兼ねてるけどカイト書きすぎてジャックの髪の毛また書けなくなってる。
■年賀用のキスク(イグザverポニテ)
■初描きレオさん
CV英雄です
■ラムタソ
レベレーターOPのラムタソが瞳に光入っててかわいさUPしてたので衝動的に。
映ってないけどちゃんと着てます。
とまぁらくがきが数枚ですが。
+++
クリカイSSを畳んでおきます。
師弟時代敬語設定。
+++
前回の記事が去年の6月!
もうね、ゼアルも終わってこんなにサイトが止まってるとカイト受けから他のジャンルに行ったと思いますよね。
行ってません。(´・ω・`)
昔やってた1ピー年近く前のジャンルをほじくり返してうpするくらいにはジャンル変わらない奴なので、浮気はするけど当分飽きないと思いますです。
未だにカイトをどんなエロい目にあわせようかと日々妄想するくらいにはあいかわらずです大変ご無沙汰しております(土下座)
いやぁ2015年の6月から書いてないというとかなりいろいろ有りましたね!
ぐだぐだ書く前にまずはお礼申し上げねばならんことがあります。
拍手ぱちぱち本当にありがとうございます!
控えめに言っても死んでるサイトなのにたまに押していただけることは本当にありがたいですし、もっと頑張らねばと自らケツを叩きますので多少有効です。
もしかするとカイト受じゃなくて遊ジャの方かもしれないんですが、最近またお狐さま(それも遊ジャじゃない)とか見なおしたりして自分はなんてご都合主義展開しか考えられないんだと遠い目をして打ちひしがれるくらいにはネタ書き溜めてるワードファイルを眺めてます。
とまぁ結果のでない無駄な書いてるアピールは誰得なんでここまでにして。
拍手本当にありがとうございました。
世間は刀剣とか松とか賑やかしいですが、今年もこのサイトは相変わらずジャンル変更なしでぼっちり更新したい(願望)
+++
さてさて今回はいろいろ感想もあるんですが、メインはクリカイの小説です。
リハビリなんで日本語がまた不自由なところからやりなおしになってるっぽいのですけれども、二千字くらいのクリカイ……クリカイ……カナ?という小ネタをば。
一応お題でして、まだ書いてないけど前後編というか後日談的なものを近日中に書きたいと目論んでおります。
いつものように小説本文は下の方に畳んでおきます。
+++
■とうらぶ
はい、6月の時点では揃ってなかった蛍丸と鶴丸があの後出ました。
今うちの本丸にいらっしゃらないのは大坂城でゲットして早速折った博多くんと、ダスキン、眼鏡、髭切さんの4人ですかね。
最近実装された不動くんはもう脳死プレイして札200くらい消化してようやく先日ドロしました。
きつい……。
外出先でもプレイ可能なポケットがそろそろ実装されるらしいので、これで休憩時間に遠征とかまわせるぜと今から廃人プレイの予感しかしない。助かる。
■フィギュア事情
ギルティギアのソルフィギュア×2
カイフィギュア×4
ラムレザル×1
プラスもともといたデズ子とコスモスとネイたまで今後も数体お迎え予定があるため棚を購入して今こんなことになってます。
エフェクトとか買ったものの思いの外狭くて今は取り外してますが、あと4体くらい飾る予定なのでもうこれ以上増やせない(増やす気だったのか)
土台が思いの外場所とって邪魔なのでミュージアムジェルなるものを購入して足元固定したりしてたんですが、ソルはおkでもキスクのバランスが偏ってるのかジェルじゃ転倒防げなかったのでミュージアムパテなるものを追加購入しました。
画像取った時点ではどちらもなかったんですけど、今現在パテ問題なくキスクの細腰を支えてくださってますありがたや!
絵を少々。
あんまり増えてないし上手くもなってないんですが(ホントペンタブ握ってない)
■昨日?今日?書いたVカイ
謎シチュ(いつものこと)
カイトの肌を青系に寄せる練習でしたがモニタがおかしいので酷いことになってるかもしれないですorz
V兄様がAGOった気がする(見ないふり)
■サムネ用
■サムネ用
最近専らサムネはカイトきゅんです。
練習も兼ねてるけどカイト書きすぎてジャックの髪の毛また書けなくなってる。
■年賀用のキスク(イグザverポニテ)
■初描きレオさん
CV英雄です
■ラムタソ
レベレーターOPのラムタソが瞳に光入っててかわいさUPしてたので衝動的に。
映ってないけどちゃんと着てます。
とまぁらくがきが数枚ですが。
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クリカイSSを畳んでおきます。
師弟時代敬語設定。
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お題はお世話になっております Discolo 様 から。
『有意義な休日』というお題をお借りしました。

一応勝手に後日談的な話を考えているので、後日同じお題で後編をうpしたいと思います。
(まだ書いてない)
+++
注意事項というか設定。
師弟時代クリカイ
がっつり敬語(もっと硬くしたいけどこれでもだいぶゆるめた)
CP話というか&関係に近い段階
お互いの事情はあまり知らない
書いた奴(紺海)のせいで若干説教臭い
リハビリ兼ねてなのでお見苦しいところ、読みづらい文章かとは思いますが、よければスクロールでお願い致します。
+++
【有意義な休日:前】
「そろそろ休憩してはどうですか?」
分厚い専門書に目を落とし論文を読み漁っていたクリスは、掛けられた声と漂う香りに気づきふと視線を上げた。
つい先程まで乱雑に資料の散らばっていた卓上はいつの間にか綺麗に整頓されており、淡い色のテーブルクロスの上には二つの茶器が並べられている。
白を基調とした華奢なティーカップに日暮れのような湖面が映えるそれは、淹れたてなのだろう、ほかほかと湯気を立ち上らせていた。
「どうぞ」
「ありがとう、いただくよ」
読み途中だった本を閉じ、クリスはカイトに勧められたカップを手に取る。
鮮やかな琥珀色の水面を見れば一目瞭然ではあるが、それ以前に鼻孔をくすぐる微かな柑橘系の香りは、これまでカイトが差し入れてくれたコーヒーやココアなどとは明らかに異なる芳香である。
「いい香りだ。珍しいね、紅茶とは」
「はい。いつも代わり映えしないので偶にはと思って……」
そう言ってカイトも席についた。
カイトが向かいの席についたのを見計らって、クリスはカップに口を付ける。
それを見てカイトも同じようにカップを手にとった。
「うん。美味しい。カイトは紅茶を淹れるのも得意なんだね」
「ありがとうございます。……でもティーバッグの紅茶なんで、誰が淹れても美味しくなるよう出来てますから」
大衆向けに販売される以上、一定以上のクオリティはクリアしているはずである。
調理法をきちんと守りさえすればそう不味いものにはならない。
それがカイトの持論であったが、いつもの癖でそう言い終えて、はっとする。
どうも昔から褒められることには慣れていない。
幼い頃から父の遺伝か、それとも必要に迫られてからか、カイトは何でも器用にこなすことが出来た。
褒められる機会も人より多かったと自覚はあるものの、一方でその大半が社交辞令や僻みを含んだものであるとも思い知っている。
そんなカイトにとって、工作であれ料理であれ、作り方が明らかになっているものは出来て当然、当たり前なことであり、今更褒められる筈のないものだった。
これまではそれがカイトの知る賛辞の全てであった。
しかし、クリスはカイトがこれまで幾度と無く言われたお世辞などではなく、本心から言ってくれているのだろう。
事情を知らないクリスに失礼な態度だったかもしれないと思い至り、咄嗟に口を開きかけたカイトをクリスはやんわりと制した。
「誰が淹れても……か。確かにそうかもしれない。最近の紅茶は本当に美味しいからね」
クリスは半分ほどになったカップに両手を添え、何事か思案しているのだろう、くるくると水面を揺らしている。
「実は私も前にこの紅茶は飲んだことがあるんだ。一人で研究室に篭っている時だったかな」
その時はただいつもと違うものを飲みたかっただけで、普通にお湯を注いで、普通に飲んだ。
きっとカイトほど正確に蒸らし時間など考えていなかっただろう。
「失礼を承知で言えばその時の香りや口当たりは、今ここで君が淹れてくれたものと大差ないものだったかもしれない。同じ手順を踏んで作れば、食材自体の味が変わることはないだろうからね」
基本の作り方から何かを足したり引いたりすれば、味は確かに変化するだろう。
工夫してスパイスなりを追加すれば、さらなる香りが広がり美味しく感じるのは当然だ。
「それでも、君が淹れてくれた紅茶はあの時一人で飲んだ紅茶よりも美味しかったのは本当だ。……言い換えれば、君と今こうやってテーブルを囲んでいる状況が、私にとっては何よりのスパイスということなんだよ」
「スパイス……?」
「あぁ。料理を美味しく食べるのに必要なのは、何も調理法や食材の力だけじゃない」
美味しいものを食べると、大多数の人は例外なく美味しいと感じるだろう。
だが、もしそうでない場合でも、ある要素が加われば不思議といつもより美味しく感じられるものがあることを、クリスは経験から知っていた。
「誰かと一緒に食事が出来るということは、それだけで幸せだ」
それは、クリスが家族と離れ離れになって初めて思い知ったことだった。
何を食べるかではない、大切なのは誰と食べるかということ。
どんなに美味しい料理でもそれが一人で摂る食事であるなら、誰かと共にする紅茶の一杯に劣ることもあるのだと。
「例え物質的に全く同じ紅茶だったとしても、そういう変化があることは否定出来ない……そう、私は思うんだ」
偉そうに言った所で証明することは出来ないんだけどね。と苦笑しながら、クリスは残りの紅茶を飲み干す。
その様子にカイトもふと我にかえり、いささか湯気の収まったそれに口をつけた。
「ごちそうさまでした。……でも喋りすぎたかな、また喉が乾いてしまったようだ。もう一杯貰ってもいいかな?」
「はい、もちろん」
「ありがとう。……そうだ」
新しく紅茶を淹れる為に席を立ったカイトをクリスは呼び止めて言った。
「いつか全てが解決した時には、君達家族を我が家へ招待したいんだが……来てくれるかい?」
いつか──と珍しく言葉を濁したクリスの言わんとすることを、カイトはすぐに理解した。
「勿論です。きっと、ハルトも喜びます」
クリスに二杯目の紅茶を運んだ後で、カイトはすっかり冷めてしまった自分の残りの紅茶を飲み干した。
後味に少し渋さが残ったものの、冷えた紅茶が何故かいつもより美味しい気がした。
+++
時系列的にはクリスが出て行くちょっと前のつもりです。
カイトにとって辛い思い出増えそうな感じで勝手に申し訳ない思いで一杯でしたが。
後編はハッピーエンド目指します。
あと説教臭さとか単純にくささとかなくせるように精進いたしますorz
読んで頂きましてありがとうございました!!
ポッキーの日…だとおきてから気づいてバスのなかで1人ポチポチしてクリカイのポッキーネタを書いてました。
朝から酷すぎて出社前なのに帰りたくなった。・゚・(ノД`)・゚・。
そんなわけで会話文多めの書き殴り小ネタですが甘いです。
アホですギャグですえぇもう笑ってください私も恥ずかしすぎて笑うしかない。
穴があったら埋まって冬眠してきます_○/|_
+++
朝から酷すぎて出社前なのに帰りたくなった。・゚・(ノД`)・゚・。
そんなわけで会話文多めの書き殴り小ネタですが甘いです。
アホですギャグですえぇもう笑ってください私も恥ずかしすぎて笑うしかない。
穴があったら埋まって冬眠してきます_○/|_
+++
■ポッキーの日~ポッキーゲーム~
「カイト。今日はポッキーの日だと聞いたのだが」
「え?あぁ、11月11日だから1を棒状の菓子に見立ててそう呼ぶそうです」
「それで、日本文化について非常に興味深い資料を見つけたから是非君に手伝ってもらいたいのだが…」
「興味深い資料?ええ構いませんよ」
「そうかありがとう。では早速……」
そう言ってクリスはおもむろに取り出した箱を開け、中の袋からチョコレートでコーティングされた一本の菓子を手に取った。
「さあカイト。くわえてくれ」
思いがけないクリスの言葉にカイトが固まる。
「……え……な、何故です?」
「ポッキーゲームとはこういうものだろう?」
違うのか?と不思議そうに首を傾げるクリスにカイトも首を横に振った。
「お、俺は知りません!」
「そうだったのか。文献によるとポッキーを両端から食べ進み来年の運を占う日本の古い神事に由来するものだと……」
思わず耳を疑う説明だったが、クリスは至って真剣だ。
とても冗談を言っているようには見えず、聞かされる内容にカイトはただただ驚くしかない。
「俺も日本は長くないので……初めて聞きました。でもその、両端から食べるってことはつまり……」
「気が進まないのか?」
「……少し恥ずかしいです」
「そうか。君が気乗りしないと言うなら仕方がない。ポッキーゲームは今日1日しか許されない神聖な儀式。それに相手は自分の信頼できる人間でないと駄目らしいのだ」
「し、信頼……」
信頼の二文字にカイトが揺れる。
一年で今日という日にしか許されない儀式の相手にまさか自分が選んでもらえたと知れば断ることなんて出来ない。
相手は他でもない、クリスなのだ。
「わ、わかりました!俺なんかで良ければ!」
「ありがとうカイト。ではこれを……」
「はい」
カイトは先程までの困惑はどこへ消えてしまったのか、驚くほど素直にクリスに渡されたポッキーをくわえる。
と、クリスが反対側に口をつけた。
「準備は良いかカイト」
「は、はい……っ」
クリスの顔が思ったより近く、カイトは赤面した。
しかしこれは神聖な儀式であってこんなやましい気を抱いてはいけないはず、と必死にこらえる。
小さな振動にクリスの顔が近づく。
クリスは至って真剣だ。カイトも儀式と聞いて、真面目にクッキー生地を食んだ。
やがて目と鼻の先に互いが近づき、ある程度覚悟していたとは言えやはりカイトは戸惑った。
クリスに勝って欲しいがもしこのままクリスが進んできたらポッキーはどうなるのか。
ただでさえ残り数センチ。
折ってしまおうかとも考えたがクリスに失礼だろうと思いなおす。
それにクリスに勝ちを譲るのも真剣勝負に水を指すのではないか…そもそも神聖な儀式。運と実力以外の要素を持ち込んではならないのだろう。
カイトがそう考え込むうちにふっとクリスの息がかかる。
伏し目がちなクリスの長い睫毛、深海のような青い瞳はいつにも増して真剣だ。
でももうすぐ鼻筋が触れてしまうかもしれない。
そしてそのうち……。
カイトの瞳が揺れる。
むしょうに恥ずかしくなり、耐え切れず目を閉じた瞬間、不意に何かが唇に触れた気がした。
恐る恐る目を開けるとクリスが柔らかな笑みを浮かべポッキーから口を離していた。
気づけばカイトの口許にもポッキーの姿はない。
勝負はどうなったのかとクリスを見上げるとクリスは困ったように言った。
「勝負は引き分けかな」
「そ、そうです……ね」
「結果を食べてしまうのが難点だね」
そう言えばそうだ。どちらがより多く食べたかなんて、どう確認しろと言うのだろう。
その疑問に思い当たったカイトをよそに、クリスはまるで結果など気にしていない素振りで言った。
「また来年再挑戦しよう」
「え……あ、はい……」
次は上手く出来るだろうか、もしかするとまだ調べ切れていないルールがあるのかもしれないなと考えながら、カイトはあとでオービタルに調べさせようと決めて。
ふと、クリスの言葉の意味に思い至りカイトは耳まで赤くなった。
これ以上進まないかなーと思う小ネタを投下。
○○ったーネタなんですが、【4カイ語り】でコンプレックス云々と出たんですが何だか微妙な感じに。
プロットというかいろいろ書きなぐりなので脳内補完しながら見ていただければ幸いです。
クリカイっぽいけど多分4カイ。
ちょいちょい4だったりトーマスだったりですが直してないそんな感じ。
+++
○○ったーネタなんですが、【4カイ語り】でコンプレックス云々と出たんですが何だか微妙な感じに。
プロットというかいろいろ書きなぐりなので脳内補完しながら見ていただければ幸いです。
クリカイっぽいけど多分4カイ。
ちょいちょい4だったりトーマスだったりですが直してないそんな感じ。
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+++
クリスに用があってアークライト家を訪れたカイト。
諸事情でクリスが席をはずす。待ってくれ、父の書斎に資料があった筈だ。取ってくるから少し待っていてくれるかい?
そこへ4が現れカイトを発見する。
兄貴この問題答え教えてくれ……ってあれ、カイト?兄貴は?
クリスは今席を外している。
ふーん。珍しいなカイトが遊びに来るなんて
遊びに来たんじゃない、わからない箇所をクリスに教えてもらっているんだ。お前と一緒にするな。
俺だって遊びに来たわけじゃねーよ勉強教わりに来たんだよ。
ひらひらと問題集を見せる。
答えを教えてもらうのは根本的解決にならない。
兄貴みてぇなこと言いやがって……。……で、テメェはメールや電話で済む話を直接教わりに来たってか?
……っそ、それは……クリスが誘ってくれたから……
誘われたからほいほい遊びに来たってのかよ?
だから遊びではないと……はぁ、お前は子供だな本当に
かっちーん。
4はカイトが自分と誰を比べてそんな言葉を言ったのか気づく。
俺が子供ならテメェも子供だろ。
うるさい。そうやってすぐ噛み付いてくるところが子供だと言っているんだ。
何を言っても神経を逆なでするとわかってる4はため息を吐く。
じゃあ俺と違って立派なオトナのカイト様はいつになったら弟離れするつもりだ?
……兄が弟を気にかけるのは当然のことだろう。それにハルトはまだ小さな子どもだ。俺が面倒を見て何が悪い。
悪かねえよ。ハルトは子供で、お前は大人だもんな。
何が言いたい。
ハルトもいずれ大人になるっつってんだよ。そろそろその時のこと考えてた方が良いんじゃねえのか?お兄さま?
…………。いくつになっても、ハルトが俺の弟であることに変わりはない。
お前はそうだろうけどさ、ハルトがどう思うかはわかんねえだろ。ハルトが大人になってもお前がそのまま猫っかわいがりするんじゃ、きっとハルトは嫌がるぜ。
ハルトは貴様のようなひねくれ者にはならない。
随分な言い様ですねぇ。これでも昔の私は可愛いところがあったんですよ?
知らん。
人間、どう成長するかなんて誰にもわかんねえもんだよ、当の本人にだってな。今は天使みたいな弟がある日突然悪魔のようになっちまう。
思春期や反抗期は人間の成長過程において必ず通る道だ。ハルトが不良になるなんてことは絶対にない。
不良って……まぁいいや。その目に入れても痛くないハルトがお前に死ねとかウザイとか言うようになるんだぞ?
ハルトはそんな汚い言葉は口にしない。
お前なぁ……百歩譲って、そんな暴言は吐かねえかもしんねえけど、俺の予想じゃ十中八九嫌われるね!
な……!貴様に何がわかる
わかるっつーの!俺がそうだったんだからな。お前は兄貴だからわかんねえだろうけど、年頃の弟にとって自分に構いたがる兄貴ってのは目の上のたんこぶで視界に入るだけでイラつくんだよ。そういう時は後先考えずに普段思ってもいないこととか口走っちまうもんなんだよ。兄さんなんか大嫌いだ!とかな!
…………ッ!
カイトがひるむ。ようやくわかったか、とカイトを見ると、カイトの肩がわなわなと震えていた。
ぎょっとして顔を覗きこむとおもいっきり顔をそむけられる。
お、おい……まさか──
泣いてるのか、とからかう場面ではない、と判断するだけの冷静さが残っていて少し安心する。
安心してもいられない。カイトはきっとさっき4が冗談で言った言葉を頭で想像してしまったのだ。
愛しい弟が、自分に「大嫌いだ!」と告げる様を、ありありと。
……なぁ、泣くなよ。
泣いてなどいない。
……冗談だって、ほら、ハルトは俺なんかと違って素直なまま育つって!
何で俺は女でもない男をこんなに必死になって慰めているんだとツッコミをいれつつも、そうした原因が自分にあることは火を見るよりも明らかで。
その相手が普段めそめそ泣くような性格である筈のない人物だから尚更、俺はどうしていいかわからず焦りまくっていた。
カイトがつぶやくように言う。
今朝ハルトが出かけると言ったから、どこへ行くのか聞いたんだ。そうしたら、内緒だと言われた。
そ、そりゃハルトにだってお前に一つ2つ言えない秘密くらいあるだろ!?
何かあった時に危ないからと少しだけしつこく聞いたんだ。……教えてくれなかったが、今思えば俺の何気ないあぁいう態度がハルトを非行に走らせることになってしまうのだろうか。
いや考えすぎだよ!心配するのは当然だし、そんなことハルトだってわかってるさ!そんなことでお前のこと嫌いになんてならねえよ!な?
…………俺には確かに兄はいない。だから、弟にとっての兄という存在が想像つかない。
お、おう……
兄のいるお前がそう言うんだ。ハルトが……ハルトもお前と同じ思考に至る可能性がないとは言えない。
な、なんでそこまで弱気になるんだよ!さっきまでの威勢はどこいっちまったんだよ!?お前はハルトのこと何よりも大切なんだろ?そんな優しい兄貴のこと嫌いになんてならねえって!
……だが、お前は優しい兄が自分のことを気にかけるとイライラしたんだろう?
ん……あぁ?
クリスがお前たち兄弟にとって悪い兄だったとは思えない。
いやいや、兄貴はあぁ見えてお前が想像する以上にえげつねえことするんだよ!
…………。
カイトは訝しげな眼差しを向けている。
カイトの中では恐らく小憎たらしいことにクリスは非の打ち所もない良き兄であり見本であると信じて疑っていないのだろう。
そんなクリスを見本にし、ハルトに対して優しく良き兄であろうとするカイトにとって、クリスの弟である俺が実は兄の存在を疎ましく思っていたのだと経験談を聞かされては気が気でないのか。
しかしクリスはカイトの思うような慈愛に満ちた良識者ではない。
カイトの知る外面の良いクリスと、自分に対する本来のクリスとの姿の違いを知ればカイトも思い直すかもしれない。
無駄に外面だけは良い兄の自分への数々の所業を思い浮かべながら4はまくしたてた。
お前が知らないだけで、兄貴の性格の悪さは俺なんか足元にも及ばねえよ!涼しい顔して腹の中では一体どんな悪趣味なことを考えてるか──
なるほど……。
バターの香りと共に、ぶわりとした冷気が流れこんでくる。
思わず凍りついて顔も動かせない4の横から、カイトが入り口に目を向けた。
話し声がすると思ったら……トーマス。もう課題は終わったのか?
ぞくりと冷えきった声の恐ろしさに4は素直に答えるしかない。
……それが……行き詰まって……
また答えを聞きに来たのか。全く困った奴だな。どれ見せてみろ。ふむ、これは以前教えた公式の応用だな。きちんと頭に入れていれば解けたはずだが?
おっしゃる通りです……
「おや、どうしたんだいカイト?」
「……いえ……何でも……」
「また兄様がデリカシーのないことを言ったんでしょう?」
「なっ!なんでそうなるんだよ!」
クリスの後ろから顔を覗かせたミハエルが諌めるように声を掛けられ、トーマスも慌てて弁解する。
しかし慌てる様子にますます墓穴を掘った4を前にクリスは軽くため息を吐いた。
「またか、トーマス……」
「違え―って!」
「そうだカイト。君にお客さんだよ」
「おい聞けよ!」
今の今まで4について話していた筈の、しかも4にあらぬ疑いを掛けた本人であるミハエルが何食わぬ顔で別の話題を振り始める。
もう突っ込むのも億劫で4はふてくされるばかりだ。
「客……?」
思い浮かぶ人物がいないのか、カイトは不思議そうにミハエルの後ろにいるらしき客の姿を覗きこむ。
「ハルト!」
「えへへ……兄さん、驚いた?」
「お前……出かけるって……」
「実はカイトに内緒でハルトもここへ来ていたんだ。ハルトが是非君にお茶を淹れたいと言い出してね」
「はい。兄さん。ミハエルが教えてくれたんだ」
「ハルト……」
カイトの前のテーブルに茶器を置いて、ハルトはカイトの為にティーカップを用意した。
ミハエルが熱湯でティーポットやカップにお湯を注ぐ。
ハルトは暖められたポットにティースプーンで茶葉を入れ、そこへお湯を注いだ。
ポットの湯は高温だ。カイトは気が気でなく思わず手伝おうとそわそわしてしまうが、ハルトに「兄さんは座ってて!」と怒られて大人しくソファで身を正す。
ミハエルがハルトの補佐をしながら、紅茶を蒸らす間に茶菓子を用意する。
キメの整ったほんのりと焼き色のついた様々なクッキーはミハエルと一緒に作ったのだそうだ。
そうこう言っているうちに蒸らし終えた紅茶を茶こしで濾しながら一つひとつ丁寧にカップへ注いでいくと、琥珀色の色鮮やかな液体と共に紅茶の深い香りが部屋に広がった。
さぁ、みんな席についてください。とミハエル。
ではいただきましょうか。
飲む前にハルトがカイトへ声をかける。
兄さん、これを淹れて飲んでみて?
ハルトは陶器の小さなピッチャーを差し出して言った。
言われるが儘にピッチャーを傾けると、ミルクとは違うとろりとしたソースが紅茶の湖面に飲み込まれていった。
ハルトがティースプーンでかき混ぜると、透明だった紅茶の水色がクリームと混ざり淡い白味を帯びたクリーム色に染まった。
ふわり、とキャラメルの香りがする。
キャラメルを入れたいって言ったらミハエルが作り方を教えてくれたんだ。
飲んでみて?
あぁ、美味しいよハルト。
良かった!
ところでどうしたんだ急に。
最近兄さんが遅くまで調べ物して疲れてるんだってクリスに相談したら、クリスが考えてくれたんだ。
え……クリス、知っていたんですか。
ハルト、それは言わない約束だっただろう?
あ……ごめんなさい
ふふ。でもカイト。君に美味しいものを食べさせたいと言ったのはハルトなんだよ。私は少し手を貸しただけさ。私だけでは心許ないのでミハエルにも協力を頼んだんだ。
僕も丁度クッキーを焼こうと思っていたところだったんで、ハルトが手伝ってくれて助かりました。
……ちょっと待てよ、お前らがカイトのためにこそこそしてたのはまぁわかった。なんで俺には言わねえんだよ。
ぶつくさ文句を言うと、ミハエルは困ったようにクリスと顔を見合わせた。
だって4兄様に教えたら……
きっと口を滑らせてしまうだろうから、私が止めたんだ。
なんだと!?テメェらちったあ俺のこと信用しろよ!?兄貴のこと信じられねえってか?
それは僕も悪いなあとは思いましたけど、でも4兄様は言うつもりが無かったとしても、絶対顔に出ちゃうじゃないですか。
……うっ……いや、んなことねぇよ。
目は口ほどに物を言うと言うし、カイトは賢いから4の顔を見たら察されると思ったんだ。
ちょっと待て俺が馬鹿だって言ってるように聞こえたぞ。
そう言ったつもりだが?第一、なるべく部屋から出ないようある程度解けるであろう問題を用意したのにそれすらわからず早々に私に聞きに来てしまうとは……我が弟ながら情けない。
まぁ良いじゃないですか、結果的にカイトをびっくりさせることが出来たんですから、ね!
カイト涙ぐむ。
兄さん?どうしたの?嬉しくないの?
いや、そんなことない。嬉しいんだ。ありがとうハルト。それなのに俺は、お前がどこへ行くのか問い詰めて……。
兄さんは僕のこと心配してくれたんでしょ?勝手に出てきてごめんなさい。
ハルト……っ。
二人を見ていると、僕も小さかった頃のことを思い出しちゃいます。
懐かしいな、昔のミハエルのやんちゃぶりには驚かされたよ。
あーそうそう、ミハエルと山に探検しに行って迷子になったよな。迷子にならないようにってコイツが通ってきた道にお菓子を置いてさ、いざ帰ろうと思った時に全部なくなってたもんだからどっちから来たかわかんなくなってよ。
……それは4兄様が言ったんですよ?
え?
小さい頃本で読んだことがあるって。だから僕が持っていた飴を落としながら歩いたんです。
……そう、だったっけ?
トーマスは昔から寝るのが早かったからな。私の読んだ本も読み始めて直ぐに眠っていたしな。
4兄様は昔から変わりませんからね。
カイトはくすくす笑っている。
や、やめろよ……!!もう昔の話だろ!?
あぁ。絵本は卒業したが、今は教科書でぐっすりだからな。
クリスてめぇ……っ!!
そんな三人の様子をカイトは微笑ましげに見ていた。
カイトにもハルトがいるが、歳が離れすぎていてあまり兄弟二人で何かをした記憶がない。
俺はハルトの良い兄をやれているだろうか。そんなカイトにハルトは言った。
兄さん、今度本読んでくれる?4の読んでたお菓子の本、僕も読んでみたい。
グリム童話だね。良かったらその時使っていた本がまだ部屋にあるんだ。……そうだ、今日は泊まって行くといい。
カ「え……
ハ「本当?兄さん、いいよね?
遠慮することはない。
……では…お言葉に甘えて……。
なんだよカイト、赤くなってんぜ?
うるさい……っ!
こらこらトーマス。あまりカイトをからかうんじゃない。……そうだ、今日は久しぶりに私がお前に本を読んでやろう。
は……?ちょ、きめえ、なんだよ突然。
大丈夫、頭の良くなる面白い本だよ。
そう言ってクリスは机に置かれていた問題集を持った。
眠くなったら私が優しく起こしてあげよう。大丈夫、朝までには最後まで読み終わるさ。
声にならない悲鳴をあげる俺の横で、カイトが声を殺して笑っていたのが非常に憎たらしい。
+++
飲食ネタ多くて申し訳ないです。
前ジャンルの時から紅茶書きまくりですもうこれきっと治らない\(^o^)/
拍手ありがとうございましたっ!!
遅くなってすみません><
明日はゼアルの日なので楽しみです!早めに感想書きに来たいところですが(;´∀`)
+++
休み中にいろいろ絵書いたり文字打ったりしてたんですが結局集中力が続かなくてどれも中途半端になってしまいました(´;ω;`)←脆弱な意志
とても書きなぐりではありますが、リハビリの一貫で書いた風ジャを投下します。
+++
○○ったーで出たようなおぼろげな記憶のお題消化。
報われない感じが風ジャっぽいなって\(^o^)/
■こんなエンディングも、悪くないと思う。
ごくり。
誰もいない静まり返った狭いプライベートブースの中だ。
ただ唾を飲み込む音でさえ、やけに大きく喉を鳴らす気がして、風馬は手の中にある携帯端末を見下ろした。
小さな画面に表示されているのはずらりと並んだ数字の羅列。
その上に表示された連絡先の名前を確かめると、緊張のためか再び喉が強張る。
こんなに緊張したのはセキュリティ採用試験の合否発表の時以来かもしれない。
画面に番号を表示させたまま、かれこれ数分間も硬直している自分が流石に情けなくて、こうして考えることを許された休憩時間のリミットも刻一刻と減っていることを思い出し、風馬は意を決して通話ボタンを押した。
プルルル……と、聞き慣れた電子音が風馬の焦りを募らせる。
時間にして数秒。だが風馬にはそれ以上にも感じられるコール時間だった。
この日、この瞬間を数週間前から待ち望んでいたのだ。
風馬はもう一度携帯端末へ視線を落とす。
ジャック。通話相手として登録されているのは、ネオドミノシティの住人であれば、いや、そうでなくとも誰もが知っている名前である。
かつてのキングの名。今はその座を譲っているが、きっといつか必ずキングの称号を取り戻すと信じているのは何も風馬だけではない。
風馬がジャックと出会ったのはほんの偶然にすぎなかったが、それでもこうして自分の連絡先にジャックの名が登録されていることに、時々夢ではないかと疑いたくなることもある。
そして、それが夢ではないと告げるかのように、モニタ越しに聞き覚えのある声が、決して忘れることのない心地よい声が耳を打った。
「風馬。どうした?」
珍しいな、と驚いたような声が通話口の向こうから聞こえてくる。
そう言えば久しくジャックの顔を見ていないことを思い出すと同時に、風馬の喉はあれだけの緊張が嘘のようにすらすらと言葉を発していた。
「いや、ちょっとジャックの声が聞きたくてさ」
ほんの数分前までボタンを押すことさえ躊躇うほどだったのに、風馬の身体はジャックの声を聞いた瞬間、まるで緊張していたことなど演技であったかのように緩やかに笑みを浮かべていた。
冗談めいた風馬の言葉を聞いてか、ジャックが不思議そうに言う。
「?変わった奴だ。会いに来れば良いものを」
ジャックの何気ない一言に風馬は心臓を鷲掴みにされる。
そういう飾らないストレートな言葉をジャックは好んで使用する。
本人はきっとそこに含ませた意味は無いのだろうが、好意を持っている人間からそんな言葉をかけられてどぎまぎしない者はいないだろう。
しかし、相変わらず風馬の意に反して、風馬の口は驚くべきことに酷く自然な受け答えを吐き出した。
一度堰を切ってしまえば、もう止まらなかった。
「あはは。嬉しいな。ところで今日の夜空いてる?」
「?あぁ。それがどうした?」
「実は一緒に食事でもと思って、もちろん奢らせてもらうよ。……最も、迷惑じゃなければだけど」
自分でも驚愕する程よく回る口で一気に要件を伝える。
電話の向こうで、少しだけジャックの声が止まった。
断られるかもしれない。と不意に浮かぶ。
もちろんそんな可能性など承知の上だ。それを覚悟していない筈がない。
少しのためらいの後に、ジャックの声が届いた。
「…だが……いいのか?」
「もちろん!今月はボーナス出たからさ」
ここでジャックに断る隙を与えてなるものか、と思っていたわけでは決してないのだが、嘘と事実とを巧妙に織り交ぜながら、思わず携帯端末を握る手に力が入る。
「一度ジャックとはゆっくり話をしたいと思ってたんだ」
「……あぁ、オレもだ」
「じゃぁ、迎えに行くよ。時間は──」
内心ガッツポーズを決めながら俺は自分でも恥ずかしくなるほど上ずった声で電話口に向かってしゃべっていた。
そして約束の時刻。
予約すら難しいと巷で話題の洒落たフランス料理店に、仕事の休憩時間にちょくちょく連絡を入れてようやく二人分の席を確保した。
ムード的にはワインの一本でも開けたいところではあったが、きっとジャックはDホイールで来るだろうから、酒の予定はない。
酒を飲まなくても食事は十分に楽しめる。
浮足立つのを何とか抑えながらジャックの現住所である時計屋へ足を踏み入れると、ガレージにはすでにジャックが待っていた。
「おぉ、来たな風馬。待っていたぞ」
「じゃあ早速だけど、行こうか」
「おぉ」
ちらりと時計に目をやった風馬の向こうでジャックが相槌を打つ。
まだ予約の時間まで充分ある。どこか景色の良いルートでも通ろうか……とあれこれ脳裏に思い浮かべていると、ジャックが声を上げた。
「行くぞお前達」
「え」
思いもよらない言葉に思わず風馬は二度見してしまう。
ジャックの視線を追って階段上に目を向けると、僅かに開いた扉の下からクロウ、ブルーノ、少し奥まった位置に遊星のこちらを伺う遠慮がちな表情が覗いていた。
早く降りてこい、とジャックに急かされ何となく重い足取りで階段を降りてきた三人を風馬はただただ目を瞬かせながら眺めるしかない。
そんな風馬の前で、クロウが申し訳なさそうに口を開く。
「なぁ、ジャックよお。風馬はきっとお前だけを誘ったんだぜ?」
その言葉に風馬はようやく気がついた。
ジャックの返答がそれを確証付ける。
「何を言う。風馬がそんな器の狭い男であるはずがない」
ジャックにそこまで期待されて正直悪い気がするはずもないが、いまいち状況が理解できていないのと、今後の対処に悩んでいるのも事実でこの時ばかりはおしゃべりな風馬も言葉が出てこない。
そこへブルーノがおずおずとジャックに告げる。
「でも、なんだか風馬さんも驚いているみたいだよ」
「とにかく一度事情を説明してはどうだろう。このままでは風馬も混乱するだろう」
「……ふむそうだな」
遊星に頷き、ジャックがこちらを振り向く。
「すまんな風馬。せっかく誘ってもらったのにご覧の有様だ。実は一週間前に全員の貯金がつきてしまってな」
「い、一週間……!?」
「全く情けない奴らだろう」
ジャックの言葉に改めて遊星たちを見る。なるほど確かに普段の彼らから感じられる覇気が今はない。ジャックだけが妙にぴんぴんしているのを除いては。
「情けねーのはテメェだ!全員が仕事で留守の間に最後の食料を一人で食っちまったんだからな!そりゃピンピンしてるだろうぜ!」
「なにを!?あのキングヌードルはもともとオレのものだ!一人で食って何が悪い!」
「てめぇ開き直りやがって!」
今にも殴りかかりそうなクロウを後ろから抱きかかえながら、遊星が申し訳なさそうに言った。
「こういうことなんだが、驚いただろう。ジャックから、風馬に食事に誘われたから俺たちも──と聞いたんだが、もし情報の行き違いがあるのなら気にせずジャックを連れて行ってくれ」
最後の力を振り絞り暴れるクロウをなだめる遊星は、力んだせいか盛大に腹の虫をうならせて言った。
何とも間の抜けた腹の音にブルーノは乾いた笑いを浮かべながら、今にも倒れそうな顔色をしている。
そんな彼らを目の当たりにし、風馬は小さく苦笑して言った。
「いや、大丈夫。奢ると言ったのは嘘じゃないし、ジャックだけを誘ったわけでもないよ。実は君達のことは牛尾から聞いててさ。いつも世話になっているし、少しでも助けになりたくてね」
よくもまぁこんな思いつきがぺらぺらと口をつくものだと風馬はただ自分の発言に驚くばかりだ。
正直予想外ではあったが、あながち全てが嘘というわけでもない。
彼らには世話になっている。セキュリティとしての立場から見ても、彼らの役に立ちたいというのは本心なのだ。
「ほら見ろ!風馬は貴様らの言うような器量の狭い人間ではないわ!」
「ほんとうにいいのか?」
遊星が躊躇いがちに声をかける。クロウやブルーノも不安げに見つめてきたが、彼らの内心は常に聞こえる腹の虫によって明らかだ。
風馬の返す言葉は一つ。
「勿論さ」
その時風馬は自分でも驚くほど自然な受け答えが出来ていただろう。
同時に頭では様々な考えが巡る。まずは予約していた店にキャンセルの連絡を入れなければならない。
当日に、それも直前になってのキャンセルなど店にとっては迷惑以外の何ものでもないだろうが、元々予約すら困難な店だ。当日の空きも直ぐに他の客が入るから心配ないだろう。
当初予定していたジャックと二人っきりの食事はおあずけとなってしまったが、もしかするとこれで良かったのかもしれない。
もともとジャックがそう簡単に自分のような凡人になびくはずなど無いともわかっていたのだ。
ジャックはとても派手な性格をしている。風馬のような公務員とはそれこそ正反対の、人生の逆境にあえて挑んでいくような荒々しさがある。
そのカリスマ性に惹かれたのも事実で、同時に昔からの友を裏切らないひたむきなところも、自分がジャックという人間を好きになった理由なのだ。
「さぁ。行くぞ風馬」
「あぁ」
だからたまにはこんなエンディングがあっても悪くは無いじゃないか。
それに、外堀から埋めるのもそう悪い手ではないと、昔の偉い人も言っているのだから。
+++
遊ジャ前提っていうより純粋な風ジャかもしれない。
私にしては珍しく風馬さんが当て馬じゃないけど恋人未満のような。
ジャックに自覚がない感じです。
あと風馬さん視点で書くと風馬さんが内心めちゃくちゃ慌ててたり全然スマートじゃなくてそれってイメージ壊さないかなと思いながら打ってたんですが、素でクサイ台詞をそうとは思わずに言ってる風馬さんもかっこいいしこんなこというつもりじゃないのに何か言葉がポンポン出てしまって周りから見るとこの人よくこんな恥ずかしい言葉を恥ずかしげもなく(でもイケメンだから許される)みたいな感じも一度くらい書いていいかなあなんて。
すみませんホント最近落ち着いて文章打ててない……本読みます(´;ω;`)
こんなところまで読んでいただきありがとうございます><
報われない感じが風ジャっぽいなって\(^o^)/
■こんなエンディングも、悪くないと思う。
ごくり。
誰もいない静まり返った狭いプライベートブースの中だ。
ただ唾を飲み込む音でさえ、やけに大きく喉を鳴らす気がして、風馬は手の中にある携帯端末を見下ろした。
小さな画面に表示されているのはずらりと並んだ数字の羅列。
その上に表示された連絡先の名前を確かめると、緊張のためか再び喉が強張る。
こんなに緊張したのはセキュリティ採用試験の合否発表の時以来かもしれない。
画面に番号を表示させたまま、かれこれ数分間も硬直している自分が流石に情けなくて、こうして考えることを許された休憩時間のリミットも刻一刻と減っていることを思い出し、風馬は意を決して通話ボタンを押した。
プルルル……と、聞き慣れた電子音が風馬の焦りを募らせる。
時間にして数秒。だが風馬にはそれ以上にも感じられるコール時間だった。
この日、この瞬間を数週間前から待ち望んでいたのだ。
風馬はもう一度携帯端末へ視線を落とす。
ジャック。通話相手として登録されているのは、ネオドミノシティの住人であれば、いや、そうでなくとも誰もが知っている名前である。
かつてのキングの名。今はその座を譲っているが、きっといつか必ずキングの称号を取り戻すと信じているのは何も風馬だけではない。
風馬がジャックと出会ったのはほんの偶然にすぎなかったが、それでもこうして自分の連絡先にジャックの名が登録されていることに、時々夢ではないかと疑いたくなることもある。
そして、それが夢ではないと告げるかのように、モニタ越しに聞き覚えのある声が、決して忘れることのない心地よい声が耳を打った。
「風馬。どうした?」
珍しいな、と驚いたような声が通話口の向こうから聞こえてくる。
そう言えば久しくジャックの顔を見ていないことを思い出すと同時に、風馬の喉はあれだけの緊張が嘘のようにすらすらと言葉を発していた。
「いや、ちょっとジャックの声が聞きたくてさ」
ほんの数分前までボタンを押すことさえ躊躇うほどだったのに、風馬の身体はジャックの声を聞いた瞬間、まるで緊張していたことなど演技であったかのように緩やかに笑みを浮かべていた。
冗談めいた風馬の言葉を聞いてか、ジャックが不思議そうに言う。
「?変わった奴だ。会いに来れば良いものを」
ジャックの何気ない一言に風馬は心臓を鷲掴みにされる。
そういう飾らないストレートな言葉をジャックは好んで使用する。
本人はきっとそこに含ませた意味は無いのだろうが、好意を持っている人間からそんな言葉をかけられてどぎまぎしない者はいないだろう。
しかし、相変わらず風馬の意に反して、風馬の口は驚くべきことに酷く自然な受け答えを吐き出した。
一度堰を切ってしまえば、もう止まらなかった。
「あはは。嬉しいな。ところで今日の夜空いてる?」
「?あぁ。それがどうした?」
「実は一緒に食事でもと思って、もちろん奢らせてもらうよ。……最も、迷惑じゃなければだけど」
自分でも驚愕する程よく回る口で一気に要件を伝える。
電話の向こうで、少しだけジャックの声が止まった。
断られるかもしれない。と不意に浮かぶ。
もちろんそんな可能性など承知の上だ。それを覚悟していない筈がない。
少しのためらいの後に、ジャックの声が届いた。
「…だが……いいのか?」
「もちろん!今月はボーナス出たからさ」
ここでジャックに断る隙を与えてなるものか、と思っていたわけでは決してないのだが、嘘と事実とを巧妙に織り交ぜながら、思わず携帯端末を握る手に力が入る。
「一度ジャックとはゆっくり話をしたいと思ってたんだ」
「……あぁ、オレもだ」
「じゃぁ、迎えに行くよ。時間は──」
内心ガッツポーズを決めながら俺は自分でも恥ずかしくなるほど上ずった声で電話口に向かってしゃべっていた。
そして約束の時刻。
予約すら難しいと巷で話題の洒落たフランス料理店に、仕事の休憩時間にちょくちょく連絡を入れてようやく二人分の席を確保した。
ムード的にはワインの一本でも開けたいところではあったが、きっとジャックはDホイールで来るだろうから、酒の予定はない。
酒を飲まなくても食事は十分に楽しめる。
浮足立つのを何とか抑えながらジャックの現住所である時計屋へ足を踏み入れると、ガレージにはすでにジャックが待っていた。
「おぉ、来たな風馬。待っていたぞ」
「じゃあ早速だけど、行こうか」
「おぉ」
ちらりと時計に目をやった風馬の向こうでジャックが相槌を打つ。
まだ予約の時間まで充分ある。どこか景色の良いルートでも通ろうか……とあれこれ脳裏に思い浮かべていると、ジャックが声を上げた。
「行くぞお前達」
「え」
思いもよらない言葉に思わず風馬は二度見してしまう。
ジャックの視線を追って階段上に目を向けると、僅かに開いた扉の下からクロウ、ブルーノ、少し奥まった位置に遊星のこちらを伺う遠慮がちな表情が覗いていた。
早く降りてこい、とジャックに急かされ何となく重い足取りで階段を降りてきた三人を風馬はただただ目を瞬かせながら眺めるしかない。
そんな風馬の前で、クロウが申し訳なさそうに口を開く。
「なぁ、ジャックよお。風馬はきっとお前だけを誘ったんだぜ?」
その言葉に風馬はようやく気がついた。
ジャックの返答がそれを確証付ける。
「何を言う。風馬がそんな器の狭い男であるはずがない」
ジャックにそこまで期待されて正直悪い気がするはずもないが、いまいち状況が理解できていないのと、今後の対処に悩んでいるのも事実でこの時ばかりはおしゃべりな風馬も言葉が出てこない。
そこへブルーノがおずおずとジャックに告げる。
「でも、なんだか風馬さんも驚いているみたいだよ」
「とにかく一度事情を説明してはどうだろう。このままでは風馬も混乱するだろう」
「……ふむそうだな」
遊星に頷き、ジャックがこちらを振り向く。
「すまんな風馬。せっかく誘ってもらったのにご覧の有様だ。実は一週間前に全員の貯金がつきてしまってな」
「い、一週間……!?」
「全く情けない奴らだろう」
ジャックの言葉に改めて遊星たちを見る。なるほど確かに普段の彼らから感じられる覇気が今はない。ジャックだけが妙にぴんぴんしているのを除いては。
「情けねーのはテメェだ!全員が仕事で留守の間に最後の食料を一人で食っちまったんだからな!そりゃピンピンしてるだろうぜ!」
「なにを!?あのキングヌードルはもともとオレのものだ!一人で食って何が悪い!」
「てめぇ開き直りやがって!」
今にも殴りかかりそうなクロウを後ろから抱きかかえながら、遊星が申し訳なさそうに言った。
「こういうことなんだが、驚いただろう。ジャックから、風馬に食事に誘われたから俺たちも──と聞いたんだが、もし情報の行き違いがあるのなら気にせずジャックを連れて行ってくれ」
最後の力を振り絞り暴れるクロウをなだめる遊星は、力んだせいか盛大に腹の虫をうならせて言った。
何とも間の抜けた腹の音にブルーノは乾いた笑いを浮かべながら、今にも倒れそうな顔色をしている。
そんな彼らを目の当たりにし、風馬は小さく苦笑して言った。
「いや、大丈夫。奢ると言ったのは嘘じゃないし、ジャックだけを誘ったわけでもないよ。実は君達のことは牛尾から聞いててさ。いつも世話になっているし、少しでも助けになりたくてね」
よくもまぁこんな思いつきがぺらぺらと口をつくものだと風馬はただ自分の発言に驚くばかりだ。
正直予想外ではあったが、あながち全てが嘘というわけでもない。
彼らには世話になっている。セキュリティとしての立場から見ても、彼らの役に立ちたいというのは本心なのだ。
「ほら見ろ!風馬は貴様らの言うような器量の狭い人間ではないわ!」
「ほんとうにいいのか?」
遊星が躊躇いがちに声をかける。クロウやブルーノも不安げに見つめてきたが、彼らの内心は常に聞こえる腹の虫によって明らかだ。
風馬の返す言葉は一つ。
「勿論さ」
その時風馬は自分でも驚くほど自然な受け答えが出来ていただろう。
同時に頭では様々な考えが巡る。まずは予約していた店にキャンセルの連絡を入れなければならない。
当日に、それも直前になってのキャンセルなど店にとっては迷惑以外の何ものでもないだろうが、元々予約すら困難な店だ。当日の空きも直ぐに他の客が入るから心配ないだろう。
当初予定していたジャックと二人っきりの食事はおあずけとなってしまったが、もしかするとこれで良かったのかもしれない。
もともとジャックがそう簡単に自分のような凡人になびくはずなど無いともわかっていたのだ。
ジャックはとても派手な性格をしている。風馬のような公務員とはそれこそ正反対の、人生の逆境にあえて挑んでいくような荒々しさがある。
そのカリスマ性に惹かれたのも事実で、同時に昔からの友を裏切らないひたむきなところも、自分がジャックという人間を好きになった理由なのだ。
「さぁ。行くぞ風馬」
「あぁ」
だからたまにはこんなエンディングがあっても悪くは無いじゃないか。
それに、外堀から埋めるのもそう悪い手ではないと、昔の偉い人も言っているのだから。
+++
遊ジャ前提っていうより純粋な風ジャかもしれない。
私にしては珍しく風馬さんが当て馬じゃないけど恋人未満のような。
ジャックに自覚がない感じです。
あと風馬さん視点で書くと風馬さんが内心めちゃくちゃ慌ててたり全然スマートじゃなくてそれってイメージ壊さないかなと思いながら打ってたんですが、素でクサイ台詞をそうとは思わずに言ってる風馬さんもかっこいいしこんなこというつもりじゃないのに何か言葉がポンポン出てしまって周りから見るとこの人よくこんな恥ずかしい言葉を恥ずかしげもなく(でもイケメンだから許される)みたいな感じも一度くらい書いていいかなあなんて。
すみませんホント最近落ち着いて文章打ててない……本読みます(´;ω;`)
こんなところまで読んでいただきありがとうございます><
本編でアークライトが出てくる前に何とかしたかったクリスとの再会妄想。
時系列はサルガッソから帰ってきた後の設定です。
短め。
+++
時系列はサルガッソから帰ってきた後の設定です。
短め。
+++
■再会
あの古戦場での戦い以来、カイトは父とともに研究室に篭りっきりの生活を送っていた。
アストラルの飛行船に記録されたデータを事細かに解析し、いち早くバリアンに関するより多くの情報を収集するためだ。
バリアンについて、現時点ではまだ情報らしい情報は集められていないのが現状だ。
奴らがこの世界に現れた時に発生する強大なエネルギー反応を捉えてからの対応では後手後手にならざるをえない。
いつまでもそんな状態では駄目だ。
数時間の仮眠を終え父の待つ研究室に戻ったカイトは、扉の前に立った所でふと嗅ぎ慣れたコーヒーの芳香に気づく。
「また、父さんは……」
カイト以上に解析にかかりっきりな父は、眠気をコーヒーで抑えつけるような生活をもう何日も続けている。
いくら多くの情報が欲しいからと言って父が体を壊したのでは意味が無い。
そう苦言を呈したカイトの言葉も暖簾に腕押しとはまさにこのことだろう。
仮眠のため席を外したカイトの目を盗み、父はまた性懲りもなくコーヒーを飲んでいるのだ。
カイトは小さくため息を吐くと、天才と言われている割にどこか頑固で融通のきかない父に一言物申すべく、重く閉ざされた扉を開いた。
「いい加減、カフェイン中毒になっても知らないからな!」
投げやりな言い方になってしまうのも仕方がない、とカイトは半ば開き直るように叫んでいた。
しかし、覗きこんだ部屋の中、カイトの声に小さく肩を跳ねさせたのは思いもよらない人物だった。
「えぇと……すまない。どうも癖になっているようで──」
「え……」
父のものではない声。
カイトの声に振り向いた父のものとは似ても似つかない長い髪の毛に、カイトは思わずその場で立ち尽くす。
驚きか、それとも緊張からかぎゅっと喉が詰まるような違和感に、カイトはそれでも何とかその人物へ掛ける声を絞り出した。
「クリス……」
「久し振りだね。カイト」
元気にしていたかい?と声を掛けられ、カイトはまるで小さな子どものように、小さく頷くしかなかった。
「……父さんは」
研究室を見渡しても父の姿は見当たらない。
つい先程まで仮眠を取っていた自分にわかる筈もなく、カイトはクリスに尋ねていた。
「あぁ。Dr.フェイカーなら、仮眠を取っているよ」
カイトの問いに答えながら、クリスは何故か申し訳なさそうに、手にしていたマグカップを机に置いた。
「勝手に頂いてしまって悪かった。昔と同じ所にあったから、つい癖で」
「いや……構わない」
クリスの謝罪にカイトは首を振る。
「てっきり父さんだとばかり思っていたから……」
そんなカイトの言葉に、クリスは苦笑を漏らした。
「カイトに止められるほどコーヒーが手放せないということは、バリアン世界の調査はあまり思わしくないようだね」
クリスの口から唐突にバリアンの言葉が出たことに驚き、しかし直ぐにクリスや彼の家族もバリアンとは無関係ではないことを思い出して言葉を飲む。
カイトとクリスは暫く連絡を取り合ってはいなかったが、父親同士はどうやら互いに情報を共有しあっていたのだろう。
クリスはカイトに小さく会釈して、まだほのかに湯気の立つコーヒーを口にした。
「私達家族もあれからバリアンやナンバーズについて調べていたんだ。未だこれといった成果は少ないが、少しでも君達家族の力になれればと思ってね」
クリスもバイロンも、数年前までは父Dr.フェイカーと共に異世界について研究していたのだ。
異世界についての知識は当然カイトよりも多く、人手も情報も何もかも足りない中、彼らの協力は何よりも心強いものである。
しかし、カイトはそれを手放しで喜ぶわけにはいかなかった。
アークライト家にあった出来事をなかったことには出来ない。
例え直接カイトは関係していなかったとしても、カイトはDr.フェイカーのやったことを否定できないのだ。
知らず押し黙っていたカイトの顔を伺い見て、クリスは僅かに口元を緩めた。
「気に病むことはない、カイト」
「しかし……」
「もう解決したことだ。今回のこと、君達だけの問題だと言わないで欲しい。ハルトも君も、私にとっては家族のようなものなんだ。私だけじゃない。父も弟達も、君達家族に協力したいんだよ」
「……クリス」
「それに私達もバリアンには聞きたいことがある」
そう告げたクリスの表情はいつにも増して真剣そのものだ。
そして、クリスの言い分はもっともだった。
こうして進み出てくれる以上、カイトに拒む理由など無い。
「ありがとう」
「こちらこそ。……それに私は、前から君と一緒に研究したいと思っていたんだよ」
「え……俺は、クリスや父さん達に比べたら……」
カイトには彼らのような専門知識は無い。
バリアンについて調査をしていると言っても、大きな解析をしているのはカイトではなくオービタルなのである。
ハルトのためだけでなく今となっては自分自身のためでもあるのだが、本格的な分析についてカイトはまだオービタルに頼らざるをえない程無力な存在なのだ。
謙遜ではなく事実としてそう告げたカイトに、それなら……とクリスは口を開いた。
「わからないことがあるのなら、また私が教えよう。いつかのように」
カイトが驚いて顔を上げると、クリスは見覚えのある柔らかな笑みを湛えたまま、おもむろに右手を差し出す。
カイトの脳裏に、初めて彼の手を取った時の記憶が鮮やかに蘇った。
久しぶりに交わしたクリスとの握手は、酷く懐かしさを掻き立てるものだった。
カイトにとってあの時と変わらずクリスの手は大きく、ひんやりとしていたが、クリスだけが昔と違うカイトの手の感触に一人その意味を噛み締めるのだった。
あの古戦場での戦い以来、カイトは父とともに研究室に篭りっきりの生活を送っていた。
アストラルの飛行船に記録されたデータを事細かに解析し、いち早くバリアンに関するより多くの情報を収集するためだ。
バリアンについて、現時点ではまだ情報らしい情報は集められていないのが現状だ。
奴らがこの世界に現れた時に発生する強大なエネルギー反応を捉えてからの対応では後手後手にならざるをえない。
いつまでもそんな状態では駄目だ。
数時間の仮眠を終え父の待つ研究室に戻ったカイトは、扉の前に立った所でふと嗅ぎ慣れたコーヒーの芳香に気づく。
「また、父さんは……」
カイト以上に解析にかかりっきりな父は、眠気をコーヒーで抑えつけるような生活をもう何日も続けている。
いくら多くの情報が欲しいからと言って父が体を壊したのでは意味が無い。
そう苦言を呈したカイトの言葉も暖簾に腕押しとはまさにこのことだろう。
仮眠のため席を外したカイトの目を盗み、父はまた性懲りもなくコーヒーを飲んでいるのだ。
カイトは小さくため息を吐くと、天才と言われている割にどこか頑固で融通のきかない父に一言物申すべく、重く閉ざされた扉を開いた。
「いい加減、カフェイン中毒になっても知らないからな!」
投げやりな言い方になってしまうのも仕方がない、とカイトは半ば開き直るように叫んでいた。
しかし、覗きこんだ部屋の中、カイトの声に小さく肩を跳ねさせたのは思いもよらない人物だった。
「えぇと……すまない。どうも癖になっているようで──」
「え……」
父のものではない声。
カイトの声に振り向いた父のものとは似ても似つかない長い髪の毛に、カイトは思わずその場で立ち尽くす。
驚きか、それとも緊張からかぎゅっと喉が詰まるような違和感に、カイトはそれでも何とかその人物へ掛ける声を絞り出した。
「クリス……」
「久し振りだね。カイト」
元気にしていたかい?と声を掛けられ、カイトはまるで小さな子どものように、小さく頷くしかなかった。
「……父さんは」
研究室を見渡しても父の姿は見当たらない。
つい先程まで仮眠を取っていた自分にわかる筈もなく、カイトはクリスに尋ねていた。
「あぁ。Dr.フェイカーなら、仮眠を取っているよ」
カイトの問いに答えながら、クリスは何故か申し訳なさそうに、手にしていたマグカップを机に置いた。
「勝手に頂いてしまって悪かった。昔と同じ所にあったから、つい癖で」
「いや……構わない」
クリスの謝罪にカイトは首を振る。
「てっきり父さんだとばかり思っていたから……」
そんなカイトの言葉に、クリスは苦笑を漏らした。
「カイトに止められるほどコーヒーが手放せないということは、バリアン世界の調査はあまり思わしくないようだね」
クリスの口から唐突にバリアンの言葉が出たことに驚き、しかし直ぐにクリスや彼の家族もバリアンとは無関係ではないことを思い出して言葉を飲む。
カイトとクリスは暫く連絡を取り合ってはいなかったが、父親同士はどうやら互いに情報を共有しあっていたのだろう。
クリスはカイトに小さく会釈して、まだほのかに湯気の立つコーヒーを口にした。
「私達家族もあれからバリアンやナンバーズについて調べていたんだ。未だこれといった成果は少ないが、少しでも君達家族の力になれればと思ってね」
クリスもバイロンも、数年前までは父Dr.フェイカーと共に異世界について研究していたのだ。
異世界についての知識は当然カイトよりも多く、人手も情報も何もかも足りない中、彼らの協力は何よりも心強いものである。
しかし、カイトはそれを手放しで喜ぶわけにはいかなかった。
アークライト家にあった出来事をなかったことには出来ない。
例え直接カイトは関係していなかったとしても、カイトはDr.フェイカーのやったことを否定できないのだ。
知らず押し黙っていたカイトの顔を伺い見て、クリスは僅かに口元を緩めた。
「気に病むことはない、カイト」
「しかし……」
「もう解決したことだ。今回のこと、君達だけの問題だと言わないで欲しい。ハルトも君も、私にとっては家族のようなものなんだ。私だけじゃない。父も弟達も、君達家族に協力したいんだよ」
「……クリス」
「それに私達もバリアンには聞きたいことがある」
そう告げたクリスの表情はいつにも増して真剣そのものだ。
そして、クリスの言い分はもっともだった。
こうして進み出てくれる以上、カイトに拒む理由など無い。
「ありがとう」
「こちらこそ。……それに私は、前から君と一緒に研究したいと思っていたんだよ」
「え……俺は、クリスや父さん達に比べたら……」
カイトには彼らのような専門知識は無い。
バリアンについて調査をしていると言っても、大きな解析をしているのはカイトではなくオービタルなのである。
ハルトのためだけでなく今となっては自分自身のためでもあるのだが、本格的な分析についてカイトはまだオービタルに頼らざるをえない程無力な存在なのだ。
謙遜ではなく事実としてそう告げたカイトに、それなら……とクリスは口を開いた。
「わからないことがあるのなら、また私が教えよう。いつかのように」
カイトが驚いて顔を上げると、クリスは見覚えのある柔らかな笑みを湛えたまま、おもむろに右手を差し出す。
カイトの脳裏に、初めて彼の手を取った時の記憶が鮮やかに蘇った。
久しぶりに交わしたクリスとの握手は、酷く懐かしさを掻き立てるものだった。
カイトにとってあの時と変わらずクリスの手は大きく、ひんやりとしていたが、クリスだけが昔と違うカイトの手の感触に一人その意味を噛み締めるのだった。
お題はお世話になっております Discolo 様 から。
選択式お題内『ドッペルゲンガー・デート』というお題をお借りしました。

+++
軽く説明をば。
Vカイ前提
既に二人は別れてます。
Vさんは会話の内容にしか出て来ませんので喋りません。
短めですがよろしければどうぞ ><
+++
■ドッペルゲンガー・デート
兄さん、と声を掛けられてカイトはモニタを凝視していた視線を入り口へと向ける。
「おかえり、ハルト」
姿を確かめるまでもない。
カイトが振り返るとハルトはその小さな体に余る大きな荷物を一生懸命に抱きかかえて、転ばぬよう足元を確かめながら、カイトの側へその荷物を下ろした。
「ただいま」
ハルトの持っていた荷物は主に食料品だった。
単純な買い物くらいわざわざ足を運ばなくともオービタルを使いに出しても良かったのだが、部屋に缶詰な父を連れ出す口実にするからとハルトに言い含められカイトもそれに頷いたのは数時間前のことだっただろうか。
久しぶりに父と買い物に行けて、まず誰よりもハルトが気分転換になったのだろう。
ハルトの満足そうな表情を前にカイトも顔を綻ばせる。
「そうだ、兄さん。さっきね、びっくりする人に会ったんだよ」
「へぇ……兄さんも知ってる人か?」
「うん」
幾分勿体つけるようなハルトの言葉に、カイトも興味をそそられる。
確か今日は日曜日、世間では休日だろう。
学校も休みだ。
もしかすると九十九遊馬だろうかと予想を立てたカイトに、しかしハルトは意外な人物の名を告げた。
「クリスがいたんだ」
ハルトの言葉に、カイトの肩が跳ねる。
「……そうか…戻ってたんだな、ハートランドに……」
ハルトの何気ない一言にたどたどしく答えてしまったのも仕方がないことだろう。
カイトは一人冷静さを取り戻すように、無機質なPCの画面を見つめた。
クリスとは友人であり、そしてそれ以上の関係でもあった。
あった、というのは既に終わったことだからである。
クリスに別れを切り出されたのは、一ヶ月ほど前のことだろうか。
恋人だったことも、別れたこともハルトは知っていた筈だが、ハルトに悪気はない。
カイトがクリスのことを知りたがっていると思ったのだろうし、もしかするとカイト自身が知らずそんな態度を取っていたのかもしれない。
それでねと、ハルトが続ける。
「デートしてるみたいだった」
見たままを伝えた言葉に、今度こそカイトは絶句した。
「楽しそうだったよ。……兄さんと別れたばかりなのに」
「いや……いいんだ。元気そうで安心したよ」
何とか絞り出した言葉は、自分自身でも笑ってしまうくらいのつよがりだった。
ハルトがカイトの顔をじっと見つめている。
何となく気まずくて、けれどハルトにもう聞きたくないと言える筈もなくてカイトは曖昧に返事をした。
そんなカイトを見上げたまま、ハルトは椅子に座り宙に浮いたままの足を揺らす。
「二人で並んで、まるで恋人同士みたいで、……とても幸せそうだった」
「……声を掛けたのか?」
カイトとクリスが別れたと言っても、それはハルトには関係のないことだ。
今でもハルトはクリスを慕っているだろうし、クリスもハルトへの態度を変えることはしないだろう。
しかしハルトはカイトの問いに小さく首を振った。
「ううん。父さんと一緒だったし……それに、邪魔しちゃ悪いと思って」
「そうだな」
当然…と言えば、当然だった。
仮にハルトがクリスと話したからと言って、何を尋ねるつもりだったのか。
クリスならば、以前と変わらず友人のまま接してくれるような気もしたが、カイトの方はと言うとそんなことは到底出来そうもない。
親しげに元気かどうか気にされたところで、余計に苦しくなるだけだ。
「兄さんの方は?何か進展あった?」
単純にクリスを見たことを報告しただけなのだろう。
ハルトはカイトのPC画面を覗き込みながら興味深そうに尋ねて来た。
「いいや。お前と父さんが買い物に行っている間もオービタルと調べていたが、相変わらずだな」
「ふーん。大変なんだね」
ハルトは本当なら親子3人で出かけたかったのだろうが、カイトはどうしてもそんな気分になれずハルトの誘いを断った。
にも関わらず何の成果も上げられなかったことにカイトは少しだけ罪悪感を覚える。
「それでね、クリスと一緒にいた人なんだけど」
再びクリスの話を始めたハルトに、カイトは聞きたくないとは言えなかった。
気にならないと言えば嘘になる。
促すわけでも否定するわけでもなくカイトは黙って少しでも気を紛らわせるためにPCのキーを叩く。
カタカタと鳴るキーの打音を聞きながら、ハルトが言った。
「その相手って、兄さんだったんだ」
「え……」
聞き返そうとしたカイトの声を遮るように、ハルトの持つ端末が電子音を奏でた。
ハルトはポケットに入れていた端末から聞こえてきた父の声に返事をし、机に置いた荷物を危なげなく抱え上げる。
「父さんが呼んでるから、僕行くね」
ハルトはそう言って、何事もなかったかのように部屋を後にした。
いつの間にかキーを打つ手がぴたりと止まっていることに気づいたカイトは、呆然とモニタに映る自分を見つめた。
きっと、心臓が止まりそうになるというのは、こんな時に使うのだろう。
+++
解説という名の言い訳タイム\(^o^)/
タイトルがドッペルってネタバレしてるのでどうしようかなーと悩んでたんですけれども。
タイトルを文章の後に出すってのも出来たけど、サイトに乗せる時には見えちゃうので困りましたwww.
たぶんそういう期待を裏切る内容を求められていたのでしょうが、難しいですね。
結局タイトルバレな内容にしかなってなかったら申し訳ないです。力不足ぅ(´;ω;`)
結論を言えばハルトはカイトのドッペルゲンガーを目撃したと言うことです。
後日談とかでクリスに連絡を取ってその時にクリスが身に覚えがないって言えば二人ともドッペル妄想デートだったって落ちになったんですがちょっとやめたwww
もうお前ら別れるなよというw
クリスは別れを切り出したものの、街でたまたまカイトの姿を見つけてよりを戻そうと話しかけたとか。軽くホラーw
こんな所まで読んでいただきありがとうございました><
兄さん、と声を掛けられてカイトはモニタを凝視していた視線を入り口へと向ける。
「おかえり、ハルト」
姿を確かめるまでもない。
カイトが振り返るとハルトはその小さな体に余る大きな荷物を一生懸命に抱きかかえて、転ばぬよう足元を確かめながら、カイトの側へその荷物を下ろした。
「ただいま」
ハルトの持っていた荷物は主に食料品だった。
単純な買い物くらいわざわざ足を運ばなくともオービタルを使いに出しても良かったのだが、部屋に缶詰な父を連れ出す口実にするからとハルトに言い含められカイトもそれに頷いたのは数時間前のことだっただろうか。
久しぶりに父と買い物に行けて、まず誰よりもハルトが気分転換になったのだろう。
ハルトの満足そうな表情を前にカイトも顔を綻ばせる。
「そうだ、兄さん。さっきね、びっくりする人に会ったんだよ」
「へぇ……兄さんも知ってる人か?」
「うん」
幾分勿体つけるようなハルトの言葉に、カイトも興味をそそられる。
確か今日は日曜日、世間では休日だろう。
学校も休みだ。
もしかすると九十九遊馬だろうかと予想を立てたカイトに、しかしハルトは意外な人物の名を告げた。
「クリスがいたんだ」
ハルトの言葉に、カイトの肩が跳ねる。
「……そうか…戻ってたんだな、ハートランドに……」
ハルトの何気ない一言にたどたどしく答えてしまったのも仕方がないことだろう。
カイトは一人冷静さを取り戻すように、無機質なPCの画面を見つめた。
クリスとは友人であり、そしてそれ以上の関係でもあった。
あった、というのは既に終わったことだからである。
クリスに別れを切り出されたのは、一ヶ月ほど前のことだろうか。
恋人だったことも、別れたこともハルトは知っていた筈だが、ハルトに悪気はない。
カイトがクリスのことを知りたがっていると思ったのだろうし、もしかするとカイト自身が知らずそんな態度を取っていたのかもしれない。
それでねと、ハルトが続ける。
「デートしてるみたいだった」
見たままを伝えた言葉に、今度こそカイトは絶句した。
「楽しそうだったよ。……兄さんと別れたばかりなのに」
「いや……いいんだ。元気そうで安心したよ」
何とか絞り出した言葉は、自分自身でも笑ってしまうくらいのつよがりだった。
ハルトがカイトの顔をじっと見つめている。
何となく気まずくて、けれどハルトにもう聞きたくないと言える筈もなくてカイトは曖昧に返事をした。
そんなカイトを見上げたまま、ハルトは椅子に座り宙に浮いたままの足を揺らす。
「二人で並んで、まるで恋人同士みたいで、……とても幸せそうだった」
「……声を掛けたのか?」
カイトとクリスが別れたと言っても、それはハルトには関係のないことだ。
今でもハルトはクリスを慕っているだろうし、クリスもハルトへの態度を変えることはしないだろう。
しかしハルトはカイトの問いに小さく首を振った。
「ううん。父さんと一緒だったし……それに、邪魔しちゃ悪いと思って」
「そうだな」
当然…と言えば、当然だった。
仮にハルトがクリスと話したからと言って、何を尋ねるつもりだったのか。
クリスならば、以前と変わらず友人のまま接してくれるような気もしたが、カイトの方はと言うとそんなことは到底出来そうもない。
親しげに元気かどうか気にされたところで、余計に苦しくなるだけだ。
「兄さんの方は?何か進展あった?」
単純にクリスを見たことを報告しただけなのだろう。
ハルトはカイトのPC画面を覗き込みながら興味深そうに尋ねて来た。
「いいや。お前と父さんが買い物に行っている間もオービタルと調べていたが、相変わらずだな」
「ふーん。大変なんだね」
ハルトは本当なら親子3人で出かけたかったのだろうが、カイトはどうしてもそんな気分になれずハルトの誘いを断った。
にも関わらず何の成果も上げられなかったことにカイトは少しだけ罪悪感を覚える。
「それでね、クリスと一緒にいた人なんだけど」
再びクリスの話を始めたハルトに、カイトは聞きたくないとは言えなかった。
気にならないと言えば嘘になる。
促すわけでも否定するわけでもなくカイトは黙って少しでも気を紛らわせるためにPCのキーを叩く。
カタカタと鳴るキーの打音を聞きながら、ハルトが言った。
「その相手って、兄さんだったんだ」
「え……」
聞き返そうとしたカイトの声を遮るように、ハルトの持つ端末が電子音を奏でた。
ハルトはポケットに入れていた端末から聞こえてきた父の声に返事をし、机に置いた荷物を危なげなく抱え上げる。
「父さんが呼んでるから、僕行くね」
ハルトはそう言って、何事もなかったかのように部屋を後にした。
いつの間にかキーを打つ手がぴたりと止まっていることに気づいたカイトは、呆然とモニタに映る自分を見つめた。
きっと、心臓が止まりそうになるというのは、こんな時に使うのだろう。
+++
解説という名の言い訳タイム\(^o^)/
タイトルがドッペルってネタバレしてるのでどうしようかなーと悩んでたんですけれども。
タイトルを文章の後に出すってのも出来たけど、サイトに乗せる時には見えちゃうので困りましたwww.
たぶんそういう期待を裏切る内容を求められていたのでしょうが、難しいですね。
結局タイトルバレな内容にしかなってなかったら申し訳ないです。力不足ぅ(´;ω;`)
結論を言えばハルトはカイトのドッペルゲンガーを目撃したと言うことです。
後日談とかでクリスに連絡を取ってその時にクリスが身に覚えがないって言えば二人ともドッペル妄想デートだったって落ちになったんですがちょっとやめたwww
もうお前ら別れるなよというw
クリスは別れを切り出したものの、街でたまたまカイトの姿を見つけてよりを戻そうと話しかけたとか。軽くホラーw
こんな所まで読んでいただきありがとうございました><
(´∀`)
お題でリハビリしようにも何故か一話一話が長くなってしまうのでちょいちょい1500文字程度の文章でリハビリして行こうかなと今更思い立ちました。(手遅れ)
Ⅱでクリス再登場する前にクリスにタメ口なカイトに慣れとかなきゃなーと思いつついつも書くのはVカイと言うよりクリカイな件。
+++
また懲りずにクリカイ別れネタです。
カイト独白。
クリス喋りません出て来ません←
内容的には以前の「さよならの雨降り」と丸かぶりしてる気がしますが気にしない(暗示)
+++
お題でリハビリしようにも何故か一話一話が長くなってしまうのでちょいちょい1500文字程度の文章でリハビリして行こうかなと今更思い立ちました。(手遅れ)
Ⅱでクリス再登場する前にクリスにタメ口なカイトに慣れとかなきゃなーと思いつついつも書くのはVカイと言うよりクリカイな件。
+++
また懲りずにクリカイ別れネタです。
カイト独白。
クリス喋りません出て来ません←
内容的には以前の「さよならの雨降り」と丸かぶりしてる気がしますが気にしない(暗示)
+++
+++
■パンドラの匣
クリスを失った俺に一体何が残されていただろう。
きっと俺は自分が思っているよりも多くの物を失っている。
クリスはカイトの師であった。
その師を失った今、もう彼にデュエルを教わることは出来ない。
そしてクリスは俺にとってたったそれだけの存在ではなかった。
幼い頃から田舎暮らしで、友人と呼べる存在のいなかったカイトにとって初めて友と呼べる存在だったのがクリスだ。
うれしい時は共に笑い、悲しい時には一緒に泣いてくれる存在。
苦しい時は寄り添い、間違えた時には叱ってくれた。
そんな彼との関係はまるで、父と子、そして、兄と弟のようだったかもしれない。
俺はクリス1人を失ったことで師を、友を、そして家族を失ったのだ。
俺に残されたのは、教えられた通りに彼の後を追うだけのデュエルと、優しかった頃の彼の言葉。
そして、怒りを孕んだ彼の冷たい眼差しだけ。
何故かなんて、話してくれなかった。
物事には必ず原因があり、結果がある。
何かしらの理由があるから起こる事象なのだとカイトに言ったその彼は、けれどカイトに何も説明してはくれなかった。
答えを探すにも思い当たる節がない。
答えを聞こうにも、もう彼はいないのだ。
カイトに冷たい視線を残し、何も言わずに立ち去ってしまったのだ。
悩むことも出来ただろう。
実際にカイトはクリスのいなくなった部屋の前に立ち、ずっと考えていた。
あんなに優しかった彼が、何故突然豹変してしまったのだろうと。
デュエルにおいても、その他に関しても、その全てに理由があるのだと優しく諭してくれた彼が、どうして何も告げずにカイトの目の前から消えてしまったのか。
何故あんなにも怒りや憎しみに満ちた瞳でカイトを睨みつけなければならなかったのか。
もしかするとカイトには一生悩み続けても答えはわからないのかもしれない。
いや、あえて目を背けたいだけなのか。
あまりに多くのものを一度に失い過ぎてしまったのだという現実から。
そしてそれがたった一人の消失によって失われてしまったという事実から。
それ程までにカイトの中でクリスの存在は大きなものになってしまっていたのだ。
大切なものを失ったカイトの中には一体何が残されているのだろう。
クリスがカイトの前から消えても、彼に教わったデュエルはカイトの中に残っている。
ならばこれは何のための力か。
何のために俺は、クリスに教えを請い、その力を求めたのか。
これは大切な家族を……弟を守るために欲し、そして掴み取った力だ。
俺は決して全てを失ってしまったわけではない。
ハルトを守るための力も、ハルトを守りたいという気持ちも、まだこの胸の中にある。
俺にはハルトがいる。
最初からハルトしかいなかった。
何も変わってなどいないのだ。
だからもう、いなくなった者を、失くしてしまった物を数えるのはやめよう。
俺はもう貴方の幻影に縋らない。
自分以外の誰かを頼ることもしない。
俺にはもうハルトしか残されていないけれど、ハルトさえいてくれるのならば、他に何も望まない。
だってそうだろう?
ハルトこそが俺の中に残された最後の希望であり、最大の救いなのだから。
+++
重いよ、兄さん(;^ω^)
リハビリと言いつつどんどん悪化してってるようにしか思えない(((;゚д゚)))
ちなみに後半の「失くしてしまった物を数えるのはやめよう」というのはSound HorizonのRevoさんがライブでおっしゃっていたことです。
なくしたものを数えるよりも、今持っている物を数えよう。
カイトにとってクリスは多くを与えてくれて、クリスがいなくなったことでカイトは多くを失ったけれど、カイトの中にはそれ以上に大切なものが残っている。という短くまとめるとこんな感じです。
カイトさんは弟離れ出来るのだろうか。いやしなくても全然構わないのですが(´∀`)
文中では恋人とは明言してないですが、もちろん恋人だったかもしれないし、けどお互い好意はあったけどそれを互いに伝えることはしなかったとか、そういう煮え切らないような関係もたまには。
遊馬と出会う前のカイトの周りにはそんなにたくさんの人間はいなかったと思うのです。研究に没頭する父と、わけわかんないメガネのうさんくさいおっさんと、大事な弟。ハルトにかかりっきりで、アルプスではハルト元気そうでしたがあんな山奥(っぽかった)だし年の近い友達とかもいなかったんじゃないかと。
そうなるとカイトの世界で大事なのはもう無条件でハルト。ハルト第一。
そんな時カイトにとっては恐らく初めて優しくしてくれた年上のクリスに出会って、クリスはカイトのことを自分の弟と重ねて、カイトはクリスに弟がいるかも知らなかったとして、クリスのことをまるで兄のような存在に思い始めて。
今まで弟のために自分が何とかしなければ、と背伸びしていたカイトの気持ちを初めてわかってくれて兄としての何たるかを教えてくれたクリスって存在はやっぱりカイトにとって特別なのではという妄想を長々。
毎度タイトルつけるのは苦手ですorz
こんなところまで読んでいただきありがとうございます……っ!!
■パンドラの匣
クリスを失った俺に一体何が残されていただろう。
きっと俺は自分が思っているよりも多くの物を失っている。
クリスはカイトの師であった。
その師を失った今、もう彼にデュエルを教わることは出来ない。
そしてクリスは俺にとってたったそれだけの存在ではなかった。
幼い頃から田舎暮らしで、友人と呼べる存在のいなかったカイトにとって初めて友と呼べる存在だったのがクリスだ。
うれしい時は共に笑い、悲しい時には一緒に泣いてくれる存在。
苦しい時は寄り添い、間違えた時には叱ってくれた。
そんな彼との関係はまるで、父と子、そして、兄と弟のようだったかもしれない。
俺はクリス1人を失ったことで師を、友を、そして家族を失ったのだ。
俺に残されたのは、教えられた通りに彼の後を追うだけのデュエルと、優しかった頃の彼の言葉。
そして、怒りを孕んだ彼の冷たい眼差しだけ。
何故かなんて、話してくれなかった。
物事には必ず原因があり、結果がある。
何かしらの理由があるから起こる事象なのだとカイトに言ったその彼は、けれどカイトに何も説明してはくれなかった。
答えを探すにも思い当たる節がない。
答えを聞こうにも、もう彼はいないのだ。
カイトに冷たい視線を残し、何も言わずに立ち去ってしまったのだ。
悩むことも出来ただろう。
実際にカイトはクリスのいなくなった部屋の前に立ち、ずっと考えていた。
あんなに優しかった彼が、何故突然豹変してしまったのだろうと。
デュエルにおいても、その他に関しても、その全てに理由があるのだと優しく諭してくれた彼が、どうして何も告げずにカイトの目の前から消えてしまったのか。
何故あんなにも怒りや憎しみに満ちた瞳でカイトを睨みつけなければならなかったのか。
もしかするとカイトには一生悩み続けても答えはわからないのかもしれない。
いや、あえて目を背けたいだけなのか。
あまりに多くのものを一度に失い過ぎてしまったのだという現実から。
そしてそれがたった一人の消失によって失われてしまったという事実から。
それ程までにカイトの中でクリスの存在は大きなものになってしまっていたのだ。
大切なものを失ったカイトの中には一体何が残されているのだろう。
クリスがカイトの前から消えても、彼に教わったデュエルはカイトの中に残っている。
ならばこれは何のための力か。
何のために俺は、クリスに教えを請い、その力を求めたのか。
これは大切な家族を……弟を守るために欲し、そして掴み取った力だ。
俺は決して全てを失ってしまったわけではない。
ハルトを守るための力も、ハルトを守りたいという気持ちも、まだこの胸の中にある。
俺にはハルトがいる。
最初からハルトしかいなかった。
何も変わってなどいないのだ。
だからもう、いなくなった者を、失くしてしまった物を数えるのはやめよう。
俺はもう貴方の幻影に縋らない。
自分以外の誰かを頼ることもしない。
俺にはもうハルトしか残されていないけれど、ハルトさえいてくれるのならば、他に何も望まない。
だってそうだろう?
ハルトこそが俺の中に残された最後の希望であり、最大の救いなのだから。
+++
重いよ、兄さん(;^ω^)
リハビリと言いつつどんどん悪化してってるようにしか思えない(((;゚д゚)))
ちなみに後半の「失くしてしまった物を数えるのはやめよう」というのはSound HorizonのRevoさんがライブでおっしゃっていたことです。
なくしたものを数えるよりも、今持っている物を数えよう。
カイトにとってクリスは多くを与えてくれて、クリスがいなくなったことでカイトは多くを失ったけれど、カイトの中にはそれ以上に大切なものが残っている。という短くまとめるとこんな感じです。
カイトさんは弟離れ出来るのだろうか。いやしなくても全然構わないのですが(´∀`)
文中では恋人とは明言してないですが、もちろん恋人だったかもしれないし、けどお互い好意はあったけどそれを互いに伝えることはしなかったとか、そういう煮え切らないような関係もたまには。
遊馬と出会う前のカイトの周りにはそんなにたくさんの人間はいなかったと思うのです。研究に没頭する父と、わけわかんないメガネのうさんくさいおっさんと、大事な弟。ハルトにかかりっきりで、アルプスではハルト元気そうでしたがあんな山奥(っぽかった)だし年の近い友達とかもいなかったんじゃないかと。
そうなるとカイトの世界で大事なのはもう無条件でハルト。ハルト第一。
そんな時カイトにとっては恐らく初めて優しくしてくれた年上のクリスに出会って、クリスはカイトのことを自分の弟と重ねて、カイトはクリスに弟がいるかも知らなかったとして、クリスのことをまるで兄のような存在に思い始めて。
今まで弟のために自分が何とかしなければ、と背伸びしていたカイトの気持ちを初めてわかってくれて兄としての何たるかを教えてくれたクリスって存在はやっぱりカイトにとって特別なのではという妄想を長々。
毎度タイトルつけるのは苦手ですorz
こんなところまで読んでいただきありがとうございます……っ!!
拍手ありがとうございますっ!
稚拙ではありますが励みとして頑張ります!
+++
ハトカイも済んでないのに早速寄り道してますが(´;ω;`)
お題はいつもお世話になっております Discolo 様 から。
言い訳5題より『仮面を被るのは、知られたくないから』というお題をお借りしました。

軽く諸注意をば。
毎度のことですがゼアル小ネタ捏造です。
Dr.フェイカーによって生贄にされたバイロンさんin異世界(バリアン)でバイロンさんが闇堕ちするまでの妄想。
ほぼバイロンさんの独白。
セリフ的にすぐわかると思うのですが捏造で絡ませてます。
リハビリ兼ねたやっつけgdgd←いつものこと
萌えとは無縁の話で申し訳ないです。
+++
稚拙ではありますが励みとして頑張ります!
+++
ハトカイも済んでないのに早速寄り道してますが(´;ω;`)
お題はいつもお世話になっております Discolo 様 から。
言い訳5題より『仮面を被るのは、知られたくないから』というお題をお借りしました。

軽く諸注意をば。
毎度のことですがゼアル小ネタ捏造です。
Dr.フェイカーによって生贄にされたバイロンさんin異世界(バリアン)でバイロンさんが闇堕ちするまでの妄想。
ほぼバイロンさんの独白。
セリフ的にすぐわかると思うのですが捏造で絡ませてます。
リハビリ兼ねたやっつけgdgd←いつものこと
萌えとは無縁の話で申し訳ないです。
+++
+++
私は家族を愛していた。
一番下のミハエルは好奇心旺盛で誰にでも優しくできる強い心を持っていた。末っ子ながらしっかりもので、温厚な性格で衝突しがちな兄たちの仲裁役となってくれていた。
真ん中のトーマスはとにかくやんちゃで気が強く、よくミハエルと二人でじゃれあうように笑っていた。その実純粋で面倒見がよく、自身もまだ幼い子どもながら必死に背伸びをして、弟のよき兄になろうと頑張っていた。
長男のクリスには父親である私も頭があがらない。研究一筋で家を留守にしがちな不甲斐ない父に代わり、真面目でよく出来た彼は二人の弟達のよき兄であってくれていた。
兄として。時によき手本となるべく誰よりも我慢し、随分と無理をさせたことだろう。それでも文句ひとつ言わずいつも下の兄弟たちを優しく見守り育ててくれた。
3人の子どもたちは私を愛し慕ってくれたが、果たして父親である私はというと、彼らにとっての良き父足り得たのだろうか。
彼らのくれた暖かな愛情に少しでも父親らしい行いで報いることが出来ていたのだろうか。
忙しさは心を亡くすとはよく言ったもので、研究にかまけていた頃の私と言えば、子どもたちから与えられる限りない愛情を当然のもののように思ってしまっていたのではないか。
皮肉なものだ。これまで当たり前のように享受していた愛情の、絆の大切さを噛み締めるのは、いつだってそれらを失った時なのである。
失って、裏切られて、奪われて初めてその大切さと儚さに気づいた。
見知らぬ土地で目覚めた私が、まずはじめに見つけたのは憎悪の感情だった。
今まで全幅の信頼を寄せ、無二の親友と思っていた男に裏切られた私の中は、あの紅い光に飲み込まれた瞬間から、とっくに空っぽになってしまっていたのだ。
これまで全てを犠牲にして、いや、その時は犠牲にしているなどとは露ほども思わず。
ただ大切な友のために、彼の役に立ちたいという善意のみが私の原動力だったのだ。
しかし友に裏切られた今の私を突き動かすのは、ぐるぐると渦を巻くどす黒い憎悪に他ならない。
ずっと信じていた。
仲間であると思っていた。
少なくとも、友であったと言えるだけの年月を共に費やしてきたのに。
最後に思い出す彼の言葉は、まるで呪詛のように全身を突き刺し、今も私の心を蝕み喰らい続けている。
紛れも無い狂気が、空っぽの心をじわじわと蝕んでいくことに、私は何の疑問も抱かなかった。
はじめは小さな黒い染みでしかなかったものが、憎悪を抱き異世界をさまよう内、次第に顔の左半分を飲み込もうとしていた。
その真黒い濁流を復讐の糧にしないかと持ちかけてきたのは、かつて友だった男の求めた異世界からの使者であった。
──復讐したくはないか?
「復讐……」
長きにわたる放浪の末、力尽き崩れ落ちた私の虚ろな視界に、その声の主が立っていた。
そう見えたのは幻想で、実際にはただの幻を見ていたのかもしれない。
ただ、囁かれたその言葉を耳にした直後、これまで抱いたことのない醜い感情が、私の心に広がった。
希望を失った虚ろな心が湧き上がる怒りで満たされるまで、そう長くはかからなかった。
──許せないんだろう…?
元の世界に戻り、かつての友に、自分の受けたものと同じ……いや、それ以上の苦しみを与えてやりたいと思わないのか?
囁きはどこからともなく、直接頭の中へ反響した。
けれどどうやって苦しみを与えればいい?
一人では無理だ。協力者が必要だ。
念入りに計画し、抜かりなく進められる協力者を。
意のままに動き、命を賭けるほどの忠誠を誓える手駒を…………。
そうだ、いるじゃないか。
父のために怒り、父のためにその身を捧げてくれる、世界で唯一信用できる血を分けた家族が。
彼らなら、決して私を裏切らない。
かつて友だった男は、私からその家族をも取り上げた。
──お前は全てをDr.フェイカーのために捧げてきた。家族も、欲も全てを捨て、ただ純粋にひたすらに。
そうだ……。全ては友のためだった。
──友のためによかれと思ってやったことの、その代償を数えてみるといい。信頼を裏切られ、家族との時間を裂かれ、こんな異界で姿さえ留められず放浪してるのは一体誰のせいだ?
フェイカー……。
何故こんなことになってしまったのだろう。
ただ君の力になりたくて、彼の喜んだ顔が見たくて、これまでずっと側で支えてきただけなのに。
──Dr.フェイカーが憎いだろ?
あぁ……憎い。
彼と過ごした時間も、彼に捧げた信頼も、彼のために尽くした善意も。
家族を省みること無く友のために尽くした年月。
そのために多くを犠牲にし、積み重ねてきた筈の人生の全てが一瞬の内に無駄になったのだ。
「許さん……許さんぞ……──フェイカー……ッ!」
怒りと憎しみだけが、私の中に渦巻いていた。
──復讐したいなら手伝ってやろう。お前に力をくれてやる。
それが悪魔の囁きだったのだと、きっと私は気づいていたのだ。
新たな力を手に入れ、元いた世界に戻った時には既に数年もの時間が流れていた。
あの時生まれた一つの黒い染みは、まるで宇宙を飲み込むブラックホールのように、今では顔の半分を覆い尽くすまでに肥大していた。
醜い顔を隠すために私は仮面を被り素顔を覆った。
仮面の下には息子達の知っているバイロン・アークライトの顔はない。
けれど例え顔が変わっていても、彼らにはきっと僕が誰であるのか分かることだろう。
だって、世界で唯一の血を分けた本当の家族なのだから。
けれど息子達よ、どうか仮面の下に昔の父の姿を探さないで欲しい。
この仮面の下には何もない。
仮面の下に残っているものと言えば、私の全てを喰らい尽くしここまで大きくなった昏い深淵だけ。
お前達が愛した父は……そして、お前達を愛した父は、遠い昔にもう死んでしまったのだ。
赤い光の満ちた祭壇で友の歪んだ嘲笑を目に焼き付けながら、ここではない他の世界で疾うの昔に息絶えてしまったのだ。
それを告げないのは私に残された最後の優しさなのだと、君達ならば分かってくれると私はそう信じている。
■仮面を被るのは、知られたくないから
+++
誰も報われない感じですが。
バイロンさんがバリアンに落ちてから戻ってくるまでのこととか、バリアンと具体的にどんな取引みたいなことがあったのか全く不明ですけれども。
バイロンに復讐をけしかけたのがベクターだったらまじ真ゲスェ……。
アークライト再登場しないかなー。
録画したBD見直してたらクリスがほんとにイケメンでクリカイ書きたいそしてMr.ハートランド足りない(´;ω;`)
こんなところまでご覧頂きありがとうございました><
私は家族を愛していた。
一番下のミハエルは好奇心旺盛で誰にでも優しくできる強い心を持っていた。末っ子ながらしっかりもので、温厚な性格で衝突しがちな兄たちの仲裁役となってくれていた。
真ん中のトーマスはとにかくやんちゃで気が強く、よくミハエルと二人でじゃれあうように笑っていた。その実純粋で面倒見がよく、自身もまだ幼い子どもながら必死に背伸びをして、弟のよき兄になろうと頑張っていた。
長男のクリスには父親である私も頭があがらない。研究一筋で家を留守にしがちな不甲斐ない父に代わり、真面目でよく出来た彼は二人の弟達のよき兄であってくれていた。
兄として。時によき手本となるべく誰よりも我慢し、随分と無理をさせたことだろう。それでも文句ひとつ言わずいつも下の兄弟たちを優しく見守り育ててくれた。
3人の子どもたちは私を愛し慕ってくれたが、果たして父親である私はというと、彼らにとっての良き父足り得たのだろうか。
彼らのくれた暖かな愛情に少しでも父親らしい行いで報いることが出来ていたのだろうか。
忙しさは心を亡くすとはよく言ったもので、研究にかまけていた頃の私と言えば、子どもたちから与えられる限りない愛情を当然のもののように思ってしまっていたのではないか。
皮肉なものだ。これまで当たり前のように享受していた愛情の、絆の大切さを噛み締めるのは、いつだってそれらを失った時なのである。
失って、裏切られて、奪われて初めてその大切さと儚さに気づいた。
見知らぬ土地で目覚めた私が、まずはじめに見つけたのは憎悪の感情だった。
今まで全幅の信頼を寄せ、無二の親友と思っていた男に裏切られた私の中は、あの紅い光に飲み込まれた瞬間から、とっくに空っぽになってしまっていたのだ。
これまで全てを犠牲にして、いや、その時は犠牲にしているなどとは露ほども思わず。
ただ大切な友のために、彼の役に立ちたいという善意のみが私の原動力だったのだ。
しかし友に裏切られた今の私を突き動かすのは、ぐるぐると渦を巻くどす黒い憎悪に他ならない。
ずっと信じていた。
仲間であると思っていた。
少なくとも、友であったと言えるだけの年月を共に費やしてきたのに。
最後に思い出す彼の言葉は、まるで呪詛のように全身を突き刺し、今も私の心を蝕み喰らい続けている。
紛れも無い狂気が、空っぽの心をじわじわと蝕んでいくことに、私は何の疑問も抱かなかった。
はじめは小さな黒い染みでしかなかったものが、憎悪を抱き異世界をさまよう内、次第に顔の左半分を飲み込もうとしていた。
その真黒い濁流を復讐の糧にしないかと持ちかけてきたのは、かつて友だった男の求めた異世界からの使者であった。
──復讐したくはないか?
「復讐……」
長きにわたる放浪の末、力尽き崩れ落ちた私の虚ろな視界に、その声の主が立っていた。
そう見えたのは幻想で、実際にはただの幻を見ていたのかもしれない。
ただ、囁かれたその言葉を耳にした直後、これまで抱いたことのない醜い感情が、私の心に広がった。
希望を失った虚ろな心が湧き上がる怒りで満たされるまで、そう長くはかからなかった。
──許せないんだろう…?
元の世界に戻り、かつての友に、自分の受けたものと同じ……いや、それ以上の苦しみを与えてやりたいと思わないのか?
囁きはどこからともなく、直接頭の中へ反響した。
けれどどうやって苦しみを与えればいい?
一人では無理だ。協力者が必要だ。
念入りに計画し、抜かりなく進められる協力者を。
意のままに動き、命を賭けるほどの忠誠を誓える手駒を…………。
そうだ、いるじゃないか。
父のために怒り、父のためにその身を捧げてくれる、世界で唯一信用できる血を分けた家族が。
彼らなら、決して私を裏切らない。
かつて友だった男は、私からその家族をも取り上げた。
──お前は全てをDr.フェイカーのために捧げてきた。家族も、欲も全てを捨て、ただ純粋にひたすらに。
そうだ……。全ては友のためだった。
──友のためによかれと思ってやったことの、その代償を数えてみるといい。信頼を裏切られ、家族との時間を裂かれ、こんな異界で姿さえ留められず放浪してるのは一体誰のせいだ?
フェイカー……。
何故こんなことになってしまったのだろう。
ただ君の力になりたくて、彼の喜んだ顔が見たくて、これまでずっと側で支えてきただけなのに。
──Dr.フェイカーが憎いだろ?
あぁ……憎い。
彼と過ごした時間も、彼に捧げた信頼も、彼のために尽くした善意も。
家族を省みること無く友のために尽くした年月。
そのために多くを犠牲にし、積み重ねてきた筈の人生の全てが一瞬の内に無駄になったのだ。
「許さん……許さんぞ……──フェイカー……ッ!」
怒りと憎しみだけが、私の中に渦巻いていた。
──復讐したいなら手伝ってやろう。お前に力をくれてやる。
それが悪魔の囁きだったのだと、きっと私は気づいていたのだ。
新たな力を手に入れ、元いた世界に戻った時には既に数年もの時間が流れていた。
あの時生まれた一つの黒い染みは、まるで宇宙を飲み込むブラックホールのように、今では顔の半分を覆い尽くすまでに肥大していた。
醜い顔を隠すために私は仮面を被り素顔を覆った。
仮面の下には息子達の知っているバイロン・アークライトの顔はない。
けれど例え顔が変わっていても、彼らにはきっと僕が誰であるのか分かることだろう。
だって、世界で唯一の血を分けた本当の家族なのだから。
けれど息子達よ、どうか仮面の下に昔の父の姿を探さないで欲しい。
この仮面の下には何もない。
仮面の下に残っているものと言えば、私の全てを喰らい尽くしここまで大きくなった昏い深淵だけ。
お前達が愛した父は……そして、お前達を愛した父は、遠い昔にもう死んでしまったのだ。
赤い光の満ちた祭壇で友の歪んだ嘲笑を目に焼き付けながら、ここではない他の世界で疾うの昔に息絶えてしまったのだ。
それを告げないのは私に残された最後の優しさなのだと、君達ならば分かってくれると私はそう信じている。
■仮面を被るのは、知られたくないから
+++
誰も報われない感じですが。
バイロンさんがバリアンに落ちてから戻ってくるまでのこととか、バリアンと具体的にどんな取引みたいなことがあったのか全く不明ですけれども。
バイロンに復讐をけしかけたのがベクターだったらまじ真ゲスェ……。
アークライト再登場しないかなー。
録画したBD見直してたらクリスがほんとにイケメンでクリカイ書きたいそしてMr.ハートランド足りない(´;ω;`)
こんなところまでご覧頂きありがとうございました><
出来れば真月の話を見る前にうpしたかったネタですが。
ちなみに本編一切関係ありません。
気持ち程度の真月×カイト風小ネタです。
+++
お題はお世話になっております Discolo 様 から。
『嘘吐きウサギ』というお題をお借りしました。

+++
ちなみに本編一切関係ありません。
気持ち程度の真月×カイト風小ネタです。
+++
お題はお世話になっております Discolo 様 から。
『嘘吐きウサギ』というお題をお借りしました。

+++
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■嘘吐きウサギ
天気の良い放課後。
チャイムと同時に立ち上がった真月に悪い予感を感じる暇もなく、遊馬は半ば引きずられるような形で教室を飛び出した。
「さあ!急ぎましょう遊馬くん!」
「ぐぇ、ちょ……待てよ真月、落ち着けって……っ!」
引きずられるというより首根っこを掴まれる勢いのこれは最早拉致ではないか。
そう文句の一つも言いたかったが、下履きに履き替えた瞬間から今に至るまで休むこと無く猛ダッシュを続けていた真月には人の話を聞く気などさらさら無いらしい。
「いえいえ!ゆっくりしてたら日が暮れてしまいます!僕の用事に遅くまで付き合って貰うのは申し訳ありませんから!」
「いや、そんな焦んなくたって俺も大丈夫だし、太陽だって待ってくれるって」
「そんな悠長なこと言ってられませんよ!」
あぁ、やっぱり聞く気がない。
いつもは小鳥や鉄男に飽きれられっぱなしの遊馬だが、真月にだけは振り回されっぱなしである。
小鳥や鉄男も普段はこんな心境なのかもしれないと思うと我ながら今後の身の振り方に悩んでしまうが、今はそんな場合ではない。
実質的には真月に引きずられているとは言え、遊馬は野良猫のように身軽ではない。
真月の妙に巧みな方向転換に右へ左へとぶんぶん振り回されていると、胃に収めたデュエル飯と数時間ぶりに再会しそうである。
「あぁ!もう、無理!タンマ!」
無理やり真月を引き剥がして、遊馬は転がるように道路脇の土手へ身を投げた。
真月に引きずり回されるよりも土手の芝生にダイブするほうがいくらかマシで、遊馬は真月の手から逃れ土手に座り込むと苦しげに呻き声をあげた。
「死ぬかと思った……」
わりと冗談ではないと思いながら、遊馬は脱力して土手の芝生に横たわる。
息を整えるため大きく腹を上下させていると、頭上から申し訳なさそうに近づく足音が聞こえてきた。
「すみません遊馬くん、僕ついはしゃいでしまって……」
お詫びと言っては何ですが、と真月はいつの間に買いに行ったのだろうか、遊馬にペットボトル飲料を差し出した。
「え、何……俺にくれんの?」
「はい!流石に僕も学校から全力疾走して疲れましたし、そう言えば遊馬くんにお礼もしてなかったなって」
「そんなお礼される程のことじゃねーけど……サンキューな」
そう言って、遊馬は真月から飲み物の容器を受け取った。
お礼というのも、今こうして真月にこうして振り回されているのも、全ては数日前に遡る。
事の起こりは今週の初めだったか、遊馬は真月にどうしてもと頼み込まれ、カイトを紹介する約束をしたのだ。
とは言ったものの、遊馬や真月には学校があり、またカイトもバリアンのことを調べたりと多忙を極めている。
そんなカイトに半ば無理やり友達を紹介したいのだと約束を取り付けたのはつい昨日のことだ。
そして今日がその約束の日。
そんなこんなで今こうして疲れ果てているわけなのだが、大げさなほど目を輝かせながら喜ぶ真月の顔を見ては怒る気にもなれず、遊馬は息を整えながらちびちびとジュースに口をつけた。
真月が言うほど早くもないが、下校時刻を考えればそうゆっくりもしていられない。
いつまでも土手に座り込んでいるわけにもいかず、呼吸も整ったため遊馬と真月は腰を上げ歩きはじめた。
「しっかしお前、ジュースは嬉しいんだけど普通これ買ってくるか?」
言いながら遊馬は半分以上が空になった容器をまじまじと見つめた。
最大限の礼のつもりだろうが、普通買うジュースが一人用だとしたら、どちらかと言うとこれは友達の家に行った時、複数人でシェアするのにピッタリな1.5リットルファミリーサイズであった。
真夏ならともかく、これでも良く飲めたほうだ。
「すみません、よかれと思って……」
申し訳なさそうに眉根を寄せる真月の顔を見ながら、遊馬は歯切れ悪く呟く。
「……まぁ、奢ってくれるのはありがたいし、全然気にしてねーよ?…つーか、よく考えたらこんな贅沢めったに出来ねーもんな!ありがとな、真月!」
真月をフォローしたのも本心ではあったが、流石に苦しい。
幾分張った腹が鉄男のように見えなくもなかったが、ハートランドまで歩いてる内にどうにかなるだろうと深くは考えないことにした。
暫く歩いてようやく、二人はハートランド中枢にあるタワーの入り口へとたどり着いた。
WDCの最中いろいろあって大破してしまったタワーの天辺は未だに工事が済んでないらしい。
タワーのエントランスへ足を踏み入れた二人を出迎えたのは、カイトの命令で待機していたオービタル7の姿だった。
「遅イゾトンマ!」
「これでも急いできた方なんだけどな……それより、肝心のカイトは?」
「カイト様ハ上デオ待チダ!サッサト付イテ来イ!」
オービタルの先導で、遊馬と真月はハートの塔上階層へと案内された。
とある部屋にたどり着くと、二人の目の前にある人物が現れる。
「カイト!」
そこで二人を待っていたのは、遊馬にとっては見慣れた、真月にとっては初めて見る天城カイトの少し冷たい雰囲気を纏った姿であった。
+
「貴方が天城カイトさんですね!」
突然名を呼ばれたかと思う余裕もなく、入り口で立ち止まったオービタルを押し退け、遊馬の横にいた見知らぬ少年がカイトに駆け寄り言った。
「はじめまして!僕、遊馬くんのクラスメイトで真月零と言います!」
「え……あ、あぁ……」
「うわー感激だなー!」
遊馬やオービタルが制止する間もなく、真月と名乗った少年はあっという間にカイトの手を取り、ぶんぶんと上下に振り回す。
恐らく本人は握手のつもりなのだろう。
入り口でオービタルが何やら喚いているが、少年はよほど興奮しているのか既に誰の声も届く気配は無さそうだ。
「カイトさんてテレビで見るより更にカッコイイですね!」
「ゆ、遊馬……っ」
扱いに困り遊馬へ助けを求めれば、遊馬はそんな真月の様子など見慣れていると言わんばかりの様子で、呆れながら頭を掻いた。
「あー……真月、カイトはお前のテンションに慣れてねえんだから程々にな……」
「あっ!すみませんっ!憧れのカイトさんに会えたものですからつい興奮してしまって……」
「い、いや……大丈夫だ……」
ぺこぺこと平謝りしつつ真月という少年はカイトの手を握ったままだ。
「まぁ、真月はカイトに会えるのすっげー楽しみにしてたからさ、許してやってくれよカイト」
遊馬にそう言われてしまえば、何も言えない。
「……あぁ。少し驚いただけだ」
遊馬の言うとおりテンションの高い少年なのだろう。
悪意がある筈もなく、きっと他人に対しての距離感がカイトのものと違うだけなのだ。
何よりカイトに直接関係は無くても遊馬の友人。
無下には出来ずカイトは為すがままであった。
「それよりさ、カイト!」
半ば投げやりに相手をしているカイトに、遊馬が声を掛けた。
切羽詰まったその声に呼ばれ、カイトは真月に振り回されるまま遊馬へ視線を向ける。
「トイレ貸してくんねぇ?」
「は?」
「さっき真月にジュース奢って貰ってさ!お願い!トイレどこ?もう緊急事態!」
焦る遊馬の様子にカイトも慌てる。
何故人と会う前に済ませて来ないのだとか、そういう小言が口を突きそうになるがそんな悠長なことを言っている時間は無さそうだ。
「ま、待て……!トイレは……」
しかし遊馬に場所を教えようにも、真月という少年は未だにカイトの手を熱心に握ったままで爛々と目を輝かせており、とても振り払える雰囲気ではない。
「お、オービタル!遊馬を案内しろ!」
「カシコマリ!オイトンマ!付イテ来ルデアリマス!」
カイトの命令を受け、オービタルが遊馬を案内するため、部屋を飛び出していった。
その後を心なし内股気味の遊馬が歩幅を狭めて付いて行く。
あの様子で遊馬が目的地までたどり着けるだろうかと他人ごとながらこちらまで不安になってしまうが、未だ執拗にカイトの手を離さないこの少年が流石に煩わしく、カイトは少しだけ咎めるような視線を送った。
「おい、そろそろ離してくれないか」
「すみません」
遊馬の友人だからと多少大目に見ていたが、カイトはあまりスキンシップが得意ではない質だ。
初対面の相手との長時間の接触はあまり気持ちのいい物ではない。
ただ終始無礼なだけの相手であればカイトとて容赦はしないが、この少年はカイトが嫌がれば即座に謝罪の言葉を告げる。
根は正直で素直なのかもしれない。
……と、思った時だった。
「カイトさんの手って、冷たくて気持ちいいですね」
「……なんだと……?」
突然わけのわからない発言を始めた目の前の少年にカイトは訝しげな目を向けた。
先程しおらしげに「すみません」と言っていた筈の少年は、未だカイトの手を握りしめており、あまつさえその手に頬ずりし始める。
「や、やめろ……!しつこいぞ!」
流石に薄気味悪くなって手を振り払おうとするが、真月と言う少年の手は恐ろしいほど力強く、非力なカイトの手を掴んで離そうとしない。
「貴様、いい加減にしろ……っ!」
元々あまり気が長い方ではない。
度重なる少年の奇行を前にして、カイトは苛立ちに眉を顰めた。
しかしカイトが咎めるような視線を向けたその瞬間、カイトを見上げる少年の雰囲気ががらりと変わったのだ。
「まぁそう言うな」
「……!?」
酷くトーンを落とした少年の声音は、とても先程までの快活な少年ものと同一であるとは思えなかった。
それどころかカイトを見上げる双眸はまるで射るように鋭く、カイトが遊馬に紹介されたおどおどと頼りない真月零という少年とはまるで別人である。
そのカイトの知っている真月零ではない誰かは、警戒して身を強張らせるカイトの瞳を覗き込むように見上げると、薄っすらと口元に不敵な笑みを刻んで告げた。
「……知らない仲ではないだろう?」
「何……?」
まるでずっと昔からカイトのことを知っているかのような少年の口ぶり。
もちろんカイトがこの少年と出会ったのは今日が初めてのことだ。
何が言いたいのか全く検討もつかず、何よりカイトは少年のこの自信に溢れた異様な物言いに酷く気分を害した。
「さっきから黙って聞いていれば……ふざけるのも大概にしろ。遊馬の友だと言うから目をつぶっていたが、これ以上わけのわからんことをほざくつもりなら容赦はしない」
「ふふ……残念だよ、久しぶりの再会だというのに」
「……俺は貴様のことなど──」
あまりにも不躾で意味不明な言動にカイトの怒りはピークに達していた。
だから気づかなかったのだ。
少年のその仰々しい口調にどこか聞き覚えがあることも、カイトの身体に纏わり付くような視線を向けるその紫紺の瞳に、以前も晒されたことがあるということにも。
「もう忘れてしまったのかい?……カイト」
その瞬間。
深淵を映したような紫黒に、全身から血の気が引いていくかのような錯覚を覚えた。
見覚えのあるその不遜な視線がありありとカイトの脳裏に蘇ると同時に、急速な喉の乾きを感じ、カイトはごくりと喉を鳴らす。
「……そんな、筈は……」
あるわけがない。
目の前の少年が、彼である筈がない。
だって奴は……あの男は。
あの時確かに異世界へと繋がる穴の中に──。
そう叫びだしたいのに、カイトの喉は引きつったように動かなかった。
嘘だ、出鱈目だ、と吐き捨ててやりたかったのに、何も言い返せない。
恐怖のためわなわなと肩を震わせるカイトの様子を少年が見つめていた。
見覚えのないその面差しに、酷く見覚えのある薄笑いが浮かんで、カイトは凍りつく。
「私は戻ってきたのだよ」
────はるばる、アストラル世界からね。
「……────ッ!!」
身を折るように飛び起きて、そして気づいた。
「……ゆ、め……?」
ばくばくと心臓の鼓動が普段より早い速度で頭に響いている。
これはきっと、恐怖だ。
全身に嫌な汗が張り付いていた。
夢だとわかった今でも背筋を薄ら寒い何かが這いまわっているような気さえする。
それでも、夢で良かった。
深呼吸すると、早朝の冷えきった空気がカイトの肺に流れ込んできた。
寝覚めが悪く、最悪のスタートである。
それでもあれがただの悪夢で良かったと胸を撫で下ろす。
途中までは本当のことだ。
昨日の夕方、遊馬がクラスメイトをつれてきて、トイレを貸せと大急ぎで出て行って──。
「…………?」
そして、何があっただろうか。
思い出すのは先程見た夢のことばかりで、昨日のことがまるで霧の中のように真っ白だった。
何も覚えていない。
けれど、きっと何もなかったのだ。
あるわけがないと、半ば言い聞かせるつもりでカイトはベッドから起き上がり、カーテンを開く。
夢の中であの少年に掴まれた手首が、酷く傷んだような錯覚だけが生々しく残っていた。
+++
まさかのクソメオチですタイトル詐欺で申し訳ない。
そういう理由があって出来れば96話?かな、顔芸の回を見る前にうpしたかった。
タンスの肥やしにするよりは暇つぶしにでもとうpしているものなので読みづらくて申し訳ございません(´;ω;`)
奴隷ネタも書いているんですがご覧のとおり日本語が行方不明な状態なのでもしかするとかなり間が開いてしまうかもしれませんが、終わりまで考えてあるのでそこに向けて持っていけるようにと思っておりますです。
変態クソメガネの奴隷ネタはそれが書き終わってから改めて書きたい、むしろハトカイで奴隷ネタでなぜまともな方向へ走るのか自分の頭おかしい_| ̄|○
長々とすみません、読んでいただきありがとうございましたっ!!><
■嘘吐きウサギ
天気の良い放課後。
チャイムと同時に立ち上がった真月に悪い予感を感じる暇もなく、遊馬は半ば引きずられるような形で教室を飛び出した。
「さあ!急ぎましょう遊馬くん!」
「ぐぇ、ちょ……待てよ真月、落ち着けって……っ!」
引きずられるというより首根っこを掴まれる勢いのこれは最早拉致ではないか。
そう文句の一つも言いたかったが、下履きに履き替えた瞬間から今に至るまで休むこと無く猛ダッシュを続けていた真月には人の話を聞く気などさらさら無いらしい。
「いえいえ!ゆっくりしてたら日が暮れてしまいます!僕の用事に遅くまで付き合って貰うのは申し訳ありませんから!」
「いや、そんな焦んなくたって俺も大丈夫だし、太陽だって待ってくれるって」
「そんな悠長なこと言ってられませんよ!」
あぁ、やっぱり聞く気がない。
いつもは小鳥や鉄男に飽きれられっぱなしの遊馬だが、真月にだけは振り回されっぱなしである。
小鳥や鉄男も普段はこんな心境なのかもしれないと思うと我ながら今後の身の振り方に悩んでしまうが、今はそんな場合ではない。
実質的には真月に引きずられているとは言え、遊馬は野良猫のように身軽ではない。
真月の妙に巧みな方向転換に右へ左へとぶんぶん振り回されていると、胃に収めたデュエル飯と数時間ぶりに再会しそうである。
「あぁ!もう、無理!タンマ!」
無理やり真月を引き剥がして、遊馬は転がるように道路脇の土手へ身を投げた。
真月に引きずり回されるよりも土手の芝生にダイブするほうがいくらかマシで、遊馬は真月の手から逃れ土手に座り込むと苦しげに呻き声をあげた。
「死ぬかと思った……」
わりと冗談ではないと思いながら、遊馬は脱力して土手の芝生に横たわる。
息を整えるため大きく腹を上下させていると、頭上から申し訳なさそうに近づく足音が聞こえてきた。
「すみません遊馬くん、僕ついはしゃいでしまって……」
お詫びと言っては何ですが、と真月はいつの間に買いに行ったのだろうか、遊馬にペットボトル飲料を差し出した。
「え、何……俺にくれんの?」
「はい!流石に僕も学校から全力疾走して疲れましたし、そう言えば遊馬くんにお礼もしてなかったなって」
「そんなお礼される程のことじゃねーけど……サンキューな」
そう言って、遊馬は真月から飲み物の容器を受け取った。
お礼というのも、今こうして真月にこうして振り回されているのも、全ては数日前に遡る。
事の起こりは今週の初めだったか、遊馬は真月にどうしてもと頼み込まれ、カイトを紹介する約束をしたのだ。
とは言ったものの、遊馬や真月には学校があり、またカイトもバリアンのことを調べたりと多忙を極めている。
そんなカイトに半ば無理やり友達を紹介したいのだと約束を取り付けたのはつい昨日のことだ。
そして今日がその約束の日。
そんなこんなで今こうして疲れ果てているわけなのだが、大げさなほど目を輝かせながら喜ぶ真月の顔を見ては怒る気にもなれず、遊馬は息を整えながらちびちびとジュースに口をつけた。
真月が言うほど早くもないが、下校時刻を考えればそうゆっくりもしていられない。
いつまでも土手に座り込んでいるわけにもいかず、呼吸も整ったため遊馬と真月は腰を上げ歩きはじめた。
「しっかしお前、ジュースは嬉しいんだけど普通これ買ってくるか?」
言いながら遊馬は半分以上が空になった容器をまじまじと見つめた。
最大限の礼のつもりだろうが、普通買うジュースが一人用だとしたら、どちらかと言うとこれは友達の家に行った時、複数人でシェアするのにピッタリな1.5リットルファミリーサイズであった。
真夏ならともかく、これでも良く飲めたほうだ。
「すみません、よかれと思って……」
申し訳なさそうに眉根を寄せる真月の顔を見ながら、遊馬は歯切れ悪く呟く。
「……まぁ、奢ってくれるのはありがたいし、全然気にしてねーよ?…つーか、よく考えたらこんな贅沢めったに出来ねーもんな!ありがとな、真月!」
真月をフォローしたのも本心ではあったが、流石に苦しい。
幾分張った腹が鉄男のように見えなくもなかったが、ハートランドまで歩いてる内にどうにかなるだろうと深くは考えないことにした。
暫く歩いてようやく、二人はハートランド中枢にあるタワーの入り口へとたどり着いた。
WDCの最中いろいろあって大破してしまったタワーの天辺は未だに工事が済んでないらしい。
タワーのエントランスへ足を踏み入れた二人を出迎えたのは、カイトの命令で待機していたオービタル7の姿だった。
「遅イゾトンマ!」
「これでも急いできた方なんだけどな……それより、肝心のカイトは?」
「カイト様ハ上デオ待チダ!サッサト付イテ来イ!」
オービタルの先導で、遊馬と真月はハートの塔上階層へと案内された。
とある部屋にたどり着くと、二人の目の前にある人物が現れる。
「カイト!」
そこで二人を待っていたのは、遊馬にとっては見慣れた、真月にとっては初めて見る天城カイトの少し冷たい雰囲気を纏った姿であった。
+
「貴方が天城カイトさんですね!」
突然名を呼ばれたかと思う余裕もなく、入り口で立ち止まったオービタルを押し退け、遊馬の横にいた見知らぬ少年がカイトに駆け寄り言った。
「はじめまして!僕、遊馬くんのクラスメイトで真月零と言います!」
「え……あ、あぁ……」
「うわー感激だなー!」
遊馬やオービタルが制止する間もなく、真月と名乗った少年はあっという間にカイトの手を取り、ぶんぶんと上下に振り回す。
恐らく本人は握手のつもりなのだろう。
入り口でオービタルが何やら喚いているが、少年はよほど興奮しているのか既に誰の声も届く気配は無さそうだ。
「カイトさんてテレビで見るより更にカッコイイですね!」
「ゆ、遊馬……っ」
扱いに困り遊馬へ助けを求めれば、遊馬はそんな真月の様子など見慣れていると言わんばかりの様子で、呆れながら頭を掻いた。
「あー……真月、カイトはお前のテンションに慣れてねえんだから程々にな……」
「あっ!すみませんっ!憧れのカイトさんに会えたものですからつい興奮してしまって……」
「い、いや……大丈夫だ……」
ぺこぺこと平謝りしつつ真月という少年はカイトの手を握ったままだ。
「まぁ、真月はカイトに会えるのすっげー楽しみにしてたからさ、許してやってくれよカイト」
遊馬にそう言われてしまえば、何も言えない。
「……あぁ。少し驚いただけだ」
遊馬の言うとおりテンションの高い少年なのだろう。
悪意がある筈もなく、きっと他人に対しての距離感がカイトのものと違うだけなのだ。
何よりカイトに直接関係は無くても遊馬の友人。
無下には出来ずカイトは為すがままであった。
「それよりさ、カイト!」
半ば投げやりに相手をしているカイトに、遊馬が声を掛けた。
切羽詰まったその声に呼ばれ、カイトは真月に振り回されるまま遊馬へ視線を向ける。
「トイレ貸してくんねぇ?」
「は?」
「さっき真月にジュース奢って貰ってさ!お願い!トイレどこ?もう緊急事態!」
焦る遊馬の様子にカイトも慌てる。
何故人と会う前に済ませて来ないのだとか、そういう小言が口を突きそうになるがそんな悠長なことを言っている時間は無さそうだ。
「ま、待て……!トイレは……」
しかし遊馬に場所を教えようにも、真月という少年は未だにカイトの手を熱心に握ったままで爛々と目を輝かせており、とても振り払える雰囲気ではない。
「お、オービタル!遊馬を案内しろ!」
「カシコマリ!オイトンマ!付イテ来ルデアリマス!」
カイトの命令を受け、オービタルが遊馬を案内するため、部屋を飛び出していった。
その後を心なし内股気味の遊馬が歩幅を狭めて付いて行く。
あの様子で遊馬が目的地までたどり着けるだろうかと他人ごとながらこちらまで不安になってしまうが、未だ執拗にカイトの手を離さないこの少年が流石に煩わしく、カイトは少しだけ咎めるような視線を送った。
「おい、そろそろ離してくれないか」
「すみません」
遊馬の友人だからと多少大目に見ていたが、カイトはあまりスキンシップが得意ではない質だ。
初対面の相手との長時間の接触はあまり気持ちのいい物ではない。
ただ終始無礼なだけの相手であればカイトとて容赦はしないが、この少年はカイトが嫌がれば即座に謝罪の言葉を告げる。
根は正直で素直なのかもしれない。
……と、思った時だった。
「カイトさんの手って、冷たくて気持ちいいですね」
「……なんだと……?」
突然わけのわからない発言を始めた目の前の少年にカイトは訝しげな目を向けた。
先程しおらしげに「すみません」と言っていた筈の少年は、未だカイトの手を握りしめており、あまつさえその手に頬ずりし始める。
「や、やめろ……!しつこいぞ!」
流石に薄気味悪くなって手を振り払おうとするが、真月と言う少年の手は恐ろしいほど力強く、非力なカイトの手を掴んで離そうとしない。
「貴様、いい加減にしろ……っ!」
元々あまり気が長い方ではない。
度重なる少年の奇行を前にして、カイトは苛立ちに眉を顰めた。
しかしカイトが咎めるような視線を向けたその瞬間、カイトを見上げる少年の雰囲気ががらりと変わったのだ。
「まぁそう言うな」
「……!?」
酷くトーンを落とした少年の声音は、とても先程までの快活な少年ものと同一であるとは思えなかった。
それどころかカイトを見上げる双眸はまるで射るように鋭く、カイトが遊馬に紹介されたおどおどと頼りない真月零という少年とはまるで別人である。
そのカイトの知っている真月零ではない誰かは、警戒して身を強張らせるカイトの瞳を覗き込むように見上げると、薄っすらと口元に不敵な笑みを刻んで告げた。
「……知らない仲ではないだろう?」
「何……?」
まるでずっと昔からカイトのことを知っているかのような少年の口ぶり。
もちろんカイトがこの少年と出会ったのは今日が初めてのことだ。
何が言いたいのか全く検討もつかず、何よりカイトは少年のこの自信に溢れた異様な物言いに酷く気分を害した。
「さっきから黙って聞いていれば……ふざけるのも大概にしろ。遊馬の友だと言うから目をつぶっていたが、これ以上わけのわからんことをほざくつもりなら容赦はしない」
「ふふ……残念だよ、久しぶりの再会だというのに」
「……俺は貴様のことなど──」
あまりにも不躾で意味不明な言動にカイトの怒りはピークに達していた。
だから気づかなかったのだ。
少年のその仰々しい口調にどこか聞き覚えがあることも、カイトの身体に纏わり付くような視線を向けるその紫紺の瞳に、以前も晒されたことがあるということにも。
「もう忘れてしまったのかい?……カイト」
その瞬間。
深淵を映したような紫黒に、全身から血の気が引いていくかのような錯覚を覚えた。
見覚えのあるその不遜な視線がありありとカイトの脳裏に蘇ると同時に、急速な喉の乾きを感じ、カイトはごくりと喉を鳴らす。
「……そんな、筈は……」
あるわけがない。
目の前の少年が、彼である筈がない。
だって奴は……あの男は。
あの時確かに異世界へと繋がる穴の中に──。
そう叫びだしたいのに、カイトの喉は引きつったように動かなかった。
嘘だ、出鱈目だ、と吐き捨ててやりたかったのに、何も言い返せない。
恐怖のためわなわなと肩を震わせるカイトの様子を少年が見つめていた。
見覚えのないその面差しに、酷く見覚えのある薄笑いが浮かんで、カイトは凍りつく。
「私は戻ってきたのだよ」
────はるばる、アストラル世界からね。
「……────ッ!!」
身を折るように飛び起きて、そして気づいた。
「……ゆ、め……?」
ばくばくと心臓の鼓動が普段より早い速度で頭に響いている。
これはきっと、恐怖だ。
全身に嫌な汗が張り付いていた。
夢だとわかった今でも背筋を薄ら寒い何かが這いまわっているような気さえする。
それでも、夢で良かった。
深呼吸すると、早朝の冷えきった空気がカイトの肺に流れ込んできた。
寝覚めが悪く、最悪のスタートである。
それでもあれがただの悪夢で良かったと胸を撫で下ろす。
途中までは本当のことだ。
昨日の夕方、遊馬がクラスメイトをつれてきて、トイレを貸せと大急ぎで出て行って──。
「…………?」
そして、何があっただろうか。
思い出すのは先程見た夢のことばかりで、昨日のことがまるで霧の中のように真っ白だった。
何も覚えていない。
けれど、きっと何もなかったのだ。
あるわけがないと、半ば言い聞かせるつもりでカイトはベッドから起き上がり、カーテンを開く。
夢の中であの少年に掴まれた手首が、酷く傷んだような錯覚だけが生々しく残っていた。
+++
まさかのクソメオチですタイトル詐欺で申し訳ない。
そういう理由があって出来れば96話?かな、顔芸の回を見る前にうpしたかった。
タンスの肥やしにするよりは暇つぶしにでもとうpしているものなので読みづらくて申し訳ございません(´;ω;`)
奴隷ネタも書いているんですがご覧のとおり日本語が行方不明な状態なのでもしかするとかなり間が開いてしまうかもしれませんが、終わりまで考えてあるのでそこに向けて持っていけるようにと思っておりますです。
変態クソメガネの奴隷ネタはそれが書き終わってから改めて書きたい、むしろハトカイで奴隷ネタでなぜまともな方向へ走るのか自分の頭おかしい_| ̄|○
長々とすみません、読んでいただきありがとうございましたっ!!><
■らくがき

公式カイトさんのあのエロさ何なんですかね。
もうカイトの存在自体エロい
+++
たたんでいるのは書きなぐり小ネタです。
例のものではありません。・゚・(Д`(⊂(゚Д゚ つ⌒マタヨリミチカ!
+++
公式カイトさんのあのエロさ何なんですかね。
もうカイトの存在自体エロい
+++
たたんでいるのは書きなぐり小ネタです。
例のものではありません。・゚・(Д`(⊂(゚Д゚ つ⌒マタヨリミチカ!
+++
■聞こえてきた声
ゴーシュ視点のハトカイ短文。
+++
Mr.ハートランドはいろいろと面倒くさい男である。
何せ表の顔と裏の顔で人格が大きく異なっているのだ。
表というのはもちろんハートランドのシンボルとして表に出る時のあのふざけた道化のような姿である。
そんなMr.ハートランドの普段の様子を知っている自分たちハートランド内部の人間からすれば、その変わりようはまさに道化と呼ぶにふさわしい豹変ぶりであったが、それを口にする者は誰ひとりとしていない。
それはゴーシュも含めて、Mr.ハートランド以外の人間が持つ共通認識だった。
そんなMr.ハートランドはいろいろと変わった男である。
通信手段やロボット技術の劇的に進化したこのご時世に、未だに古臭い形式じみた報告を求めるのだ。
今や情報端末を指先でちょちょいとやるだけで済む細かいことを逐一口頭で報告させるのである。
しかしあの男の本性を知っているだけに逆らうわけにも行かず、こうしてわざわざMr.ハートランドの居るフロアまで足を運んでいるわけである。
Mr.ハートランドは一日の大半をこの扉の向こうで過ごす。
そこにはハートランド全体のリアルタイム映像が映し出され、あらゆる出来事を常に監視しているのである。
当然ゴーシュが任務を果たすのも見ているはずだ。それなのにこうして直接報告を求めるのだ。
性格が悪いとしか言い様がない。
と、ゴーシュが足を踏み入れようとした瞬間、耳を疑う声が聞こえてきた。
「……っ、う……ぁ……ッ」
思わずその場で固まってしまうような、ここで聞こえるはずのない声だった。
悲鳴というにはあまりにも小さく、泣き声にしては少々雰囲気が異なる。
そしてそれはどう聞いてもゴーシュのよく知る人物のうめき声だった。
「どうしたのかねカイト?随分と苦しそうだ」
「や、め……さ、触るな……ァ!」
──おいおい、まじかよ……。
思わず息を潜め姿を隠すように壁に張り付いてしまう。
何も身を隠す必要は無いのかもしれないが、出来れば気づかれたくないようなそんな現場に居合わせてしまっているとしか思えなかった。
背中を冷や汗が伝い落ちる様に音もなく喉を鳴らして、聞き耳を立てるつもりはないのについつい中の声に耳を澄ませてしまう。
「苦しいのだろう?我慢しなくとも良いのだよ?」
何を、と聞くのは愚問だろうか。
と言っても誰かに聞けるような状況ではない。
さっきから不定期に上がる上ずった声はゴーシュもよく知るカイトのもので間違いなく、そしてそんなカイトの側にいるのはどう聞いてもMr.ハートランドの声であった。
前々から、なんとなくMr.ハートランドのカイトを見る目が少し危ないとは思っていたが……。
まさかそんな現場に実際に遭遇してしまうとは思わなかったゴーシュは人知れず冷や汗を浮かべるしかない。
中からカイトの声が上がる度に、思わず息を殺してしまう。
逃げようと思うものの両脚は床に縫い付けられたようにぴくりともしなかった。
中の二人は入り口で息を潜めるゴーシュの存在になど気づいた様子もなく、出来ればこのまま気づかれないことを祈るばかりだ。
「……ひ、あ……!!」
呻くような、もしかすると別の理由かもしれないが、カイトが常日頃こんな声を出すような男でない以上、ゴーシュの脳裏にはある一つの可能性が膨らんでいく。
「震えているようだね」
「い……ッ!……やっ、お願…っ…」
「なんだね?聞こえないな」
まさかこんな真昼間からする筈がないとどこかで安心してしまっていたのか。
相手はあの何を考えているかわからないMr.ハートランドなのだ。
少しくらいそういう可能性も考えて心の準備をしておくべきだったかもしれないと今更後悔しても既に手遅れかもしれない。
「ん……んぁ、あ……っも、…だめ……ッ」
というかせめて鍵くらいかけて自衛して欲しかった。
いつも無駄に疑り深いのに何故こんな肝心な所で詰めが甘いのだろうか、というか──。
「そもそも場をわきまえろよ!……って、……あ……」
勢い余って声に出てしまったらしい。
全身からサッと血の気が引いていく音と共に、こっそり伺っていた部屋の中からMr.ハートランドの声が響いた。
「誰だねそこにいるのは。出てきたまえ」
有無を言わせぬ口調にゴーシュは年甲斐もなく恐怖し凍りつく。
ガキの頃からの習性か、ついつい逆らえずに俺は両手を降参のポーズにしたまま部屋の中を見ないよう後ろ向きでMr.ハートランドの前に出て行った。
「何だ、君か。脅かさないでくれたまえ。……ところで、何故後ろを向いたままなのだね?」
「いやぁ……何故と言われましても……」
普通に考えて振り向かないほうが賢明だと思ったからなのだが、どうにもおかしい。
こういう状況ならカイトが黙っていない筈だが、そのカイトの非難めいた声も悲鳴も聞こえない。
恐る恐る、ゴーシュはゆっくりとなるべく直接見てしまわないようにゆっくりとMr.ハートランドの方へ視線を向けた。
が、どうもおかしい。
「……何で服を着てるんです?」
目の前の光景に浮かんだ疑問を口にすると漸く、待ち望んでいたわけではないが聞き覚えのあるカイトの苛立った声が飛んできた。
「ゴーシュ……貴様、どういう意味、だ……っ!?」
どういう意味って、それはこっちが聞きたいことである。
てっきりマズい現場に居合わせたものだとばかり思っていたゴーシュには意外なことに、Mr.ハートランドとカイトはお互い衣服を着ていた。
しかもMr.ハートランドはただカイトの足に手を触れているだけである。
それでも十分セクハラの決定的瞬間ではあったが、言ってしまえばいつものことだ。
それにたったそれだけでこんなにカイトが声を上げることもないだろう。
「……何してるんですか?」
「ふむ。どうかね君も」
「はい?」
Mr.ハートランドの誘いの意味がわからずゴーシュは首を傾げた。
それはつまりカイトの足を触らないか?ということなのだろうか。
一体何のためにと頭を悩ませるゴーシュの前で、カイトが苦しげに非難の声を上げる。
「……やめ、ろ…!……、ひ……っ!」
「往生際が悪いね、カイト」
まただ。Mr.ハートランドはほんの軽くカイトの足に触れただけなのである。
触れると言うよりつついているように見えるが、ゴーシュの想像していたような怪しげな雰囲気はあまりない。
「えーと……」
返事に詰まるゴーシュを見かねてかMr.ハートランドはカイトの足に触るのをやめ、肩を竦めて見せた。
「いや何。知人からいい抹茶を貰ったものでね。一人で楽しむのも味気ないと思いカイトにご馳走しようと本格的に茶室を用意したのだが、ご覧のとおり正座で足が痺れてしまったようなのだよ」
「せ、正座……?」
改めてカイトを眺めると、確かに正座を崩したままの状態で石のように固まっているようだった。
心なしうっすらと涙を浮かべ小刻みに肩を震わせるカイトの足に、再びMr.ハートランドの手が触れられる。
「そうだろう?…カイト」
「い……ッ!…触るなと言って…んんっ……!!」
「良いのかな、私にそんな口を聞いて」
なるほど……つまり、慣れない正座で痺れたカイトの脚を突いて遊んでいただけなのだ。
真相がわかってしまえばどうということはない。
いつものMr.ハートランドの戯れに遭遇しただけのことだ。
「……邪魔したようなので俺はこれで……」
「ま、待てゴーシュ……ッ」
背を向けるといつになく切羽詰まった声のカイトに呼び止められた。
珍しく助けを求めるというのなら少しくらい協力してやろうと言うノリではあった為、少し勿体つけて振り返ってやると、しかしカイトの反応はゴーシュの想像していたようなそれではなかった。
「助けろ……ッ!」
「…………」
相変わらず全く可愛げのないノリである。
助け舟を出す気も失せて閉口したゴーシュにMr.ハートランドが再び口を開いた。
「そうだゴーシュ。君もどうかね?」
珍しく見つけたカイトの弱みだ。
たまにはMr.ハートランドに便乗するのも悪いノリではないかもしれない。
……が。
「いや、遠慮しときます」
そう言って俺は逃げるようにその場を去った。
カイトの恨みがましい声が聞こえた気がするが、Mr.ハートランドと一緒になってからかわなかっただけ感謝されたいくらいではある。
まぁ、ここで悪ノリが過ぎると後々カイトと顔を合わせた時にいろいろと気まずくなり、巡り巡って自分が困るので早々に退散しただけにすぎない。
カイトはあぁ見えて一度へそを曲げたらしつこいのだ。正直それは面倒くさかった。
何よりドロワがあまりいい顔をしないとわかっているだけに、色んな意味でゴーシュはさっきのことは見なかったことにしようと決め込むのだった。
+++
実際にエロいことされてるカイトきゅんが言わないようなことも痺れた脚に触られた時にはぽんぽん出ちゃいそうな気がする。
何だか2続きでネコの日らしいので思い立った突発小ネタをば。
猫とアークライト兄弟のお話です。
いろいろ細かい部分には目をつぶっていただければ幸いです。
ちなみに終始トーマス視点だったりします。
口調とか違和感あったら申し訳ないと平謝りするしか無いクオリティー。
+++
猫とアークライト兄弟のお話です。
いろいろ細かい部分には目をつぶっていただければ幸いです。
ちなみに終始トーマス視点だったりします。
口調とか違和感あったら申し訳ないと平謝りするしか無いクオリティー。
+++
■ネコの日ネタ(タイトルでもなんでもない)
「兄様、少し相談が──」
ソファに足を投げ出し我ながらだらしない格好でうたた寝をしていると、申し訳なさそうに弟が声をかけてきた。
てっきり怠惰な態度を咎めに来たと思いきや、しおらしい声に好奇心が勝って俺は重い瞼をこじあける。
「なんだよミハエル……って、なんでそんなずぶ濡れなんだよ……てか何だその猫?まさか拾って来ちまったのかよどうすんだよ?」
「だからそれを相談に来たんです」
話し相手を間違えたと言いたそうな弟の顔に少しだけ面白くない。
ミハエルは何かと頼りになる長男を探していたのだろうが、生憎所用とやらで外出中だ、珍しく。
だからこうして堂々と広いソファを占領できているわけだが、俺も兄貴だ。
たまには頼りになると証明したくもなって、取り敢えず猫と一緒に風呂に入れとアドバイスした。
「流石兄様。じゃあミルクと毛布の準備をお願いします!」といって弟はいそいそと風呂場へ向かった。
結局は弟に良いように使われてしまっていることに俺は気づいていない。
弟と猫がほかほかと湯気を立ち上らせながら戻ってきて、俺はうまく言いくるめられたことにその時気付いたが、たまには弟の我儘に付き合ってやる優しい兄貴を演じるのも良いかと思うことにした。
それ自体が孔明の……間違えた弟の罠だとも知らず。
ふわりと空気を抱き込んだ柔らかいタオルで体を乾かしてやり、すっかり綺麗になった猫は俺が皿に用意したミルクをちろちろと舐め始めた。
ちくしょうかわいいじゃねーか。
腹一杯になったのか食事を終えた猫は、弟の物とは思えぬ猫撫で声のミハエルの呼び声も無視し、ましてミルクと毛布を用意してあまつさえ風呂に入れろと提案してやった俺の近くになど寄り付きもせず、先程まで俺が寛いでいたソファに飛び乗り勝手にリラックスし始めた。
おいおい女王さま気取りかよてめぇ。
オスかメスかは知らないが良く良く見れば青いつり目にむっすりとプライドの高そうな顔つき、さらりとした金色の毛並みは誰かを彷彿とさせる気がする。
「……カイトっぽいな」
「え?あのカイトですか?」
「だって見ろよこの人を見下したような澄ました顔。決めた!こいつの名前はカイトだ!」
「兄様飼う気ですか!?」
「お前もそのつもりだったんだろ?」
「僕はただこの子を放っておけなくて気がついたら……」
「どーせ広い家なんだし野良猫一匹増えたところで変わんねーよ。なーカイト?」
同意を求めるように視線を向けるも猫はつんとそっぽを向いたままだ。
「全く可愛いげがないとこまでほんとそっくりだぜ。……そうだ、こいつオスかな?それともメスだったりして?」
ひっくり返して確かめてやろうとにじり寄ると、カイトは気配を察したのかさっと身構えた。
「やめてください兄様、怖がってるじゃないですか!」
「なんだよ、大事だろ男か女か。何も取って食おうってんじゃねーんだから。なあカイト?」
弟の真似をして猫撫で声で問いかけてみる。が、カイトはますます警戒してぶわりと毛を逆立てた。
「お?なんだよカイト?良いだろどうせ減るもんじゃねーしよ?……あっ!くそ、暴れんなって!ちょっと見せてくれたってバチは当たんないだろ?」
「に、兄様そんな乱暴にしたら……」
ミハエルの制止する間もなく、顔面へ勢い良く飛びかかってきた猫の鋭い爪が俺の頬を引っ掻いた。
「痛──ッてぇ…なぁこのくそ猫!」
すばしっこくても所詮は猫だ。図体で勝る人間が負けるはずがない。
顔へ覆いかぶさってきた胴体を両手で掴み顔から引き剥がすと、手も足も出ないのか恨みがましそうににゃあにゃあと唸り声を上げた。
「ふふん。言い様だぜ?……なあカイト?」
「兄様……」
「てめえは黙って見てろよミハエル、くっそー手こずらせやがって。今度こそ覚悟はできてんだろうなあカイトちゃ――」
「何をしている!?」
突然現れた怒号に二人と一匹は凍りついた。
俺は思わずよろけて猫ごとソファから転げ落ちる。
腕の中の猫を押しつぶさないよう、咄嗟に四つん這いになった俺が安心したのもつかの間、怒り狂った兄の誤解にまみれた罵倒を最後に俺はぶつりと意識を失った。
「なんだ、猫か……それならそうと言ってくれれば」
ミハエルに介抱されソファの上で目を覚ました俺の目の前で、兄貴は小柄な猫を腕に抱きながら、非常に薄っぺらい謝罪を述べた。
気を失う前に何コンボか入れられた気がするが頭がガンガンして全く思い出せない。
とりあえず覚えていたのは、兄貴が「カイト!!」と叫びながら烈火のごとく逆上していたということだけだ。
兄の早とちりにも苛立つが、それより何より気にくわないのはあのくそ猫の態度である。
野良から救ってやった俺には視線が合うだけで毛を逆立てるのに、無関係な兄貴に抱えられゴロゴロと喉まで鳴らしていやがるのだ。
いつの間にかミハエルにも懐いてるし、全く何から何まで気に入らねえ。
「あ、そうだトーマス兄様」
「んだよ」
「この子メスだったんです。名前どうしましょうか?」
女の子にカイトと言う名前は……と悩むミハエルに返事をしたのは俺ではなく兄貴だった。
「もう名付けてしまったんだ。カイトのままで構わないだろう」
「そうですか?……確かにあれこれ名前を変えると混乱しちゃいそうですね」
「ではカイトで決まりだな。カイト……ふふ。大人しく聞き分けが良いところもそっくりだな」
「大人しい……どこが」
俺の知っているカイトって人間の方は、愛想もなくていつもツンケンしてる野郎だ。
俺より一つ上なくせにとても大人気ない。
誰にでもそうなのかと思いきや、奴の弟と俺の兄弟に対しては全く反応が違うのだからまるで意味がわからない。
あぁもう、今思い出しただけで腹立たしい。
猫も奴も本当に憎らしいほど良く似ている。
思いつきで名付けたものの、似合いすぎて怖いくらいだ。
「どっちのカイトも猫被りやがって……全く、つくづくカイトって奴はムカツクったらありゃしねえ!」
「兄様、猫相手に大人げないですよ」
「トーマス、男の嫉妬は醜いぞ」
「あ゛あ?」
いつの間にか俺が悪者になっているようだ。
気まぐれな猫は嫌いではないが、こうも自分にだけ様子が違うとなると何だか面白く無い。
相変わらず視線を合わせれば、兄貴の腕の中だろうと俺に射殺すような視線を向け、ぶわりと毛を逆立ててやがる。
そういや、確か猫ってマタタビで酔っ払うんだったな。
見てろよカイト……今に目にもの見せてやる。
どうしてもカイトに一泡ふかせたい俺は、後日マタタビでリベンジしようと、心に決めたのだった。
+++
で、後日アークライト家を所用で訪れたカイトが「カイトは美人さんだなー」とか言ってるクリスの言葉を聞いちゃって「!?」ってなる感じのありきたり展開。
ちなみに野良だったカイトちゃんにはきっとマタタビ効かない。
効いたとしてもアイツ(トーマス)の思い通りになってたまるかああああにゃああああんん!!ゴロゴロ みたいなことになりそう。
でも多分そのうちV兄様の溺愛っぷりに耐え切れなくなって付かず離れずなトーマスの横とかにふらりと近寄って来るかもしれないデレ期。
ミハエルのことはきっと同じメスだと思ってる。無害も無害。
トーマスに懐いた頃に本物のカイトが猫の存在知って、クリスが猫カイトに過剰スキンシップするの見せつけられて一人やきもきする感じです基本的にほのぼの。
突発ネタにお付き合いいただきありがとうございました!
「兄様、少し相談が──」
ソファに足を投げ出し我ながらだらしない格好でうたた寝をしていると、申し訳なさそうに弟が声をかけてきた。
てっきり怠惰な態度を咎めに来たと思いきや、しおらしい声に好奇心が勝って俺は重い瞼をこじあける。
「なんだよミハエル……って、なんでそんなずぶ濡れなんだよ……てか何だその猫?まさか拾って来ちまったのかよどうすんだよ?」
「だからそれを相談に来たんです」
話し相手を間違えたと言いたそうな弟の顔に少しだけ面白くない。
ミハエルは何かと頼りになる長男を探していたのだろうが、生憎所用とやらで外出中だ、珍しく。
だからこうして堂々と広いソファを占領できているわけだが、俺も兄貴だ。
たまには頼りになると証明したくもなって、取り敢えず猫と一緒に風呂に入れとアドバイスした。
「流石兄様。じゃあミルクと毛布の準備をお願いします!」といって弟はいそいそと風呂場へ向かった。
結局は弟に良いように使われてしまっていることに俺は気づいていない。
弟と猫がほかほかと湯気を立ち上らせながら戻ってきて、俺はうまく言いくるめられたことにその時気付いたが、たまには弟の我儘に付き合ってやる優しい兄貴を演じるのも良いかと思うことにした。
それ自体が孔明の……間違えた弟の罠だとも知らず。
ふわりと空気を抱き込んだ柔らかいタオルで体を乾かしてやり、すっかり綺麗になった猫は俺が皿に用意したミルクをちろちろと舐め始めた。
ちくしょうかわいいじゃねーか。
腹一杯になったのか食事を終えた猫は、弟の物とは思えぬ猫撫で声のミハエルの呼び声も無視し、ましてミルクと毛布を用意してあまつさえ風呂に入れろと提案してやった俺の近くになど寄り付きもせず、先程まで俺が寛いでいたソファに飛び乗り勝手にリラックスし始めた。
おいおい女王さま気取りかよてめぇ。
オスかメスかは知らないが良く良く見れば青いつり目にむっすりとプライドの高そうな顔つき、さらりとした金色の毛並みは誰かを彷彿とさせる気がする。
「……カイトっぽいな」
「え?あのカイトですか?」
「だって見ろよこの人を見下したような澄ました顔。決めた!こいつの名前はカイトだ!」
「兄様飼う気ですか!?」
「お前もそのつもりだったんだろ?」
「僕はただこの子を放っておけなくて気がついたら……」
「どーせ広い家なんだし野良猫一匹増えたところで変わんねーよ。なーカイト?」
同意を求めるように視線を向けるも猫はつんとそっぽを向いたままだ。
「全く可愛いげがないとこまでほんとそっくりだぜ。……そうだ、こいつオスかな?それともメスだったりして?」
ひっくり返して確かめてやろうとにじり寄ると、カイトは気配を察したのかさっと身構えた。
「やめてください兄様、怖がってるじゃないですか!」
「なんだよ、大事だろ男か女か。何も取って食おうってんじゃねーんだから。なあカイト?」
弟の真似をして猫撫で声で問いかけてみる。が、カイトはますます警戒してぶわりと毛を逆立てた。
「お?なんだよカイト?良いだろどうせ減るもんじゃねーしよ?……あっ!くそ、暴れんなって!ちょっと見せてくれたってバチは当たんないだろ?」
「に、兄様そんな乱暴にしたら……」
ミハエルの制止する間もなく、顔面へ勢い良く飛びかかってきた猫の鋭い爪が俺の頬を引っ掻いた。
「痛──ッてぇ…なぁこのくそ猫!」
すばしっこくても所詮は猫だ。図体で勝る人間が負けるはずがない。
顔へ覆いかぶさってきた胴体を両手で掴み顔から引き剥がすと、手も足も出ないのか恨みがましそうににゃあにゃあと唸り声を上げた。
「ふふん。言い様だぜ?……なあカイト?」
「兄様……」
「てめえは黙って見てろよミハエル、くっそー手こずらせやがって。今度こそ覚悟はできてんだろうなあカイトちゃ――」
「何をしている!?」
突然現れた怒号に二人と一匹は凍りついた。
俺は思わずよろけて猫ごとソファから転げ落ちる。
腕の中の猫を押しつぶさないよう、咄嗟に四つん這いになった俺が安心したのもつかの間、怒り狂った兄の誤解にまみれた罵倒を最後に俺はぶつりと意識を失った。
「なんだ、猫か……それならそうと言ってくれれば」
ミハエルに介抱されソファの上で目を覚ました俺の目の前で、兄貴は小柄な猫を腕に抱きながら、非常に薄っぺらい謝罪を述べた。
気を失う前に何コンボか入れられた気がするが頭がガンガンして全く思い出せない。
とりあえず覚えていたのは、兄貴が「カイト!!」と叫びながら烈火のごとく逆上していたということだけだ。
兄の早とちりにも苛立つが、それより何より気にくわないのはあのくそ猫の態度である。
野良から救ってやった俺には視線が合うだけで毛を逆立てるのに、無関係な兄貴に抱えられゴロゴロと喉まで鳴らしていやがるのだ。
いつの間にかミハエルにも懐いてるし、全く何から何まで気に入らねえ。
「あ、そうだトーマス兄様」
「んだよ」
「この子メスだったんです。名前どうしましょうか?」
女の子にカイトと言う名前は……と悩むミハエルに返事をしたのは俺ではなく兄貴だった。
「もう名付けてしまったんだ。カイトのままで構わないだろう」
「そうですか?……確かにあれこれ名前を変えると混乱しちゃいそうですね」
「ではカイトで決まりだな。カイト……ふふ。大人しく聞き分けが良いところもそっくりだな」
「大人しい……どこが」
俺の知っているカイトって人間の方は、愛想もなくていつもツンケンしてる野郎だ。
俺より一つ上なくせにとても大人気ない。
誰にでもそうなのかと思いきや、奴の弟と俺の兄弟に対しては全く反応が違うのだからまるで意味がわからない。
あぁもう、今思い出しただけで腹立たしい。
猫も奴も本当に憎らしいほど良く似ている。
思いつきで名付けたものの、似合いすぎて怖いくらいだ。
「どっちのカイトも猫被りやがって……全く、つくづくカイトって奴はムカツクったらありゃしねえ!」
「兄様、猫相手に大人げないですよ」
「トーマス、男の嫉妬は醜いぞ」
「あ゛あ?」
いつの間にか俺が悪者になっているようだ。
気まぐれな猫は嫌いではないが、こうも自分にだけ様子が違うとなると何だか面白く無い。
相変わらず視線を合わせれば、兄貴の腕の中だろうと俺に射殺すような視線を向け、ぶわりと毛を逆立ててやがる。
そういや、確か猫ってマタタビで酔っ払うんだったな。
見てろよカイト……今に目にもの見せてやる。
どうしてもカイトに一泡ふかせたい俺は、後日マタタビでリベンジしようと、心に決めたのだった。
+++
で、後日アークライト家を所用で訪れたカイトが「カイトは美人さんだなー」とか言ってるクリスの言葉を聞いちゃって「!?」ってなる感じのありきたり展開。
ちなみに野良だったカイトちゃんにはきっとマタタビ効かない。
効いたとしてもアイツ(トーマス)の思い通りになってたまるかああああにゃああああんん!!ゴロゴロ みたいなことになりそう。
でも多分そのうちV兄様の溺愛っぷりに耐え切れなくなって付かず離れずなトーマスの横とかにふらりと近寄って来るかもしれないデレ期。
ミハエルのことはきっと同じメスだと思ってる。無害も無害。
トーマスに懐いた頃に本物のカイトが猫の存在知って、クリスが猫カイトに過剰スキンシップするの見せつけられて一人やきもきする感じです基本的にほのぼの。
突発ネタにお付き合いいただきありがとうございました!
漫画ごっずでジャックの誕生日が出たと聞いて。
そして1/11日に間に合う……!となって短めな誕生日ネタをば。
+++
サテライト時代。
遊星とジャック。
短めですが間に合って良かった(´∀`)
+++
そして1/11日に間に合う……!となって短めな誕生日ネタをば。
+++
サテライト時代。
遊星とジャック。
短めですが間に合って良かった(´∀`)
+++
■王の生まれた日
「ジャック、誕生日おめでとう」
1月11日がジャックの誕生日なのだと知って、正直俺は焦っていた。
物資の乏しいサテライトではジャックの満足するようなプレゼントを用意することは難しい。
それでも時間さえあれば、なんとか工面することも可能だっただろう。
しかし遊星がそのことをジャックの口から聞いたのはつい先程のことである。
言葉以外の何かを用意出来るような時間は到底無かった。
俺は少しばかりの不甲斐なさを抱えながら、それでも目の前のジャックに祝いの言葉を贈ったのだ。
だが、ジャックはそんな俺にちらりと冷めた視線を寄こすだけで、仕方なしに返してきたのは「あぁ」という一言だけだった。
やはり手ぶらで誕生日を祝われたとしてもジャックの胸には響かなかったのだろうか。
そう落胆を見せる遊星の内心に気づいた筈もなく、ぽつり、とジャックは言葉を続けた。
「誕生日だからと……それが何だと言うのだ。子供でもあるまいし、今更どうとも思わんわ」
どうやらジャックが気分を害したのは、遊星が何のプレゼントも用意していなかったせいではないらしい。
つまらなさそうにソファに肩肘をつきながらジャックは静かに紫色の瞳を伏せた。
対してジャックに軽くあしらわれた俺はと言うと、ジャックの言葉を前に信じられないと驚くばかりである。
「それは違うぞ、ジャック!」
「何?」
音を立てて立ち上がった遊星の様子にジャックはソファに腰掛けたまま軽く目を瞠った。
突然何の前触れもなく隣に座っていた人間が立ち上がれば何事かと見上げるのが通常の反応だろう。
遊星が珍しくジャックの顔を上から見下ろすと、当の本人は珍しく鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、大きなアメジストの瞳を更に瞠っていた。
俺はぐっと拳を握る。
「ジャックの17歳の誕生日は一生に一度しか訪れない。確かに、誕生日は来年も来る。……けれど、17歳の誕生日は今日を逃したら二度と来ないんだ。そんな大切な日を祝わないなんて、俺には出来ない」
思いの丈をひとしきりまくし立てると、少しだけ胸の内が晴れやかになった気がした。
その間ずっと遊星に見下され続けていたジャックは、普段の口下手な遊星からは想像もつかないほど口達者になった遊星の異様とも呼べる様子に唖然とするしかないのだろう。
対する遊星とは打って変わってむっすりと口を噤んだまま、ふいと遊星の大きな瞳から目をそらした。
「フン……勝手にしろ」
おもむろに腕を組んだままそれっきり、ジャックは口をへの字に尖らせてそっぽを向いてしまった。
そんなジャックの様子に、遊星はジャックに気付かれぬようふっと微笑を浮かべる。
「おめでとう、ジャック」
「……あぁ」
一呼吸置いて相槌を打ったジャックの溜息にも似た返事に、遊星はもう一度嬉しそうに口端を緩めた。
「ジャック、誕生日おめでとう」
1月11日がジャックの誕生日なのだと知って、正直俺は焦っていた。
物資の乏しいサテライトではジャックの満足するようなプレゼントを用意することは難しい。
それでも時間さえあれば、なんとか工面することも可能だっただろう。
しかし遊星がそのことをジャックの口から聞いたのはつい先程のことである。
言葉以外の何かを用意出来るような時間は到底無かった。
俺は少しばかりの不甲斐なさを抱えながら、それでも目の前のジャックに祝いの言葉を贈ったのだ。
だが、ジャックはそんな俺にちらりと冷めた視線を寄こすだけで、仕方なしに返してきたのは「あぁ」という一言だけだった。
やはり手ぶらで誕生日を祝われたとしてもジャックの胸には響かなかったのだろうか。
そう落胆を見せる遊星の内心に気づいた筈もなく、ぽつり、とジャックは言葉を続けた。
「誕生日だからと……それが何だと言うのだ。子供でもあるまいし、今更どうとも思わんわ」
どうやらジャックが気分を害したのは、遊星が何のプレゼントも用意していなかったせいではないらしい。
つまらなさそうにソファに肩肘をつきながらジャックは静かに紫色の瞳を伏せた。
対してジャックに軽くあしらわれた俺はと言うと、ジャックの言葉を前に信じられないと驚くばかりである。
「それは違うぞ、ジャック!」
「何?」
音を立てて立ち上がった遊星の様子にジャックはソファに腰掛けたまま軽く目を瞠った。
突然何の前触れもなく隣に座っていた人間が立ち上がれば何事かと見上げるのが通常の反応だろう。
遊星が珍しくジャックの顔を上から見下ろすと、当の本人は珍しく鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、大きなアメジストの瞳を更に瞠っていた。
俺はぐっと拳を握る。
「ジャックの17歳の誕生日は一生に一度しか訪れない。確かに、誕生日は来年も来る。……けれど、17歳の誕生日は今日を逃したら二度と来ないんだ。そんな大切な日を祝わないなんて、俺には出来ない」
思いの丈をひとしきりまくし立てると、少しだけ胸の内が晴れやかになった気がした。
その間ずっと遊星に見下され続けていたジャックは、普段の口下手な遊星からは想像もつかないほど口達者になった遊星の異様とも呼べる様子に唖然とするしかないのだろう。
対する遊星とは打って変わってむっすりと口を噤んだまま、ふいと遊星の大きな瞳から目をそらした。
「フン……勝手にしろ」
おもむろに腕を組んだままそれっきり、ジャックは口をへの字に尖らせてそっぽを向いてしまった。
そんなジャックの様子に、遊星はジャックに気付かれぬようふっと微笑を浮かべる。
「おめでとう、ジャック」
「……あぁ」
一呼吸置いて相槌を打ったジャックの溜息にも似た返事に、遊星はもう一度嬉しそうに口端を緩めた。
奴隷ネタ書いてる最中で日記まで疎かになってしまってるので、暇つぶしにでもなればといつぞや言ってた発情期猫ネタをば。
とは言えこれも途中でsうぼああ。・゚・(Д`(⊂(゚Д゚ つ⌒
奴隷ネタは一度最後まで書き終えてからじゃないといろいろお見苦しい文章なのでやっぱり年内難しそうです。
遅筆で申し訳ないです><
+++
畳んでいるのは以前言った擬人化パロ。……擬獣化か?(;´Д`)
・例によって続きはまだ無い
・いいとこまでは行ってない
・カイトが猫耳+尻尾の人型ですが飼い猫設定
・若干カイトの口が悪い
・一部カイトの発言に不適切な部分があります
うpしてるとこまでではカプ色無いですが分岐する予定です。……予定は未定ですが_| ̄|○
+++
とは言えこれも途中でsうぼああ。・゚・(Д`(⊂(゚Д゚ つ⌒
奴隷ネタは一度最後まで書き終えてからじゃないといろいろお見苦しい文章なのでやっぱり年内難しそうです。
遅筆で申し訳ないです><
+++
畳んでいるのは以前言った擬人化パロ。……擬獣化か?(;´Д`)
・例によって続きはまだ無い
・いいとこまでは行ってない
・カイトが猫耳+尻尾の人型ですが飼い猫設定
・若干カイトの口が悪い
・一部カイトの発言に不適切な部分があります
うpしてるとこまでではカプ色無いですが分岐する予定です。……予定は未定ですが_| ̄|○
+++
冬が近づき、毎日の冷え込みが厳しくなってからというもの、ほぼ丸一日ベッドの中で過ごすことも多くなっていた。
春の日だまりのような暖かさは遠い日のようにも思える。
北風の吹きすさぶ外の光景は暖房の効いた室内からはいまいち現実味を失っていた。
安全の保証された家の中は平和そのものだ。
食事もすませ、あとは夜まで家主の帰りを待つばかり。
こんな時はさっさと寝てしまうに限る。
ふわふわの毛布に身体を埋め、カイトはウトウトとまどろみに落ちる。
瞼がずっしりと重くなってきた。
思考も鈍り、勝手に尻尾がゆらゆらと毛布を掠めゆく。
家主が返ってくるまでの長い数時間も、眠っていればあっという間だ。
しかし、嫌でも聞こえてしまった耳障りな甲高い鳴き声が、ずるずると眠りの淵へ落ちていたカイトを現実へ引き戻した。
窓はしっかり締め切っている。すきま風一つ入らない室内は完璧に近い防音設備なのだ。
それでも、カイトはこの時ばかりは己の優秀すぎる聴覚を恨んだ。
無駄だと分かっていつつも、カイトはぴんと立った自身の耳を両手で塞ぐ。
音という音を遮断したくて頭からすっぽりと毛布を被った。
眠いのだ。
それに、一度寝ると決めた以上最早眠くなくとも寝るのだと決め込んで、カイトは痛いほど目を瞑った。
だが──。
「にゃああん」
重ねて言うが、この家の防音は完璧だ。
家の周囲は整えられた樹木に囲われており、広い庭の向こうの音は滅多に聞こえてこない。
耳をふさいでも無駄なことに大きな溜息を吐いて、カイトは苛立ちを隠すこと無く毛布を剥ぎ取り窓辺から庭の様子を伺った。
この距離感は、いくらカイトの聴覚が優れていると言ってもそれだけでは説明がつかない。
となると、可能性は一つ。
耳障りな声の出処を方角から定めた先で、庭師が丁寧に切り揃えた枝葉が不自然に荒れている。
よく目を凝らせば案の定、茶トラと茶白がカイトの予想通りナニをしている真っ最中なのだ。
それも、人の家の庭で。
人が気持ちよく寝ようとしているのに、その真横で別の意味で寝られては安眠妨害もいいところだ。
あちらの声が聞こえるのだ。逆もしかるべきであろう。
すう、と息を吸い込んで、ガラリと勢い良く窓を開け放った。
「貴様ら他所でやれ!」
窓の外へ盛大に叫ぶと、カイトの怒声に驚いたのだろう。
オス猫は耳を伏せて一目散に庭から飛び出していった。
ぽつんと残されたメス猫が恨みがましそうに窓辺のカイトを睨みつける。
だからと言ってカイトが罪悪感を覚えることなどない。
他に人気のない場所など探せばいくらでもあるのだ。
わざわざ近所の庭で致すような尻軽発情女に恨まれる謂れはない。
カイトの冷たい視線に怯むこと無く威嚇を続けていたメス猫だったが、ひとしきり庭木に身体を擦りつけ終えると、気が済んだのかひらりと身を翻し木々の向こうへ姿を消した。
「フン。見境のない発情期のメス猫め…」
主人のガーデニング道楽にケチを付ける気は無いが、この時期ばかりは広すぎる庭のスペースにうんざりする。
適度に緑の茂った庭は毎年発情期になると、あちこちからメス猫がオスを連れ込む乱交スポットになっているのだ。
四六時中興味もない女の発情した鳴き声を聞かされるこちらの身にもなってくれ、と言えないのが実にもどかしい。
ようやく安眠妨害の元を排除出来たことで、カイトは今度こそ…と毛布へ包まった。
温かい室内と保温性の高い毛布に包まれれば、冷めた眠気も戻ってくるだろう。
そう思っていたカイトだが、しかし予想していた眠気は一向に訪れず。
それどころかみるみるうちに頭は妙に冴え、息は乱れ、呼気は熱を帯びてくる。
あまりの暑さに耐えかね毛布を蹴散らすが、それでも暑さは収まらない。
「……は…、ァ……」
しまった…と思った時には既に、カイトの内側の熱は限界寸前まで昂ぶってしまっていた。
ふと脳裏にさっきの女の声が蘇り、カイトは舌打ちする。
定期的に発情期の訪れるメスと違いオスの発情は不定期で、その多くがメスの発情に誘発されて起こるものなのだ。
それはカイトとて例外ではなく、ましてや自分の意志でどうにかできるものでは到底なかった。
「くそ…ッ」
人知れず悪態をついて気を紛らわせるも、当然その程度で収まる熱であるはずもない。
カイトの意志に反し頬は紅潮し、瞳は潤み、細い両肩は小刻みに震えた。
少しでも身体を苛む熱を逃そうとカイトはぎゅっと毛布を握り込む。
しかしいくら指先が白むほど強く握ったところで、身体を苛む責苦が消えるわけではなかった。
+++
猫飼ったことが無いのでwikiの情報基準で打ってるのですが、猫の感情表現は犬とは違うみたいなのでいろいろ違うかも。
春の日だまりのような暖かさは遠い日のようにも思える。
北風の吹きすさぶ外の光景は暖房の効いた室内からはいまいち現実味を失っていた。
安全の保証された家の中は平和そのものだ。
食事もすませ、あとは夜まで家主の帰りを待つばかり。
こんな時はさっさと寝てしまうに限る。
ふわふわの毛布に身体を埋め、カイトはウトウトとまどろみに落ちる。
瞼がずっしりと重くなってきた。
思考も鈍り、勝手に尻尾がゆらゆらと毛布を掠めゆく。
家主が返ってくるまでの長い数時間も、眠っていればあっという間だ。
しかし、嫌でも聞こえてしまった耳障りな甲高い鳴き声が、ずるずると眠りの淵へ落ちていたカイトを現実へ引き戻した。
窓はしっかり締め切っている。すきま風一つ入らない室内は完璧に近い防音設備なのだ。
それでも、カイトはこの時ばかりは己の優秀すぎる聴覚を恨んだ。
無駄だと分かっていつつも、カイトはぴんと立った自身の耳を両手で塞ぐ。
音という音を遮断したくて頭からすっぽりと毛布を被った。
眠いのだ。
それに、一度寝ると決めた以上最早眠くなくとも寝るのだと決め込んで、カイトは痛いほど目を瞑った。
だが──。
「にゃああん」
重ねて言うが、この家の防音は完璧だ。
家の周囲は整えられた樹木に囲われており、広い庭の向こうの音は滅多に聞こえてこない。
耳をふさいでも無駄なことに大きな溜息を吐いて、カイトは苛立ちを隠すこと無く毛布を剥ぎ取り窓辺から庭の様子を伺った。
この距離感は、いくらカイトの聴覚が優れていると言ってもそれだけでは説明がつかない。
となると、可能性は一つ。
耳障りな声の出処を方角から定めた先で、庭師が丁寧に切り揃えた枝葉が不自然に荒れている。
よく目を凝らせば案の定、茶トラと茶白がカイトの予想通りナニをしている真っ最中なのだ。
それも、人の家の庭で。
人が気持ちよく寝ようとしているのに、その真横で別の意味で寝られては安眠妨害もいいところだ。
あちらの声が聞こえるのだ。逆もしかるべきであろう。
すう、と息を吸い込んで、ガラリと勢い良く窓を開け放った。
「貴様ら他所でやれ!」
窓の外へ盛大に叫ぶと、カイトの怒声に驚いたのだろう。
オス猫は耳を伏せて一目散に庭から飛び出していった。
ぽつんと残されたメス猫が恨みがましそうに窓辺のカイトを睨みつける。
だからと言ってカイトが罪悪感を覚えることなどない。
他に人気のない場所など探せばいくらでもあるのだ。
わざわざ近所の庭で致すような尻軽発情女に恨まれる謂れはない。
カイトの冷たい視線に怯むこと無く威嚇を続けていたメス猫だったが、ひとしきり庭木に身体を擦りつけ終えると、気が済んだのかひらりと身を翻し木々の向こうへ姿を消した。
「フン。見境のない発情期のメス猫め…」
主人のガーデニング道楽にケチを付ける気は無いが、この時期ばかりは広すぎる庭のスペースにうんざりする。
適度に緑の茂った庭は毎年発情期になると、あちこちからメス猫がオスを連れ込む乱交スポットになっているのだ。
四六時中興味もない女の発情した鳴き声を聞かされるこちらの身にもなってくれ、と言えないのが実にもどかしい。
ようやく安眠妨害の元を排除出来たことで、カイトは今度こそ…と毛布へ包まった。
温かい室内と保温性の高い毛布に包まれれば、冷めた眠気も戻ってくるだろう。
そう思っていたカイトだが、しかし予想していた眠気は一向に訪れず。
それどころかみるみるうちに頭は妙に冴え、息は乱れ、呼気は熱を帯びてくる。
あまりの暑さに耐えかね毛布を蹴散らすが、それでも暑さは収まらない。
「……は…、ァ……」
しまった…と思った時には既に、カイトの内側の熱は限界寸前まで昂ぶってしまっていた。
ふと脳裏にさっきの女の声が蘇り、カイトは舌打ちする。
定期的に発情期の訪れるメスと違いオスの発情は不定期で、その多くがメスの発情に誘発されて起こるものなのだ。
それはカイトとて例外ではなく、ましてや自分の意志でどうにかできるものでは到底なかった。
「くそ…ッ」
人知れず悪態をついて気を紛らわせるも、当然その程度で収まる熱であるはずもない。
カイトの意志に反し頬は紅潮し、瞳は潤み、細い両肩は小刻みに震えた。
少しでも身体を苛む熱を逃そうとカイトはぎゅっと毛布を握り込む。
しかしいくら指先が白むほど強く握ったところで、身体を苛む責苦が消えるわけではなかった。
+++
猫飼ったことが無いのでwikiの情報基準で打ってるのですが、猫の感情表現は犬とは違うみたいなのでいろいろ違うかも。
アニメの消化がいくつかあったのでガリガリらくがきしておりました産物。
■カイトきゅん

本編のカイト空気化がすごい。
あ、カイトきゅんのハルト満喫休憩なんですね今まで頑張ったご褒美で!わかります!
右下にフキダシあるけど別に漫画とかではないです。
■Sound Horizon【Roman】

もうすっかり冬なので冬の子。
未確認だから間違えてる可能性大なんですが、頬のタトゥーとかオッドアイが左右逆だったらすみません。
そして服はあえて前のデザインで!描いてみたかった!
■カル様

■クリス

クリスが足りない。
くりしゅくらはい(*´Д`)ハァハァ
■璃緒ちゃん

初描きクオリティですまぬ。
+++
続きには以前の奴隷ネタの続き……なんですが、難航中です。
途中までですが、相変わらず激しく別人クオリティですので許せる方のみ良ければどうぞ><
+++
■カイトきゅん
本編のカイト空気化がすごい。
あ、カイトきゅんのハルト満喫休憩なんですね今まで頑張ったご褒美で!わかります!
右下にフキダシあるけど別に漫画とかではないです。
■Sound Horizon【Roman】
もうすっかり冬なので冬の子。
未確認だから間違えてる可能性大なんですが、頬のタトゥーとかオッドアイが左右逆だったらすみません。
そして服はあえて前のデザインで!描いてみたかった!
■カル様
■クリス
クリスが足りない。
くりしゅくらはい(*´Д`)ハァハァ
■璃緒ちゃん
初描きクオリティですまぬ。
+++
続きには以前の奴隷ネタの続き……なんですが、難航中です。
途中までですが、相変わらず激しく別人クオリティですので許せる方のみ良ければどうぞ><
+++
■■注意事項■■
ゼアルからキャラだけ借りてきたようなパロ。
商業誌とかでありがちな設定とありがちな展開。
カイトの扱いが酷い。
キャラ崩壊にも程がある。
Mr.ハートランドがいろんな意味で変態。
ぶっちゃけ奴隷パロ。
奴隷カイトと買主なMr.ハートランド。
舌打ちしちゃうような凛々しいカイトはいません。
何があっても大丈夫という方はスクロールお願いしますです。
あとこの先ホントに書き途中なので年内怪しいです(_ _(--;(_ _(--; ペコペコペコペコ
11月7日と11月11日の記事の続きです。
+++
「カイト!」
姿を見るなり抱きすくめられ、カイトは困惑した。
Mr.ハートランドではない、しかし知らない男でもない。
「クリス……?」
ここにいるはずのない姿を、カイトは驚愕と困惑の入り混じった表情で見上げた。
クリスは、こうして奴隷となる以前のカイトの知り合いであった。
親同士が昔からの旧友で、クリスとは幼い頃からの付き合いである。
カイトにとっては弟とはまた別の兄弟……言うなれば兄のような存在だった。
その彼がどうして目の前にいるのか。
怪我はないかと確かめるように触れるクリスにカイトは静かに口を開いた。
「何故、貴方がここに…」
「君を助けに来た」
即答されたクリスの言葉にカイトは一瞬目を瞠る。
クリスの救いの手に対する喜びや期待などではなく、カイトの顔に浮かんだのは、困惑。
「さぁ、もう大丈夫だ。早くここを出よう」
立ち竦むカイトの手を取りクリスは廊下へ連れだそうと足を踏み出した。
しかし、その足がそれ以上進むことはなかった。
「出来ません」
カイトの声に振り向いたクリスの蒼い瞳は、驚きに見開かれている。
驚くのも無理はない。
優しいクリスのことだ。きっとカイトのことを第一に考え、今までずっと探してくれていたのだろう。
記憶の中のクリスはいつもカイトに優しかった。
カイトがクリスのことを兄のように感じているのと同じく、クリスもカイトを弟のように思っていてくれているのだろう。
そんな彼を心配させたくなくて、迷惑を掛けたくなくて、カイトはクリスに何も告げずにいたのだ。
だからクリスが何も知らないのも当然である。
カイトの身に何が起こり、どうして自らの意思でここにとどまり続けているのか。
その理由を、カイトは口にした。
「俺は、ハルトのためにここにいるんです」
弟のために自らを売った。
カイトにはもう血の繋がった弟しか大切なものはない。
そのために、唯一の弟を守るためにカイトは身を差し出したのだ。
売り払った奴隷が買い主の下から逃げ出したとあれば、弟の里親がカイトの売り主として責任を取らされるかもしれない。
そうなったら、弟は──ハルトはどうなる。
差し伸べられたクリスの手を拒むのは心苦しい。
それでも弟の為、クリスと共に行くことはできないと告げたカイトをクリスは痛ましげに見下ろした。
奴隷として別の人物に引き渡されたカイトは、あれ以来弟の様子を知らされていないのだろう。
離れ離れになってしまった弟のことだけを想い、何より弟の為にここから逃げることは出来ないと首を横に振るその様子にクリスは心を痛める。
カイトがここに残る理由は弟の安全のためだ。
だからこそカイトに知らせなければならないのだ。
クリスはじっとカイトを見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「ハルトは無事だ」
「え…」
「私の家で保護している」
クリスは柔らかな笑みを浮かべると、カイトを安心させるかのようにその冷たい手を握った。
半ば信じがたい事実にカイトは己の耳を疑い視線を彷徨わせた。
クリスが自分に嘘をつくはずがない。
けれど俄には信じられず、カイトはただ信じられないといった面持ちでクリスを見つめ、唇を震わせた。
「ハルトは……ハルトは、元気ですか?」
「あぁ、とても元気だよ。早く君に会いたいと言っていた」
クリスの言葉にカイトは胸を撫で下ろした。
久しぶりに心から安堵したことで僅かに頬を緩ませる。
クリスもまた長らく見ていなかったカイトの微笑に懐かしさを覚えたが、それも一瞬のことだ。
その穏やかな瞳は次の瞬間には真剣な眼差しに変わると、カイトへ言い聞かせるようにして口を開く。
「だから、もう君がこんな所にいる必要はないんだ」
帰ろう。と腕を引かれ、カイトはクリスを見上げた。
帰る……そうだ、ハルトのところへ。
クリスに手を取られながらも、ふと後ろを振り返ったカイトの藍白の瞳が困惑に染まる。
今のカイトはクリスの目にはどう写っているのだろうか。
カイトの生活は激変した。自分の立場が180度逆転したのである。
弟のためにと売り払った自分の身をあの男が買ったのだ。
それなのに男の所有物であるはずのカイトの身体には傷のひとつも、痣のひとつも存在せず、カイトを繋ぐ手枷や首枷も存在しない。
身体の自由を奪い、拘束するものは何も無い。
いつでも、どこでも、何でも自由に出来る。
カイトにほんの少しその気があればいつでもこの屋敷から逃げ出せる状況だった。
そして、カイトの手を引いたクリスは今がその時だと言っている。
弟の無事が保証された今、カイトがここにいなければならない理由はなかった。
「でも……」
目的が果たされた今となっても、カイトが男のものである事実は消えない。
「何を迷っているんだ、あの男は金で君を買ったんだぞ。そんな男の元にいつまでも残る義理がどこにある?」
クリスの言い分にカイトは明確な答えを出せなかった。
もしカイトを買ったのがMr.ハートランドでなければ或いは、こんなにもカイトが迷うことは無かったのかもしれない。
あのスポットライトで照らされた壇上で、もしカイトを手に入れたのが違う人物だったなら。
鎖で繋がれ、手足を拘束されていたのが彼女ではなく自分であったなら。
もしそうであったなら、差し伸べられた手を取ることはきっと簡単であった。
──どうして、そう思うのだろう。
そこまで考えてカイトは自分自身の行動の矛盾に気づいた。
ハルトのためにと決めた時から、カイトは自分自身を捨てたのだ。
例え誰に買われようと決意は同じ筈なのに、何故カイトは差し伸べられたクリスの優しい手を取ることが出来ないのだろう。
黙りこくったままのカイトにクリスは焦れたように詰め寄った。
「……一体どうしてしまったんだカイト」
心配そうに見下ろしてくるクリスに、カイトは言葉を見つけられない。
自分でも、どうしたいのかわからないのだ。
自分を捨てることに慣れすぎて、自分が何であったのか、わからなくなっている。
立ち尽くしたカイトを無理に引っ張ることも出来ず、クリスは呆然とするカイトの顔を覗きこんだ。
「君が何を迷っているのかは知らないが、私は君をこんなところへ監禁したあの男を許すことは出来ない。……契約など、以ての外だ」
部屋に閉じこもっていたカイトの姿を目にし、監禁されていると思い込んだのだろう。
柔和なクリスの顔が抑えきれない怒りに彩られ、手を握る力が僅かずつ強くなって行く。
柳眉を逆立てるクリスの様子に気圧されながらも、カイトはクリスの言った「契約」という言葉にはっと息を呑んた。
「ま、待って下さい!」
突然声を荒げたカイトは、以前Mr.ハートランドが独り言のように話していたことを思い出していた。
今度、とある会社と提携するかもしれないと。
その商談の日は確か今日ではなかったか。
おそらく、クリスがその商談の相手で間違いないだろう。
自分のせいで男の仕事に影響が出る──。
それは奴隷としてはもちろん、カイトとしても絶対に避けたいことだった。
「あの人は、貴方が思っているような人じゃ……悪い人じゃないんです」
「……カイト……」
「俺は大丈夫です……だから、俺のせいで契約を無かったことにするのは……」
狼狽した様子を隠しもせず縋り付いてきたカイトにクリスは表情を曇らせる。
珍しく取り乱したカイトが必死に頼んでいるのは自分の身の安全ではない。
自分の身が危険に晒されているというのに、カイトが心配しているのはカイトを買ったあの男のことなのだ。
「何故……あんな男の肩を持つ?」
そこまでして何故男を庇うのか、クリスには到底理解できなかった。
カイトの言葉通り、男がカイトを傷つけた様子はない。
だが表面に現れるものが全てではない以上、クリスはカイトの言葉を全て信じることは出来なかった。
カイトが売られたことは確かにMr.ハートランドの手の及ばないところだ。
だがカイトを買ったのは紛れも無い、Mr.ハートランド自身の意志なのである。
彼ほどの人物が闇市の仕組みを理解していないはずがない。
今すぐ逃げれば、自由になって大切な弟とまた一緒に暮らせるのだ。
そんなクリスの選択肢を拒んでまでここで奴隷で居続ける理由を、出来ればカイトの口から直接聞きたかったのだ。
長い沈黙の末にカイトは震える唇を恐る恐る開いた。
「そ、れは……」
「いくら客人とは言え、勝手に邸内を歩きまわるとは感心しないな」
「!」
言葉を遮るように響いた声音に、カイトの肩が震えた。
+++
クソメガネが良い人になりそうな可能性もあるけどそんなことよりクソメガネに好意的なカイトがホントに想像できなくていやそれ以前にこれほんとにカイト?(;^ω^)ダレ?
\(^o^)/
ゼアルからキャラだけ借りてきたようなパロ。
商業誌とかでありがちな設定とありがちな展開。
カイトの扱いが酷い。
キャラ崩壊にも程がある。
Mr.ハートランドがいろんな意味で変態。
ぶっちゃけ奴隷パロ。
奴隷カイトと買主なMr.ハートランド。
舌打ちしちゃうような凛々しいカイトはいません。
何があっても大丈夫という方はスクロールお願いしますです。
あとこの先ホントに書き途中なので年内怪しいです(_ _(--;(_ _(--; ペコペコペコペコ
11月7日と11月11日の記事の続きです。
+++
「カイト!」
姿を見るなり抱きすくめられ、カイトは困惑した。
Mr.ハートランドではない、しかし知らない男でもない。
「クリス……?」
ここにいるはずのない姿を、カイトは驚愕と困惑の入り混じった表情で見上げた。
クリスは、こうして奴隷となる以前のカイトの知り合いであった。
親同士が昔からの旧友で、クリスとは幼い頃からの付き合いである。
カイトにとっては弟とはまた別の兄弟……言うなれば兄のような存在だった。
その彼がどうして目の前にいるのか。
怪我はないかと確かめるように触れるクリスにカイトは静かに口を開いた。
「何故、貴方がここに…」
「君を助けに来た」
即答されたクリスの言葉にカイトは一瞬目を瞠る。
クリスの救いの手に対する喜びや期待などではなく、カイトの顔に浮かんだのは、困惑。
「さぁ、もう大丈夫だ。早くここを出よう」
立ち竦むカイトの手を取りクリスは廊下へ連れだそうと足を踏み出した。
しかし、その足がそれ以上進むことはなかった。
「出来ません」
カイトの声に振り向いたクリスの蒼い瞳は、驚きに見開かれている。
驚くのも無理はない。
優しいクリスのことだ。きっとカイトのことを第一に考え、今までずっと探してくれていたのだろう。
記憶の中のクリスはいつもカイトに優しかった。
カイトがクリスのことを兄のように感じているのと同じく、クリスもカイトを弟のように思っていてくれているのだろう。
そんな彼を心配させたくなくて、迷惑を掛けたくなくて、カイトはクリスに何も告げずにいたのだ。
だからクリスが何も知らないのも当然である。
カイトの身に何が起こり、どうして自らの意思でここにとどまり続けているのか。
その理由を、カイトは口にした。
「俺は、ハルトのためにここにいるんです」
弟のために自らを売った。
カイトにはもう血の繋がった弟しか大切なものはない。
そのために、唯一の弟を守るためにカイトは身を差し出したのだ。
売り払った奴隷が買い主の下から逃げ出したとあれば、弟の里親がカイトの売り主として責任を取らされるかもしれない。
そうなったら、弟は──ハルトはどうなる。
差し伸べられたクリスの手を拒むのは心苦しい。
それでも弟の為、クリスと共に行くことはできないと告げたカイトをクリスは痛ましげに見下ろした。
奴隷として別の人物に引き渡されたカイトは、あれ以来弟の様子を知らされていないのだろう。
離れ離れになってしまった弟のことだけを想い、何より弟の為にここから逃げることは出来ないと首を横に振るその様子にクリスは心を痛める。
カイトがここに残る理由は弟の安全のためだ。
だからこそカイトに知らせなければならないのだ。
クリスはじっとカイトを見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「ハルトは無事だ」
「え…」
「私の家で保護している」
クリスは柔らかな笑みを浮かべると、カイトを安心させるかのようにその冷たい手を握った。
半ば信じがたい事実にカイトは己の耳を疑い視線を彷徨わせた。
クリスが自分に嘘をつくはずがない。
けれど俄には信じられず、カイトはただ信じられないといった面持ちでクリスを見つめ、唇を震わせた。
「ハルトは……ハルトは、元気ですか?」
「あぁ、とても元気だよ。早く君に会いたいと言っていた」
クリスの言葉にカイトは胸を撫で下ろした。
久しぶりに心から安堵したことで僅かに頬を緩ませる。
クリスもまた長らく見ていなかったカイトの微笑に懐かしさを覚えたが、それも一瞬のことだ。
その穏やかな瞳は次の瞬間には真剣な眼差しに変わると、カイトへ言い聞かせるようにして口を開く。
「だから、もう君がこんな所にいる必要はないんだ」
帰ろう。と腕を引かれ、カイトはクリスを見上げた。
帰る……そうだ、ハルトのところへ。
クリスに手を取られながらも、ふと後ろを振り返ったカイトの藍白の瞳が困惑に染まる。
今のカイトはクリスの目にはどう写っているのだろうか。
カイトの生活は激変した。自分の立場が180度逆転したのである。
弟のためにと売り払った自分の身をあの男が買ったのだ。
それなのに男の所有物であるはずのカイトの身体には傷のひとつも、痣のひとつも存在せず、カイトを繋ぐ手枷や首枷も存在しない。
身体の自由を奪い、拘束するものは何も無い。
いつでも、どこでも、何でも自由に出来る。
カイトにほんの少しその気があればいつでもこの屋敷から逃げ出せる状況だった。
そして、カイトの手を引いたクリスは今がその時だと言っている。
弟の無事が保証された今、カイトがここにいなければならない理由はなかった。
「でも……」
目的が果たされた今となっても、カイトが男のものである事実は消えない。
「何を迷っているんだ、あの男は金で君を買ったんだぞ。そんな男の元にいつまでも残る義理がどこにある?」
クリスの言い分にカイトは明確な答えを出せなかった。
もしカイトを買ったのがMr.ハートランドでなければ或いは、こんなにもカイトが迷うことは無かったのかもしれない。
あのスポットライトで照らされた壇上で、もしカイトを手に入れたのが違う人物だったなら。
鎖で繋がれ、手足を拘束されていたのが彼女ではなく自分であったなら。
もしそうであったなら、差し伸べられた手を取ることはきっと簡単であった。
──どうして、そう思うのだろう。
そこまで考えてカイトは自分自身の行動の矛盾に気づいた。
ハルトのためにと決めた時から、カイトは自分自身を捨てたのだ。
例え誰に買われようと決意は同じ筈なのに、何故カイトは差し伸べられたクリスの優しい手を取ることが出来ないのだろう。
黙りこくったままのカイトにクリスは焦れたように詰め寄った。
「……一体どうしてしまったんだカイト」
心配そうに見下ろしてくるクリスに、カイトは言葉を見つけられない。
自分でも、どうしたいのかわからないのだ。
自分を捨てることに慣れすぎて、自分が何であったのか、わからなくなっている。
立ち尽くしたカイトを無理に引っ張ることも出来ず、クリスは呆然とするカイトの顔を覗きこんだ。
「君が何を迷っているのかは知らないが、私は君をこんなところへ監禁したあの男を許すことは出来ない。……契約など、以ての外だ」
部屋に閉じこもっていたカイトの姿を目にし、監禁されていると思い込んだのだろう。
柔和なクリスの顔が抑えきれない怒りに彩られ、手を握る力が僅かずつ強くなって行く。
柳眉を逆立てるクリスの様子に気圧されながらも、カイトはクリスの言った「契約」という言葉にはっと息を呑んた。
「ま、待って下さい!」
突然声を荒げたカイトは、以前Mr.ハートランドが独り言のように話していたことを思い出していた。
今度、とある会社と提携するかもしれないと。
その商談の日は確か今日ではなかったか。
おそらく、クリスがその商談の相手で間違いないだろう。
自分のせいで男の仕事に影響が出る──。
それは奴隷としてはもちろん、カイトとしても絶対に避けたいことだった。
「あの人は、貴方が思っているような人じゃ……悪い人じゃないんです」
「……カイト……」
「俺は大丈夫です……だから、俺のせいで契約を無かったことにするのは……」
狼狽した様子を隠しもせず縋り付いてきたカイトにクリスは表情を曇らせる。
珍しく取り乱したカイトが必死に頼んでいるのは自分の身の安全ではない。
自分の身が危険に晒されているというのに、カイトが心配しているのはカイトを買ったあの男のことなのだ。
「何故……あんな男の肩を持つ?」
そこまでして何故男を庇うのか、クリスには到底理解できなかった。
カイトの言葉通り、男がカイトを傷つけた様子はない。
だが表面に現れるものが全てではない以上、クリスはカイトの言葉を全て信じることは出来なかった。
カイトが売られたことは確かにMr.ハートランドの手の及ばないところだ。
だがカイトを買ったのは紛れも無い、Mr.ハートランド自身の意志なのである。
彼ほどの人物が闇市の仕組みを理解していないはずがない。
今すぐ逃げれば、自由になって大切な弟とまた一緒に暮らせるのだ。
そんなクリスの選択肢を拒んでまでここで奴隷で居続ける理由を、出来ればカイトの口から直接聞きたかったのだ。
長い沈黙の末にカイトは震える唇を恐る恐る開いた。
「そ、れは……」
「いくら客人とは言え、勝手に邸内を歩きまわるとは感心しないな」
「!」
言葉を遮るように響いた声音に、カイトの肩が震えた。
+++
クソメガネが良い人になりそうな可能性もあるけどそんなことよりクソメガネに好意的なカイトがホントに想像できなくていやそれ以前にこれほんとにカイト?(;^ω^)ダレ?
\(^o^)/
いつぞや言ってたハロウィンのボツ文章。
また違うネタ…というか切り口がちょっと違う感じです。
あ、カイトは出ません。主に遊馬とアストラルが喋ってる。
+++
あ、小ネタ関係ない日記なのですが。
もしかしてゼアルの某金メダリストの出てくる回ってスペシャルで9月に放送済みなんです???
BS……視聴組なんですが、記憶にないんですけど(;^ω^)
え、もしかしてまじです?
ポカ─( ゚д゚ )─ン
泣いていいかな
(´;ω;`)ウッ…
+++
また違うネタ…というか切り口がちょっと違う感じです。
あ、カイトは出ません。主に遊馬とアストラルが喋ってる。
+++
あ、小ネタ関係ない日記なのですが。
もしかしてゼアルの某金メダリストの出てくる回ってスペシャルで9月に放送済みなんです???
BS……視聴組なんですが、記憶にないんですけど(;^ω^)
え、もしかしてまじです?
ポカ─( ゚д゚ )─ン
泣いていいかな
(´;ω;`)ウッ…
+++
「いや~すっげー集まったな~」
ニヤニヤと緩みきった顔でDパッドを眺める遊馬は既に本来の目標など忘れているかのような気楽さである。
「遊馬。なぜ君はそんなに嬉しそうなのだ」
「何でって、これ終わったら全部貰えるんだろ?えーと飴にキャラメル、チョコレートに――」
つらつらとお菓子の種類を並べ立てる遊馬は今にも涎を垂らす勢いだ。
Dパッドに頬擦りしながらうっとりとそこに表示されたお菓子のアイコンに熱い眼差しを送っている様子は傍目に見れば恋人に愛を紡ぐ男の様にも似ていたが、生憎遊馬が胸を焦がすのは口一杯に広がる砂糖菓子の焼け付くような甘味に他ならない。
「こんだけあれば当分お菓子にゃ困らねーよなー」
「しかし遊馬。これではまだ足りないぞ」
「え?俺はこんだけあれば暫く大丈夫だけどなあ」
アストラルの懸念が的はずれだとでも言いたげに遊馬は首をかしげている。
目の前のお菓子に夢中ですっかり本来の目的を見失っているらしい遊馬にアストラルはもう一度、現在遊馬のおかれている状況を説明することにした。
「これはハートランド主催のイベントだ」
今日は10月30日。
ハロウィンに向け特別解放されているハートランドでは今ハロウィンをテーマとしたイベントが開かれており、遊馬やアストラルはそのためにお菓子を集めているのである。
「お菓子を集めるのは重要だが、我々にはその先に目指す目標がある」
イベントの目的は2つ。
大量のお菓子ptを集めれば、集めたすべてをイベント終了後に持ち帰ることができる。
そしてもう1つの目的は参加者同士でお菓子ptの数を競いあい、より多くのお菓子を集めた上位の者にはハートランドの優待フリーパス券が与えられるというものだ。
それもただのフリーパスではない。
ハロウィン期間中だけの限定アトラクションを無料で、しかも待ち時間なしの特別待遇で堪能出来るのだ。
「君には優勝……少なくとも上位に入って貰わなければ困る。君と私は運命共同体なのだからな」
「だからこうしてオボット相手にデュエルして、お菓子も結構貯まってるじゃねーか。これでも足りないって、おまえどんだけ食うつもりだよ?」
手に入れたお菓子はイベント終了後に持ち帰ることが出来るはずだが、どんなにお菓子があったところで今の状態のアストラルは食べられないのでは?と遊馬は呑気にアストラルを見上げる。
「私が必要なのではない。Mrハートランドが説明していただろう」
Mr.ハートランドによる開催前の説明によると、新たに登場したアトラクションには、それぞれのアトラクション内にマスターが存在するということだ。
参加者はそのマスターを倒すことで、大量のお菓子PTを手に入れることが出来るという仕組みである。
「勝負の鍵はより多くのアトラクションを制覇し、どれだけ高得点のお菓子を集められるかに掛かっている」
「おぉ!そう言えばそんなことも言ってたような……ってことは、こんなとこでオボット相手にするよりも、マスターって奴を倒した方が良いってことか!」
「そういうことになる。しかし、それには1つ問題がある」
「問題?」
遊馬と違い一通りのルール項目に目を通しているアストラルは、とりあえず遊馬がオボットを相手にお菓子を集めるのを黙って眺めていたのだが、これまで遊馬の行動に口を挟まなかったのは結果的にその行為が正しい行動だと分かっていたからである。
しかしここからは違う。
確かにオボットとのデュエルで着々とお菓子PTは溜まっていったが、より上位を目指すにはこのままのペースでは間に合わないのだ。
「その限定アトラクションに入るにはどうやら入場料という物が必要らしい」
「入場料?それって、お金がなきゃ入れないってこと?」
「そうとも限らない。イベント中のハートランドは特殊フィールドだ。恐らくこの場合の入場料は集めたお菓子のことを指す」
ここでようやくアストラルの言っていた「足りない」という言葉の意味に気づいたのだろう。
遊馬はDパッドの画面に表示されたお菓子の数値とアストラルとを交互に眺めやった。
「その入場料って……もしかしてこんだけじゃまだ足りない?」
「入場料がどの程度のお菓子を必要とするのか、それは私にもわからない。恐らくはアトラクションの入口で何らかの条件提示があるのだろう」
「そっか、それもそうだな。じゃあとりあえずアトラクションに向かうとするか!」
正直な所オボットを相手にデュエルを続けるのにも飽きていたのだろう。遊馬は張り切った様子でDパッドを操作した。
全ての参加者のDパッドには現在所持しているお菓子の情報の他に、イベント説明時にMr.ハートランドよりルールブックが送られていた。
ルールに目は通さない遊馬でも園内マップの在り処はちゃっかり覚えている遊馬に妙な感心を抱きつつ、アストラルも遊馬と共に表示された地図を覗き込んだ。
広いハートランド内のとある地点で、一つだけある青い点がチカチカと明滅を繰り返している。
「ここが現在地のようだな」
「んじゃこっから一番近いアトラクションは……」
近場のアトラクションから攻めることにしたらしい遊馬はマップと現在地の風景とを照らし合わせながら、きょろきょろと落ち着きなく辺りを見渡す。
「……どうやら一番近いのはあの岩山のアトラクションのようだ」
「よっし!そうと決まれば善は急げだ!行くぜ──……って、あれ?」
今すぐにでもアトラクションへかっとビそうな勢いの遊馬の視線の先に、見覚えのある人物が立っていた。
「あそこにいるのって、もしかしてゴーシュ?」
遊馬の視線を追った先でアストラルも難なくその人物を見つけることが出来た。
いつかの派手な毛皮つきコートではなく落ち着いた色合いのスーツという見慣れた出で立ちで、よくゴーシュと行動を共にしているドロワの姿も今日は見当たらない。
「紛れも無いゴーシュのようだな」
「だよな。あいつあんなとこで何してんだ?」
WDCの時は運営委員として、そして参加者としても動いていたゴーシュだが、今遊馬の見た限りでは特に何をしている様子でもない。
一応他の参加者や遊馬たちと同じくDパッドとDゲイザーを装着しているものの、さっきからウロウロと目的もなく彷徨いているとしか思えず、とりあえず取り込み中ではなさそうだ。
一緒に来ていた小鳥や鉄男達と離れて暫くアストラルと二人っきりだった遊馬は、久しぶりの見知った顔に意気揚々と声を掛けた。
「おーい!ゴーシュ!」
大げさに手を振って駆け寄った遊馬に気づいたらしく、遊馬を視界に捉えたゴーシュは豪快に口を開いた。
「よぉ遊馬。菓子は順調に集まってるか?」
「あぁ。でももっと集めるためにそこのアトラクションに向かおうと思ってたんだ。そしたらお前が見えてさ!」
遊馬の示す先には岩肌の剥きだした高い岩山が聳えている。
「へぇ…あそこにねぇ」
ゴーシュの意味深な視線にアストラルは多少の違和感を覚えたが、そんな些細な変化に遊馬が気づいた様子もない。
「ところでさ、お前は今何してんの?今回も運営委員として動いてんのか?」
興味津々と言った様子で詰め寄る遊馬に、しかしゴーシュは彼らしくない歯切れの悪さで返した。
「まぁ…そんなとこだな」
「そんなとこって何だよ?……まあいいや」
珍しく口ごもる様子は気になったが、ゴーシュが何をしていようと遊馬には関係ない。
デュエリストが一度出会ったらそれが運営委員であろうとなかろうと、デュエルを挑むのは必然。
遊馬はゴーシュに向かって左腕をつきだした。
「トリックオアトリート!俺とデュエルだ!ゴーシュ!」
先程までオボット相手にお菓子を荒稼ぎしていた遊馬だが、もちろん通常の大会のようにお菓子を所持した参加者を相手にデュエルを挑むことも可能である。
血気盛んなゴーシュのことだ。挑まれたデュエルは必ず受けるであろう。
遊馬はゴーシュにデュエルを挑むため、己のデュエルディスクに手を掛けた。
「あ、あれ…?」
いつもなら宣言とともに展開し瞬く間にデュエルディスクへと形状を変える筈のDパッドが、全く起動する気配がない。
「おっかしーな、何で反応しないんだ?」
まさかこんな大事な時に故障か?と頭を捻りながら、遊馬はうんともすんとも言わないDパッドを軽く小突いた。
しかしその瞬間、それまで沈黙を保っていたDパッドから突如電子音が鳴り響きはじめ、同時に画面には時間と思しき数字が表示される。
「うわ!な、なんだこれ!?」
「これは…何かの制限時間のようだな」
「せ、制限時間って…まさか爆弾…!?」
「何!?遊馬、早くそれを外すんだ!」
「さっきからやってんだけど…全っ然外れねーんだよ…!」
遊馬は渾身の力を込め力いっぱい引っ張っているのだが、どうしたことかビクともしない。
こうしている間にも刻一刻とカウントダウンしているらしきそれに遊馬はパニック寸前だ。
「急げ遊馬!このままでは君の左腕は……」
「そそそそそんなこと言ったってよ!なんでこんなに固────」
「ドカーーーン!!!」
「うわあああぁぁぁっ!!」
耳を劈くような轟音に、遊馬は驚きのあまり飛び上がって地面へ尻餅をついた。
だが遊馬を襲ったのは地面へ強か打ち付けた尻の痛みくらいのもので、周囲に目を向ければ爆風どころかそよ風すら無く、もちろん左腕も無事である。
腰を抜かしたまま呆然とする遊馬の頭上にゲラゲラと笑い転げる声が響いた。
「おま、お前…ホンット良いノリしすぎだぜ!!」
ひいひいと息も絶え絶えに笑いこけるゴーシュの目には、笑いすぎのためか薄っすらと涙さえ滲んでいる。
「な、なんだよ!紛らわしいことすんなって!脅かしやがって……」。
「オレは爆弾だなんて一言も言ってないぜ?お前が勝手に爆弾だって勘違いしたんだろ?」
ゴーシュは笑いの余韻を引きずりながらも何とか息を整えると、ふてくされ唇を尖らせている遊馬をにやついた笑みで見下ろす。
「──っと、お前らの漫才のせいで忘れるとこだったぜ」
「あ、そうだった!俺とのデュエル──」
「そのことなんだが……よりにもよって俺に当たるとは、ツイてねぇなあ遊馬」
そうでもないか?と遊馬やアストラルを置き去りにしてゴーシュはくつくつと肩を揺らし笑う。
「俺は今回、悪魔役なんだわ」
「はあ?……なんかよくわかんねえけど、挑まれたデュエルは受けるんだろ?」
「あー。そりゃお前ら参加者のルールだろ?さっきも言ったが俺は悪魔。今のお前じゃ俺にデュエルを挑むのはルール上不可能ってこった」
「今の……?」
「……まぁそれについては教えらんねーけど、悪魔については説明してやるよ。良いか──」
悪魔を自称しながらも意外に面倒見の良い兄貴肌なゴーシュは、状況を理解できていない様子の遊馬に彼らしく豪快な解釈での説明を始めた。
「悪魔ってのはこういう尻尾のついてる奴のことだ。これからもっと増えるはずだが、ホントに気をつけなきゃなんねーのは俺のようなデカイ図体の奴でこんな酔狂なモンつけてる奴だな」
「ゴーシュの他にもこんな変な格好してる奴がいるってことか?」
「どういう意味だよ」
そう言いながらゴーシュは掴んでいた尻尾から手を離した。
手を離してもダラリと垂れ下がる様子のないその尻尾はまるでゴーシュの体の一部であるかのように揺れ動いている。
どうやら本物さながらに精巧に作られたARヴィジョンであるようだ。
「つーわけで、無謀にも俺にデュエルを挑んできたお前には、代わりに俺からの条件を飲んでもらう」
「え」
「言っとくがこれは強制だからな?」
有無を言わせぬゴーシュは更に“強制”という何とも支配的な単語を持ち出して、慌てふためく遊馬を愉快そうに見下ろした。
「えーと……ゴーシュさん?俺のことは見なかったことに……」
「残念ながらそうはいかねえなあ。悪魔との契約は絶対だ。……それに、説明してやってるだけありがてえと思いな」
「ですよねー」
「つーわけで条件だが、日没までに悪魔の血を持って来い」
「はぁ?……て言うか悪魔の血って、なんだよそれ?」
「残念ながらノーヒントだ。日没までに持ってこねーとペナルティだからな」
「ペナルティって…はっ!まさかお前の魂を頂くとか…そういう系?」
「そうかもなあ?ま、つーわけで頑張んな。それと、俺はずっとここにいるわけじゃねえから気をつけるこったな」
けらけらと笑いながらゴーシュは人混みの中へと消えて行った。
アストラルと共に佇む遊馬のDパッドは、ゴーシュと別れた後も変わらずカウントダウンを刻み続けている。
「……ふむ。どうやらそのカウントダウンは日没までの残り時間のようだな」
「あ、アストラル!お前ルール知ってたんだろ?ゴーシュが怪しいなら怪しいって教えてくれりゃ良かったのに薄情者~」
「私も知らなかったのだ。どうやらルールブックには全てが記載されているわけではないらしい」
「え、そうなの?」
+++
という感じで見るからにめんどくさそうで誰得な感じになりそうだったのでボツというわけです。
というか単純にカイトが出てくるまでの間を持たせられる自信が無かったとも。・゚・(Д`(⊂(゚Д゚ つ⌒
こんなところまで読んでいただきましてありがとうございます><
ニヤニヤと緩みきった顔でDパッドを眺める遊馬は既に本来の目標など忘れているかのような気楽さである。
「遊馬。なぜ君はそんなに嬉しそうなのだ」
「何でって、これ終わったら全部貰えるんだろ?えーと飴にキャラメル、チョコレートに――」
つらつらとお菓子の種類を並べ立てる遊馬は今にも涎を垂らす勢いだ。
Dパッドに頬擦りしながらうっとりとそこに表示されたお菓子のアイコンに熱い眼差しを送っている様子は傍目に見れば恋人に愛を紡ぐ男の様にも似ていたが、生憎遊馬が胸を焦がすのは口一杯に広がる砂糖菓子の焼け付くような甘味に他ならない。
「こんだけあれば当分お菓子にゃ困らねーよなー」
「しかし遊馬。これではまだ足りないぞ」
「え?俺はこんだけあれば暫く大丈夫だけどなあ」
アストラルの懸念が的はずれだとでも言いたげに遊馬は首をかしげている。
目の前のお菓子に夢中ですっかり本来の目的を見失っているらしい遊馬にアストラルはもう一度、現在遊馬のおかれている状況を説明することにした。
「これはハートランド主催のイベントだ」
今日は10月30日。
ハロウィンに向け特別解放されているハートランドでは今ハロウィンをテーマとしたイベントが開かれており、遊馬やアストラルはそのためにお菓子を集めているのである。
「お菓子を集めるのは重要だが、我々にはその先に目指す目標がある」
イベントの目的は2つ。
大量のお菓子ptを集めれば、集めたすべてをイベント終了後に持ち帰ることができる。
そしてもう1つの目的は参加者同士でお菓子ptの数を競いあい、より多くのお菓子を集めた上位の者にはハートランドの優待フリーパス券が与えられるというものだ。
それもただのフリーパスではない。
ハロウィン期間中だけの限定アトラクションを無料で、しかも待ち時間なしの特別待遇で堪能出来るのだ。
「君には優勝……少なくとも上位に入って貰わなければ困る。君と私は運命共同体なのだからな」
「だからこうしてオボット相手にデュエルして、お菓子も結構貯まってるじゃねーか。これでも足りないって、おまえどんだけ食うつもりだよ?」
手に入れたお菓子はイベント終了後に持ち帰ることが出来るはずだが、どんなにお菓子があったところで今の状態のアストラルは食べられないのでは?と遊馬は呑気にアストラルを見上げる。
「私が必要なのではない。Mrハートランドが説明していただろう」
Mr.ハートランドによる開催前の説明によると、新たに登場したアトラクションには、それぞれのアトラクション内にマスターが存在するということだ。
参加者はそのマスターを倒すことで、大量のお菓子PTを手に入れることが出来るという仕組みである。
「勝負の鍵はより多くのアトラクションを制覇し、どれだけ高得点のお菓子を集められるかに掛かっている」
「おぉ!そう言えばそんなことも言ってたような……ってことは、こんなとこでオボット相手にするよりも、マスターって奴を倒した方が良いってことか!」
「そういうことになる。しかし、それには1つ問題がある」
「問題?」
遊馬と違い一通りのルール項目に目を通しているアストラルは、とりあえず遊馬がオボットを相手にお菓子を集めるのを黙って眺めていたのだが、これまで遊馬の行動に口を挟まなかったのは結果的にその行為が正しい行動だと分かっていたからである。
しかしここからは違う。
確かにオボットとのデュエルで着々とお菓子PTは溜まっていったが、より上位を目指すにはこのままのペースでは間に合わないのだ。
「その限定アトラクションに入るにはどうやら入場料という物が必要らしい」
「入場料?それって、お金がなきゃ入れないってこと?」
「そうとも限らない。イベント中のハートランドは特殊フィールドだ。恐らくこの場合の入場料は集めたお菓子のことを指す」
ここでようやくアストラルの言っていた「足りない」という言葉の意味に気づいたのだろう。
遊馬はDパッドの画面に表示されたお菓子の数値とアストラルとを交互に眺めやった。
「その入場料って……もしかしてこんだけじゃまだ足りない?」
「入場料がどの程度のお菓子を必要とするのか、それは私にもわからない。恐らくはアトラクションの入口で何らかの条件提示があるのだろう」
「そっか、それもそうだな。じゃあとりあえずアトラクションに向かうとするか!」
正直な所オボットを相手にデュエルを続けるのにも飽きていたのだろう。遊馬は張り切った様子でDパッドを操作した。
全ての参加者のDパッドには現在所持しているお菓子の情報の他に、イベント説明時にMr.ハートランドよりルールブックが送られていた。
ルールに目は通さない遊馬でも園内マップの在り処はちゃっかり覚えている遊馬に妙な感心を抱きつつ、アストラルも遊馬と共に表示された地図を覗き込んだ。
広いハートランド内のとある地点で、一つだけある青い点がチカチカと明滅を繰り返している。
「ここが現在地のようだな」
「んじゃこっから一番近いアトラクションは……」
近場のアトラクションから攻めることにしたらしい遊馬はマップと現在地の風景とを照らし合わせながら、きょろきょろと落ち着きなく辺りを見渡す。
「……どうやら一番近いのはあの岩山のアトラクションのようだ」
「よっし!そうと決まれば善は急げだ!行くぜ──……って、あれ?」
今すぐにでもアトラクションへかっとビそうな勢いの遊馬の視線の先に、見覚えのある人物が立っていた。
「あそこにいるのって、もしかしてゴーシュ?」
遊馬の視線を追った先でアストラルも難なくその人物を見つけることが出来た。
いつかの派手な毛皮つきコートではなく落ち着いた色合いのスーツという見慣れた出で立ちで、よくゴーシュと行動を共にしているドロワの姿も今日は見当たらない。
「紛れも無いゴーシュのようだな」
「だよな。あいつあんなとこで何してんだ?」
WDCの時は運営委員として、そして参加者としても動いていたゴーシュだが、今遊馬の見た限りでは特に何をしている様子でもない。
一応他の参加者や遊馬たちと同じくDパッドとDゲイザーを装着しているものの、さっきからウロウロと目的もなく彷徨いているとしか思えず、とりあえず取り込み中ではなさそうだ。
一緒に来ていた小鳥や鉄男達と離れて暫くアストラルと二人っきりだった遊馬は、久しぶりの見知った顔に意気揚々と声を掛けた。
「おーい!ゴーシュ!」
大げさに手を振って駆け寄った遊馬に気づいたらしく、遊馬を視界に捉えたゴーシュは豪快に口を開いた。
「よぉ遊馬。菓子は順調に集まってるか?」
「あぁ。でももっと集めるためにそこのアトラクションに向かおうと思ってたんだ。そしたらお前が見えてさ!」
遊馬の示す先には岩肌の剥きだした高い岩山が聳えている。
「へぇ…あそこにねぇ」
ゴーシュの意味深な視線にアストラルは多少の違和感を覚えたが、そんな些細な変化に遊馬が気づいた様子もない。
「ところでさ、お前は今何してんの?今回も運営委員として動いてんのか?」
興味津々と言った様子で詰め寄る遊馬に、しかしゴーシュは彼らしくない歯切れの悪さで返した。
「まぁ…そんなとこだな」
「そんなとこって何だよ?……まあいいや」
珍しく口ごもる様子は気になったが、ゴーシュが何をしていようと遊馬には関係ない。
デュエリストが一度出会ったらそれが運営委員であろうとなかろうと、デュエルを挑むのは必然。
遊馬はゴーシュに向かって左腕をつきだした。
「トリックオアトリート!俺とデュエルだ!ゴーシュ!」
先程までオボット相手にお菓子を荒稼ぎしていた遊馬だが、もちろん通常の大会のようにお菓子を所持した参加者を相手にデュエルを挑むことも可能である。
血気盛んなゴーシュのことだ。挑まれたデュエルは必ず受けるであろう。
遊馬はゴーシュにデュエルを挑むため、己のデュエルディスクに手を掛けた。
「あ、あれ…?」
いつもなら宣言とともに展開し瞬く間にデュエルディスクへと形状を変える筈のDパッドが、全く起動する気配がない。
「おっかしーな、何で反応しないんだ?」
まさかこんな大事な時に故障か?と頭を捻りながら、遊馬はうんともすんとも言わないDパッドを軽く小突いた。
しかしその瞬間、それまで沈黙を保っていたDパッドから突如電子音が鳴り響きはじめ、同時に画面には時間と思しき数字が表示される。
「うわ!な、なんだこれ!?」
「これは…何かの制限時間のようだな」
「せ、制限時間って…まさか爆弾…!?」
「何!?遊馬、早くそれを外すんだ!」
「さっきからやってんだけど…全っ然外れねーんだよ…!」
遊馬は渾身の力を込め力いっぱい引っ張っているのだが、どうしたことかビクともしない。
こうしている間にも刻一刻とカウントダウンしているらしきそれに遊馬はパニック寸前だ。
「急げ遊馬!このままでは君の左腕は……」
「そそそそそんなこと言ったってよ!なんでこんなに固────」
「ドカーーーン!!!」
「うわあああぁぁぁっ!!」
耳を劈くような轟音に、遊馬は驚きのあまり飛び上がって地面へ尻餅をついた。
だが遊馬を襲ったのは地面へ強か打ち付けた尻の痛みくらいのもので、周囲に目を向ければ爆風どころかそよ風すら無く、もちろん左腕も無事である。
腰を抜かしたまま呆然とする遊馬の頭上にゲラゲラと笑い転げる声が響いた。
「おま、お前…ホンット良いノリしすぎだぜ!!」
ひいひいと息も絶え絶えに笑いこけるゴーシュの目には、笑いすぎのためか薄っすらと涙さえ滲んでいる。
「な、なんだよ!紛らわしいことすんなって!脅かしやがって……」。
「オレは爆弾だなんて一言も言ってないぜ?お前が勝手に爆弾だって勘違いしたんだろ?」
ゴーシュは笑いの余韻を引きずりながらも何とか息を整えると、ふてくされ唇を尖らせている遊馬をにやついた笑みで見下ろす。
「──っと、お前らの漫才のせいで忘れるとこだったぜ」
「あ、そうだった!俺とのデュエル──」
「そのことなんだが……よりにもよって俺に当たるとは、ツイてねぇなあ遊馬」
そうでもないか?と遊馬やアストラルを置き去りにしてゴーシュはくつくつと肩を揺らし笑う。
「俺は今回、悪魔役なんだわ」
「はあ?……なんかよくわかんねえけど、挑まれたデュエルは受けるんだろ?」
「あー。そりゃお前ら参加者のルールだろ?さっきも言ったが俺は悪魔。今のお前じゃ俺にデュエルを挑むのはルール上不可能ってこった」
「今の……?」
「……まぁそれについては教えらんねーけど、悪魔については説明してやるよ。良いか──」
悪魔を自称しながらも意外に面倒見の良い兄貴肌なゴーシュは、状況を理解できていない様子の遊馬に彼らしく豪快な解釈での説明を始めた。
「悪魔ってのはこういう尻尾のついてる奴のことだ。これからもっと増えるはずだが、ホントに気をつけなきゃなんねーのは俺のようなデカイ図体の奴でこんな酔狂なモンつけてる奴だな」
「ゴーシュの他にもこんな変な格好してる奴がいるってことか?」
「どういう意味だよ」
そう言いながらゴーシュは掴んでいた尻尾から手を離した。
手を離してもダラリと垂れ下がる様子のないその尻尾はまるでゴーシュの体の一部であるかのように揺れ動いている。
どうやら本物さながらに精巧に作られたARヴィジョンであるようだ。
「つーわけで、無謀にも俺にデュエルを挑んできたお前には、代わりに俺からの条件を飲んでもらう」
「え」
「言っとくがこれは強制だからな?」
有無を言わせぬゴーシュは更に“強制”という何とも支配的な単語を持ち出して、慌てふためく遊馬を愉快そうに見下ろした。
「えーと……ゴーシュさん?俺のことは見なかったことに……」
「残念ながらそうはいかねえなあ。悪魔との契約は絶対だ。……それに、説明してやってるだけありがてえと思いな」
「ですよねー」
「つーわけで条件だが、日没までに悪魔の血を持って来い」
「はぁ?……て言うか悪魔の血って、なんだよそれ?」
「残念ながらノーヒントだ。日没までに持ってこねーとペナルティだからな」
「ペナルティって…はっ!まさかお前の魂を頂くとか…そういう系?」
「そうかもなあ?ま、つーわけで頑張んな。それと、俺はずっとここにいるわけじゃねえから気をつけるこったな」
けらけらと笑いながらゴーシュは人混みの中へと消えて行った。
アストラルと共に佇む遊馬のDパッドは、ゴーシュと別れた後も変わらずカウントダウンを刻み続けている。
「……ふむ。どうやらそのカウントダウンは日没までの残り時間のようだな」
「あ、アストラル!お前ルール知ってたんだろ?ゴーシュが怪しいなら怪しいって教えてくれりゃ良かったのに薄情者~」
「私も知らなかったのだ。どうやらルールブックには全てが記載されているわけではないらしい」
「え、そうなの?」
+++
という感じで見るからにめんどくさそうで誰得な感じになりそうだったのでボツというわけです。
というか単純にカイトが出てくるまでの間を持たせられる自信が無かったとも。・゚・(Д`(⊂(゚Д゚ つ⌒
こんなところまで読んでいただきましてありがとうございます><
お題消化なのですが存外に長くなってしまったので小出しにするより書き上げちゃうべきか(*´-ω・)
gdgdやってても進みそうにないので、終わりの目処が立つようならお題ページの方にうpします。
+++
gdgdやってても進みそうにないので、終わりの目処が立つようならお題ページの方にうpします。
+++
■■注意事項■■
ゼアルからキャラだけ借りてきたようなパロ。
商業誌とかでありがちな設定とありがちな展開。
カイトの扱いが酷い。
キャラ崩壊にも程がある。
Mr.ハートランドがいろんな意味で変態。
ぶっちゃけ奴隷パロ。
奴隷カイトと買主なMr.ハートランド。
舌打ちしちゃうような凛々しいカイトはいません。
何があっても大丈夫という方はスクロールお願いしますです。
11月7日の記事の続きです。
+++
食事を終えると、Mr.ハートランドは電話のため少し席を外すと言って食堂から出て行った。
食堂内にはクリスの他にも食事を終えた食器を片付けるメイドや、ワインのおかわりを尋ねるメイドなど数人の使用人が残っている。
奴隷を買うのは人身売買という意味では決して褒められた行為ではないが、金持ちに買われた彼女らは少なくとも二束三文で娼館に売り払われるよりはまともな生活を送っているのかもしれない。
彼女らが仕事として働いている以上、クリスが口を挟む問題でもない。
使用人という意味ではアークライト家にも存在するし、Mr.ハートランド程の大物ともなるとこの程度の使用人で驚くレベルではないのだろう。
そこへ、小さく電話が震えた。食事とはいえ大事な商談中だ。もちろん携帯端末の電源は切ってあるが、これは特別な回線である。
メイドに一言断って人気のない廊下へ進み電話に出る。
電話の相手は末の弟だった。
「ミハエルか……商談中だと言ってあるだろう」
「すみません兄様。実はお知らせしたいことがありまして」
思慮深いミハエルのことだ、急を要する用件なのだろうと察しクリスは続きを促した。
「実はMr.ハートランドはこれまで何度か闇市で奴隷を競り落としています」
闇市という不穏な言葉に僅かに眉を寄せたが、しかしまるでわからないこともない。
それなりの条件を求めるのであれば、違法ではあるが同時に効率的な手段でもある。
「使用人の数十人では特に驚きはしない。実際それくらい雇わなければこの屋敷は手に余るだろうからね」
「いえ…確かに数も多いのですが、問題なのは数ヶ月前の奴隷につけられた値段です」
闇市で取引される人間は何種類かに分けられる。
第一にこの世に2つとない稀有な美貌を持っている者。所有するだけで財産的価値のある美貌に値段は跳ね上がる。
次に特殊な才能を持っているもの。これも同じだ。希少性の高いものの値段が跳ね上がることは、何も闇市でなくとも共通だろう。
ただ、問題なのは最後の一つだ。
素性に問題があり、本来闇市などに流れるはずのない者。秘密に対する口止め料やその他見返り料などが上乗せされ法外な値がつく。
更にその者がその他の条件も満たしているのなら、なおさらだ。
「まさか……」
「写真や映像の記録は一切残っていませんが、競売参加者の一人から聞き出した外見的特徴から、ほぼ…間違いないかと」
弟からの通話を切って、クリスは信じられないという思いで端末を握りしめた。
別件で動いていたが、まさかこんなところで繋がるとは。思いの外世間というのは狭いものかもしれない。
その奴隷を法外な値段でMr.ハートランドが購入したとなれば、他人に譲るとは考えられない。
必ずこの屋敷のどこかにいるはずなのだ。
もしかすると監禁され、思わず目をそらしてしまいそうな状態なのかもしれない。
とにかく一刻も早く見つけ出さなければ。
弟のように可愛がっていた彼らが失踪して一年。
ずっと探し続けそれでも見つけられなかったのに、此処に来てようやくその足取りがつかめたのだ。
「カイト……ッ!」
クリスはMr.ハートランドに見つからないように、屋敷の奥へと足を踏み入れた。
朝の給仕も結局中途半端で、カイトは朝から何となく気持ちの悪さを感じていた。
Mr.ハートランドに夕食に誘われることなど初めてのことだった。
でも自分の立場を考えれば、いくら主人が良しと言えど自分自身の引いた一線を超えることは出来ない。
自分の身が売られるとわかった時にまず考えたのは、自分に一体いくらの値がつけられるのかということだった。
カイトに身売りを提案した人物は、カイトにつけられた値段をそのまま弟のために使うと言っていた。
どう足掻いたところで弟と一緒に暮らすことが出来ない以上、カイトがしてやれることはこれしかない。
高い値を付けられるためにカイトはどんな付加価値にも手を出した。
誘い方も、受け入れ方も、自分を押し殺す方法も覚えた。
求められれば柔らかな笑みを浮かべ、苦痛を伴う性行為にも快楽を示す努力をした。
カイトの外見から用途は愛玩用という分類で出品されたが、カイトは進んで日常生活に役立つ仕事を覚えた。
ただ顔が綺麗なだけよりも、それなりにそつなくこなせたほうが良いに決まっている。
愛玩用の奴隷を買う人間は奴隷にそこまで求める者のほうが少なかったが、少なくとも出品側の謳い文句として値段を釣り上げる要素になる。
カイトにとって重要だったのは、自分がいくらの値になるか。
そしてどのレベルの富豪が買い手となるか。
それだけだった。
その点では、Mr.ハートランドはカイトにとって最高の条件を持ちあわせていた人物である。
お金さえ持っているのなら、どんな扱いを受けても構わない。
カイトは人以下のところまで落ちたのだ。人並みの生活などとうに捨ててきた。
それなのにカイトを買ったMr.ハートランドという男はまるでカイトを人であるかのように扱うのだ。
もちろん大金を出して購入した奴隷である以上、愛玩用であればそばに置き、ペットのように可愛がることなど想定内である。
ところが、今朝の男の言動はペットに対するそれとは微妙に違っていた。
本来、奴隷に選択肢など無いのだ。
どんな命令であれ、主人の命令には従わなければならない。
最初から男がカイトに命令していたら、カイトは男と共に夕食を共にしていたのかもしれない。
けれども、男はカイトに選択肢を与えた。
カイトはある意味ではカイトを買った男よりも、カイト自身が奴隷でしかないことを肝に銘じていた。
奴隷が主人と食事を共にするなど、聞いたことがない。
二度目の問いかけは命令を含んでいたが、それでもなお男はカイトに選択のチャンスを与えていた。
カイトは自らの奴隷という立場を忘れたことがないからこそ、再三に及ぶ男の誘いを断ったのだ。
しかし今にして思えば、命令をほのめかされた上でカイトが立場を重んじる余り断ったという行為自体が、本来奴隷にあるはずのない選択肢以外の何物でもないのでは──。
ならば、どうするべきだったのか。
男の言うとおり、まるで自分が普通の人間であった頃のように、誰かと食事をするべきであったのだろうか。
普通の生活など捨てた。
奴隷の身分まで堕ちたカイトを男は物のように手に入れた。
その時点でカイトは人間ではない、男の数ある所有物の一つでしかない。
なのに何故単なる物と食事をしたがる。
何故、奴隷の自分をまるで人間のように扱う。
どうして、腫れ物を扱うように……薄い硝子細工にでも触れるかのように扱うのだろうか。
この屋敷にあるものは全て男の所有物なのだ。
触れたければ触れればいい。壊したければ壊せばいい。
そうしたところで誰に咎められるわけでもない。
何でも自由に出来る物ばかりのはずなのに。
カイトは与えられた自室のベッドへ腰掛けたまま、ぐるりと視線を巡らせた。
広い屋敷だからなのかもしれないが、奴隷が一人部屋を与えられているのである。
それもこの屋敷で働いている全ての奴隷が同じ待遇なのだ。少しでも油断すれば、自分が金で買われた身分であることを忘れてしまいそうになる。
もちろん、屋敷の他の広間や食堂など主人の生活圏に比べたらその差は歴然だ。
しかし奴隷の部屋にしては高い天井。汚れのない綺麗な壁紙。ふかふかの絨毯。
よもやMr.ハートランドほどの大富豪ともなるとこれでも最低水準の部屋なのだろうか、もしそうだとすれば、それ程までに金銭感覚がずれているのかと背筋が薄ら寒くもなる。
何よりこのベッド。
男の寝室にある広い寝台と比べれば広さもクッション性も雲泥の差ではあるものの、そこらの安宿なんかより遙かに良い物なのである。
まさか男は奴隷が何であるかを知らないのではと馬鹿らしい懸念まで抱きそうになるほどだ。
今カイトは手持ち無沙汰である。
常日頃簡単な給仕は行うが、それは屋敷に男と使用人しかいない時のみだ。
来客が来ている場合、カイトは自室から出ることを許されていない。
それは男に言われたからではなく、カイトの素性の問題である。
カイトを買った男はカイトの素性を知らされていない。幸か不幸か、落ちる前のカイトと男に面識は無かった。
それでも、男の家を訪れる客はその限りではない。
客の中にはもしかするとカイトのことを知っている人間がいるかもしれない。
カイトが不用意に屋敷内をうろつき、誰かの目に触れることがあってはならないのだ。
何もやることがないという状況は苦手だった。
意識して無心になっているつもりでも、どうしても余計な思考が頭をよぎり、色々なことを考えてしまう。
ふと思い出したのは数ヶ月前の記憶。
カイトが男に買われた日のことをカイトは今でも鮮明に覚えている。
眼の前に広がるのは目に痛みを覚える程の白い光。
正面、左右、上下に点在するスポットライトがカイトだけを闇の中からくっきりと照らし出していた。
眩しいスポットライトの向こう側はカイトの目には暗闇にしか映らないが、恐らく大勢の人間達が照らされたカイトを言葉通りの値踏みするような目で見つめているのだろう。
数えきれぬほど多くの視線がカイトを品定めし、次々と数字の書かれた札を上げるのだ。
その壇上でカイトが想像し、覚悟していた奴隷としての生活は、現在カイトが置かれている現実とは程遠い、暗く荒れた苦しいものであった。
実際、カイトと同じ日に競りにかけられていた華奢な少女は所有者へ引き渡された瞬間、家畜同然に首輪や手枷をはめられていた。
あの少女と自分の境遇に違いなど無い。
カイトとてそうなっていたかもしれないのだ。
違ったのは落札したのが誰であるかということだけ。
何故男は自分を鎖で繋がないのだろうか。
そんな疑問が浮かんだ瞬間、カイトの部屋のドアノブがガチャリと回された。
扉は内側から鍵を掛けられる構造になっている。
しかしこの屋敷でカイトが誰から身を守るというのか。
カイトの部屋に用があるとすれば、Mr.ハートランドだけだ。
自分の所有者が入るのに鍵をかけているはずがない。
扉がゆっくり開かれると、そこには男が立っていた。
+++
カイトの性格がちょっと迷子。
ゼアルからキャラだけ借りてきたようなパロ。
商業誌とかでありがちな設定とありがちな展開。
カイトの扱いが酷い。
キャラ崩壊にも程がある。
Mr.ハートランドがいろんな意味で変態。
ぶっちゃけ奴隷パロ。
奴隷カイトと買主なMr.ハートランド。
舌打ちしちゃうような凛々しいカイトはいません。
何があっても大丈夫という方はスクロールお願いしますです。
11月7日の記事の続きです。
+++
食事を終えると、Mr.ハートランドは電話のため少し席を外すと言って食堂から出て行った。
食堂内にはクリスの他にも食事を終えた食器を片付けるメイドや、ワインのおかわりを尋ねるメイドなど数人の使用人が残っている。
奴隷を買うのは人身売買という意味では決して褒められた行為ではないが、金持ちに買われた彼女らは少なくとも二束三文で娼館に売り払われるよりはまともな生活を送っているのかもしれない。
彼女らが仕事として働いている以上、クリスが口を挟む問題でもない。
使用人という意味ではアークライト家にも存在するし、Mr.ハートランド程の大物ともなるとこの程度の使用人で驚くレベルではないのだろう。
そこへ、小さく電話が震えた。食事とはいえ大事な商談中だ。もちろん携帯端末の電源は切ってあるが、これは特別な回線である。
メイドに一言断って人気のない廊下へ進み電話に出る。
電話の相手は末の弟だった。
「ミハエルか……商談中だと言ってあるだろう」
「すみません兄様。実はお知らせしたいことがありまして」
思慮深いミハエルのことだ、急を要する用件なのだろうと察しクリスは続きを促した。
「実はMr.ハートランドはこれまで何度か闇市で奴隷を競り落としています」
闇市という不穏な言葉に僅かに眉を寄せたが、しかしまるでわからないこともない。
それなりの条件を求めるのであれば、違法ではあるが同時に効率的な手段でもある。
「使用人の数十人では特に驚きはしない。実際それくらい雇わなければこの屋敷は手に余るだろうからね」
「いえ…確かに数も多いのですが、問題なのは数ヶ月前の奴隷につけられた値段です」
闇市で取引される人間は何種類かに分けられる。
第一にこの世に2つとない稀有な美貌を持っている者。所有するだけで財産的価値のある美貌に値段は跳ね上がる。
次に特殊な才能を持っているもの。これも同じだ。希少性の高いものの値段が跳ね上がることは、何も闇市でなくとも共通だろう。
ただ、問題なのは最後の一つだ。
素性に問題があり、本来闇市などに流れるはずのない者。秘密に対する口止め料やその他見返り料などが上乗せされ法外な値がつく。
更にその者がその他の条件も満たしているのなら、なおさらだ。
「まさか……」
「写真や映像の記録は一切残っていませんが、競売参加者の一人から聞き出した外見的特徴から、ほぼ…間違いないかと」
弟からの通話を切って、クリスは信じられないという思いで端末を握りしめた。
別件で動いていたが、まさかこんなところで繋がるとは。思いの外世間というのは狭いものかもしれない。
その奴隷を法外な値段でMr.ハートランドが購入したとなれば、他人に譲るとは考えられない。
必ずこの屋敷のどこかにいるはずなのだ。
もしかすると監禁され、思わず目をそらしてしまいそうな状態なのかもしれない。
とにかく一刻も早く見つけ出さなければ。
弟のように可愛がっていた彼らが失踪して一年。
ずっと探し続けそれでも見つけられなかったのに、此処に来てようやくその足取りがつかめたのだ。
「カイト……ッ!」
クリスはMr.ハートランドに見つからないように、屋敷の奥へと足を踏み入れた。
朝の給仕も結局中途半端で、カイトは朝から何となく気持ちの悪さを感じていた。
Mr.ハートランドに夕食に誘われることなど初めてのことだった。
でも自分の立場を考えれば、いくら主人が良しと言えど自分自身の引いた一線を超えることは出来ない。
自分の身が売られるとわかった時にまず考えたのは、自分に一体いくらの値がつけられるのかということだった。
カイトに身売りを提案した人物は、カイトにつけられた値段をそのまま弟のために使うと言っていた。
どう足掻いたところで弟と一緒に暮らすことが出来ない以上、カイトがしてやれることはこれしかない。
高い値を付けられるためにカイトはどんな付加価値にも手を出した。
誘い方も、受け入れ方も、自分を押し殺す方法も覚えた。
求められれば柔らかな笑みを浮かべ、苦痛を伴う性行為にも快楽を示す努力をした。
カイトの外見から用途は愛玩用という分類で出品されたが、カイトは進んで日常生活に役立つ仕事を覚えた。
ただ顔が綺麗なだけよりも、それなりにそつなくこなせたほうが良いに決まっている。
愛玩用の奴隷を買う人間は奴隷にそこまで求める者のほうが少なかったが、少なくとも出品側の謳い文句として値段を釣り上げる要素になる。
カイトにとって重要だったのは、自分がいくらの値になるか。
そしてどのレベルの富豪が買い手となるか。
それだけだった。
その点では、Mr.ハートランドはカイトにとって最高の条件を持ちあわせていた人物である。
お金さえ持っているのなら、どんな扱いを受けても構わない。
カイトは人以下のところまで落ちたのだ。人並みの生活などとうに捨ててきた。
それなのにカイトを買ったMr.ハートランドという男はまるでカイトを人であるかのように扱うのだ。
もちろん大金を出して購入した奴隷である以上、愛玩用であればそばに置き、ペットのように可愛がることなど想定内である。
ところが、今朝の男の言動はペットに対するそれとは微妙に違っていた。
本来、奴隷に選択肢など無いのだ。
どんな命令であれ、主人の命令には従わなければならない。
最初から男がカイトに命令していたら、カイトは男と共に夕食を共にしていたのかもしれない。
けれども、男はカイトに選択肢を与えた。
カイトはある意味ではカイトを買った男よりも、カイト自身が奴隷でしかないことを肝に銘じていた。
奴隷が主人と食事を共にするなど、聞いたことがない。
二度目の問いかけは命令を含んでいたが、それでもなお男はカイトに選択のチャンスを与えていた。
カイトは自らの奴隷という立場を忘れたことがないからこそ、再三に及ぶ男の誘いを断ったのだ。
しかし今にして思えば、命令をほのめかされた上でカイトが立場を重んじる余り断ったという行為自体が、本来奴隷にあるはずのない選択肢以外の何物でもないのでは──。
ならば、どうするべきだったのか。
男の言うとおり、まるで自分が普通の人間であった頃のように、誰かと食事をするべきであったのだろうか。
普通の生活など捨てた。
奴隷の身分まで堕ちたカイトを男は物のように手に入れた。
その時点でカイトは人間ではない、男の数ある所有物の一つでしかない。
なのに何故単なる物と食事をしたがる。
何故、奴隷の自分をまるで人間のように扱う。
どうして、腫れ物を扱うように……薄い硝子細工にでも触れるかのように扱うのだろうか。
この屋敷にあるものは全て男の所有物なのだ。
触れたければ触れればいい。壊したければ壊せばいい。
そうしたところで誰に咎められるわけでもない。
何でも自由に出来る物ばかりのはずなのに。
カイトは与えられた自室のベッドへ腰掛けたまま、ぐるりと視線を巡らせた。
広い屋敷だからなのかもしれないが、奴隷が一人部屋を与えられているのである。
それもこの屋敷で働いている全ての奴隷が同じ待遇なのだ。少しでも油断すれば、自分が金で買われた身分であることを忘れてしまいそうになる。
もちろん、屋敷の他の広間や食堂など主人の生活圏に比べたらその差は歴然だ。
しかし奴隷の部屋にしては高い天井。汚れのない綺麗な壁紙。ふかふかの絨毯。
よもやMr.ハートランドほどの大富豪ともなるとこれでも最低水準の部屋なのだろうか、もしそうだとすれば、それ程までに金銭感覚がずれているのかと背筋が薄ら寒くもなる。
何よりこのベッド。
男の寝室にある広い寝台と比べれば広さもクッション性も雲泥の差ではあるものの、そこらの安宿なんかより遙かに良い物なのである。
まさか男は奴隷が何であるかを知らないのではと馬鹿らしい懸念まで抱きそうになるほどだ。
今カイトは手持ち無沙汰である。
常日頃簡単な給仕は行うが、それは屋敷に男と使用人しかいない時のみだ。
来客が来ている場合、カイトは自室から出ることを許されていない。
それは男に言われたからではなく、カイトの素性の問題である。
カイトを買った男はカイトの素性を知らされていない。幸か不幸か、落ちる前のカイトと男に面識は無かった。
それでも、男の家を訪れる客はその限りではない。
客の中にはもしかするとカイトのことを知っている人間がいるかもしれない。
カイトが不用意に屋敷内をうろつき、誰かの目に触れることがあってはならないのだ。
何もやることがないという状況は苦手だった。
意識して無心になっているつもりでも、どうしても余計な思考が頭をよぎり、色々なことを考えてしまう。
ふと思い出したのは数ヶ月前の記憶。
カイトが男に買われた日のことをカイトは今でも鮮明に覚えている。
眼の前に広がるのは目に痛みを覚える程の白い光。
正面、左右、上下に点在するスポットライトがカイトだけを闇の中からくっきりと照らし出していた。
眩しいスポットライトの向こう側はカイトの目には暗闇にしか映らないが、恐らく大勢の人間達が照らされたカイトを言葉通りの値踏みするような目で見つめているのだろう。
数えきれぬほど多くの視線がカイトを品定めし、次々と数字の書かれた札を上げるのだ。
その壇上でカイトが想像し、覚悟していた奴隷としての生活は、現在カイトが置かれている現実とは程遠い、暗く荒れた苦しいものであった。
実際、カイトと同じ日に競りにかけられていた華奢な少女は所有者へ引き渡された瞬間、家畜同然に首輪や手枷をはめられていた。
あの少女と自分の境遇に違いなど無い。
カイトとてそうなっていたかもしれないのだ。
違ったのは落札したのが誰であるかということだけ。
何故男は自分を鎖で繋がないのだろうか。
そんな疑問が浮かんだ瞬間、カイトの部屋のドアノブがガチャリと回された。
扉は内側から鍵を掛けられる構造になっている。
しかしこの屋敷でカイトが誰から身を守るというのか。
カイトの部屋に用があるとすれば、Mr.ハートランドだけだ。
自分の所有者が入るのに鍵をかけているはずがない。
扉がゆっくり開かれると、そこには男が立っていた。
+++
カイトの性格がちょっと迷子。
いつものお題消化ですが、まだ書き上がってないのでリンクは後半をうpした際に。
短いのでも…と思ってたらいつのまにか文字数が増えてきたので一部うp。
+++
短いのでも…と思ってたらいつのまにか文字数が増えてきたので一部うp。
+++
■■注意事項■■
ゼアルからキャラだけ借りてきたようなパロ。
商業誌とかでありがちな設定とありがちな展開。
カイトの扱いが酷い。
キャラ崩壊にも程がある。
Mr.ハートランドがいろんな意味で変態。
ぶっちゃけ奴隷パロ。
奴隷カイトと買主なMr.ハートランド。
舌打ちしちゃうような凛々しいカイトはいません。
何があっても大丈夫という方はスクロールお願いしますです。
+++
つまらない世の中だ。
広い豪邸。高い車。希少な宝石。
世界一美しい女。
金で買えないものはない。
自分を愛しているのではなく、自分の金を愛す妻。
しかし悲しみや怒りは生まれない。
男が欲しかったのは自分を愛してくれる妻ではなかった。
世界一美しい女を手に入れたい。それはもう、愛と呼べるものなどではなく、コレクションの1つでしかなかった。
金を目当てに買われた美女と、美女をコレクションに加えたかった男。
利害が一致していたのは数年間。
女は他に男をつくり、男は衰えていく彼女の容姿に既に飽きていた。
嫉妬や遺恨などは存在しない。彼女の望むだけの慰謝料でこの関係は終わりだ。
金で買えないものはない。
照明の絞られた真っ黒い空間に高いスーツで着飾った大人達がひしめいている。
唯一、スポットライトで照らされた舞台上にいるのは、莫大な値段でやりとりされる商品だ。
稀少な宝石や、車というものではない。
壇上でただ無言で佇む商品は、人間。
愛だけでなく人の命までも金で買える世の中、そこで男が買ったのは蒼い瞳の少年だった。
+
珍しい動物。絶滅寸前の稀少な生物。
それらを手に入れるのと同じ感覚で、男は少年を競り落とした。
綺麗な見た目はそれだけで人を惹きつける。
愛玩用と説明を受けた少年の名はカイト。苗字は不明。
奴隷として売られていたのだ、家の名などあってもなくても同じだろう。
愛玩用とのことだがカイトは華奢ではあるが性別上はれっきとした男である。
しかしカイトの容姿を見て購入したのだ。性別が女でないことなど男にとっては取るに足らない問題だった。
実際、そういう用途で使われることを想定しているのだろう。
カイトは男の命令に従い自慰を見せ、なおかつ男を慰める術も身に着けていた。
見た目が良い奴隷の中には貧しい出からか教育を受けていない者も多く、口を利けない者も少なくない。
男はカイトもそうだと思っていたのだが、男の予想に反しカイトは男に問われれば静かな声で滑らかな受け答えをして見せた。
いくら容姿に金を出して手に入れてもそれは老いには抗えぬものだ。
しかしカイトはまだ若く、時間は十分あった。
少しばかり期限付きの玩具に金を出したとすれば全く惜しくない。
カイトは愛玩用とは言え、元々器用であるのか食事も作るし身の回りの世話もそつなくこなす。
前妻のように人間らしい文句を全く口にしないのは少し面白味にかけたが、それも奴隷として高い値段を払った甲斐があるというものだ。
だがそれだけではなかった。
男はそれまでセックスは気晴らしの一種でしかないと思っていた。
少なくともカイトと出会う前の男にとって、セックスは溜まったものを吐き出す行為でしかなかったのだ。
それがカイトとのセックスでは違った。
もちろん身体の構造からして違うのだ。何が違うとは具体的にはわからない。
とにかくカイトとのセックスは酷く具合が良いのだ。
女達のように媚びるような煩い声で喘がないというのも大きいかもしれないが、普段物静かなカイトがベッドの中で見せる表情に男は満足していた。
愛玩用として仕込まれているのだろうが、一緒に過ごすうちにカイト自身はあまりあの行為が得意ではないのだということもわかった。
文句を言うわけでも、暴れて拒絶するわけでもないが、男が優しく扱う様に戸惑っているようにも見えた。
「カイト」
ある朝、男のために白いカップへ琥珀色の紅茶を注いでいたカイトに向かって男は呼びかけた。
「何でしょうか」
カップとソーサーを男の前へ差し出して、カイトは自分を見つめてくる視線に返事をかえす。
「今夜夕食でも一緒にどうかな。君の好きなものを用意しよう」
男は自分の横に控えるカイトに柔らかな笑みを投げた。
今までずっと多忙で夜となっても時間が取れなかったのだが、今夜は時間が作れそうだったのだ。
何故奴隷相手にそこまでしようと思ったのか男は疑問にも思っていない。
ただカイトともっと話がしたいとの考えから、男はカイトを見上げ投げかけたのだが、カイトの答えは意外なものだった。
「折角ですが、それは出来ません」
カイトの言葉は明確だった。
これまでどんな無理難題をふっかけようともカイトが首を横にふることなどなかった。
ベッドの中では口にだすのも憚られるような卑猥な言動を強いたこともあるのに、普通に夕食を共にすることが何故出来ないのか。
男の疑問に答えるように、むしろ何故そんな当たり前なことがわからないのかと責めるような雰囲気すら匂わせ、カイトは答えた。
「俺は使用人の身です。主人の貴方と同じ席につくことはできません」
冷水を浴びせられたような衝撃だった。
「……それは、私の命令でも…か?」
「はい」
カイトは相変わらず男の側に佇んだままいつものように男の食事が終わるのを待っている。
言われてみれば確かに、屋敷にはカイト以外にも何人もの使用人がいるが、彼らと食事の席を設けようなどと一瞬足りとも考えたことはない。
男はいつの間にか、カイトを奴隷の一人としてではなく、カイトという一人の人間で見ていたことに気づいたのだ。
人間を金で買い、無理矢理服従させている事実など都合良く忘れて。
「…では、好きな食べ物は何かね。何でも用意しよう」
食事を共に出来ないのなら、せめて少しでも気晴らしになるようなものを与えよう。
カイトは良くやってくれているのだ、他の使用人よりも贅沢をしたところで誰の咎めを受けるわけでもない。
取り繕うように尋ねた男の笑顔にも、しかしカイトは表情一つ変えぬまま答える。
「特定の食事に対する執着は特にありません」
何でもない事のように答えるカイトの様子に男は頭をハンマーで殴られたような衝撃を感じた。
「それなら……君は──」
一体何を楽しみに日々過ごしているんだ。
思わずそんな疑問が口をつきそうになって、男は慌てて言葉を切った。
売られていた彼にそんな選択肢が存在するはずがない。
そもそも彼を金で買い、人並みの生活を奪ったのは他でもない自分自身だ。
そんな自分が尋ねられることではない。
食欲などとっくに失せてしまっていた。
「すまないが、片付けておいてくれたまえ」
まだ皿に食事を残したまま、男は食堂から出ようとしている。
見送りにと小走りで追いかけたカイトに、男は振り返らずに告げた。
「今日は見送りは良い。別のものを手配する」
「はい」
食堂の外に控えていたメイド数名にあれこれと指示を出す男の背が扉の向こうへ消えてゆく。
カイトが食器を片付けていると間もなく、車の発進する音が遠くで聞こえた。
+
今日は大事な商談の日だった。
上手く纏める自信はあった。もともとあちらから持ちかけてきた話なので、男が断らない限り結果の見える出来レースのようなものだった。
気になっているのは商談のことではない。
先程のカイトの発言だ。
もともと奴隷と主人の身分である。カイトの言っていることは何一つ間違ってはいない。
四六時中側において、体を重ねて、情が移ってしまったとでも言うのだろうか。
否定出来ないことを誰よりも痛感しているのは男自身であった。
会社のエントランスに車を寄せ秘書数名に今日の予定を説明されながら、男は最上階にある社長室へようやく腰を下ろした。
暫くして、秘書が来客を知らせた。
秘書の案内で応接間に通されたのは今日の取引相手。
男の会社は元々大きな財閥のグループから独立したものであり、目の前の相手もどこかこちらと似た境遇にある。
どちらも元となるグループから独立したものであり、今後の方針も立てやすい。提携は至って自然な流れであった。
「はじめまして、Mr.ハートランド」
「こちらこそ。お噂はかねがね」
応接間に現れたのは細身で背が高い優男だった。
出発点が同じとは言え、独立した先ではまた違う財団が動いている。
大事な取引のための交渉役である。ただの社員など寄こすはずがない。
それを裏付けるかのように、男の醸し出す雰囲気は品性や知的さを纏っていた。
クリストファー・アークライトと名乗った青年のファミリーネームに聞き覚えの無い者などいない。
ということはこの男は名門アークライト家の長男であろう。
交渉役に切れ者と噂の長男を寄こすとは、アークライトがこの商談をただの業務提携などとは思っていないという決意の現れであるのか。
食うか喰われるか。どんな大企業であっても、弱肉強食の世界には変わりない。
今回の商談内容にだめ押しするつもりで、Mr.ハートランドは一つ提案をした。
「良ければ夕食を御馳走したいのだが、いかがかな?」
+++
続きがありますが、まだありません(え)
書いてる途中というかまたこんな書き終えてないのに小出しにしたら未完になる確率が高ry
今のところ…クソメガネがクソメガネじゃない……かも…しれない(;^ω^)
奴隷パロならもっとそれっぽい話にすべきだったかと思いつつ\(^o^)/
ゼアルからキャラだけ借りてきたようなパロ。
商業誌とかでありがちな設定とありがちな展開。
カイトの扱いが酷い。
キャラ崩壊にも程がある。
Mr.ハートランドがいろんな意味で変態。
ぶっちゃけ奴隷パロ。
奴隷カイトと買主なMr.ハートランド。
舌打ちしちゃうような凛々しいカイトはいません。
何があっても大丈夫という方はスクロールお願いしますです。
+++
つまらない世の中だ。
広い豪邸。高い車。希少な宝石。
世界一美しい女。
金で買えないものはない。
自分を愛しているのではなく、自分の金を愛す妻。
しかし悲しみや怒りは生まれない。
男が欲しかったのは自分を愛してくれる妻ではなかった。
世界一美しい女を手に入れたい。それはもう、愛と呼べるものなどではなく、コレクションの1つでしかなかった。
金を目当てに買われた美女と、美女をコレクションに加えたかった男。
利害が一致していたのは数年間。
女は他に男をつくり、男は衰えていく彼女の容姿に既に飽きていた。
嫉妬や遺恨などは存在しない。彼女の望むだけの慰謝料でこの関係は終わりだ。
金で買えないものはない。
照明の絞られた真っ黒い空間に高いスーツで着飾った大人達がひしめいている。
唯一、スポットライトで照らされた舞台上にいるのは、莫大な値段でやりとりされる商品だ。
稀少な宝石や、車というものではない。
壇上でただ無言で佇む商品は、人間。
愛だけでなく人の命までも金で買える世の中、そこで男が買ったのは蒼い瞳の少年だった。
+
珍しい動物。絶滅寸前の稀少な生物。
それらを手に入れるのと同じ感覚で、男は少年を競り落とした。
綺麗な見た目はそれだけで人を惹きつける。
愛玩用と説明を受けた少年の名はカイト。苗字は不明。
奴隷として売られていたのだ、家の名などあってもなくても同じだろう。
愛玩用とのことだがカイトは華奢ではあるが性別上はれっきとした男である。
しかしカイトの容姿を見て購入したのだ。性別が女でないことなど男にとっては取るに足らない問題だった。
実際、そういう用途で使われることを想定しているのだろう。
カイトは男の命令に従い自慰を見せ、なおかつ男を慰める術も身に着けていた。
見た目が良い奴隷の中には貧しい出からか教育を受けていない者も多く、口を利けない者も少なくない。
男はカイトもそうだと思っていたのだが、男の予想に反しカイトは男に問われれば静かな声で滑らかな受け答えをして見せた。
いくら容姿に金を出して手に入れてもそれは老いには抗えぬものだ。
しかしカイトはまだ若く、時間は十分あった。
少しばかり期限付きの玩具に金を出したとすれば全く惜しくない。
カイトは愛玩用とは言え、元々器用であるのか食事も作るし身の回りの世話もそつなくこなす。
前妻のように人間らしい文句を全く口にしないのは少し面白味にかけたが、それも奴隷として高い値段を払った甲斐があるというものだ。
だがそれだけではなかった。
男はそれまでセックスは気晴らしの一種でしかないと思っていた。
少なくともカイトと出会う前の男にとって、セックスは溜まったものを吐き出す行為でしかなかったのだ。
それがカイトとのセックスでは違った。
もちろん身体の構造からして違うのだ。何が違うとは具体的にはわからない。
とにかくカイトとのセックスは酷く具合が良いのだ。
女達のように媚びるような煩い声で喘がないというのも大きいかもしれないが、普段物静かなカイトがベッドの中で見せる表情に男は満足していた。
愛玩用として仕込まれているのだろうが、一緒に過ごすうちにカイト自身はあまりあの行為が得意ではないのだということもわかった。
文句を言うわけでも、暴れて拒絶するわけでもないが、男が優しく扱う様に戸惑っているようにも見えた。
「カイト」
ある朝、男のために白いカップへ琥珀色の紅茶を注いでいたカイトに向かって男は呼びかけた。
「何でしょうか」
カップとソーサーを男の前へ差し出して、カイトは自分を見つめてくる視線に返事をかえす。
「今夜夕食でも一緒にどうかな。君の好きなものを用意しよう」
男は自分の横に控えるカイトに柔らかな笑みを投げた。
今までずっと多忙で夜となっても時間が取れなかったのだが、今夜は時間が作れそうだったのだ。
何故奴隷相手にそこまでしようと思ったのか男は疑問にも思っていない。
ただカイトともっと話がしたいとの考えから、男はカイトを見上げ投げかけたのだが、カイトの答えは意外なものだった。
「折角ですが、それは出来ません」
カイトの言葉は明確だった。
これまでどんな無理難題をふっかけようともカイトが首を横にふることなどなかった。
ベッドの中では口にだすのも憚られるような卑猥な言動を強いたこともあるのに、普通に夕食を共にすることが何故出来ないのか。
男の疑問に答えるように、むしろ何故そんな当たり前なことがわからないのかと責めるような雰囲気すら匂わせ、カイトは答えた。
「俺は使用人の身です。主人の貴方と同じ席につくことはできません」
冷水を浴びせられたような衝撃だった。
「……それは、私の命令でも…か?」
「はい」
カイトは相変わらず男の側に佇んだままいつものように男の食事が終わるのを待っている。
言われてみれば確かに、屋敷にはカイト以外にも何人もの使用人がいるが、彼らと食事の席を設けようなどと一瞬足りとも考えたことはない。
男はいつの間にか、カイトを奴隷の一人としてではなく、カイトという一人の人間で見ていたことに気づいたのだ。
人間を金で買い、無理矢理服従させている事実など都合良く忘れて。
「…では、好きな食べ物は何かね。何でも用意しよう」
食事を共に出来ないのなら、せめて少しでも気晴らしになるようなものを与えよう。
カイトは良くやってくれているのだ、他の使用人よりも贅沢をしたところで誰の咎めを受けるわけでもない。
取り繕うように尋ねた男の笑顔にも、しかしカイトは表情一つ変えぬまま答える。
「特定の食事に対する執着は特にありません」
何でもない事のように答えるカイトの様子に男は頭をハンマーで殴られたような衝撃を感じた。
「それなら……君は──」
一体何を楽しみに日々過ごしているんだ。
思わずそんな疑問が口をつきそうになって、男は慌てて言葉を切った。
売られていた彼にそんな選択肢が存在するはずがない。
そもそも彼を金で買い、人並みの生活を奪ったのは他でもない自分自身だ。
そんな自分が尋ねられることではない。
食欲などとっくに失せてしまっていた。
「すまないが、片付けておいてくれたまえ」
まだ皿に食事を残したまま、男は食堂から出ようとしている。
見送りにと小走りで追いかけたカイトに、男は振り返らずに告げた。
「今日は見送りは良い。別のものを手配する」
「はい」
食堂の外に控えていたメイド数名にあれこれと指示を出す男の背が扉の向こうへ消えてゆく。
カイトが食器を片付けていると間もなく、車の発進する音が遠くで聞こえた。
+
今日は大事な商談の日だった。
上手く纏める自信はあった。もともとあちらから持ちかけてきた話なので、男が断らない限り結果の見える出来レースのようなものだった。
気になっているのは商談のことではない。
先程のカイトの発言だ。
もともと奴隷と主人の身分である。カイトの言っていることは何一つ間違ってはいない。
四六時中側において、体を重ねて、情が移ってしまったとでも言うのだろうか。
否定出来ないことを誰よりも痛感しているのは男自身であった。
会社のエントランスに車を寄せ秘書数名に今日の予定を説明されながら、男は最上階にある社長室へようやく腰を下ろした。
暫くして、秘書が来客を知らせた。
秘書の案内で応接間に通されたのは今日の取引相手。
男の会社は元々大きな財閥のグループから独立したものであり、目の前の相手もどこかこちらと似た境遇にある。
どちらも元となるグループから独立したものであり、今後の方針も立てやすい。提携は至って自然な流れであった。
「はじめまして、Mr.ハートランド」
「こちらこそ。お噂はかねがね」
応接間に現れたのは細身で背が高い優男だった。
出発点が同じとは言え、独立した先ではまた違う財団が動いている。
大事な取引のための交渉役である。ただの社員など寄こすはずがない。
それを裏付けるかのように、男の醸し出す雰囲気は品性や知的さを纏っていた。
クリストファー・アークライトと名乗った青年のファミリーネームに聞き覚えの無い者などいない。
ということはこの男は名門アークライト家の長男であろう。
交渉役に切れ者と噂の長男を寄こすとは、アークライトがこの商談をただの業務提携などとは思っていないという決意の現れであるのか。
食うか喰われるか。どんな大企業であっても、弱肉強食の世界には変わりない。
今回の商談内容にだめ押しするつもりで、Mr.ハートランドは一つ提案をした。
「良ければ夕食を御馳走したいのだが、いかがかな?」
+++
続きがありますが、まだありません(え)
書いてる途中というかまたこんな書き終えてないのに小出しにしたら未完になる確率が高ry
今のところ…クソメガネがクソメガネじゃない……かも…しれない(;^ω^)
奴隷パロならもっとそれっぽい話にすべきだったかと思いつつ\(^o^)/
今日も今日とてお世話になっております。
お借りしたお題は Discolo 様 から。
『さよならの嘘』というお題をお借りしました。

+++
タイトルから分かるようにまたまた別れネタです。
ゼアルの簡単な年表を妄想脳内補完したものにしたがって打ってます。
フェイカーが扉を開いたのが5年前。
クリスは2年間フェイカーの元に残っており、その間Vカイ修行時代。
2年後変わり果てた姿のバイロンがクリスの前に現れ、クリスはカイトの前から姿を消す。と。
つまりカイトと一緒にいた期間が2年という設定であります。(´・ω・`)
+++
お借りしたお題は Discolo 様 から。
『さよならの嘘』というお題をお借りしました。

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タイトルから分かるようにまたまた別れネタです。
ゼアルの簡単な年表を妄想脳内補完したものにしたがって打ってます。
フェイカーが扉を開いたのが5年前。
クリスは2年間フェイカーの元に残っており、その間Vカイ修行時代。
2年後変わり果てた姿のバイロンがクリスの前に現れ、クリスはカイトの前から姿を消す。と。
つまりカイトと一緒にいた期間が2年という設定であります。(´・ω・`)
+++
父が消えてもう2年が経とうとしている。
一人この世の果てから生還したDr.フェイカーは彼の息子たちをこのハートランドへ招き、自らは研究室に篭って何事かを懸命に続けている。
暫くしてクリスはDr.フェイカーの息子の一人であるカイトと懇意になり、つい先程も彼にデュエルを教えてきたばかりだ。
夜もふけ各々自室へと帰ることになり、クリスは蓄積された疲労に軽く息を吐きだした。
「こんばんは」
「!?」
突然背後から声を掛けられ、クリスは背筋を凍らせる。
弾かれたように振り向いた先にいたのは、飴色の髪をした見たこともない子供であった。
「驚いた……一体いつ入ってきたんだい?」
全く気配に気づかなかった。
それどころか、いつ…それも、施錠された室内へどうやって入って来たのだろうかと思い至った瞬間、その少年はゆっくりと口を開いた。
「少し見ない間に背が伸びたようだね、クリス」
「……え……」
この少年は何故、自分の名前を知っているのか。
いや、そうではない。
まるで昔の自分を知っているとでも言いたげな口ぶりに、クリスは激しく動揺した。
「君…は…一体──」
「迎えに来たよ。……クリストファー」
「……っ!?」
姿形に見覚えはない。
ただその飴色の三つ編みと、蜂蜜色の瞳。そして何より少年の纏う雰囲気にクリスは懐かしさを覚えてしまったのだ。
そう、行方不明になってしまったはずの父、バイロン・アークライトに、目の前の少年の姿が重なって見えるのである。
「…父…様……?」
信じられないという思いで、しかし間違っているはずなどないという確信を乗せて呟いたクリスの言葉を聞いて、少年は口元に笑みを浮かべた。
自室で荷物を纏める。
鞄1つに収まる程度の荷物に荷造りは直ぐに済んだ。
いつの間にか外は土砂降りの雨が降り注いでいた。
どす黒い泥水のような夜空に時折白い稲光を走らせながら、大粒の雨が透明な窓ガラスを滴り落ちる。
父から全てを聞いたクリスはもうDr.フェイカーの元へいることなど耐えられなかった。
しかし、彼らの息子達と別れるのは正直、気が進まない。
フェイカーの所業はカイトたちがここへ来る前のことだ。
病気の弟と、それを甲斐甲斐しく世話するカイトのひたむきさはクリスの手放した弟達をどこか彷彿とさせた。
けれど、父の命令は絶対である。
何より父を裏切ったフェイカーを、クリスは許すことなど出来ない。
クリスの思惑がどうであれ、真意がどうであれ、いずれ訪れるであろうフェイカーへの復讐の際、天城兄弟と再会するのは避けては通れない道だろう。
荷物を纏め、コートを羽織り、クリスはハルトの部屋に立ち尽くしていた。
ハルトはよく眠っている。
クリスが彼ら兄弟と出会って数年が経つが、クリスはハルトとマトモに会話をしたことがない。
それでも、焦点の定まらない視線のハルトに健気に笑顔を向け続けるカイトの様子を見ていれば、彼の弟がどんな少年であったかなど想像するに易い。
父はDr.フェイカーに復讐するつもりだ。
その時、真っ先に標的になるのが彼の息子達であろう。
その瞬間にはハルトの自我は戻ってきているのだろうか。
ハルトの病気が治っていようといまいと、その瞬間が訪れた時、クリスは後悔しないだろう。
起きている時よりも安らかにすら見える寝顔に背を向けて、クリスは部屋を後にした。
もうここには戻ってこないだろう。
復讐が始まれば、また彼らと相まみえる。
クリスを師と仰ぐ無垢なカイトの顔を苦痛に歪めさせることになる。
いずれそうなるのだ。
何も今そうしなければならないというわけではない。
クリスはカイトの部屋へ足を向ける事なく、雨の降りしきる通りを進んだ。
傘など差す気にはなれない。弟達を迎えに行って、フェイカーへの復讐を始めなければならない。
父をあんな姿へ変えたこと、真実を語らず数年の間クリスを欺いていたこと。家族をバラバラにしたこと。
そして何より、父の信頼を踏みにじったフェイカーへ対する怒りや憎しみがクリスの顔を歪めるのだ。
ぎりと奥歯を噛み締めたクリスの歪んだ口端を雨粒が伝い落ちる。
雷雨の中、全身ずぶ濡れで歩くクリスの後から、ばしゃばしゃと水溜りを跳ねさせる音が聞こえた。
「クリス…ッ!」
自分を呼ぶ細い声にクリスは僅かに目を見張る。
どうして来てしまったのか。
クリスは苦痛に顔を歪めた。
不規則に息を切らせながらカイトが駆け寄ってくる。
ぐっとコートの裾を捕まれ、クリスは動きを止めた。
緩慢な動作で振り返ればカイトは呼吸を乱したまま、不安げに瞳を揺らしていた。
復讐を決めた今でも、カイトを思っているからこそ、何も告げずにいたのに。
大人しく雷雨に目を閉じていればこうしてまみえることもなかったのに。
しかし、カイトはクリスを追ってきてしまった。
カイトに何を言われた所でもうクリスは決めているのだ。
フェイカーのところには、カイトの元には戻ることが出来ないのだと。
そのカイトと、いつかまた相まみえる日が来ることをクリスは知っているからこそ、コートを掴んだ細く頼りない指先を、クリスは強く振り払った。
予想だにしなかった衝撃にカイトの華奢な体は軽々と吹き飛ばされ、背後の水溜りにばしゃりと尻餅をつく。
「……ク、リス……?」
何が起こったのか分かっていないのだろう。
こんな酷い仕打ちをされても、カイトはあくまで豹変したクリスを心配そうに見上げていた。
その表情にクリスの胸が痛む。
この優しい少年をフェイカーへの復讐のために傷つける日が来るのだ。
それは避けられない未来である。
ならば、少年を傷つけるのは早いほうが良い。
近い将来、クリスは自分を慕うこの少年の心を大いに傷つけるであろう。
それは決して自惚れではない。
カイトと過ごした2年の歳月が裏付けており、何より、今こうしている間にもクリスはカイトを拒絶したことに胸を痛めているのだから。
傷つくのなら早いほうが良い。
時がカイトの傷を癒し、彼を強くするだろう。
私に受けた傷など気にもとめなくなる程、彼を成長させるだろう。
それが、Vがカイトにしてやれる最後の教えだった。
「カイト……君には失望した」
「…っ!?」
クリスの容赦無い刃物がカイトの心を抉るのが、その引き攣った表情から見て取れた。
「こんなところまで私に追い縋って来るとは……私はいつまで君の子守をしていなければならないんだ?」
カイトを引き裂くために研ぎ澄ました刃は、予想以上の切れ味でカイトの心を切り裂いている。
ことさら冷めた視線を作り、蒼白となったカイトの顔を見下ろす。
降りしきる雨に濡れているのはクリスだけではない。
クリスの立ち去る姿を見つけ直ぐに部屋を飛び出したのだろう。
コートを纏ったクリスと違い、軽装のままのカイトの淡い色のシャツはぐっしょりと水を含み、柔らかい髪の毛も水に濡れ、白い肌にぺたりと張り付いていた。
このままでは風邪を引いてしまうだろう。
クリスは急くように口を開いた。
「今までずっと苦痛だった。煩わしいとさえ思っていた──君のことを」
「──……ッ…」
カイトの表情が歪んだ。
それが怒りのせいであればと祈るクリスの願いも虚しく、雨粒の滴るカイトの顔から、異なる雫が零れ落ちた。
「さよならだ」
再び背を向け歩き出したクリスを引き止めるものはなかった。
振り返って最後に一目この目に焼き付けたかった。
傷ついたカイトの姿を目に焼き付けて再び彼と会った時に揺らぐことのないように。
だがそれは出来なかった。
そんな姿を見たら、前に進めない気がした。
傷ついたカイトを置いて父の元へ戻れない予感さえあった。
今はただ、憎んでくれ、と願う。
恨んでくれと望む。
そうすれば、私の言葉に傷ついた君は時間と共に私と過ごした日々を忘れることが出来るだろう。
それとも、それは私の未練であるのか。
憎んで、恨まれていれば、私と過ごした日々のことを、カイトは一生忘れられないのではと。
どちらが良かったのか、もうクリスにはわからない。
嘘で傷つけるのと、真実で傷つけることのどちらがカイトにとっての苦しみなのか。
今はただ、カイトと同じ痛みを感じながら、振り返ること無く打ち付ける雨の中を歩き続けることしか出来なかった。
さようなら、カイト。
君と過ごした幸せな日々を思いながら、私は復讐を成し遂げるだろう。
その時はカイト。
君との思い出を抱きしめながら、君と同じ色の涙を流そう。
+++
Vさんはカイトに自分を嫌いになって欲しかったのです。
ひどい言葉で傷つけるから、自分のことを嫌いになって、早く忘れて欲しかったのです。
幸せな日々を忘れたら、また自分と顔を会わせてもカイトが苦しまずに済むのではないかと期待してたのです。
でも恨むということはその人のことを忘れないということでもあるから、本当はVさんはカイトに自分を覚えていて欲しかったのです。
トロンが復讐に誘いに来る前のクリストファーと過ごした日々を覚えていて欲しかったのです。
もう昔の自分は死んだのだと。つまり、昔のような関係に戻ることが出来ないって確信していたのでしょう。
というわけですよ。何か頭で整理しながらだったので口調がしっちゃかめっちゃかですが、つまり未練がましいのかそうでないのか複雑なVカイ萌え!
珍しく悲恋です。
いつもはハッピーエンド至上主義なので多分今度は幸せVカイ書きたくなる。
一人この世の果てから生還したDr.フェイカーは彼の息子たちをこのハートランドへ招き、自らは研究室に篭って何事かを懸命に続けている。
暫くしてクリスはDr.フェイカーの息子の一人であるカイトと懇意になり、つい先程も彼にデュエルを教えてきたばかりだ。
夜もふけ各々自室へと帰ることになり、クリスは蓄積された疲労に軽く息を吐きだした。
「こんばんは」
「!?」
突然背後から声を掛けられ、クリスは背筋を凍らせる。
弾かれたように振り向いた先にいたのは、飴色の髪をした見たこともない子供であった。
「驚いた……一体いつ入ってきたんだい?」
全く気配に気づかなかった。
それどころか、いつ…それも、施錠された室内へどうやって入って来たのだろうかと思い至った瞬間、その少年はゆっくりと口を開いた。
「少し見ない間に背が伸びたようだね、クリス」
「……え……」
この少年は何故、自分の名前を知っているのか。
いや、そうではない。
まるで昔の自分を知っているとでも言いたげな口ぶりに、クリスは激しく動揺した。
「君…は…一体──」
「迎えに来たよ。……クリストファー」
「……っ!?」
姿形に見覚えはない。
ただその飴色の三つ編みと、蜂蜜色の瞳。そして何より少年の纏う雰囲気にクリスは懐かしさを覚えてしまったのだ。
そう、行方不明になってしまったはずの父、バイロン・アークライトに、目の前の少年の姿が重なって見えるのである。
「…父…様……?」
信じられないという思いで、しかし間違っているはずなどないという確信を乗せて呟いたクリスの言葉を聞いて、少年は口元に笑みを浮かべた。
自室で荷物を纏める。
鞄1つに収まる程度の荷物に荷造りは直ぐに済んだ。
いつの間にか外は土砂降りの雨が降り注いでいた。
どす黒い泥水のような夜空に時折白い稲光を走らせながら、大粒の雨が透明な窓ガラスを滴り落ちる。
父から全てを聞いたクリスはもうDr.フェイカーの元へいることなど耐えられなかった。
しかし、彼らの息子達と別れるのは正直、気が進まない。
フェイカーの所業はカイトたちがここへ来る前のことだ。
病気の弟と、それを甲斐甲斐しく世話するカイトのひたむきさはクリスの手放した弟達をどこか彷彿とさせた。
けれど、父の命令は絶対である。
何より父を裏切ったフェイカーを、クリスは許すことなど出来ない。
クリスの思惑がどうであれ、真意がどうであれ、いずれ訪れるであろうフェイカーへの復讐の際、天城兄弟と再会するのは避けては通れない道だろう。
荷物を纏め、コートを羽織り、クリスはハルトの部屋に立ち尽くしていた。
ハルトはよく眠っている。
クリスが彼ら兄弟と出会って数年が経つが、クリスはハルトとマトモに会話をしたことがない。
それでも、焦点の定まらない視線のハルトに健気に笑顔を向け続けるカイトの様子を見ていれば、彼の弟がどんな少年であったかなど想像するに易い。
父はDr.フェイカーに復讐するつもりだ。
その時、真っ先に標的になるのが彼の息子達であろう。
その瞬間にはハルトの自我は戻ってきているのだろうか。
ハルトの病気が治っていようといまいと、その瞬間が訪れた時、クリスは後悔しないだろう。
起きている時よりも安らかにすら見える寝顔に背を向けて、クリスは部屋を後にした。
もうここには戻ってこないだろう。
復讐が始まれば、また彼らと相まみえる。
クリスを師と仰ぐ無垢なカイトの顔を苦痛に歪めさせることになる。
いずれそうなるのだ。
何も今そうしなければならないというわけではない。
クリスはカイトの部屋へ足を向ける事なく、雨の降りしきる通りを進んだ。
傘など差す気にはなれない。弟達を迎えに行って、フェイカーへの復讐を始めなければならない。
父をあんな姿へ変えたこと、真実を語らず数年の間クリスを欺いていたこと。家族をバラバラにしたこと。
そして何より、父の信頼を踏みにじったフェイカーへ対する怒りや憎しみがクリスの顔を歪めるのだ。
ぎりと奥歯を噛み締めたクリスの歪んだ口端を雨粒が伝い落ちる。
雷雨の中、全身ずぶ濡れで歩くクリスの後から、ばしゃばしゃと水溜りを跳ねさせる音が聞こえた。
「クリス…ッ!」
自分を呼ぶ細い声にクリスは僅かに目を見張る。
どうして来てしまったのか。
クリスは苦痛に顔を歪めた。
不規則に息を切らせながらカイトが駆け寄ってくる。
ぐっとコートの裾を捕まれ、クリスは動きを止めた。
緩慢な動作で振り返ればカイトは呼吸を乱したまま、不安げに瞳を揺らしていた。
復讐を決めた今でも、カイトを思っているからこそ、何も告げずにいたのに。
大人しく雷雨に目を閉じていればこうしてまみえることもなかったのに。
しかし、カイトはクリスを追ってきてしまった。
カイトに何を言われた所でもうクリスは決めているのだ。
フェイカーのところには、カイトの元には戻ることが出来ないのだと。
そのカイトと、いつかまた相まみえる日が来ることをクリスは知っているからこそ、コートを掴んだ細く頼りない指先を、クリスは強く振り払った。
予想だにしなかった衝撃にカイトの華奢な体は軽々と吹き飛ばされ、背後の水溜りにばしゃりと尻餅をつく。
「……ク、リス……?」
何が起こったのか分かっていないのだろう。
こんな酷い仕打ちをされても、カイトはあくまで豹変したクリスを心配そうに見上げていた。
その表情にクリスの胸が痛む。
この優しい少年をフェイカーへの復讐のために傷つける日が来るのだ。
それは避けられない未来である。
ならば、少年を傷つけるのは早いほうが良い。
近い将来、クリスは自分を慕うこの少年の心を大いに傷つけるであろう。
それは決して自惚れではない。
カイトと過ごした2年の歳月が裏付けており、何より、今こうしている間にもクリスはカイトを拒絶したことに胸を痛めているのだから。
傷つくのなら早いほうが良い。
時がカイトの傷を癒し、彼を強くするだろう。
私に受けた傷など気にもとめなくなる程、彼を成長させるだろう。
それが、Vがカイトにしてやれる最後の教えだった。
「カイト……君には失望した」
「…っ!?」
クリスの容赦無い刃物がカイトの心を抉るのが、その引き攣った表情から見て取れた。
「こんなところまで私に追い縋って来るとは……私はいつまで君の子守をしていなければならないんだ?」
カイトを引き裂くために研ぎ澄ました刃は、予想以上の切れ味でカイトの心を切り裂いている。
ことさら冷めた視線を作り、蒼白となったカイトの顔を見下ろす。
降りしきる雨に濡れているのはクリスだけではない。
クリスの立ち去る姿を見つけ直ぐに部屋を飛び出したのだろう。
コートを纏ったクリスと違い、軽装のままのカイトの淡い色のシャツはぐっしょりと水を含み、柔らかい髪の毛も水に濡れ、白い肌にぺたりと張り付いていた。
このままでは風邪を引いてしまうだろう。
クリスは急くように口を開いた。
「今までずっと苦痛だった。煩わしいとさえ思っていた──君のことを」
「──……ッ…」
カイトの表情が歪んだ。
それが怒りのせいであればと祈るクリスの願いも虚しく、雨粒の滴るカイトの顔から、異なる雫が零れ落ちた。
「さよならだ」
再び背を向け歩き出したクリスを引き止めるものはなかった。
振り返って最後に一目この目に焼き付けたかった。
傷ついたカイトの姿を目に焼き付けて再び彼と会った時に揺らぐことのないように。
だがそれは出来なかった。
そんな姿を見たら、前に進めない気がした。
傷ついたカイトを置いて父の元へ戻れない予感さえあった。
今はただ、憎んでくれ、と願う。
恨んでくれと望む。
そうすれば、私の言葉に傷ついた君は時間と共に私と過ごした日々を忘れることが出来るだろう。
それとも、それは私の未練であるのか。
憎んで、恨まれていれば、私と過ごした日々のことを、カイトは一生忘れられないのではと。
どちらが良かったのか、もうクリスにはわからない。
嘘で傷つけるのと、真実で傷つけることのどちらがカイトにとっての苦しみなのか。
今はただ、カイトと同じ痛みを感じながら、振り返ること無く打ち付ける雨の中を歩き続けることしか出来なかった。
さようなら、カイト。
君と過ごした幸せな日々を思いながら、私は復讐を成し遂げるだろう。
その時はカイト。
君との思い出を抱きしめながら、君と同じ色の涙を流そう。
+++
Vさんはカイトに自分を嫌いになって欲しかったのです。
ひどい言葉で傷つけるから、自分のことを嫌いになって、早く忘れて欲しかったのです。
幸せな日々を忘れたら、また自分と顔を会わせてもカイトが苦しまずに済むのではないかと期待してたのです。
でも恨むということはその人のことを忘れないということでもあるから、本当はVさんはカイトに自分を覚えていて欲しかったのです。
トロンが復讐に誘いに来る前のクリストファーと過ごした日々を覚えていて欲しかったのです。
もう昔の自分は死んだのだと。つまり、昔のような関係に戻ることが出来ないって確信していたのでしょう。
というわけですよ。何か頭で整理しながらだったので口調がしっちゃかめっちゃかですが、つまり未練がましいのかそうでないのか複雑なVカイ萌え!
珍しく悲恋です。
いつもはハッピーエンド至上主義なので多分今度は幸せVカイ書きたくなる。
……と、いうわけで、ハッピーハロウィン。
でした。
ハロウィン用に9月末からちょこちょこ書いてたハロウィンネタがボツ没ボツになりまくることはや数回。
当初の予定とは全然違うものになりましたが、テキストページの方にうpしておりますです。
ゼアルのネタです。
基本的にVカイがあって、全体的にカイトが受けっぽいです。
細かい注意事項は小説冒頭にて。
毎回季節ネタは思い浮かんでも当日までに仕上がらないことが多いため、今回は1ヶ月前から考えてたんですが前述の通り総ボツになりまして。
勿体無いのでまぁ日記のネタが無い時にでも救済して行こうかと。
仮装とか出来なかったのはちょっと残念ですが、私はカイトの出てない話は書けそうに無かったのでこういう形で良かったのかもしれない(´・ω・`)
ボキャ貧\(^o^)/
+++
続きにはサイトにうpしたハロウィンネタの後日談…的なおまけ的なssを1つ。
書く予定ではありましたが本編には入れなかったネタです。
ハトカイです。
ひたすらにハートランドさんが変質者です。
小説ページにある本編を読まれた後だと流れが分かりやすいかと思いますです。
+++
でした。
ハロウィン用に9月末からちょこちょこ書いてたハロウィンネタがボツ没ボツになりまくることはや数回。
当初の予定とは全然違うものになりましたが、テキストページの方にうpしておりますです。
ゼアルのネタです。
基本的にVカイがあって、全体的にカイトが受けっぽいです。
細かい注意事項は小説冒頭にて。
毎回季節ネタは思い浮かんでも当日までに仕上がらないことが多いため、今回は1ヶ月前から考えてたんですが前述の通り総ボツになりまして。
勿体無いのでまぁ日記のネタが無い時にでも救済して行こうかと。
仮装とか出来なかったのはちょっと残念ですが、私はカイトの出てない話は書けそうに無かったのでこういう形で良かったのかもしれない(´・ω・`)
ボキャ貧\(^o^)/
+++
続きにはサイトにうpしたハロウィンネタの後日談…的なおまけ的なssを1つ。
書く予定ではありましたが本編には入れなかったネタです。
ハトカイです。
ひたすらにハートランドさんが変質者です。
小説ページにある本編を読まれた後だと流れが分かりやすいかと思いますです。
+++
夕食が済むと、流石に遅い時間になった。
辺りはとうに真っ暗で、子供達だけで帰すにはいろいろと危険な時間である。
送っていこうと名乗りでてくれたのは車で来ていたVとカイトの父フェイカーだ。
そういう事なら時間的にもキリが良いのでこの辺りでお開きにしようということで話が纏まって、賑やかしい客人らをマンションの下まで見送ったのはもう30分も前のことだった。
使用した食器類は数名の女性陣が率先して手伝ってくれたこともあり、あれだけの量だったにもかかわらず片付けに時間はかからなかった。
カイトは最初、彼女らはカイトの家に招かれた客人なのだからと断ったのだが、ドロワを筆頭とした女性陣の迫力に気圧され手伝って貰ったことになんだか申し訳なさを感じる。
キッチンで乾燥機から乾いた食器を取り出し棚に納めていると、辺りはしんと静かすぎてカイトは己の呼吸さえも大きく聞こえる程に感じた。
つい先程まで大勢の友人達が賑やかに談笑していたことなど俄には信じられない光景である。
静かすぎる室内の静寂になんとなく居心地の悪さを感じて手持ち無沙汰になった頃、今日何度も耳にしたインターフォンがやけに大きく鳴り響いた。
誰か忘れ物でもしたのだろうか。
簡単に片付けた後で目立った物は見当たらなかったが、女性陣の小物など…例えばイヤリングやピアス程の小さいものであればその可能性も十分考えられた。
何はともあれ、リビングから廊下へ続く扉を開き、カイトは真っ暗な廊下に明かりを灯して玄関のドアを開いた。
「こんばんは」
声だけ聞けば落ち着いた静かな声音。
珍しく控えめな色合いのスーツは普段の装いとは異なるが、恐ろしいほど整えられたスーツだ。
糸屑1本、皺の1つすらついていない。
彼を知らぬ初対面の相手からすれば、彼という人物は非常によくできた有能な男に映るのだろう。
「──Mr.ハートランド……」
恐る恐る紡いだ名前は、本来ここにいる筈のない人物のものである。
カイトは驚愕に引き攣った喉から言葉を絞り出した。
「貴方は…確か、海外の学会に出ていたのでは…」
僅かに声を震わせるカイトにゆったりと笑みを向けながら、男は何が気に入らないのか、既に決まった場所に収まっている眼鏡のブリッジを中指1つで押し上げた。
「そうなのだよ。生憎と今年のハロウィンは出張と重なってしまっていてね。遠方にいたせいでメールに気づくのが遅れてしまった」
「はぁ…」
まさかハルトがこの男まで招待していたとは。
苦い思いを咬み殺すが、そう言えばハルトは研究所には入れない。
人当たりのよい紳士の仮面しか知らないのであれば、それも致し方ないことだ。
ハルトを責める気には到底なれない。
真に腹立たしいのはハルトの善意に胡座をかいて、のうのうとカイとの目の前に顔を出しているこの男ただ一人である。
「……急いで帰国したのだが、折角のパーティーには間に合わなかったようだ。すまなかったね」
「いえ…大丈夫です」
むしろ間に合わなくて本当に良かった。
だからと言ってこんな夜にカイトの自宅を訪れるなど何を考えているかわからない。
出来れば一刻も早くお引取り願いたいところである。
「…その、もう遅いですし…」
「いやなに。私のことなら心配せずとも問題ないよ。聞けば久々に休暇が取れるそうじゃないか。私も……そして君も」
誰が貴様の心配などするものか、とカイトは声には出さず悪態をついた。
しかし、いくらいけ好かないとは言え仮にも上司である。
本人を前に滅多なことは言えない。
ましてやこの執念深い上司のことだ、仕事中に何をされるかわかったものではない。
「見ての通りパーティーは終わりましたし、残念ながらもうお菓子はありませんよ」
昼間大勢の子供達が来て全部無くなったのだと告げられるや否や、男はショックを受けた様子を演出するためか右手で顔面を覆った。
「そうか…それは残念だ」
「ですから、申し訳ありませんが失礼し──」
早々にドアノブを握り締め、カイトはドアを閉じる。
瞬間。
「──ッ!?」
ガツン、と硬い何かがドアと玄関の間に滑りこんできた。
息を呑んで見下ろすと鈍い光沢を放つ丁寧に磨かれた革靴が閉じられるドアの隙間にねじ込まれている。
反射的に見上げた男の顔は不気味な笑みに歪んでいた。
「安心したまえ。幸運なことに、甘ったるい菓子は口に合わないものでね」
ハロウィンの意味を根底から覆す発言にカイトは眉を顰める。
ならば何故わざわざ蜻蛉返りするように帰国して来たのか。
ますます不審そうな目を向けるカイトを別段気にした素振りもなく、男は通路側のドアノブを力強く引き、無理矢理ドアをこじ開けた。
「……もっと別のもので手を打とう」
ぶわっと雪崩れ込んで来た外気のためだけではない紛れも無い悪寒にカイトは全身を戦慄かせた。
+++
Vカイという前提があるのでこんなところで切ってますが、多分クソメガネの気配に嫌な予感を感じたVさんが皆を送り届けた後で助けに来てくれる…はず!
本編であとがき書かなかったのでここで吐き出しますが、ネタ考えてた時は最終的にVカイであとはのんびりでいいかなーと思ってたんですが蓋を開けたら何故だかカイト総受けになってて申し訳ない。
Vカイも別に深い仲設定はなかったのですが気づけばとんだ少女漫画になってしまって重ね重ね申し訳ないですorz
軽く設定。
カイト…一人暮らし。父フェイカーの会社でドロワやゴーシュと同じ社員。
フェイカー…研究所の所長。慈善事業でアミューズメントパークも所持。
ハルト…実家(フェイカーの家)暮らし。
オービタル…たまにカイトの様子を見に行くことがあり、基本ハルトの世話。
Mr.ハートランド…フェイカーの部下で秘書兼広報担当。
ゴーシュとドロワ…研究所の社員でハートランドの部下。
V…昔フェイカーの研究所で働いておりカイトの先輩だったが、今は実家の研究を手伝っている。
バイロン(トロン)…フェイカーの研究所で共同研究していたが、若返りの薬を発明し、独自に製薬会社を立ち上げ独立。
Ⅳ…学生。家業を継ぐかは未定。デュエルの極東エリア優勝者で有名人。決勝戦の相手は凌牙。凌牙の棄権により優勝になったのを歯がゆく思っている。
凌牙…遊馬の1つ年上。妹が急病で倒れ、大事な決勝戦を棄権しⅣに勝ちを譲った。
璃緒…バイロンの製薬会社傘下の大学病院に入院している。回復良好であり問題はない。
Ⅲ…バイロンの息子で三男。遊馬のクラスメイト。家業を継ぐため勉強を頑張っている。街中でしょっちゅうスカウトに声をかけられる(※女性に見られる)
遊馬…中学1年。博物館職員の両親を持つ。
アストラル…遊馬の父が見つけた発掘品「皇の鍵」についている幽霊。皇の鍵に触れたものには見える。
遊馬両親は研究職。主に古代遺跡。
明里は新聞記者。
辺りはとうに真っ暗で、子供達だけで帰すにはいろいろと危険な時間である。
送っていこうと名乗りでてくれたのは車で来ていたVとカイトの父フェイカーだ。
そういう事なら時間的にもキリが良いのでこの辺りでお開きにしようということで話が纏まって、賑やかしい客人らをマンションの下まで見送ったのはもう30分も前のことだった。
使用した食器類は数名の女性陣が率先して手伝ってくれたこともあり、あれだけの量だったにもかかわらず片付けに時間はかからなかった。
カイトは最初、彼女らはカイトの家に招かれた客人なのだからと断ったのだが、ドロワを筆頭とした女性陣の迫力に気圧され手伝って貰ったことになんだか申し訳なさを感じる。
キッチンで乾燥機から乾いた食器を取り出し棚に納めていると、辺りはしんと静かすぎてカイトは己の呼吸さえも大きく聞こえる程に感じた。
つい先程まで大勢の友人達が賑やかに談笑していたことなど俄には信じられない光景である。
静かすぎる室内の静寂になんとなく居心地の悪さを感じて手持ち無沙汰になった頃、今日何度も耳にしたインターフォンがやけに大きく鳴り響いた。
誰か忘れ物でもしたのだろうか。
簡単に片付けた後で目立った物は見当たらなかったが、女性陣の小物など…例えばイヤリングやピアス程の小さいものであればその可能性も十分考えられた。
何はともあれ、リビングから廊下へ続く扉を開き、カイトは真っ暗な廊下に明かりを灯して玄関のドアを開いた。
「こんばんは」
声だけ聞けば落ち着いた静かな声音。
珍しく控えめな色合いのスーツは普段の装いとは異なるが、恐ろしいほど整えられたスーツだ。
糸屑1本、皺の1つすらついていない。
彼を知らぬ初対面の相手からすれば、彼という人物は非常によくできた有能な男に映るのだろう。
「──Mr.ハートランド……」
恐る恐る紡いだ名前は、本来ここにいる筈のない人物のものである。
カイトは驚愕に引き攣った喉から言葉を絞り出した。
「貴方は…確か、海外の学会に出ていたのでは…」
僅かに声を震わせるカイトにゆったりと笑みを向けながら、男は何が気に入らないのか、既に決まった場所に収まっている眼鏡のブリッジを中指1つで押し上げた。
「そうなのだよ。生憎と今年のハロウィンは出張と重なってしまっていてね。遠方にいたせいでメールに気づくのが遅れてしまった」
「はぁ…」
まさかハルトがこの男まで招待していたとは。
苦い思いを咬み殺すが、そう言えばハルトは研究所には入れない。
人当たりのよい紳士の仮面しか知らないのであれば、それも致し方ないことだ。
ハルトを責める気には到底なれない。
真に腹立たしいのはハルトの善意に胡座をかいて、のうのうとカイとの目の前に顔を出しているこの男ただ一人である。
「……急いで帰国したのだが、折角のパーティーには間に合わなかったようだ。すまなかったね」
「いえ…大丈夫です」
むしろ間に合わなくて本当に良かった。
だからと言ってこんな夜にカイトの自宅を訪れるなど何を考えているかわからない。
出来れば一刻も早くお引取り願いたいところである。
「…その、もう遅いですし…」
「いやなに。私のことなら心配せずとも問題ないよ。聞けば久々に休暇が取れるそうじゃないか。私も……そして君も」
誰が貴様の心配などするものか、とカイトは声には出さず悪態をついた。
しかし、いくらいけ好かないとは言え仮にも上司である。
本人を前に滅多なことは言えない。
ましてやこの執念深い上司のことだ、仕事中に何をされるかわかったものではない。
「見ての通りパーティーは終わりましたし、残念ながらもうお菓子はありませんよ」
昼間大勢の子供達が来て全部無くなったのだと告げられるや否や、男はショックを受けた様子を演出するためか右手で顔面を覆った。
「そうか…それは残念だ」
「ですから、申し訳ありませんが失礼し──」
早々にドアノブを握り締め、カイトはドアを閉じる。
瞬間。
「──ッ!?」
ガツン、と硬い何かがドアと玄関の間に滑りこんできた。
息を呑んで見下ろすと鈍い光沢を放つ丁寧に磨かれた革靴が閉じられるドアの隙間にねじ込まれている。
反射的に見上げた男の顔は不気味な笑みに歪んでいた。
「安心したまえ。幸運なことに、甘ったるい菓子は口に合わないものでね」
ハロウィンの意味を根底から覆す発言にカイトは眉を顰める。
ならば何故わざわざ蜻蛉返りするように帰国して来たのか。
ますます不審そうな目を向けるカイトを別段気にした素振りもなく、男は通路側のドアノブを力強く引き、無理矢理ドアをこじ開けた。
「……もっと別のもので手を打とう」
ぶわっと雪崩れ込んで来た外気のためだけではない紛れも無い悪寒にカイトは全身を戦慄かせた。
+++
Vカイという前提があるのでこんなところで切ってますが、多分クソメガネの気配に嫌な予感を感じたVさんが皆を送り届けた後で助けに来てくれる…はず!
本編であとがき書かなかったのでここで吐き出しますが、ネタ考えてた時は最終的にVカイであとはのんびりでいいかなーと思ってたんですが蓋を開けたら何故だかカイト総受けになってて申し訳ない。
Vカイも別に深い仲設定はなかったのですが気づけばとんだ少女漫画になってしまって重ね重ね申し訳ないですorz
軽く設定。
カイト…一人暮らし。父フェイカーの会社でドロワやゴーシュと同じ社員。
フェイカー…研究所の所長。慈善事業でアミューズメントパークも所持。
ハルト…実家(フェイカーの家)暮らし。
オービタル…たまにカイトの様子を見に行くことがあり、基本ハルトの世話。
Mr.ハートランド…フェイカーの部下で秘書兼広報担当。
ゴーシュとドロワ…研究所の社員でハートランドの部下。
V…昔フェイカーの研究所で働いておりカイトの先輩だったが、今は実家の研究を手伝っている。
バイロン(トロン)…フェイカーの研究所で共同研究していたが、若返りの薬を発明し、独自に製薬会社を立ち上げ独立。
Ⅳ…学生。家業を継ぐかは未定。デュエルの極東エリア優勝者で有名人。決勝戦の相手は凌牙。凌牙の棄権により優勝になったのを歯がゆく思っている。
凌牙…遊馬の1つ年上。妹が急病で倒れ、大事な決勝戦を棄権しⅣに勝ちを譲った。
璃緒…バイロンの製薬会社傘下の大学病院に入院している。回復良好であり問題はない。
Ⅲ…バイロンの息子で三男。遊馬のクラスメイト。家業を継ぐため勉強を頑張っている。街中でしょっちゅうスカウトに声をかけられる(※女性に見られる)
遊馬…中学1年。博物館職員の両親を持つ。
アストラル…遊馬の父が見つけた発掘品「皇の鍵」についている幽霊。皇の鍵に触れたものには見える。
遊馬両親は研究職。主に古代遺跡。
明里は新聞記者。
ハロウィンに向けていろいろ考えていたのですが。
最初に考えたのがボツとなったのでここで尻切れトンボのボツネタ供養しようかと。・゚・(Д`(⊂(゚Д゚ つ⌒
ボツ文章なので校正しておりません。
ボツ理由としては、主にクソメガネの口調に頭を悩ませすぎて&展開に詰まったためのボツです。
簡単に説明すると、ハロウィンネタで、ハートランドによるイベントという設定。
そのイベントのシステム的なものを考えたのは私のこのポンコツ頭なので、競争性があるかも…まして面白いかも判断つかなくなってそんなものを長々読ませるのもどうかと思ったのもボツ理由。
あとクソメガネの台詞考えるのがぶっちゃけめんどry
+++
※※あくまでゴミ箱行きのボツ文章の救済なので(勿体無い病)、暇で暇でしょうがないつまんなくて落ちなしでもいいよ!って時にでも。
更に、気が向いたから読んでやるかしかたねえなあという心の広い方推奨ですすみません_| ̄|○
+++
最初に考えたのがボツとなったのでここで尻切れトンボのボツネタ供養しようかと。・゚・(Д`(⊂(゚Д゚ つ⌒
ボツ文章なので校正しておりません。
ボツ理由としては、主にクソメガネの口調に頭を悩ませすぎて&展開に詰まったためのボツです。
簡単に説明すると、ハロウィンネタで、ハートランドによるイベントという設定。
そのイベントのシステム的なものを考えたのは私のこのポンコツ頭なので、競争性があるかも…まして面白いかも判断つかなくなってそんなものを長々読ませるのもどうかと思ったのもボツ理由。
あとクソメガネの台詞考えるのがぶっちゃけめんどry
+++
※※あくまでゴミ箱行きのボツ文章の救済なので(勿体無い病)、暇で暇でしょうがないつまんなくて落ちなしでもいいよ!って時にでも。
更に、気が向いたから読んでやるかしかたねえなあという心の広い方推奨ですすみません_| ̄|○
+++
季節は秋。
うだるような暑さに辟易していたはずの人々が真夏の温かさを少し懐かしく思い起こす季節。
急激な気温の変化が山々を夕焼けのように赤く染め行く季節。
10月も残すところ今日限り。
数日も経てば本格的な寒さの後に冬の季節が訪れるだろう。
そんな冷たい秋風もどこ吹く風とばかりに昼夜構わず開け放った窓からの冷気にもめげず──というより気づいた素振りもなく。
吊るされたハンモックに身を揺られるその人物は間抜けな寝顔を晒していた。
「植物でさえ寒さを感じ紅葉すると言うのに、遊馬はいつまで半袖で過ごすつもりなのだろう」
眠る時のTシャツにスウェット素材のズボンという出で立ちは真夏から全く変わる様子がない。
記憶をたどって春まで遡っても特に大きな変化があったという事実もなく、アストラルは不思議そうに腕を組んだまま、腹を出し睡眠を貪る遊馬を見下ろした。
「遊馬」
「ん~…」
「遊馬。起きなくて良いのか?今日は……」
「うぅん……もうちょっとだけ…」
起きているのか寝ているのかも定かではない遊馬と形ばかりの会話をしているアストラルの耳に階下からの物音が届く。
いつもの経験から音の出所に思い当たったアストラルは、未だ起きる様子のない遊馬を振り返った。
「遊…」
「遊馬ぁ~!」
階下へと続く小さな縦穴から顔を覗かせた明里の威圧的に伸ばされた語感に、ビクリと遊馬の肩が撥ねた。
過去何年にも渡り繰り広げられてきたやり取りに無意識に体が反応するのだろう。
遊馬が条件反射のようにぱっちりと目を開けるのと、明里の声はほぼ同タイミングだった。
「こら遊馬!休みだからっていつまで寝てんの!?」
「おおおお起きます!起きてますッ!……ってうわあ!」
明里の声に弾かれるように飛び起きた遊馬は、しかしぐらぐらと揺れるハンモック上で体勢を崩し、為す術もなく床へ転げ落ちた。
「いってえええええ~」
これも見慣れた光景なのだろう。
強か尻を打ったらしい遊馬に別段心配する素振りもなく、明里はただ呆れ顔で大きな溜息を吐き頭を抱えた。
「全く…朝っぱらから元気だけは良いんだから。……って、あ!アンタまた窓開けっぱなしで寝てたでしょ!もういい加減にしないとホントに風邪引いても知らないからね」
「いてて…わかったって」
これ以上の小言は御免だとばかりに遊馬は渋々立ち上がると、まだ眠い目をこすりながら屋根裏から階下の自室へ降り、クローゼットから無造作に着替えを引っ張り出す。
ダラダラと気だるげに丸まったその背中に、ドアを出ようとしていた明里がふと声を掛けた。
「そう言えば、ハートランドが何かイベントするのって今日じゃなかった?アンタ行かなくていいの?」
「イベントぉ?」
まだ寝ぼけ気味な遊馬は訝しげに首を捻ったが、開け放った窓から小気味良く聞こえてきた空砲音を聞くや否や、次の瞬間には弾かれたように飛び上がった。
「やっべー!すっかり忘れてた!」
あからさまに機敏になった遊馬の姿に明里とアストラルは呆れ果てるしかない。
毎度のことに辟易しながらも、ちゃんと朝ご飯食べてから行きなさいよ!と律儀に掛けた明里の忠告は遊馬の耳に届いたのか否か。
二人の会話を黙って聞いていたアストラルは、慌てた様子で部屋を引っ掻き回している遊馬に近づいた。
「朝から慌ただしいな、君は」
「アストラル!起きてたなら姉ちゃんが来る前に起こしてくれりゃ良かったのによぉ」
アストラルの存在にようやく気づく余裕が出来たのか、驚くほどの短時間で着替えを済ませた遊馬が膨れっ面を向ける。
しかしその不満はアストラルには実に不本意なものだ。
何故ならば、アストラルは明里が来る前に遊馬に声を掛けたのである。
「起こそうとしたが、どうやら眠っている君は私の声よりも明里の声に反応するようだ」
「そりゃまあ…こう毎日姉ちゃんに怒鳴られてるとなんて言うか、体に染み付いちまってるっつーか…」
「なるほど……」
「ってそんなことより!早くハートランドに行かねーと……」
居ても立ってもいられないのか、今にも飛び出してしまいそうな程浮き足立つ遊馬にアストラルもそうだなと同意する。
「私の読みでは、そろそろ小鳥達は到着している頃だろう」
「だよなー……あぁもうダッシュで行かねーと、遅刻なんかしたら小鳥に何て言われるか……え?」
何となく頷いたものの、予想外だったアストラルの返事に遊馬はぎょっと目を見開いた。
そんな遊馬を一瞥しながら、アストラルは淡々と告げる。
「君の予定を一緒にいる私が知らないはずがないだろう」
「お前知ってたんなら何でもっと早く起こしてくれねーんだよー」
「だから起こしたと言っているだろう。君がもう少し寝かせてくれと言ったのだ。そうしていたら明里が来た」
「いやお前そう言う時の返事ってのはなあ…」
「それより遊馬。急がなくて良いのか?」
「お前ってほんっとマイペースだよな!」
子供のみならず大人にも不動の人気を誇る巨大テーマパーク、ハートランド。
一年を通して様々な催し物の開催されるハートランドは連日大賑わいの様子を見せている。
特に休日のハートランドと言えばそれだけで混み合っているものだが、大々的に告知のあった今日という日の人口密度は遊馬やアストラルの想像を遥かに超えていた。
「相変わらず凄い人だな」
「姉ちゃんに聞いた話だと、子供だけじゃなく大人もOKの一大イベントらしいぜ!何が始まるのかすっげー楽しみだな!」
WDCが終わって暫く。久しぶりに開催される大きなイベントに興奮を見せているのは遊馬だけではない。
それを証明するように途切れることの無い人波が遊馬を右へ左へと押し流していく。
「っと…こんなとこで突っ立ってる場合じゃなかった!えーと…小鳥達との待ち合わせ場所は確か……」
「遊馬ー!」
濁流に揉まれている遊馬とアストラルの耳に、何処からとも無く聞き慣れた声が届いた。
しかし周囲の雑踏や周りを行き交う人影に遮られてか、遊馬はキョロキョロと辺りを見渡す。
「こっちこっちー!」
「遊馬」
頭一つ二つ飛び抜けた空中に佇むアストラルの視線が一点へと見定められる。
釣られる様にその視線の先を追った遊馬の目にも、広場の階段から大きく手を振る小鳥の姿を認識できた。
鉄男や委員長と言った遊馬の友人達も既に揃っているようだ。
「よぉみんな!」
「よぉ!じゃないでしょ!全くお気楽なんだから」
「やだ小鳥ったら朝からそんなに目くじら立ててちゃ怒り皺が出来ちゃうわよ」
「なぁんですって~!?」
「遊馬と言えば、毎回待ち合わせに遅刻しそうになるのがお約束みたいなもんだウラ」
「でもまあ間に合って良かったじゃねーか」
「あ、そろそろ始まるみたいですよ。とどのつまり、グッドタイミングという奴ですね!」
委員長の声に皆の視線が頭上に現れたスクリーンへ集まる。
ドラムロールから鳴り響いた盛大な演奏を背負い、投影されたARヴィジョンに1人の男が浮かび上がった。
「ご来場の皆様!そして勇敢なるデュエリストの諸君!「ハートランドのハロウィンパレードへようこそ!」
高らかな宣言と共に、ここにいる誰もが知るハートランドのシンボル『Mr.ハートランド』が煙と共に颯爽と姿を現した。
「本日皆様にお越し頂いたのは、日頃お世話になっている皆様方へ私からのささやかなプレゼントをお贈りするためです。皆様それぞれお手持ちのDパッドを御覧下さい」
「Dパッド?」
携帯端末として広く普及しているDパッドは今やデュエリストでなくても生活に欠かせないものとなっている。
Mr.ハートランドの言葉に遊馬が手元のDパッドを開くと、画面には見慣れないアイコンがちかちかと点滅していた。
「なんだこれ……チョコレート?」
チョコレートのアイコンが1つと、その横に『1』という数字。
画面の右下に現れた枠には大きく『5』と表示されていた。
「私のDパッドにもあるわ」
遊馬や小鳥だけでなく鉄男や委員長、キャッシーや徳之助と言ったデュエリストはもちろん。
周りの反応から判断するに、大人から子供まで全員のDパッドにどうやら同じチョコレートのアイコンが現れているらしい。
「トリックオアトリート!そう、本日10月31日はハロウィン!そこで、本日ハートランドでは一夜限りのハロウィンテーマパークとして趣向を凝らしたイベントを開催致します!皆様Dゲイザーをセットし周りを御覧下さい」
スっと右手を掲げたハートランドがパチンと指を鳴らした次の瞬間、それまで軽快に響いていた演奏が転調する。
それと同時に明るく鮮やかだったハートランド全体の色彩が黒や橙と言ったダークで退廃的な雰囲気の物へと変化してゆく。
「すっげーー!」
色彩だけでなく、御馴染みのハートランドのアトラクションの数々もハロウィン仕様へと様変わりしていた。
普段のハートランドから一転。別のテーマパークにでも来たかのような変わり様に、会場は驚きと興奮の熱気で満ちている。
その興奮のボルテージを更に高めるべく、Mr.ハートランドは言葉を続けた。
「ただ今御覧頂いているハートランドの景色は今年のハロウィン限り!勿論外観だけでなくアトラクションの数々も今日のための特別仕様となっております!」
モニタに様々な新設アトラクションの紹介VTRが流れ、それら1つずつをMr.ハートランドが丁寧に解説している。
その数は1つや2つではなく、これまでハートランドに常設されていた人気アトラクションに加えると合計は数十にも登るとのことだ。
「ってことは、つまり今日を逃したら一生乗れないアトラクションがあるってこと?」
「ハロウィン限定と銘打つからにはそう言うことらしいな」
「ちょ、ちょっと待てよ…えーと、今月のお小遣い……って無い!?」
ポケットから財布を取り出しなけなしの小銭を数えながら遊馬が顔面を蒼白とさせる。
「今月のお小遣いって、今日は10月最後の日だろ、お小遣い貰えるの明日じゃん!ってことは……もしかして」
「世知辛いな」
他人ごとのようなアストラルの言葉に遊馬はがっくりと項垂れた。
「今月のお小遣いがピンチだと項垂れているそこの君。諦めることはないぞ!」
「へ?」
気落ちする遊馬を勇気づけるかのように頭上から声が響いた。
「そこで先程皆様に配布したチョコレートが必要になってくるのです。今までのはアトラクションのご紹介にすぎません。ここからはハートランドが開催するハロウィンイベントについて説明致しましょう!」
会場がどよめく中、頭上のスクリーンに映し出された映像と同じ物が来場者のDパッドにも表示される。
「ハロウィンイベント?とりっくおあとりーと?」
「トリックオアトリートとは、先程Mr.ハートランドも言っていた用語だな。どういう意味だ?」
遊馬のDパッドを覗きこみながらアストラルが尋ねる。
ハロウィンは異世界から来たアストラルには馴染みのないものだろう。
しかし仮に異世界の住人でなかったにしろ、典型的なデュエル脳であるアストラルがハロウィンに詳しいはずもない。
それは説明しようとする遊馬にも同じことが言えた。
「え?えーと……とり…トリ……鳥の何かかな?」
「鳥?」
「もう遊馬!間違ったことを教えないの!」
アストラルに対する適当な返答を間近で聞いていたのだろう。
首を傾げるアストラルと遊馬のため小鳥は簡単にハロウィンの概要を説明した。
「トリックオアトリートってのは、『お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ』って意味のハロウィンの決まり文句みたいなものなの」
「元々は外国の収穫祭だったものですが、仮装した子供が近所の家を周りお菓子をねだり歩くパレードやパーティなどのイベントとして広まったんです」
小鳥や委員長の補足にアストラルは見識を深めたように頷き、遊馬が感心するように声を漏らしたところで、Dパッドに映る説明書きのようなページにずらりとお菓子のアイコンが並んだ。
チョコレートのアイコンの他に包み紙を左右で捻ったようなキャンディや、市松模様のクッキー、よく見るキャラメルなど11種類のお菓子が表示されている。
それらの横には様々な数字が記載されており、キャンディの1という数字から始まり、一番下の三角形のショートケーキの横には15の数字が記されていた。
「最初にお配りしたのと同じチョコレートのアイコンをご覧ください。チョコレートの横には5という数字。これはチョコレートが5点であることを表しています」
一番点数が低いのが飴の1点。
そこからアイコン10番目のペロペロキャンディー10点まで1点ずつ点が増えて行き、最後のケーキのみ持ち点が15となっているらしい。
「さきほどご紹介したアトラクションは、こちらに表示されているお菓子の点数を集めることで楽しむことができます」
「なるほど!とどのつまりお菓子を集めることでお小遣いを使わなくてもハートランドを楽しむことが出来るというわけですね!」
「おぉ!そういうことか!ハートランド超太っ腹じゃん!」
「でもこのお菓子ってどこで手に入るのかしら?」
「とても5点で全部のアトラクションを回れるとは思えないウラ」
キャッシーや徳之介の疑問に答えの出せぬまま、とにかくハートランドの説明を聞くことにし天を仰いだ。
お菓子の説明をしていたハートランドがDパッドの『次へ』と書かれたアイコンをタッチすることを促す。
ページが移り変わるとそこにはイベントのルールのような文章が箇条書きで記されていた。
「説明を見ても分かるように、お菓子を得る方法は様々だ。デュエルによって相手から奪っても良し。プレゼントするのも良し。また新設されたアトラクションの中には高得点のお菓子を手に入れるチャンスもあるから探してみてくれたまえ。そしてイベント終了後には最もお菓子を集めた者に特別なプレゼントを用意しているぞ!」
遊馬が説明とDパッド内のルールとを照らし合わせながら頭を悩ませている最中、遊馬とともにDパッドを覗いていた飲み込みの早いアストラルが呟いた。
「どうやら基本的にはデュエルで集めることになるらしいな」
「お前もうわかったの?」
驚いて目を丸くする遊馬に見上げられアストラルは小さく息を漏らす。
アストラルが思うに、遊馬は四六時中デュエルのことしか考えていないデュエル脳…いや、デュエルバカだ。
そんな彼には現時点でどんなにルールを詰め込んでも無駄だと経験から知っているアストラルは遊馬の不思議そうな顔に一言「ああ」と返すだけに留めた。
彼は実践型である。
実際にルール説明が必要になった場合にその都度説明する方が手間が無い。
それが彼の判断だった。
「最後になるが、集めたポイントはイベント終了後にアトラクションを楽しむために使用することが出来るぞ。そして集めたお菓子もそのまま持ち帰ることが可能だ。持ち帰りに関しては郵送も可能なので詳しくは各々イベントルールでチェックすることをお勧めします!それでは優勝目指してハートバーニング!」
お決まりの台詞と花火の音と共に、司会進行役を務めたMr.ハートランドは颯爽と人々の目の前から姿を消した。
+++
クソメガネ(ver道化)が難しすぎて。
こんなところまで読んでいただきまして本当にありがとうございます><
お粗末さまでした_○/|_ 土下座
うだるような暑さに辟易していたはずの人々が真夏の温かさを少し懐かしく思い起こす季節。
急激な気温の変化が山々を夕焼けのように赤く染め行く季節。
10月も残すところ今日限り。
数日も経てば本格的な寒さの後に冬の季節が訪れるだろう。
そんな冷たい秋風もどこ吹く風とばかりに昼夜構わず開け放った窓からの冷気にもめげず──というより気づいた素振りもなく。
吊るされたハンモックに身を揺られるその人物は間抜けな寝顔を晒していた。
「植物でさえ寒さを感じ紅葉すると言うのに、遊馬はいつまで半袖で過ごすつもりなのだろう」
眠る時のTシャツにスウェット素材のズボンという出で立ちは真夏から全く変わる様子がない。
記憶をたどって春まで遡っても特に大きな変化があったという事実もなく、アストラルは不思議そうに腕を組んだまま、腹を出し睡眠を貪る遊馬を見下ろした。
「遊馬」
「ん~…」
「遊馬。起きなくて良いのか?今日は……」
「うぅん……もうちょっとだけ…」
起きているのか寝ているのかも定かではない遊馬と形ばかりの会話をしているアストラルの耳に階下からの物音が届く。
いつもの経験から音の出所に思い当たったアストラルは、未だ起きる様子のない遊馬を振り返った。
「遊…」
「遊馬ぁ~!」
階下へと続く小さな縦穴から顔を覗かせた明里の威圧的に伸ばされた語感に、ビクリと遊馬の肩が撥ねた。
過去何年にも渡り繰り広げられてきたやり取りに無意識に体が反応するのだろう。
遊馬が条件反射のようにぱっちりと目を開けるのと、明里の声はほぼ同タイミングだった。
「こら遊馬!休みだからっていつまで寝てんの!?」
「おおおお起きます!起きてますッ!……ってうわあ!」
明里の声に弾かれるように飛び起きた遊馬は、しかしぐらぐらと揺れるハンモック上で体勢を崩し、為す術もなく床へ転げ落ちた。
「いってえええええ~」
これも見慣れた光景なのだろう。
強か尻を打ったらしい遊馬に別段心配する素振りもなく、明里はただ呆れ顔で大きな溜息を吐き頭を抱えた。
「全く…朝っぱらから元気だけは良いんだから。……って、あ!アンタまた窓開けっぱなしで寝てたでしょ!もういい加減にしないとホントに風邪引いても知らないからね」
「いてて…わかったって」
これ以上の小言は御免だとばかりに遊馬は渋々立ち上がると、まだ眠い目をこすりながら屋根裏から階下の自室へ降り、クローゼットから無造作に着替えを引っ張り出す。
ダラダラと気だるげに丸まったその背中に、ドアを出ようとしていた明里がふと声を掛けた。
「そう言えば、ハートランドが何かイベントするのって今日じゃなかった?アンタ行かなくていいの?」
「イベントぉ?」
まだ寝ぼけ気味な遊馬は訝しげに首を捻ったが、開け放った窓から小気味良く聞こえてきた空砲音を聞くや否や、次の瞬間には弾かれたように飛び上がった。
「やっべー!すっかり忘れてた!」
あからさまに機敏になった遊馬の姿に明里とアストラルは呆れ果てるしかない。
毎度のことに辟易しながらも、ちゃんと朝ご飯食べてから行きなさいよ!と律儀に掛けた明里の忠告は遊馬の耳に届いたのか否か。
二人の会話を黙って聞いていたアストラルは、慌てた様子で部屋を引っ掻き回している遊馬に近づいた。
「朝から慌ただしいな、君は」
「アストラル!起きてたなら姉ちゃんが来る前に起こしてくれりゃ良かったのによぉ」
アストラルの存在にようやく気づく余裕が出来たのか、驚くほどの短時間で着替えを済ませた遊馬が膨れっ面を向ける。
しかしその不満はアストラルには実に不本意なものだ。
何故ならば、アストラルは明里が来る前に遊馬に声を掛けたのである。
「起こそうとしたが、どうやら眠っている君は私の声よりも明里の声に反応するようだ」
「そりゃまあ…こう毎日姉ちゃんに怒鳴られてるとなんて言うか、体に染み付いちまってるっつーか…」
「なるほど……」
「ってそんなことより!早くハートランドに行かねーと……」
居ても立ってもいられないのか、今にも飛び出してしまいそうな程浮き足立つ遊馬にアストラルもそうだなと同意する。
「私の読みでは、そろそろ小鳥達は到着している頃だろう」
「だよなー……あぁもうダッシュで行かねーと、遅刻なんかしたら小鳥に何て言われるか……え?」
何となく頷いたものの、予想外だったアストラルの返事に遊馬はぎょっと目を見開いた。
そんな遊馬を一瞥しながら、アストラルは淡々と告げる。
「君の予定を一緒にいる私が知らないはずがないだろう」
「お前知ってたんなら何でもっと早く起こしてくれねーんだよー」
「だから起こしたと言っているだろう。君がもう少し寝かせてくれと言ったのだ。そうしていたら明里が来た」
「いやお前そう言う時の返事ってのはなあ…」
「それより遊馬。急がなくて良いのか?」
「お前ってほんっとマイペースだよな!」
子供のみならず大人にも不動の人気を誇る巨大テーマパーク、ハートランド。
一年を通して様々な催し物の開催されるハートランドは連日大賑わいの様子を見せている。
特に休日のハートランドと言えばそれだけで混み合っているものだが、大々的に告知のあった今日という日の人口密度は遊馬やアストラルの想像を遥かに超えていた。
「相変わらず凄い人だな」
「姉ちゃんに聞いた話だと、子供だけじゃなく大人もOKの一大イベントらしいぜ!何が始まるのかすっげー楽しみだな!」
WDCが終わって暫く。久しぶりに開催される大きなイベントに興奮を見せているのは遊馬だけではない。
それを証明するように途切れることの無い人波が遊馬を右へ左へと押し流していく。
「っと…こんなとこで突っ立ってる場合じゃなかった!えーと…小鳥達との待ち合わせ場所は確か……」
「遊馬ー!」
濁流に揉まれている遊馬とアストラルの耳に、何処からとも無く聞き慣れた声が届いた。
しかし周囲の雑踏や周りを行き交う人影に遮られてか、遊馬はキョロキョロと辺りを見渡す。
「こっちこっちー!」
「遊馬」
頭一つ二つ飛び抜けた空中に佇むアストラルの視線が一点へと見定められる。
釣られる様にその視線の先を追った遊馬の目にも、広場の階段から大きく手を振る小鳥の姿を認識できた。
鉄男や委員長と言った遊馬の友人達も既に揃っているようだ。
「よぉみんな!」
「よぉ!じゃないでしょ!全くお気楽なんだから」
「やだ小鳥ったら朝からそんなに目くじら立ててちゃ怒り皺が出来ちゃうわよ」
「なぁんですって~!?」
「遊馬と言えば、毎回待ち合わせに遅刻しそうになるのがお約束みたいなもんだウラ」
「でもまあ間に合って良かったじゃねーか」
「あ、そろそろ始まるみたいですよ。とどのつまり、グッドタイミングという奴ですね!」
委員長の声に皆の視線が頭上に現れたスクリーンへ集まる。
ドラムロールから鳴り響いた盛大な演奏を背負い、投影されたARヴィジョンに1人の男が浮かび上がった。
「ご来場の皆様!そして勇敢なるデュエリストの諸君!「ハートランドのハロウィンパレードへようこそ!」
高らかな宣言と共に、ここにいる誰もが知るハートランドのシンボル『Mr.ハートランド』が煙と共に颯爽と姿を現した。
「本日皆様にお越し頂いたのは、日頃お世話になっている皆様方へ私からのささやかなプレゼントをお贈りするためです。皆様それぞれお手持ちのDパッドを御覧下さい」
「Dパッド?」
携帯端末として広く普及しているDパッドは今やデュエリストでなくても生活に欠かせないものとなっている。
Mr.ハートランドの言葉に遊馬が手元のDパッドを開くと、画面には見慣れないアイコンがちかちかと点滅していた。
「なんだこれ……チョコレート?」
チョコレートのアイコンが1つと、その横に『1』という数字。
画面の右下に現れた枠には大きく『5』と表示されていた。
「私のDパッドにもあるわ」
遊馬や小鳥だけでなく鉄男や委員長、キャッシーや徳之助と言ったデュエリストはもちろん。
周りの反応から判断するに、大人から子供まで全員のDパッドにどうやら同じチョコレートのアイコンが現れているらしい。
「トリックオアトリート!そう、本日10月31日はハロウィン!そこで、本日ハートランドでは一夜限りのハロウィンテーマパークとして趣向を凝らしたイベントを開催致します!皆様Dゲイザーをセットし周りを御覧下さい」
スっと右手を掲げたハートランドがパチンと指を鳴らした次の瞬間、それまで軽快に響いていた演奏が転調する。
それと同時に明るく鮮やかだったハートランド全体の色彩が黒や橙と言ったダークで退廃的な雰囲気の物へと変化してゆく。
「すっげーー!」
色彩だけでなく、御馴染みのハートランドのアトラクションの数々もハロウィン仕様へと様変わりしていた。
普段のハートランドから一転。別のテーマパークにでも来たかのような変わり様に、会場は驚きと興奮の熱気で満ちている。
その興奮のボルテージを更に高めるべく、Mr.ハートランドは言葉を続けた。
「ただ今御覧頂いているハートランドの景色は今年のハロウィン限り!勿論外観だけでなくアトラクションの数々も今日のための特別仕様となっております!」
モニタに様々な新設アトラクションの紹介VTRが流れ、それら1つずつをMr.ハートランドが丁寧に解説している。
その数は1つや2つではなく、これまでハートランドに常設されていた人気アトラクションに加えると合計は数十にも登るとのことだ。
「ってことは、つまり今日を逃したら一生乗れないアトラクションがあるってこと?」
「ハロウィン限定と銘打つからにはそう言うことらしいな」
「ちょ、ちょっと待てよ…えーと、今月のお小遣い……って無い!?」
ポケットから財布を取り出しなけなしの小銭を数えながら遊馬が顔面を蒼白とさせる。
「今月のお小遣いって、今日は10月最後の日だろ、お小遣い貰えるの明日じゃん!ってことは……もしかして」
「世知辛いな」
他人ごとのようなアストラルの言葉に遊馬はがっくりと項垂れた。
「今月のお小遣いがピンチだと項垂れているそこの君。諦めることはないぞ!」
「へ?」
気落ちする遊馬を勇気づけるかのように頭上から声が響いた。
「そこで先程皆様に配布したチョコレートが必要になってくるのです。今までのはアトラクションのご紹介にすぎません。ここからはハートランドが開催するハロウィンイベントについて説明致しましょう!」
会場がどよめく中、頭上のスクリーンに映し出された映像と同じ物が来場者のDパッドにも表示される。
「ハロウィンイベント?とりっくおあとりーと?」
「トリックオアトリートとは、先程Mr.ハートランドも言っていた用語だな。どういう意味だ?」
遊馬のDパッドを覗きこみながらアストラルが尋ねる。
ハロウィンは異世界から来たアストラルには馴染みのないものだろう。
しかし仮に異世界の住人でなかったにしろ、典型的なデュエル脳であるアストラルがハロウィンに詳しいはずもない。
それは説明しようとする遊馬にも同じことが言えた。
「え?えーと……とり…トリ……鳥の何かかな?」
「鳥?」
「もう遊馬!間違ったことを教えないの!」
アストラルに対する適当な返答を間近で聞いていたのだろう。
首を傾げるアストラルと遊馬のため小鳥は簡単にハロウィンの概要を説明した。
「トリックオアトリートってのは、『お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ』って意味のハロウィンの決まり文句みたいなものなの」
「元々は外国の収穫祭だったものですが、仮装した子供が近所の家を周りお菓子をねだり歩くパレードやパーティなどのイベントとして広まったんです」
小鳥や委員長の補足にアストラルは見識を深めたように頷き、遊馬が感心するように声を漏らしたところで、Dパッドに映る説明書きのようなページにずらりとお菓子のアイコンが並んだ。
チョコレートのアイコンの他に包み紙を左右で捻ったようなキャンディや、市松模様のクッキー、よく見るキャラメルなど11種類のお菓子が表示されている。
それらの横には様々な数字が記載されており、キャンディの1という数字から始まり、一番下の三角形のショートケーキの横には15の数字が記されていた。
「最初にお配りしたのと同じチョコレートのアイコンをご覧ください。チョコレートの横には5という数字。これはチョコレートが5点であることを表しています」
一番点数が低いのが飴の1点。
そこからアイコン10番目のペロペロキャンディー10点まで1点ずつ点が増えて行き、最後のケーキのみ持ち点が15となっているらしい。
「さきほどご紹介したアトラクションは、こちらに表示されているお菓子の点数を集めることで楽しむことができます」
「なるほど!とどのつまりお菓子を集めることでお小遣いを使わなくてもハートランドを楽しむことが出来るというわけですね!」
「おぉ!そういうことか!ハートランド超太っ腹じゃん!」
「でもこのお菓子ってどこで手に入るのかしら?」
「とても5点で全部のアトラクションを回れるとは思えないウラ」
キャッシーや徳之介の疑問に答えの出せぬまま、とにかくハートランドの説明を聞くことにし天を仰いだ。
お菓子の説明をしていたハートランドがDパッドの『次へ』と書かれたアイコンをタッチすることを促す。
ページが移り変わるとそこにはイベントのルールのような文章が箇条書きで記されていた。
「説明を見ても分かるように、お菓子を得る方法は様々だ。デュエルによって相手から奪っても良し。プレゼントするのも良し。また新設されたアトラクションの中には高得点のお菓子を手に入れるチャンスもあるから探してみてくれたまえ。そしてイベント終了後には最もお菓子を集めた者に特別なプレゼントを用意しているぞ!」
遊馬が説明とDパッド内のルールとを照らし合わせながら頭を悩ませている最中、遊馬とともにDパッドを覗いていた飲み込みの早いアストラルが呟いた。
「どうやら基本的にはデュエルで集めることになるらしいな」
「お前もうわかったの?」
驚いて目を丸くする遊馬に見上げられアストラルは小さく息を漏らす。
アストラルが思うに、遊馬は四六時中デュエルのことしか考えていないデュエル脳…いや、デュエルバカだ。
そんな彼には現時点でどんなにルールを詰め込んでも無駄だと経験から知っているアストラルは遊馬の不思議そうな顔に一言「ああ」と返すだけに留めた。
彼は実践型である。
実際にルール説明が必要になった場合にその都度説明する方が手間が無い。
それが彼の判断だった。
「最後になるが、集めたポイントはイベント終了後にアトラクションを楽しむために使用することが出来るぞ。そして集めたお菓子もそのまま持ち帰ることが可能だ。持ち帰りに関しては郵送も可能なので詳しくは各々イベントルールでチェックすることをお勧めします!それでは優勝目指してハートバーニング!」
お決まりの台詞と花火の音と共に、司会進行役を務めたMr.ハートランドは颯爽と人々の目の前から姿を消した。
+++
クソメガネ(ver道化)が難しすぎて。
こんなところまで読んでいただきまして本当にありがとうございます><
お粗末さまでした_○/|_ 土下座
【カイト】

ゆうやーけこやけーの…赤とんぼいなかった。夕焼けだけで始めたら盛大に間違えた。
本編のあぐらカイトかわええええええ
↓
あぐらカイトはあはあはあ
↓
とりあえず何か背景っぽいの…
↓
夕日描きたい
↓
KONOZAMA←イマココ
秋の夕焼けは綺麗ですねー。
出来れば水平線に沈んでいく夕日とか見てみたいんですが、山奥住まいの私には無理ですorz
最寄りの海まで一時間over
個人的には瀬戸内海よりも日本海が好きです。
太平洋は遠すぎてわからなさすぎですが、日本海の断崖絶壁から夕日見たい(´・ω・`)
蛇足が多くなりましたが、取ってつけた適当背景なので世界観に全然合わないwwwwすみませごふごふ。
でもハートランドシティで夕日……と考えたらなんか高い塔の上で一人黄昏れる兄さんしか浮かばなかったまじ不審者。
+++
続きはVカイのR18ssです。
小ネタという奴です。
V…というかクリス×カイト(過去妄想)
いきなり始まってるのでご注意くださいませ。
+++
ゆうやーけこやけーの…赤とんぼいなかった。夕焼けだけで始めたら盛大に間違えた。
本編のあぐらカイトかわええええええ
↓
あぐらカイトはあはあはあ
↓
とりあえず何か背景っぽいの…
↓
夕日描きたい
↓
KONOZAMA←イマココ
秋の夕焼けは綺麗ですねー。
出来れば水平線に沈んでいく夕日とか見てみたいんですが、山奥住まいの私には無理ですorz
最寄りの海まで一時間over
個人的には瀬戸内海よりも日本海が好きです。
太平洋は遠すぎてわからなさすぎですが、日本海の断崖絶壁から夕日見たい(´・ω・`)
蛇足が多くなりましたが、取ってつけた適当背景なので世界観に全然合わないwwwwすみませごふごふ。
でもハートランドシティで夕日……と考えたらなんか高い塔の上で一人黄昏れる兄さんしか浮かばなかったまじ不審者。
+++
続きはVカイのR18ssです。
小ネタという奴です。
V…というかクリス×カイト(過去妄想)
いきなり始まってるのでご注意くださいませ。
+++
※冒頭から自重してませんのでご注意くださいませ※
+++
反り返ったそれを目にし、カイトは緊張に息を呑んだ。
自分も男である以上そういう状態は何度か目にしているが、自分のものと彼のものとでは全く別の物体に見えてしまう。
赤黒く張り詰め太い血管の浮かんだそれに恐る恐る手を伸ばすと、熱く昂ったそれが今からどこへ向かうのかを想像してしまい、さっと頬を赤く染めた。
「カイトはいやらしいな」
「……っ!」
目敏く指摘され、より一層頬を紅潮させながら、カイトは視線だけで恨みがましくクリスの顔を見上げた。
「誰の、せいで…」
苦々しく呟いた恨み言にもクリスは全く動じない。
「それは私のせいだと言っているのか?」
「そ、…それは…」
自ら墓穴を掘ってしまい、カイトは目尻に涙を浮かべた。
反論をしたいが、全てにおいて1枚も2枚も上手なクリスを相手に勝ち目は無いと悟ったのだろう。
「……あまり……いじめないでください」
余りの恥ずかしさに涙ぐんでしまったカイトを見下ろしながら、クリスは苦笑を浮かべた。
「それは…私のセリフだな」
「え……?」
カイトはクリスの指差す方向を見下ろす。
視線の先では、無意識で握りこんでいたクリス自身の先端から透明な先走りが溢れていた。
「う、うわ…っ!」
カイトが反射的に手を放してしまったせいで、芯を持ったそれはぶるりと大きく揺れ先走りがぽたりとクリスの腹に落ちた。
「ひっ」
ますますグロテスクになったそれを目にしたカイトが咄嗟に悲鳴を漏らした。
「カイト……流石の私でも今のは少し傷ついたな」
「す、すみません!……つい…」
申し訳なさと恥ずかしさに顔を一段と赤く染めながら、カイトの右手が行き場を失い宙に浮いていた。
その震える手を優しく取り、再び自分のものへと導いたクリスは目を泳がせるカイトを落ち着かせるためゆったりと微笑む。
「あ…あの……」
「さっき教えた通りにやってごらん」
そう促したクリスの言葉に、忘れかけていた決意を奮い立たせる。
ドクドクと脈打つ昂りと、カイトの手を上から握るクリスの冷たい掌の差にカイトの声は震えた。
「貴方は……ときどき意地悪だ…」
羞恥心を滲ませながらも意を決したように呟いたカイトの困り顔が愛おしく、もっと恥ずかしがる顔が見たくて、つい口を滑らせてしまう。
「お望みとあらばもっといじめてあげようか?」
今度こそ怒りだしてしまいそうなカイトの様子に、とうとうクリスは吹き出した。
+++
反り返ったそれを目にし、カイトは緊張に息を呑んだ。
自分も男である以上そういう状態は何度か目にしているが、自分のものと彼のものとでは全く別の物体に見えてしまう。
赤黒く張り詰め太い血管の浮かんだそれに恐る恐る手を伸ばすと、熱く昂ったそれが今からどこへ向かうのかを想像してしまい、さっと頬を赤く染めた。
「カイトはいやらしいな」
「……っ!」
目敏く指摘され、より一層頬を紅潮させながら、カイトは視線だけで恨みがましくクリスの顔を見上げた。
「誰の、せいで…」
苦々しく呟いた恨み言にもクリスは全く動じない。
「それは私のせいだと言っているのか?」
「そ、…それは…」
自ら墓穴を掘ってしまい、カイトは目尻に涙を浮かべた。
反論をしたいが、全てにおいて1枚も2枚も上手なクリスを相手に勝ち目は無いと悟ったのだろう。
「……あまり……いじめないでください」
余りの恥ずかしさに涙ぐんでしまったカイトを見下ろしながら、クリスは苦笑を浮かべた。
「それは…私のセリフだな」
「え……?」
カイトはクリスの指差す方向を見下ろす。
視線の先では、無意識で握りこんでいたクリス自身の先端から透明な先走りが溢れていた。
「う、うわ…っ!」
カイトが反射的に手を放してしまったせいで、芯を持ったそれはぶるりと大きく揺れ先走りがぽたりとクリスの腹に落ちた。
「ひっ」
ますますグロテスクになったそれを目にしたカイトが咄嗟に悲鳴を漏らした。
「カイト……流石の私でも今のは少し傷ついたな」
「す、すみません!……つい…」
申し訳なさと恥ずかしさに顔を一段と赤く染めながら、カイトの右手が行き場を失い宙に浮いていた。
その震える手を優しく取り、再び自分のものへと導いたクリスは目を泳がせるカイトを落ち着かせるためゆったりと微笑む。
「あ…あの……」
「さっき教えた通りにやってごらん」
そう促したクリスの言葉に、忘れかけていた決意を奮い立たせる。
ドクドクと脈打つ昂りと、カイトの手を上から握るクリスの冷たい掌の差にカイトの声は震えた。
「貴方は……ときどき意地悪だ…」
羞恥心を滲ませながらも意を決したように呟いたカイトの困り顔が愛おしく、もっと恥ずかしがる顔が見たくて、つい口を滑らせてしまう。
「お望みとあらばもっといじめてあげようか?」
今度こそ怒りだしてしまいそうなカイトの様子に、とうとうクリスは吹き出した。
以前ついったの診断で出たネタから消化。
タイトルにもありますがジャックは不在です。
もてもて小悪魔系ジャック可愛い。
+++
タイトルにもありますがジャックは不在です。
もてもて小悪魔系ジャック可愛い。
+++
■いつだって分かりやすい嘘を吐く
パーツの買い出しからポッポタイムへ戻る途中の遊星は、進行方向に黒山の人集りを見つけ、走らせていたDホイールを停めた。
道路を封鎖せんとばかりの群衆と、それらを一定の範囲内へ立ち入らせない為のテープを張っているのは見慣れたセキュリティの制服だ。
事故でもあったのだろうか、いずれにせよ狭い一般道に溢れた野次馬をすり抜け進むことは難しそうだと回り道を考えた遊星の視線の先に見慣れた色の制服が目に入る。
「風馬…?」
反射的に呟いた名前にまさか気づいたはずも無いが、テープの内側にいたその人物とばっちり目が合ってしまった。
「あれ遊星じゃないか。久し振りだな」
いつもと変わらぬ人当たりの良さで近づいてきた風馬に簡単な会釈を返しながらも、遊星は少しだけ身構えた。
悪い人物ではないし色々と世話にもなっているのだが、いかんせん遊星は風馬という男に苦手意識を持っている。
それというのも『共通の友人』が大いに関係しているせいなのだが、とりあえずこの場にその人物はいない。遊星は関係者であろう風馬にテープの内側のことを訪ねた。
「事故か?」
「あぁ。速度オーバーのDホイールがクラッシュしたようでね。幸い軽い掠り傷だけで済んだみたいで命に別状はないようで良かったよ」
「そうか」
Dホイールの絡む事故は何も初心者に限ったことではない。どんなに運転技術を磨こうとも自分のDホイールが常に万全の状態でなければ小さな不調が取り返しの付かない事故に繋がることもあるし、ライディングデュエルを行うレーンの状態やその時の天候、そして自分が万全の準備を整えていたとしても、相手のミスに巻き込まれる可能性も無いとは言い切れないのだ。
ライディングデュエルにおける危険性は、初心者よりもむしろ大きな大会に名を連ねるライディングデュエリストこそ思い知っている。
「さっき簡単な事情聴取で話を聞いたんだけど……」
Dホイールのクラッシュ事故は遊星も風馬も経験上身に沁みて体験しているが、風馬は何とも言えぬ微妙な面持ちで掻い摘んで事故の経緯を話し始めた。
聞けば恋愛の縺れからデュエルで決着をつけようと言うことになったらしく、ターンを重ねる毎にヒートアップして片方がクラッシュしたらしい。
大きな事故にならなかったのが不幸中の幸いだが、何でもデュエルでケリをつけようとするのはデュエリストの悪い癖だなと苦笑する風馬に、遊星もふっと笑みを浮かべる。
流石にライディングデュエルで何かを賭けたことはないが、昔はジャックやクロウ、鬼柳達と互いに他愛のないものを賭けてデュエルをしていた日々を思い起こす。
色恋沙汰でさえもデュエルで勝ち取るのは少々強引な気もしたが、あながち突飛な発想でもないなと遊星は風馬と顔を見合わせた。
「そう言えば」
──来た。
そう感じた遊星の読みは程なくして間違いではなかったと知る。
「今日はジャックは一緒じゃないんだな」
意味深な視線を寄越した風馬の様子に、今この場にジャックがいなくて本当に良かったと心底ほっとする。
「あぁ。今日は俺の用事だけだからな」
「そうか。それは少し残念だな」
朗らかに笑みを浮かべながら何とも無い様子で本音を言う、そんな大胆さが自分には少し欠けていると自覚している遊星は、風馬の言動を脅威と羨望とが入り混じった表情で見つめた。
遊星は口が達者なわけではない。どちらかと言えば口下手で、話術に関してはジャックの足元にも及ばず、だからと言って風馬のように気の効いた台詞が出てくるわけでもない。
だからであろうか、風馬と会話する時のジャックは遊星が今まで見てきたどのジャックとも微妙に異なっており、そんな自分も見たことが無いジャックの一面を風馬が独り占めしているのかと思うと、ちりちりと胸の奥がむず痒くなるのだ。
それはどこからどう見ても……自分自身でも嫉妬以外の何物でもないと認識しているのだが、そんな些細なことにすら嫉妬心が芽生えてしまう己の器の狭さに余計に自己嫌悪は増して行く。
いっそのことジャックとの関係が進展しでもすれば、この風馬との微妙な空気も変わってくれる気がしないでもないが、その一歩を踏み出すには相当の勇気を要するのだ。
さほど長い沈黙ではなかったが、不意に風馬が口を開いた。
「なぁ遊星」
どことなく神妙な顔つきで抱えたヘルメットを見下ろす風馬。
その鳶色の瞳が、今度は遊星へと向けられた。
「俺達もデュエルで決着をつけようか?」
何の……とはお互い口にするまでも無く分かりきっている。
戸惑う遊星とは裏腹に、風馬は視線を逸らすことなく真直ぐに遊星を見つめていた。
「………っ…」
「なんて、冗談だよ」
いつもと変わらぬ風馬の声に遮られるようにして遊星は言葉を飲み込んだ。
風馬は見慣れた柔らかな笑みを浮かべたまま軽く遊星の肩を叩くと、ぐるりと周辺の状況に目を配った。
「さて交通整理は終わったかな?」
つられる様に見渡せば先ほどまでいた群衆は徐々に減り、道路や歩道はいつもの平穏を取り戻しかけているようだ。
「野次馬もいなくなったみたいだし、そろそろ規制を解くから通れるよ」
「…あぁ」
「それじゃ、みんなによろしく」
まるでいつもと変わらぬ世間話でもしていたかの様子の風馬にどこか呆気に取られながらも、遊星は立ち去ろうとする風馬の背中に歯切れの悪い相槌を投げながら、また一つ恋敵に対する苦手意識が増えたのを感じながら帰路についた。
+++
爽やかが行方不明(´;ω;`)
パーツの買い出しからポッポタイムへ戻る途中の遊星は、進行方向に黒山の人集りを見つけ、走らせていたDホイールを停めた。
道路を封鎖せんとばかりの群衆と、それらを一定の範囲内へ立ち入らせない為のテープを張っているのは見慣れたセキュリティの制服だ。
事故でもあったのだろうか、いずれにせよ狭い一般道に溢れた野次馬をすり抜け進むことは難しそうだと回り道を考えた遊星の視線の先に見慣れた色の制服が目に入る。
「風馬…?」
反射的に呟いた名前にまさか気づいたはずも無いが、テープの内側にいたその人物とばっちり目が合ってしまった。
「あれ遊星じゃないか。久し振りだな」
いつもと変わらぬ人当たりの良さで近づいてきた風馬に簡単な会釈を返しながらも、遊星は少しだけ身構えた。
悪い人物ではないし色々と世話にもなっているのだが、いかんせん遊星は風馬という男に苦手意識を持っている。
それというのも『共通の友人』が大いに関係しているせいなのだが、とりあえずこの場にその人物はいない。遊星は関係者であろう風馬にテープの内側のことを訪ねた。
「事故か?」
「あぁ。速度オーバーのDホイールがクラッシュしたようでね。幸い軽い掠り傷だけで済んだみたいで命に別状はないようで良かったよ」
「そうか」
Dホイールの絡む事故は何も初心者に限ったことではない。どんなに運転技術を磨こうとも自分のDホイールが常に万全の状態でなければ小さな不調が取り返しの付かない事故に繋がることもあるし、ライディングデュエルを行うレーンの状態やその時の天候、そして自分が万全の準備を整えていたとしても、相手のミスに巻き込まれる可能性も無いとは言い切れないのだ。
ライディングデュエルにおける危険性は、初心者よりもむしろ大きな大会に名を連ねるライディングデュエリストこそ思い知っている。
「さっき簡単な事情聴取で話を聞いたんだけど……」
Dホイールのクラッシュ事故は遊星も風馬も経験上身に沁みて体験しているが、風馬は何とも言えぬ微妙な面持ちで掻い摘んで事故の経緯を話し始めた。
聞けば恋愛の縺れからデュエルで決着をつけようと言うことになったらしく、ターンを重ねる毎にヒートアップして片方がクラッシュしたらしい。
大きな事故にならなかったのが不幸中の幸いだが、何でもデュエルでケリをつけようとするのはデュエリストの悪い癖だなと苦笑する風馬に、遊星もふっと笑みを浮かべる。
流石にライディングデュエルで何かを賭けたことはないが、昔はジャックやクロウ、鬼柳達と互いに他愛のないものを賭けてデュエルをしていた日々を思い起こす。
色恋沙汰でさえもデュエルで勝ち取るのは少々強引な気もしたが、あながち突飛な発想でもないなと遊星は風馬と顔を見合わせた。
「そう言えば」
──来た。
そう感じた遊星の読みは程なくして間違いではなかったと知る。
「今日はジャックは一緒じゃないんだな」
意味深な視線を寄越した風馬の様子に、今この場にジャックがいなくて本当に良かったと心底ほっとする。
「あぁ。今日は俺の用事だけだからな」
「そうか。それは少し残念だな」
朗らかに笑みを浮かべながら何とも無い様子で本音を言う、そんな大胆さが自分には少し欠けていると自覚している遊星は、風馬の言動を脅威と羨望とが入り混じった表情で見つめた。
遊星は口が達者なわけではない。どちらかと言えば口下手で、話術に関してはジャックの足元にも及ばず、だからと言って風馬のように気の効いた台詞が出てくるわけでもない。
だからであろうか、風馬と会話する時のジャックは遊星が今まで見てきたどのジャックとも微妙に異なっており、そんな自分も見たことが無いジャックの一面を風馬が独り占めしているのかと思うと、ちりちりと胸の奥がむず痒くなるのだ。
それはどこからどう見ても……自分自身でも嫉妬以外の何物でもないと認識しているのだが、そんな些細なことにすら嫉妬心が芽生えてしまう己の器の狭さに余計に自己嫌悪は増して行く。
いっそのことジャックとの関係が進展しでもすれば、この風馬との微妙な空気も変わってくれる気がしないでもないが、その一歩を踏み出すには相当の勇気を要するのだ。
さほど長い沈黙ではなかったが、不意に風馬が口を開いた。
「なぁ遊星」
どことなく神妙な顔つきで抱えたヘルメットを見下ろす風馬。
その鳶色の瞳が、今度は遊星へと向けられた。
「俺達もデュエルで決着をつけようか?」
何の……とはお互い口にするまでも無く分かりきっている。
戸惑う遊星とは裏腹に、風馬は視線を逸らすことなく真直ぐに遊星を見つめていた。
「………っ…」
「なんて、冗談だよ」
いつもと変わらぬ風馬の声に遮られるようにして遊星は言葉を飲み込んだ。
風馬は見慣れた柔らかな笑みを浮かべたまま軽く遊星の肩を叩くと、ぐるりと周辺の状況に目を配った。
「さて交通整理は終わったかな?」
つられる様に見渡せば先ほどまでいた群衆は徐々に減り、道路や歩道はいつもの平穏を取り戻しかけているようだ。
「野次馬もいなくなったみたいだし、そろそろ規制を解くから通れるよ」
「…あぁ」
「それじゃ、みんなによろしく」
まるでいつもと変わらぬ世間話でもしていたかの様子の風馬にどこか呆気に取られながらも、遊星は立ち去ろうとする風馬の背中に歯切れの悪い相槌を投げながら、また一つ恋敵に対する苦手意識が増えたのを感じながら帰路についた。
+++
爽やかが行方不明(´;ω;`)
■尻

スカートめくりが描きたかっただけの絵\(^o^)/
■

カードが名刺サイズwwww
デッキホルダーはログアウトしました。
+++
続きには小ネタです。
ショタカイトきゅんの妄想ですが、キャラの口調がさっぱりすぎて別人とかそういうレベルですらない/(^o^)\
スカートめくりが描きたかっただけの絵\(^o^)/
■
カードが名刺サイズwwww
デッキホルダーはログアウトしました。
+++
続きには小ネタです。
ショタカイトきゅんの妄想ですが、キャラの口調がさっぱりすぎて別人とかそういうレベルですらない/(^o^)\
+++
子供というのは本当にわからないものだ。
小さな体が懸命に大人の歩幅を追うその姿は必死で、ほんの少しだけ歩幅を緩めてやろうかと思った瞬間、足を縺れさせたのだろう子供は何もない床で勢い良く地面に転んでしまっていた。
「…ッ…」
子供はゆっくりと地面に手をついて立ち上がろうとしたが、転んだ際に負ったのか膝が擦りむけ、じんわりと赤い血が滲んでいた。
傷口に気づいた子供は、滲む血を見た途端に痛みを認識したのだろう。膝に滲む血と同じように、その大きな瞳にじわじわと透明な涙が溢れる。
「立てるか、カイト」
見かねて手を差し伸べてみるが、カイトと呼ばれた子供は力なくふるふると首を首を振って俯向いてしまった。
仕方なく横に膝をついてカイトの顔を覗き込むと、母親譲りの空色の瞳から大粒の涙がぽろぽろと溢れている。
「大丈夫、ほんの擦り傷だ」
心配させまいと励ましても、カイトは首を振り続けるばかりだ。
「……痛むか?」
こくり、と小さく頷くカイトを眺めやりながら男は途方に暮れた。
特に急ぎの用ではないが、ここでカイトが泣き止むのを待っている時間もない。
と、男は自らのポケットにあるものの存在を思い出した。
探り当てたその小さな包みは長時間に及ぶ解析の際、簡易的な糖分補給のために懐に忍ばせていたものだったが、男は迷うこと無く取り出したそれを小さく啜り泣くカイトの目の前にそっと差し出した。
「……?」
目の前に現れた小さな四角い包みにカイトの視線が止まる。
「これはキャラメルだ」
「きゃらめる…?」
男の指からそれを受け取ったカイトがゆっくりと白い包み紙を開いていくと、中から薄茶色の塊が現れた。
手にしたそれからふわりと漂った甘ったるい香りに気づいたのか、しかしカイトは不安げに男の顔を見上げる。
「食べなさい。……元気が出る」
男の言葉にカイトは恐る恐るキャラメルを口に含んだ。
「どうだ?」
「……おいしい」
子供というのは本当にわからないものだ。
さっきまで大粒の涙を浮かべていたはずなのに、見上げてくるその笑顔にもう涙の面影は無い。
「立てるか?」
再び手を差し伸べれば、今度はしっかりと手を握り返して来たカイトを立ち上がらせると、不意にカイトが口を開いた。
「ありがとう、父さん」
繋いだカイトの手を引きながら、Dr.フェイカーは今度はカイトの歩幅に合わせ、ゆっくりと廊下を進んで行った。
+++
なんというヴェ●タースオリジナルwwwww
カイトとハルトが8~10違い位と仮定して、ハルトがまだ生まれてない時の妄想です。
いつか無駄考察してたネタを使った感じです。
父ちゃんしてるフェイカーって想像できないなあ(´・ω・`)
子供というのは本当にわからないものだ。
小さな体が懸命に大人の歩幅を追うその姿は必死で、ほんの少しだけ歩幅を緩めてやろうかと思った瞬間、足を縺れさせたのだろう子供は何もない床で勢い良く地面に転んでしまっていた。
「…ッ…」
子供はゆっくりと地面に手をついて立ち上がろうとしたが、転んだ際に負ったのか膝が擦りむけ、じんわりと赤い血が滲んでいた。
傷口に気づいた子供は、滲む血を見た途端に痛みを認識したのだろう。膝に滲む血と同じように、その大きな瞳にじわじわと透明な涙が溢れる。
「立てるか、カイト」
見かねて手を差し伸べてみるが、カイトと呼ばれた子供は力なくふるふると首を首を振って俯向いてしまった。
仕方なく横に膝をついてカイトの顔を覗き込むと、母親譲りの空色の瞳から大粒の涙がぽろぽろと溢れている。
「大丈夫、ほんの擦り傷だ」
心配させまいと励ましても、カイトは首を振り続けるばかりだ。
「……痛むか?」
こくり、と小さく頷くカイトを眺めやりながら男は途方に暮れた。
特に急ぎの用ではないが、ここでカイトが泣き止むのを待っている時間もない。
と、男は自らのポケットにあるものの存在を思い出した。
探り当てたその小さな包みは長時間に及ぶ解析の際、簡易的な糖分補給のために懐に忍ばせていたものだったが、男は迷うこと無く取り出したそれを小さく啜り泣くカイトの目の前にそっと差し出した。
「……?」
目の前に現れた小さな四角い包みにカイトの視線が止まる。
「これはキャラメルだ」
「きゃらめる…?」
男の指からそれを受け取ったカイトがゆっくりと白い包み紙を開いていくと、中から薄茶色の塊が現れた。
手にしたそれからふわりと漂った甘ったるい香りに気づいたのか、しかしカイトは不安げに男の顔を見上げる。
「食べなさい。……元気が出る」
男の言葉にカイトは恐る恐るキャラメルを口に含んだ。
「どうだ?」
「……おいしい」
子供というのは本当にわからないものだ。
さっきまで大粒の涙を浮かべていたはずなのに、見上げてくるその笑顔にもう涙の面影は無い。
「立てるか?」
再び手を差し伸べれば、今度はしっかりと手を握り返して来たカイトを立ち上がらせると、不意にカイトが口を開いた。
「ありがとう、父さん」
繋いだカイトの手を引きながら、Dr.フェイカーは今度はカイトの歩幅に合わせ、ゆっくりと廊下を進んで行った。
+++
なんというヴェ●タースオリジナルwwwww
カイトとハルトが8~10違い位と仮定して、ハルトがまだ生まれてない時の妄想です。
いつか無駄考察してたネタを使った感じです。
父ちゃんしてるフェイカーって想像できないなあ(´・ω・`)
連日ハトカイばっかりうpしてるせいか、頭の中からクソメガネが中々出て行きません。
何もハトカイだけが好きじゃないんですVカイだってゆまカイだってハルカイだって4カイだってゴシュカイだって何でも好きなんですが、どうやら私はカイトきゅんを苛め抜きたいようです\(^o^)/
そうこうgdgd打ってたらブログのデータが消えてしまいました!呪いかwwwwwだがまた打つwww
えぇとハトカイですが厳密にはハト←カイです。
まさかの。
大丈夫そうな方は暇つぶしにでもどうぞ。
ちなみに長くないです。短い。
+++
何もハトカイだけが好きじゃないんですVカイだってゆまカイだってハルカイだって4カイだってゴシュカイだって何でも好きなんですが、どうやら私はカイトきゅんを苛め抜きたいようです\(^o^)/
そうこうgdgd打ってたらブログのデータが消えてしまいました!呪いかwwwwwだがまた打つwww
えぇとハトカイですが厳密にはハト←カイです。
まさかの。
大丈夫そうな方は暇つぶしにでもどうぞ。
ちなみに長くないです。短い。
+++
※※※
カイトきゅんがクソメガネ想いながら抜いてるだけです。
二次創作なので本編ガン無視ですが、それでも大丈夫な方はスクロールしてくださいませ><
※※※
熱いくらいのシャワーを頭から浴びた。
ふわりと熱をもった湯気にむせかえりそうになりながらゆっくりと瞳を閉じる。
『期待しているよ、カイト』
落ち着いた男の声音を思い浮かべ、彼が触れた感触を記憶の中から手繰り寄せる。
柔らかい物腰に、渇いた無骨な指先。
しっかりと大きな手のひらがカイトの肩に置かれた瞬間、はねあがった鼓動が彼に気づかれていないだろうか。
ふわりと漂う人工的な香料は女たちがつけている時のそれとは違い酷く心が落ち着く香りだった。
彼の体臭や汗とまざりあい、彼だけの匂いとなったそれを思い起こしながら、カイトは右手を自らに伸ばす。
「っ……は、ン」
壁に手を突きながら、右手で自身を握り擦りあげてゆく。
勢いよく流れるシャワーの音に紛れて下の卑猥な水音はカイトの耳にも届かない。
あの渇いた指先で擦られる感覚はどんなものだろう。
カイトの掌より一回りも大きなそれで握りこまれたら。
節くれだった指が血管を辿り、括れを擦り、丁寧にやすりがけされ緩いカーブを描く爪が敏感な先端を掠めたら。
「ふ、あ…、っ、は」
男の指の動きを思い浮かべながらカイトは自身を握る手に力を込めていく。
もう絶頂が近い、白む思考を高みへ導くように擦りあげ自らの爪を少しだけ埋める。
背中をかけ上がってくる震えに息も上がり、カイトは息を詰めながら男の名を呼んだ。
「ミスター……っ、ぁあ!」
その瞬間、白濁液が勢いよく放たれ、カイトの掌を汚した。
口を開けた排水溝へ吸い込まれていったそれを呆然と見つめながら、弛緩した体はその場へへたりこむ。
肩を叩く水飛沫がくすぐったく、それでいて酷く心地よくもあった。
快感に溶かされた頭のすみに小さな罪悪感がこびりつく。
絶対に手に入らない男をこうして脳内で汚してしまった罪悪感。
一方的な好意が報われなくて当然だと頭のどこかで納得させる。
想像の中だけで十分だった。
こんなことが彼に知られてしまう方が恐ろしい。
あの優しい瞳が、口調が、指先が、カイトを拒絶し軽蔑に染まるのだけは見たくない。
ひとしきり呼吸を整えて、上がるためにシャワーコックへ手を伸ばした。
その時。
「気持ち良さそうだねカイト」
「!?」
聞こえるはずのない声、いるはずのない気配にカイトは一気に青ざめる。
降ってきたそれが誰の声かなんて、いまさら、だ。
「…ッ…み、すた……」
驚愕に勝る恐怖のためか、喉が震えて酷く掠れた呼び声だけが虚しく漏れる。
彼の名を呼んで果てたのだ、自慰をしていたことなどお見通しだろう。
軽蔑の視線が恐ろしく、カイトは振り返ることが出来ない。
否定も弁解の言葉すら見当たらず、ただ口がぱくぱくと動いただけで、何も言葉にならなかった。
何を言うにしても、一体何と言えば良いのかわからず、ただ震えるカイトに、男の口が弧を描いた。
「私もまぜてくれないかな」
+++
Mr.ハートランドって呼ぶの中途半端になっていつも「ミスター」どまりになってしまうので早く本名とかおねがいしま(´∀`)
あ、そんな設定もないですねクソメガネだしね!本編で司会以上の出番があるのかも謎ですね!今後の核心に関わるかどうかも謎ですね☆モブカイ好きなんで全然おkですクソメガネが好きなわけじゃないですからね!えぇ!全然!!
コックって何となく打ったけどコックで合ってたっけかと辞書で調べたら、意味は合ってたんですが他の意味に【tnk】って書いてあってほんとそういうのいらないから_ノ乙(、ン、)_
カイトきゅんがクソメガネ想いながら抜いてるだけです。
二次創作なので本編ガン無視ですが、それでも大丈夫な方はスクロールしてくださいませ><
※※※
熱いくらいのシャワーを頭から浴びた。
ふわりと熱をもった湯気にむせかえりそうになりながらゆっくりと瞳を閉じる。
『期待しているよ、カイト』
落ち着いた男の声音を思い浮かべ、彼が触れた感触を記憶の中から手繰り寄せる。
柔らかい物腰に、渇いた無骨な指先。
しっかりと大きな手のひらがカイトの肩に置かれた瞬間、はねあがった鼓動が彼に気づかれていないだろうか。
ふわりと漂う人工的な香料は女たちがつけている時のそれとは違い酷く心が落ち着く香りだった。
彼の体臭や汗とまざりあい、彼だけの匂いとなったそれを思い起こしながら、カイトは右手を自らに伸ばす。
「っ……は、ン」
壁に手を突きながら、右手で自身を握り擦りあげてゆく。
勢いよく流れるシャワーの音に紛れて下の卑猥な水音はカイトの耳にも届かない。
あの渇いた指先で擦られる感覚はどんなものだろう。
カイトの掌より一回りも大きなそれで握りこまれたら。
節くれだった指が血管を辿り、括れを擦り、丁寧にやすりがけされ緩いカーブを描く爪が敏感な先端を掠めたら。
「ふ、あ…、っ、は」
男の指の動きを思い浮かべながらカイトは自身を握る手に力を込めていく。
もう絶頂が近い、白む思考を高みへ導くように擦りあげ自らの爪を少しだけ埋める。
背中をかけ上がってくる震えに息も上がり、カイトは息を詰めながら男の名を呼んだ。
「ミスター……っ、ぁあ!」
その瞬間、白濁液が勢いよく放たれ、カイトの掌を汚した。
口を開けた排水溝へ吸い込まれていったそれを呆然と見つめながら、弛緩した体はその場へへたりこむ。
肩を叩く水飛沫がくすぐったく、それでいて酷く心地よくもあった。
快感に溶かされた頭のすみに小さな罪悪感がこびりつく。
絶対に手に入らない男をこうして脳内で汚してしまった罪悪感。
一方的な好意が報われなくて当然だと頭のどこかで納得させる。
想像の中だけで十分だった。
こんなことが彼に知られてしまう方が恐ろしい。
あの優しい瞳が、口調が、指先が、カイトを拒絶し軽蔑に染まるのだけは見たくない。
ひとしきり呼吸を整えて、上がるためにシャワーコックへ手を伸ばした。
その時。
「気持ち良さそうだねカイト」
「!?」
聞こえるはずのない声、いるはずのない気配にカイトは一気に青ざめる。
降ってきたそれが誰の声かなんて、いまさら、だ。
「…ッ…み、すた……」
驚愕に勝る恐怖のためか、喉が震えて酷く掠れた呼び声だけが虚しく漏れる。
彼の名を呼んで果てたのだ、自慰をしていたことなどお見通しだろう。
軽蔑の視線が恐ろしく、カイトは振り返ることが出来ない。
否定も弁解の言葉すら見当たらず、ただ口がぱくぱくと動いただけで、何も言葉にならなかった。
何を言うにしても、一体何と言えば良いのかわからず、ただ震えるカイトに、男の口が弧を描いた。
「私もまぜてくれないかな」
+++
Mr.ハートランドって呼ぶの中途半端になっていつも「ミスター」どまりになってしまうので早く本名とかおねがいしま(´∀`)
あ、そんな設定もないですねクソメガネだしね!本編で司会以上の出番があるのかも謎ですね!今後の核心に関わるかどうかも謎ですね☆モブカイ好きなんで全然おkですクソメガネが好きなわけじゃないですからね!えぇ!全然!!
コックって何となく打ったけどコックで合ってたっけかと辞書で調べたら、意味は合ってたんですが他の意味に【tnk】って書いてあってほんとそういうのいらないから_ノ乙(、ン、)_
■されどキス
あれから一週間が経った。
あれから……というのは、Mr.ハートランドとのことがあってからということだ。
思い出したいわけでも覚えていたいわけでもないのに、あの時の感触が今も鮮明に残っている。
その不快さを一時でも忘れたいとばかりに、カイトはぎりりと唇を噛み締めた。
「カイト様、如何サレマシタ?」
後ろをついて歩いていたオービタル7が心配そうに声を掛けるも、今のカイトには煩わしくて仕方がない。
噛み締めた唇と不愉快そうに顰められた眉から、カイトの放つ雰囲気はいつも以上に刺々しいものであったが、生憎空気を読むことを知らぬロボットだ。カイトは振り返りもせず吐き捨てた。
「お前には関係ない」
大げさなほど肩を落としたオービタルを横目に、ちくりとした罪悪感が胸を指す。
これが八つ当たりでしかないことは分かっていたが、このロボットに言ったところで状況が変わるわけではない以上、知る必要のないことだ。
状況を変えることも出来ないくせに首を突っ込もうとするコイツが悪いのだと言い聞かせて、カイトは早々に自室へと足を向けた。
「おや……帰っていたのだね」
背後からの声に、踏み出しかけた足がピタリと止まる。
今最も耳にしたくない声に呼び止められ、カイトは背を向けたまま苦々しげに舌打ちした。
ナンバーズ使いが都合よく現れるはずもなく、オービタルがナンバーズの反応を感知しない日はカイトが男に合うこともない。
さして広すぎる建物ではないが、市長としての公務で多忙を極める男と毎日顔を合わせる必要性の無いカイトがこうして男の声を聞くのは久しかった。
「……今日はこちらにいらしたんですね」
「間もなく開催されるWDCに向けて、私も準備を怠るわけには行かないからね」
通路の壁はガラス面になっており、眼下のハートランドシティが一望出来る。
男は感慨深そうに景色へ目を向けながら、そう言えば、とカイトを見下ろした。
「ここのところ予定が立て込んでいたせいか、君の顔を見るのも実に久し振りに思えるよ」
男の踏みするような視線にカイトは居心地の悪さを感じ目を逸らす。
カイトの反応に眼鏡の奥を細めながら、男は物思いに耽るかのように顎へと手を掛けた。
「ところでカイト。私を避けていないかい?」
態とらしく腰を屈めてカイトの顔を覗きこんだ男の顔を、カイトは至極冷静な面持ちで見上げた。
緊張に滲んだ汗がひやりと背中を伝ったが、全身の不快感を押し殺したカイトは眉すら動かさず、ただ静かに男へ問を返す。
「何故そんなことを?」
「いや何。もちろん君も私も多忙な身だ。擦れ違わない日も珍しくはないだろう。けれど、君が私と顔を合わせづらいと感じていないかと気がかりでね」
「あんなもの、ただの挨拶と言ったのは貴方だ」
男の真意がどうであれ、カイトにとってあれは挨拶でしかない。
例え男にそれ以上の含みがあったとしても、それを意識するより割り切った方が面倒がないと思ったのだ。
どうせハルトの治療のために彼らの命令を聞かねばならない立場は変わらない。
それならば、そこにカイト自身の感情を持ち込まない方が割り切れる。
そんなことを話していたせいか再びあの感覚が唇に蘇って来た。
男との無駄話にこれ以上花を咲かせる気もなく、カイトは一刻も早く男の目の前から立ち去りたい一心で苛立ちを募らせる。
「もう良いですか。俺は大丈夫ですから」
「そうか……君がそう思っているのなら安心したよ。だがカイト。これだけは覚えておいてくれ」
男は不意にカイトの手を取り徐に引き寄せたかと思うと、その薄い唇をカイトの手の甲に押し付け言った。
「挨拶と言えどキスには違いないのだから、私以外の人間にすることも、されることも許さないよ」
底知れぬ黒い瞳に背筋が凍る。
無表情なその眼鏡の奥の狂気に心臓を捕まれ脅されている気分だ。
拒絶の意志すら許さぬその空気にカイトは頷くしかない。
何事もなかったかのようにカイトの手を離し、男はくつくつと笑いながら続けた。
「それと、折角の唇をそんなに噛み締めるものじゃないよ。労わり給え」
「……ッ」
カイトの動揺を知ってか知らずか、男は意味深げに口端を歪めると、次の瞬間には踵を返し靴音を響かせながら通路の先へと消えて行った。
残されたカイトは男の背を忌々しげに睨みながら、暫くその場で立ち尽くす。
二人きりになった為か、それまで大人しく黙りこくっていたオービタルが恐る恐るカイトを見上げて来た。
「カイト様……」
「黙っていろ」
言い淀むくらいなら最初から黙っていればいいのに、何て学習能力のない奴だ。
俯いてしまったオービタルを置き去りに、カイトは当初の予定通り足早にその場を後にした。
+++
リハビリにしても酷い/(^o^)\
オービタルの扱いが酷くて申し訳ないです。オービタルってロボット…?オボット?何だ??(´・ω・`)
なんかよくわからないけどクソメガネに恐怖してるカイトきゅんが好きです。
目の前で舌打ちとかしちゃう子ですがwwwですよねwwwwww
あああああキモイ!我ながらキモイです!だがキモくないハートランドもキモイしキモイハートランドはよりいっそうキモイしなにこの無限ループ:(;゙゚'ω゚'):
あれから一週間が経った。
あれから……というのは、Mr.ハートランドとのことがあってからということだ。
思い出したいわけでも覚えていたいわけでもないのに、あの時の感触が今も鮮明に残っている。
その不快さを一時でも忘れたいとばかりに、カイトはぎりりと唇を噛み締めた。
「カイト様、如何サレマシタ?」
後ろをついて歩いていたオービタル7が心配そうに声を掛けるも、今のカイトには煩わしくて仕方がない。
噛み締めた唇と不愉快そうに顰められた眉から、カイトの放つ雰囲気はいつも以上に刺々しいものであったが、生憎空気を読むことを知らぬロボットだ。カイトは振り返りもせず吐き捨てた。
「お前には関係ない」
大げさなほど肩を落としたオービタルを横目に、ちくりとした罪悪感が胸を指す。
これが八つ当たりでしかないことは分かっていたが、このロボットに言ったところで状況が変わるわけではない以上、知る必要のないことだ。
状況を変えることも出来ないくせに首を突っ込もうとするコイツが悪いのだと言い聞かせて、カイトは早々に自室へと足を向けた。
「おや……帰っていたのだね」
背後からの声に、踏み出しかけた足がピタリと止まる。
今最も耳にしたくない声に呼び止められ、カイトは背を向けたまま苦々しげに舌打ちした。
ナンバーズ使いが都合よく現れるはずもなく、オービタルがナンバーズの反応を感知しない日はカイトが男に合うこともない。
さして広すぎる建物ではないが、市長としての公務で多忙を極める男と毎日顔を合わせる必要性の無いカイトがこうして男の声を聞くのは久しかった。
「……今日はこちらにいらしたんですね」
「間もなく開催されるWDCに向けて、私も準備を怠るわけには行かないからね」
通路の壁はガラス面になっており、眼下のハートランドシティが一望出来る。
男は感慨深そうに景色へ目を向けながら、そう言えば、とカイトを見下ろした。
「ここのところ予定が立て込んでいたせいか、君の顔を見るのも実に久し振りに思えるよ」
男の踏みするような視線にカイトは居心地の悪さを感じ目を逸らす。
カイトの反応に眼鏡の奥を細めながら、男は物思いに耽るかのように顎へと手を掛けた。
「ところでカイト。私を避けていないかい?」
態とらしく腰を屈めてカイトの顔を覗きこんだ男の顔を、カイトは至極冷静な面持ちで見上げた。
緊張に滲んだ汗がひやりと背中を伝ったが、全身の不快感を押し殺したカイトは眉すら動かさず、ただ静かに男へ問を返す。
「何故そんなことを?」
「いや何。もちろん君も私も多忙な身だ。擦れ違わない日も珍しくはないだろう。けれど、君が私と顔を合わせづらいと感じていないかと気がかりでね」
「あんなもの、ただの挨拶と言ったのは貴方だ」
男の真意がどうであれ、カイトにとってあれは挨拶でしかない。
例え男にそれ以上の含みがあったとしても、それを意識するより割り切った方が面倒がないと思ったのだ。
どうせハルトの治療のために彼らの命令を聞かねばならない立場は変わらない。
それならば、そこにカイト自身の感情を持ち込まない方が割り切れる。
そんなことを話していたせいか再びあの感覚が唇に蘇って来た。
男との無駄話にこれ以上花を咲かせる気もなく、カイトは一刻も早く男の目の前から立ち去りたい一心で苛立ちを募らせる。
「もう良いですか。俺は大丈夫ですから」
「そうか……君がそう思っているのなら安心したよ。だがカイト。これだけは覚えておいてくれ」
男は不意にカイトの手を取り徐に引き寄せたかと思うと、その薄い唇をカイトの手の甲に押し付け言った。
「挨拶と言えどキスには違いないのだから、私以外の人間にすることも、されることも許さないよ」
底知れぬ黒い瞳に背筋が凍る。
無表情なその眼鏡の奥の狂気に心臓を捕まれ脅されている気分だ。
拒絶の意志すら許さぬその空気にカイトは頷くしかない。
何事もなかったかのようにカイトの手を離し、男はくつくつと笑いながら続けた。
「それと、折角の唇をそんなに噛み締めるものじゃないよ。労わり給え」
「……ッ」
カイトの動揺を知ってか知らずか、男は意味深げに口端を歪めると、次の瞬間には踵を返し靴音を響かせながら通路の先へと消えて行った。
残されたカイトは男の背を忌々しげに睨みながら、暫くその場で立ち尽くす。
二人きりになった為か、それまで大人しく黙りこくっていたオービタルが恐る恐るカイトを見上げて来た。
「カイト様……」
「黙っていろ」
言い淀むくらいなら最初から黙っていればいいのに、何て学習能力のない奴だ。
俯いてしまったオービタルを置き去りに、カイトは当初の予定通り足早にその場を後にした。
+++
リハビリにしても酷い/(^o^)\
オービタルの扱いが酷くて申し訳ないです。オービタルってロボット…?オボット?何だ??(´・ω・`)
なんかよくわからないけどクソメガネに恐怖してるカイトきゅんが好きです。
目の前で舌打ちとかしちゃう子ですがwwwですよねwwwwww
あああああキモイ!我ながらキモイです!だがキモくないハートランドもキモイしキモイハートランドはよりいっそうキモイしなにこの無限ループ:(;゙゚'ω゚'):
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